世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

飯島内閣官房参与の訪朝は両刃の剣 吉と出るか凶と出るか、米中韓の反応は如何に

2013年05月15日 | 日記
日本の男を喰い尽くすタガメ女の正体 (講談社プラスアルファ新書)
クリエーター情報なし
講談社


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング

●飯島内閣官房参与の訪朝は両刃の剣 吉と出るか凶と出るか、米中韓の反応は如何に

 政府が、安倍晋三のウルトラ右翼体質を躍起になって封印しようとしている。 しかし、首相のウルトラ右翼発言を好物とする人種が“寝た子を起こそう”とこちらも躍起になって“本音で行きましょう”と火に油を注いでいる。ニュートラルからリベラルに至る人種にとっては、大変面白い見世物である。橋下の政治家として忖度なき発言は、“不都合な真実”を口に出した点は評価できるが、外交防衛問題までをフィールドにする国政レベルの政治家としては、落伍者であり、地方首長が関の山だ、と白状しているようなものである。

 まぁ国会議員の中にも、到底国政レベルの政治シーンに出てきてはイケない連中が、ウジャウジャいるので、特に橋下が不適任者と名指しするのも難しい部分はある(笑)。自民党の高市早苗政調会長の“村山談話はちょっとおかしい”発言などは序の口。政府が安倍のウルトラ右翼的言動の火消しに回ろうとも、センチメント右翼の心情は、隠しおおせるものではない。自民党は腹を決めた方が見苦しくない。「我々は戦争に敗れたから、先の戦争を侵略と認めざるを得なかっただけだ。事実が侵略でなくとも、その事実を語る権利を失っただけである」。そう言えば良いのだ。

 石原慎太郎が、橋下慰安婦発言に、老成したような口ぶりで答えているが、“後出しジャンケン”が得意の男のお家芸である。そもそも、中韓との揉め事の元凶を作った張本人が、橋下の発言を「問題というかね、それはものの言い回しというかタイミングみたいなものがあるしね、あなた方の捉え方も問題があるわけだ。この問題であまり被虐的に考えない方がいいよ。」等としたり顔で語られる方が余程腹立たしい。

 本音で語り合うと方が良いと云う考えはあるが、その理屈が成り立つ前提は、双方が同じ土俵に乗っている場合の話だ。利益が相反している時や国家や文化や宗教が異なる土俵である場合は、現実的対応は“建前論”から始めるものである。充分に時間の経過を吟味した上で、“ところで”と切り出すのが、外交防衛のイロハだろう。藪から棒に、問答無用の袈裟掛けで切り捨てるのは、愚者のとるべき態度と云うことになるのだろう。

 殆どの人間が、戦場において慰安婦的存在を必要悪と考えている部分は、歴史的な事実である。しかし、それを敢えて口にするかしないか、そこが外交とか儀礼の肝であり、それを赤裸々に語ってしまっては、世界は年がら年中、戦争に次ぐ戦争になっているに違いない。敗戦国の目印をつけられている我が国としては、心情的に間尺に合わない事を選択させられている事実はあるだろう。しかし、その状況から脱する為に、本音で強がりを言ってもはじまらない。戦後から六十有余年、そのトラウマから抜け出すチャンスは幾度か訪れたはずだ。また、国会意志が同一方向を目指していれば、20年スパンで世界に訴える手立てもあっただろうが、金に目がくらんだ国家や国民は、自分達の意志決定を対米依存で切り抜けようとした。正直、今さらどうなるものか、と云う気分にもなる。

 しかし、いつか始めなければ、永遠に自立は入手できない。だからと言って、急激に米国との対等を叫んでも同調者は少ない。それが日本人のDNAと云うか、過激なのは駄目なのだ。故に、美しい言葉に化粧された政策などに、速攻で騙される。半分は、騙されても、必要以上に自分が関わらないでいることで、その難から逃れようとする。それが、基本的な日本人なのである。ところが、この日本人、短絡的な発言や出来事には、痛く敏感なのも特長だ。所謂、感情的に噴き上がるわけだ。この愚民の敏感さを目覚めさせる仕込みを飯島勲と云う胡散臭い男が北朝鮮に飛んだ。

 そもそも、かくなる御仁が安倍内閣の内閣官房参与となり、官邸に入った時点から、飯島の行うべきことを行っただけで、特段騒ぎ立てする事でもない。しかし、日本政府と北朝鮮政府が、拉致問題に関して何らかの取引をしたとなると、単に悦ばしい事態だと言えるのは市民レベルの立場でのことであり、米中露韓との6カ国協調とは齟齬を来す可能性も秘めている。7割もの圧倒的国民の支持を得ていると言われている安倍政権が、なにゆえ、このような時期に、このような危険な行動に出たのか、不可思議な面が大いにある。

