Me & Mr. Eric Benet

私とエリック・ベネイ

あるヴァイオリンの演奏を聴いて

2009-11-05 00:00:39 | 私の日々
私はそのヴァイオリニストの演奏を聴くために、その場所に行ったわけではなかった。
用事があって、そこに早く着いてしまい、彼女の演奏に立ち会うことになった。
聴いている人は30名ほどだろうか。
後方の席に座ろうとしたが、促されて前方の席へと移動した。

演奏が始って、ほどなく軽いめまいのような、貧血とでもいうのだろうか。
気分が悪くなってしまった。
しかし、この状況では動けない。
私が立てば、演奏を妨げることになる。
それどころか録画しているカメラも止めることになる。
何とか最後まで乗り切ったが、その後、遅めの夕食をするために知人達と、
入ったレストランでも、その具合の悪さを引きずった。

ヴァイオリニストがテーマに選んでいる作曲家、そしてその時の曲は特に、
神経を苛立たせて、キリキリと締め付けるような曲だった。

芸術は癒しになり、楽しい気持ちにさせる作品ばかりだけではない。
しかし、そういった作品も支持され、評価されるのは、
そこにメッセージがあり、共感を得ることができるからだと思う。

その作曲家の作品も弾き継がれているわけだから、
聴き終わった後、観客に何らかの思いや感動を残すものであるはずだ。

一緒に立ち会って聴いている人達も、一様に辛そうだった。
演奏家自身がその曲の解釈が充分にできていなくて表層的にしか捉えていない、
そのために聴いた人は気分の悪くなるようなところへ連れて行かれて、
そこから何の答えも出ないままに置き去りにされる、そんな感覚だろうか。
何より、彼女自身がその場所でとても居心地悪そうに演奏していた。

友人にその話をすると、「疲れていたからそうなったのよ。」と心配してくれた。
問題があったのは、ヴァイオリニストではなく、私の方だったのかもしれない。
席をさりげなく立てば良かったと今は思っている。