Me & Mr. Eric Benet

私とエリック・ベネイ

ニューオリンズへ到着

2009-07-08 08:06:48 | ニューオリンズの旅
ニューオリンズへの飛行機の搭乗が開始される。
搭乗口の女性は、先ほど質問をしたのと同じ係員。
私のことを覚えていてくれて、にこやかに挨拶してくれる。

飛行機は満席。席は一番後ろ。
一時間半余りのフライトなので、あっという間にニューオリンズへ。
空港は小さく、飛行機から降りると、目の前にはもう出口。
こんな簡単にもう外に出ちゃっていいのって感じ。
荷物、持ち込みっていいなぁ。
預けた荷物が出てくるのを待つプロセスが省略できる分、
何もかもスピーディーに運ぶ。
病み付きになりそうだ。

ヨーロッパの乗換えよりもずっと楽であっけなかった。
システムがきちんとしているし、分かりやすい。
またヨーロッパの乗換えだと乗り継ぎ都市で入国審査、
到着した国でも入国手続きがあるから、時間も掛かる。

特にヒースローは計画性のない建て増しを重ねているうちに、
とんでもない空港になり、ターミナル間の移動はバス、
同じターミナルでもゲート間の迷路のような道をかなり歩くことになる。
機能しない案内板も修理されないまま放置されていた。
今回の旅では、そのような心配は杞憂に終わった。

外に出て、警備の人に「どこでタクシーを拾える?」と尋ねると、
下の階へ行くように教えてくれる。

タクシーの配車所のようなブースがある。
制服を着た女性に「市内のホテルまでタクシーに乗りたいんだけれど?」
と尋ねると、「支払いは、現金、それともカード?」と聞かれる。
「いくらくらい掛かるの?」と聞くと確か38ドルと言われた。
現金でと頼むと、女性のドライバーが迎えに来て荷物を持ってくれる。
久しぶりのアメリカ、ここはチップの国だ。
いつも感覚がわからずに「こんなんでいいのかなぁ?」と戸惑いながら、
終わってしまう。今度の旅ではチップについてもはっきりさせたい。
とりあえず、配車係に2ドルを渡す。

女性のドライバーは全然、愛想がない。
そしてニューオリンズの市内へと車は進んでいくが、
外の景色が何か荒涼とした感じがする。
郊外から市内へ。
そしてスーパードームが見えてくる。
私の泊まるホテルはスーパードームから歩いて行ける場所。
ビジネス街にある。ここもとっても殺風景だ。

まず着いて笑ってしまったのは、ファンクラブメンバーの泊まるホテル、
通りを一本隔ててほぼ隣だった。
タクシー代は28ドル。
30ドルでお釣りはいい、と言い掛けてちょっと少ないかなぁと思い、
2~3ドル足して渡したような気がする。
後で知ったのだがこの場合は30ドルで充分だった。
感じが悪かったし、切りのいい金額だったから。
「チェックインですか?」と聞きに来たベルボーイ、
荷物を持ってくれるのかと思ったら、いつの間にかいなくなっている。

フロントまで自分で荷物を持って進む。
南部のクラシックなホテル。華やかなシャンデリアや装飾で飾られている。
調度品もすべてサザンテイストだ。
そしてここでは時間が止まってしまっているようだ。
しかし何か古ぼけた感じも否めない。

フロントでチェックイン。
「クイーンサイズのお部屋で予約を頂いていますが、
同じお値段でグレードアップ、キングサイズのベッドのお部屋を用意しました。」
嫌な予感がした。
今まで、ホテルのグレードアップで良い思いをした事がない。
要するに頼んだ部屋は満室、そこで値段は高いが、
居心地が悪くて人気がないような部屋を宛がわれる。

「明日のツアーを予約したいんだけれど?」と尋ねると、
「横のコンシェルジュカウンターへ移動して下さい。」
コンシェルジュが登場。
「明日、半日位で市内を観るツアーを予約したいんだけど。」
と尋ねると、「2つあります。」
一つは大型バスで観光会社が運営している物、もう一つは個人でやっていて、
そっちの方が安いし、自分は内容もそちらの方が良いと思うと言う。
たぶん、バックマージンとか貰っていて、そっちを薦めるのかなぁと疑うが、
さらっと説明を読んでみて、片方が墓地や記念館中心なのに対して、
後者は、ニューオリンズの美しい住宅街、
ガーデンディストリクトなどが含まれていたので、そちらにする。
午前の部は9:30開始、午後は2時からと2回あるけれど、
どちらが良いかと聞かれる。
朝、ゆっくり眠りたいような気もするし、ちょっと迷ったが午前の部を頼む。