 やはり、アホノミクスの馬脚が現れてきた恐怖に気づいたのかもしれない。マスメディアと“ニギリ”を交わし、捏造支持率は確保したものの、なにせ捏造なのだから、実は夜も眠れない。アホノミクスが期待上の円安株高を演じている。しかし、それがどれ程実体経済に波及するのか、内閣自体が半信半疑の筈である。そんな中で、長期金利が俄然上がり続けている。下がる筈の金利がビビるほど上がっているのだ。浜田に聞いても、竹中に聞いても、“はて?何故でしょう、こんな筈ではないのですが・・・”これでは夜も眠れないの当然である。

 こうなると、ヘタレと云うもの、安心できる材料をしこたま抱えたくなるものである。それが飯島の北朝鮮訪問である。勿論、行った以上、何も持たずに行くわけはないし、何も持たずに帰ってくる事もない。おそらく、何だか訳のわからん怪僧が、総連ビルを落札し、期日までに落札残金を支払えず、保証金5億円余りをふいにしてしまった総連ビルの確保が目玉の取引材料にはなるが、拉致問題の進展解決金にしては、45億円は安すぎる。この総連ビル確保くらいなら、在日朝鮮人が奔走すれば作れる額である。仮に、一応尤もらしい取引材料にはなるが、裏金として、遥かに高額な資金が北朝鮮に渡されるのだろう。

 拉致被害者家族はそれなりに歓ぶだろう。しかし、おそらく、その進展はまだら模様で、拉致被害者家族の間に亀裂が生まれる原因となるかもしれない。拉致問題では、満点を取ることは不可能に近い問題提起になっている点が悩ましい。勿論、事の成り行きは未だまったく判らないわけだが、外交上は結構波紋を投げかける結果になるかもしれない。米中露韓、特に米国と韓国にとって、あまり愉快な安倍政権の外交とは受け取らないだろう。この問題を事前に米国と協議した形跡はないので、安倍晋三のウルトラ右翼姿勢と、リアリストな外交姿勢に驚きと怒りを感じるに相違ない。

 中国が謂わば暗黙の了解で、北朝鮮に或る程度の生命維持装置的な援助をする事は、国際的に一定の理解が得られている。韓国にも同様のことが言えるのだが、開城工業団地の閉鎖に伴い、裏のような表のような経済支援は途絶えている。しかし、日本の拉致問題解決が、どれ程「日米中露韓」の間で共通の認識になっているか、甚だ疑問である。つまり、6カ国協議における共同歩調と拉致問題の解決方法は、その整合性が問われるわけだ。特に、安倍政権が、対中、対韓で、必ずしも親和的でないメッセージを多量に発信した中での、この飯島の訪朝である。

 飯島内閣官房参与の手練手管が通用して、成功裡に事が進んでも、手放しで安倍晋三は歓べないかもしれない。ウルトラ右翼が金にモノを言わせて、問題を解決したとなると、それはそれで整合性の齟齬と云う外交上の問題を誘発する。北朝鮮のメディアは、なぜか飯島内閣官房参与の訪朝を写真入りで、これ見よがしに報道している。“米中韓と日本の分断に成功”等と云う見出しがついているかどうかは判らない。表向き、米国政府との事前打ち合わせはなかったようだが、裏側では何らかのOKサインが出たと考えるのが妥当だ。前回の米国抜きの小泉訪朝に不快感を表した米国政府の記憶がないわけではないだろう。

 類は類を呼ぶというが、結局安倍晋三は、安倍晋三と云うアイデンティティーに右翼性向を持たざるを得ない人物であり、そのような安倍晋三を慕って集まってきた安倍シンパに、持ち上げもされたのだから、引き摺り降ろされる時も、彼らシンパの力によるのだろう。いずれにしても、飯島内閣官房参与の訪朝は、一連の橋下徹や高市早苗発言より、重大な意味合いがあり、参議院選、安倍内閣の命運を占う意味でポイントになる。そうもう一つの懸案、国債下落・金利上昇もアキレス腱になるだろう。

戦略論の名著 - 孫子、マキアヴェリから現代まで (中公新書)
クリエーター情報なし
中央公論新社


 励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


どうするアホノミクス! 金ジャブジャブで、金利を下げるンじゃなかったのか!

