Me & Mr. Eric Benet

私とエリック・ベネイ

「ブロードウェイ・ブロードウェイ コーラスラインにかける夢」

2009-11-10 00:04:20 | Weblog
http://www.star-ch.jp/channel/detail.php?movie_id=19002&channel_id=6&cal_date=2009-11-06
スターチャンネルでこのドキュメンタリー映画を観た。

「コーラスライン」、21歳の春休み、ロンドンにいた私は、このミュージカルの素晴らしさを聞いた。
しかし、全く知識もない作品を英語で理解することはできないだろうと判断し、
「ジーザスクライスト」を観ることに。
こちらは、映画も劇団四季の舞台も観ているから、分かるかと思ったのだ。

「ジーザスクライスト」劇団四季のバージョンとはかなり違っていて、台詞や歌詞まで把握できなかった。
劇団四季がブロードウェイのミュージカルの直輸入を始めたのは、この2年後「コーラスライン」からだった。

劇団四季「コーラスライン」初演で観た。
その後、知り合う友人二人がその時、出演していた。
そして、映画「コーラスライン」も観て、やっとブロードウェイの「コーラスライン」、
ニューヨークからキャストが初来日して、皮肉にもコマ劇場で観ることになった。
ロンドンで噂を聞いてから、8年が経っていた。

映画を何度も見返して、劇団四季の台本も熟読して臨む。
その頃には歌も台詞もほとんど頭の中に入っていた。

その「コーラスライン」が2006年に再演が決まり、
そのためのオーディションのドキュメンタリー映像が撮影された。

ブロードウェイ初演、劇中でモデルとなった人物達。
この作品ができあがるまでのディスカッションのオリジナルテープや白黒の映像。
この作品はオーディションに来ていたダンサー達のインタビューにインスパイヤーされて作り上げられた。

そして再演にあたってのオーディションの様子。
3000人近い応募者が劇場の前に並ぶ。
プロで芸暦のある人、今までのキャリアがない人。
かつて大役を射止めたけれど、今は仕事にあぶれている人。

審査するプロデューサー、初演の時にその役を演じた人もいる。
一人一人の役に対しての思い入れは深い。
東洋系のコニー役、沖縄出身で96年からアメリカ滞在のYukaが志願していた。
オリジナルのコニー役だった振付師が「彼女にはNYで子供の時から育ったハングリーさが出ていない」
と認めない。
しかし「キュートでこの役の可愛らしさが出ている」と他の審査員達の評判はよく、彼女に決まる。
オリジナル版コニーは「私はキュートじゃない」とまだ不服そうだった。

ゲイだと告白し、田舎から出てきた両親に女装してショウに出る姿を見られた時のエピソードを語るポール。
何人もオーディションをするが、ぴんとこない。
この役は核になるからと審査する側も譲らない。
ようやく現れた俳優はオーディションとは思えないほど役に入り込んでいて、
まるで本人が自分の経験を語るようにリアルに演じた。
「母の前を通り過ぎる時、そ知らぬ振りをしたけど、彼女は呟いた。"Oh my god!"
ショウが終わって楽屋に行くと、両親は女装した出演者達の中に立ち尽くしていた。
父は『食べる物に気を付けて、体を大切にするんだよ、マイ サン。』
そして演出家に『息子をよろしくお願いします』と言ったんだ。
父はその時、初めて自分のことを息子と呼んでくれた」
完璧に役になりきって自分のものにしている。
本人も涙、観ている審査員達も皆、泣いてしまった。
ふさわしい人、その役をやるために生まれてきたような人は、ほんとうに存在するんだなぁと思った。

それぞれの役に今までのイメージがある。
うらぶれてコーラスライン落ち慣れしている姉御シーラ。
第一線で活躍したのに今は仕事のないキャシー。

いつもオーディションで落ち、評価票を覗いたら、『ダンス10、ルックス3』
と書かれているのを見て、胸とお尻を整形したエピソードを語る役。
「彼女はうわべと違って繊細な部分もあるキャラクターなんだよ。
だから演ずる側もそれを理解できてないと。」と演出家。

オリジナルのキャラクターも尊重しつつ新しいスタイルも出していかなければならない再演。
オーディションの8ヶ月後、選ばれたアクターたちの再審査があった。
「前と同じようにやって欲しい。」と言われても、どうしてもできずに、シーラ役を逃した女性。
「8ヶ月の間にいろいろあった。失恋もした。
同じようになんてできないし、どうやったかも思い出せない。」
キャシーの役は、かつては大物だったという雰囲気が出せる女優に決まった。

それぞれの役の代役も決まっていく。二つの役の代役に選ばれる人もいる。
キャストになってからも、厳しい練習が続く。

ダンサーの現役の期間は短く、はかない。
だからこそ、その瞬間を真剣に生きる人、掛けることに美しさがある。
そしてそのダンサーたちの人生にスポットをあてた作品が「コーラスライン」

追記
この後、劇団四季にいた友人と話したところ、
直輸入ミュージカルは「ウェストサイトストーリー」が最初ではないかと。
そして、公開オーディションという形式を取り、劇中のストーリーさながらの形で、
上演されたのが、「コーラスライン」だったそうだ。
ちなみに彼女は「私は歌が歌えない」という女優役で出演していた。