電話で予約を取ってくれて、ホテルのピックアップは9:15と言われた。
料金はカードでもキャッシュでも直接、ガイドに払えば良いそうだ。
その後、自分はこのホテルのコンシェルジュ、あなたの滞在中のリクエストには、
何でもお答えしますよ、などと話している。
ちょっと妙な間があった。
これはチップの催促だったと後で気付いた。
しかしながら、ベルボーイやルームサービスと違い、
カウンターに座って仕事している人に、お金を渡すのは、
むしろ異質な感じがして、その時は思い至らなかった。

「部屋には自分で行きますか? それともベルボーイに荷物を持たせます?」
「場所がわからないから、案内して欲しいわ。」
と言うと、「すぐそこにエレベーターがあって、自分の階で降りれば、
簡単にわかりますよ。」

エレベーターの前、ボタンがわからず一瞬、戸惑う。
横から制服を着たベルボーイではない青年がさっと手を伸ばして、
「ここですよ。」とボタンを押してくれた。

エレベーターで2階へ。
部屋はエレベーターから2つほど横。
ドアを開けて見て、嫌な予感は的中したと思った。
薄暗い縦長の部屋。日本で言うならば、金谷ホテルではなく富士屋ホテル。
家具は高山民芸家具風。
重々しい感じが裏目に出て、何か気分が暗くなりそうだ。

このままではいけないと思い、疲れていたが泳ぐことにする。
水着を持って屋上のプールへと向かう。
エレベーターに先ほどボタンを押してくれたホテルマンと乗り合わせる。
アメリカのドラマの「ER」のカーターに似ている。
エレベーターもデコラティブなレリーフ、金の装飾が施されている。
「このホテルはとってもクラシックにデコレーションされているのね?」
と話すと、「そうでしょう。とっても綺麗でしょう?
僕はこのホテルのそういう所を誇りに思っているんです。」
とほんとうに幸せそうに話す。
「確かに日本ではこういう建物、見られないわね。」
張りぼてみたいだ何て思ってしまった自分が恥ずかしくなる。

屋上へは客室の最上階で降りて、階段。
屋上への階段のドアを開け、上り始めた瞬間、
映画の「シャイニング」を思い出した。
良い方に取れば、「ある日どこかで」


屋上にはトレーニングルームとボールルーム、
そして、外にはプールとジャグジーがあった。
部屋から水着とタオルを持ってきたが、着替える場所やシャワールームがない。
テラスのテーブルで寛いで話している人、
ジャグジーに浸かっている人、プールサイドで日光浴をしている人が数人。
ちょうど、ホテルのマネージャー風の男性が上がってきたので、
尋ねると、部屋で水着に着替えて、備え付けのバスローブを羽織って、
ここまで来れば良い、そしてタオルは部屋から持ってこなくて、
ここに用意してある物をどうぞ、と教えてくれる。
「水着、持っているんだけれど、着替えるところはないの?」
と聞くと、少し考えて、「それなら、レストルームを使ってください。」
と案内してくれる。
でも、水着のまま、バスローブを羽織って部屋に帰る方が、楽だ。
もう一度部屋に戻って、水着に着替え、
バスローブを羽織ってエレベーターに乗る。
日本の温泉で浴衣ならともかくアメリカのホテルで、こんなのありか?

プールに足を入れてみると、外の気温同様に水温が高い。
そのまま、水に飛び込む。
深さが2メートル近くあって背が立たないので嬉しくなる。
まばらだけれど、周りに人もいるし、入る前のシャワーも浴びないプール。
顔をつけないで、静かにゆっくり泳ぐ。
飛行機の寒さと窮屈さで縮こまった体を伸ばすと気持ちが良い。
一応、世間体を気にして、平泳ぎと背泳ぎを、泳いでいるとも、
水に漂っているともつかぬ雰囲気で水に浮いている。

プールの片方の端は深いがもう片方は浅くできている。
時間は6時半頃、それでもまだ充分明るい。
日光浴がお目当ての人達はプールサイドから消えた。
泳ぐのと潜るのが大好きなので、
音を抑えて、控えめに4種目の個人メドレーをやってしまった。