2013年05月14日 | 日記
対米従属を問う 北方領土・沖縄・マスメディア
クリエーター情報なし
旬報社


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング

●どうするアホノミクス! 金ジャブジャブで、金利を下げるンじゃなかったのか!

 筆者も想像してなかった、アホノミクスの激烈な副作用が出てきた。市中金利が、5月に続き、6月も上がると云う怪現象が起きている。マネタリストの浜田宏一や竹中平蔵は、異次元の金融緩和で、市中金利を限りなく下げて、経済活動を活性化し、経済浮揚に結びつけると云う理屈ではなかったのか。朝日は以下のように報じている。円安だ!株高だ!とマスメディアがアホノミクスを喧伝し続ける、その直ぐ横道で、借金地獄が始まろうとしている。

≪ 長期金利急騰3カ月ぶり0・8%台 日銀の思惑とは逆に
 【長崎潤一郎、湯地正裕】13日の東京金融市場では、円安・株高が進む一方で、長期金利が急上昇し、一時年0・800%と約3カ月ぶりの高水準となった。日本銀行は過去最大の金融緩和で金利を引き下げ、お金を借りやすくして経済を活性化しようとしている。しかし思惑とは逆に金利は上昇しており、景気を冷やすおそれがある。
 長期金利の指標になる満期10年の国債の流通利回りは一時、前週末の終値より0・110%幅高い0・800%と、2月6日以来約3カ月ぶりの水準まで上昇(価格は値下がり)した。13日の終値では、同0・1%幅高い0・790%だった。長期金利が、1日で0・1%幅で上下するのは異例の大きさだ。
 そもそも、日銀は4月4日に打ち出した大規模な金融緩和を通じ、金利をさらに下げ、銀行から個人や企業への貸し 出しが増えることを狙っていた。
 ところが、日銀の緩和発表前は0・5%程度だった長期金利は、乱高下をしたあと、上昇傾向を強めている。13日に0・8%まで上がったことで、すでに0・3%幅上がった計算だ。このままだと、大手銀行が、「住宅ローン金利」や「企業向けの貸出金利」を5月に続き、6月にも引き上げるのは必至だ。
 13日に長期金利が急上昇(国債価格は下落)したのは、「値上がりが見込める株式市場へ資金を回すため、国債を売る動きが強まった」(大手銀行)ためだという。市場では、金融機関が国債を売る動きを強めているとの観測も出て、売り注文がさらに広がった。
 一方、株価は13日は上昇した。日経平均株価の終値は前週末より174円67銭(1・ 20%)高い1万4782円21銭で、2007年12月28日以来約5年4カ月ぶりに1万4700円を上回った。
 13日の外国為替市場では、早朝のシドニー市場で一時、2008年10月以来4年7カ月ぶりとなる1ドル=102円15銭まで下げた。午後5時時点は、前週末の同時刻より26銭円安ドル高の1ドル=101円62~63銭。≫ (朝日新聞デジタル)

 このような珍現象は、朝日新聞も言及しているように、株式市場が好調過ぎるからだが、長期国債の不人気が黒田日銀発言以降、続いていた土壌も加味した方がいい。野田民主の11月中旬辺りでは8,500円前後をウロチョロしていた日経平均が、昨日の段階で14,782円と7割以上値上がりしているのだから、安定投資である国債の保有割合を、株式に振り向けている事実は、納得がいく。そもそも、企業が積極設備投資に向かうことは懐疑的だった。仮に、設備投資の可能性があっても、それは活性化している企業の話で、尚且つ彼らには、内部留保と云う財布が残っているので、有利な借り入れであっても、特に必要でもなかった。

 この株高の金利上昇と云う珍現象は、株バブルに踊る人々と何ら関係のない、変動金利で住宅ローンなどを組んでいた人々や借金経営の中小零細企業を直撃するだろう。銀行など金融機関に対し、資金繰りに苦しむ中小企業の返済猶予に応じるよう求めた時限立法・中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)が、この3月に期間を終了しているのだから、泣きっ面に蜂である。このモラトリアム法は、個人向け住宅ローンの返済猶予も対象としていた。景気悪化に伴う賃下げや失業、病気などの理由で返済に窮する債務者に対して、元金返済はひとまず置いておいて、利息分だけを支払えばいいという救済措置である。その 返済猶予額は約3兆6000億円に上る。

 つまり、元金の返済猶予を得て、一息ついていた庶民が、督促の嵐に見舞われ、トンデモナイ借金地獄に出遭う危険が、更に増大されることになる。かなり重大な社会問題となる可能性があるだろう。仕事があるのに、借金の元金返済で苦慮する。まして、その金利が、特異な現象のトバッチリを受けて1%程度上がるとなっては、対処のしようがなくなるだろう。最近では、株への投資が、宝くじ等々を買うよりも、キャピタルゲインが大きい、と云うことで1割近く宝くじの売り上げが落ちているそうである。

