毎年のことだけど、クリスマスの時期は、嵐の日が多い。
日本の冬のように、カラッと晴れ渡って、空気が冷たくて、夜空がきれいなクリスマスは、
イギリスでは、なかなかお目にかかれない。
初めて、こちらに来た年は、2003年の11月で、11月初めから1月終わりまで、何と晴れた日が、たったの3日だけだったのを覚えている。
年明けには、両親が相次いで、悪性リンパ腫と白血病という病気になり、初めてこの国で迎える新年は、大変な未来を予告するようであった。
2004年の元旦に見た夢は、散々だった。
夢の中では、教会の中にいる。結婚式が行われるようだ。棚に陶器で出来た鴨が置かれている。
私は、つい触ってみたくなるが、どこからか、声がする。「気を付けて!その鴨は、手を噛むかもしれないわよ」案の定、攻撃的な陶器の鴨に手を噛まれてしまった。
暫くすると新郎新婦が現れる。新婦の方は、何故か、口ひげのような物が生えている。
そして、皆が揃い、教会の外に出る。いきなり、猿の大群が、人々に向って攻撃してくる。
(よく考えたら、その年は、猿年であったのだ)そして、人々は頭を抱えて逃げ惑っている。
私の頭の上にはカラスが、攻撃してくる。
元旦早々、とんだ悪夢、しかも、とてもリアリスティックであった。
2003年の大みそかの夜、夫が、しょうもない小さなことで切れた。
作ってあった折り紙を、ちょっと触っただけで、急に夫の怒りが爆発したのだ。
時々、夫は突然、切れる。
普段は、家事を手伝ってくれたり、親切だったり、ジョークを言って笑わせてくれたりするだけに、
切れた時は、性格が豹変してしまうので、まるで二重人格みたいに思えてしまう。
自分自身が、いけなかったのだと反省することもある。
私は、空気読めない、オオボケなところも、多少あるらしいから。
嵐のクリスマスの夜は、つい、暗い過去の日々を思い起こさせる。
今日はクリスマス。
近所の一人暮らしのおばあさん、ローズマリーを招待した。
彼女には、知り合いの日本人の奥さんとイギリス人の夫の親戚がいるが、うちが近いので、ローズマリーさんは何かと、わが家の夫に、庭仕事などの頼みごとをしてきたりする。
うちの夫は、お年寄りを扱うのが上手で、結構、お年寄りの女性には気に入られている。
今日のローストディナーは、夫がメインで、私がアシスタントとなって、準備した。
メインのロースト、買ってきたのは、ドイツ系スーパーLidl(リドル)の冷凍食品で、
5種類の鳥のミックスのロースト用の肉(ターキー、鴨、グース、チキン、など)と詰め物は、リンゴやクランベリー、スモークベーコンなどが入っている。
実は、去年も同じものを買った。
お値段が安い上、美味だったから。

夫がLidlで並んでると、後ろに並んだ人が、「これ、探してたんだけど、見つからなかったんだ。どこにあった?もう、それが最後かい?」と聞いてきた。
「いや、まだ売ってるよ、あと10個くらいあったと思うよ。見えにくいところにあるから」と教えてあげていた。
この冷凍食品、やっぱ、人気あるんだね。たっぷり4人分くらいはあると思うけど、8ポンド(千二百円くらい)という価格は、魅力的。
今日は、午後1時過ぎに、ローズマリーを車で迎えにいった。
雨風が強いので、歩いては来れないと思ったから。
彼女は、今年になって、運転をするのをやめて、車を手放した。
医者にも、車を運転しない方がいい、危ないと言われたからだと言う。
彼女は、今年85歳になる。
私の母が、病気で亡くなったのが82歳だから、それに比べたら、ローズマリーは、本当に元気だと思う。私の母も、これだけ元気で、気丈であったらと思ったものだ。
母の事を考えると切なくなる。
クリスマスや、正月、海外に住んでるということで、殆ど母のそばにいてやれなくて、つらい思いをさせたし、自分自身もつらかったのを思い出す。
母は父が亡くなってから孤独だったにちがいない。
まさか、私がイギリスに移住してから、3か月後に、母が悪性リンパ腫になり(母は、そのことを、ずっと隠していた)1年と4か月後に、父が、白血病で亡くなるなんて予想もしていなかった。
皮肉なことに、外国に来て、近所のお年寄りと、一緒にクリスマスを祝う。
実の母親とは、一緒にクリスマスやお正月を祝ってあげれらなかったのに。
それどころか、77歳の喜寿の誕生日にも帰ってあげられなかった。
飛行機の切符も高いし、肉体的にも疲れるし、気軽に帰れるものではない。
海外に住む日本人女性は、親が病気になった時に、つらい思いをする人が多いみたいだ。
アジア圏など、簡単に帰れる距離ならいいんだけど。
それに、直行便は高い。
今までは、韓国経由の便で帰っていた。
それが、一番近くて、一番安いチケットが手に入るからだ。
それでも、ヒースロー空港から関西空港に辿り着くまでは、17時間という時間がかかる。
友人などは、K?M航空を利用して、キャンセルになり、父親のお葬式に間に合わなくて、空港で泣いていたところ、係員が別の便を用意してくれて、お葬式には間に合わなかったけど、その後の儀式には間に合ったらしい。
私も、昔、K?M航空を利用していたが、2度もキャンセルになり、8時間以上、空港で待たされたので、それ以降、利用しなくなった。
今日は、貧乏所帯ながら、それなりに、テーブルをセッティングして、準備した。
まずは、夫の手作りのモールドワイン、(オレンジの皮少々、オレンジジュース少々、赤ワイン、シナモン、スパイスなどの入った暖かいワイン)で、乾杯をした。

花瓶は、生前、母が作ったもので、私が一番、気に入ってる花瓶。
ローズマリーは、「歯が弱くなったからローストポテトは、やめて、私にはマッシュポテトお願い」とリクエストをしてきた。
オレンジのローストは去年、やってみて美味しかったので今年も!

ささやかなプレゼントも用意して。
あ、食べながら途中で、芽キャベツを出し忘れたことに気が付いた。
これがなきゃ、物足りないのよね。
芽キャベツは、オレンジジュースでゆでてから、炒めたそうだ。
これが、また美味だった!

そして、食後は、夫とローズマリーは、クリスマスプディング(ドライフルーツがいっぱい入ったケーキ)私はクリスマスプディングは、苦手なので、チョコレートケーキを少し。そしてダブルクリームをかけて頂いた。ケーキ、クリーム類は、太るので、要注意!
クリスマスの時期は、何故か、淋しくて仕方なくなる。
それは、孤独だった晩年の母の事を思うからかもしれない。
暗い嵐のイギリスのクリスマス。
今年の冬はマラガで少しの間でも、過ごせただけ幸せだった。
ずっと、暗いイギリスの冬を過ごすのは、気が折れそうになる。
仕事などで忙しくしていれば、淋しさも忘れられるだろうけど。
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