その後、ジャグジーに浸かる。
大きな太陽がまだ沈まないで輝いている。
これでは、明日の午後、町の散策なんてとても無理だ。
午後はどこか郊外へ行くツアーを予約しようと思う。

部屋に帰ってシャワーを浴びる。
日本では当たり前だが、バスタブがある部屋でありがたい。
そして、シャワーがハンドシャワーじゃなくて、
大きくて硬い蛇口で、使い辛い。
シャワーから出て鏡を見て、唖然とする。
目がもう真っ赤。肌も乾燥し、過敏になっている。
飛行機の乾燥でダメージを受けた体にプールの強烈な消毒液。
このまま、目が治らなかったらどうしようなんて本気で心配してしまった。

バスルームから出て気を取り直して、ルームサービスのメニューを見る。
お腹が全然空いていない。でも何か食べないと。
髪はタオルドライしただけでまだ乾いていないが、
そのまま、お財布を持って、ロビーに行く。
ベルボーイに「この辺にコンビニかスーパーある?」と聞くと、
斜向かいにミニマートがあると教えてくれる。

売っている食べ物はパンとサラダ、そしてフルーツだけ。
何か暖かい物が食べたい。
お水、ミルク、デニッシュ、歯磨き、お菓子などを買う。
部屋の冷蔵庫、お水やジュースが6ドル位していた。

部屋に戻ってもう一度、ルームサービスのメニューを眺める。
ステーキなどとても食べる気になれない。
スープの所を見ると、ガンボがあった。
冷蔵庫にも小さなワインのボトルがあるけれど、
グラスワインの赤が充実している。

ルームサービスに電話する。
ガンボを頼むと、「パンかクラッカーを付けますか?」
と聞かれ、パンを頼む。
ワインはハウスワインのメルローのグラスにする。
20分以内にお届けします、との事だったが、
10分もしないうちに、先ほどエレベーターで会ったカーター君が登場した。

トレイにガンボ、パン、大きなグラスのお水とワイン。
調味料がタバスコや塩、胡椒。
「テーブルにお食事をセッティングして宜しいでしょうか?」
恭しい手付きで、まずはランチョンマット、
そしてお皿や調味料、ナプキン、カトラリーを丁寧に並べる。

「私、ガンボって今日、初めて食べるのよ。」
「それは良かったです。初めて食べるガンボがうちのホテルので。」
「それってどういう意味?」
「なぜなら、このホテルのガンボはニューオリンズで1番、美味しいからです。
初めてのガンボがうちのだなんて、お客様はとてもラッキーですよ。」
とまた凄く嬉しそうに話す。

ガンボの中心にはご飯が載っている。
「お米をみると、ほっとするわ。私達の食事の中心はお米だから。」
「日本のライスにはとてもかないませんが、ルイジアナのお米も、
アメリカの中ではかなり高い水準を保っています。
きっと気に入って頂けますよ。」

「食事が終わったら、片付けに呼んで下さってもいいし、
面倒だったら、トレイを外に出しておいて下さい。」

夕方にベッドを寝るように整えてくれるサービス、
これだけ大げさにベッドをたくさんのクッションやピローで飾り立てているから、
それがあるのかと思ったら、誰も登場しなかったので、
「このベッドの上においてある物、どこに片付けたらいいのかしら?」
と聞くと「全部、放り出して、メチャクチャにその辺に転がして下さい。
ここはアメリカですから。」
3ドルを手渡す。

すぐに食事を始めれば良かったのだけれど、やりかけたことがあり、
10分位してから、テーブルにつく。
ワインの温度がちょうど良く、柔らかい味に疲れがほぐれる。
ガンボの中心に添えてあったご飯、水分を含み、リゾットのようになった。
パンも暖かくて、とっても美味しい。
何か気持ちが解れてきて、五感が蘇ってきた。

第六感という意味では、この部屋に気味の悪さはない。
入った瞬間、ぞっとするような部屋もある。
どんなにりっぱであろうが、綺麗であろうが関係ない。
そういう意味では落ち着く部屋。
ドアから外の明かりや音が少し聞こえてくるのもむしろ安心な気がする。

目覚ましと携帯で時間設定をするが、ほんとうに明日、起きられるか自信がない。
ウェイクアップコールを頼む。
すると、「電話で起こした後、10分後に部屋まで起こしに行きましょうか?」
と聞かれたので、「それには及びません。」
飛行機を逃すわけじゃないから。

長い一日が終わった。
家のドアからホテルのドアまで22時間余り。
30時間近く、起きていたことになる。