 最も怖ろしいのは、10年物国債の価格の下落は、借入金利が上がるわけだから、国家財政に重大な影響を及ぼす。つまり、円安、株高演出のアホノミクスが、日本国債への信認を貶め、最終的に、予算の中から国債の利払いをするわけだから、予算の歳出に占める国債の利払いが増加し、プライマリーバランスを著しく崩す危険が出てきている。要するに、ファンダメンタル上あり得ない経過を通じて、日本国債の信認が薄れ、最悪、あり得ない筈の日本国債のデフォルトと云う事態を招くかもしれない。

 現在の株バブルが顕著になる以前から、国債の入札状況が芳しくなくなっていた。銀行が長期の国債を売って、短期の国債にチェンジする動きが強かった。機関投資家である生保や損保も、日本国債よりも、外国債(米国債)か株式へとシフトしていた。企業年金も外国債投資を増やしている。理由は、外債(米国債)の方が利回りが良いからだが、今後は株式への比率を引き上げるとなれば、長期国債の価格は下がり続け、金利は上がり続ける。勿論、日本の長期国債が利回り1.5%レベルになれば、長期国債を買う動きも出てくるが、今度は国家予算が成り立たなくなる。

 最近の国債市場は、値幅制限を超える価格の乱高下が噴出、俗にいうサーキット・ブレーカーが何度となく発動されている。こんな調子だと、日銀しか日本国債を買う人間がいなくなり、財政ファイナンスだ!為替操作だ!と世界から指弾を受け、国債格付けを二段階下げられ、急峻な金利上昇を招き、ハイパーインフレの危機まで想定の範囲になってきた。円安だ~、企業業績回復だ~、PERなど気にせず、期待値で買い捲る株高現象。素人から見れば、円安・株高が、絶対神のように見えるのだろ。その結果、アホノミクスの政策がグットジョブ!と歓ぶのだから、おめでたい限りである。


安倍政権と日本政治の新段階 新自由主義・軍事大国化・改憲にどう対抗するか
クリエーター情報なし
旬報社


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


“慎重な上にも慎重に化けるつもり”の安倍首相 “頭隠して尻が出ている”

2013年05月13日 | 日記
対米従属を問う 北方領土・沖縄・マスメディア
クリエーター情報なし
旬報社


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング

●“慎重な上にも慎重に化けるつもり”の安倍首相 “頭隠して尻が出ている”

 自民党が束になってウルトラ右翼・安倍晋三様の正体を隠そうと必死になっても、そもそも情緒的な右翼なのだから、一挙手一投足に、その心情が表れる。読売は以下のように、トピックスで報じたが、速攻トピックスから削除した。

≪ 安倍首相、ブルーインパルス乗り込み上機嫌
安倍首相は12日、東日本大震災で被災した宮城県東松島市の航空自衛隊松島基地を訪れ、隊員を激励するとともに、曲技飛行隊「ブルーインパルス」の飛行を視察した。
 首相は隊員約500人を前に「復興の加速化は私の使命だ。先頭に立って希望あふれる東北をつくり上げる」と述べたうえで、「ブルーインパルスの雄姿は希望の象徴だ」と強調した。
 松島基地は大震災で津波などの被害を受け、滑走路や格納庫が使用不能となり、ブルーインパルスは芦屋基地(福岡県)に拠点を移していたが、今年3月末に帰還が実現した。首相は飛行視察の前、自らブルーインパルスのT4練習機の操縦席に乗り込み、ご機嫌な様子だった。≫(読売新聞)

 先日の戦車乗り込みといい、今回のインパルス操縦席搭乗といい、胸騒ぎでもするのか、ついつい乗ってしまうのだろう。昨日は、操縦席におさまり、親指を立てる仕草も入り、サービス満点、上機嫌だったようだ。昭恵夫人は、内助の功のつもりで、フェースブックに“韓国のミュージカルを鑑賞した”などと書き込み、批判的コメント殺到にもめげず、日韓の緊張を和らげようと努力しているのにである。それにしても、周りが必死に火消しに回っているのに、飛行機の操縦席で指を立てることはないだろう。

  小泉進次郎は「安倍晋三首相は改憲を争点にしたいだろうし、自民党は憲法改正を党是として掲げている。それは理解する」しかし「被災地の方々には響かないだろう。憲法改正の前に目の前の生活がある」と改憲よりも生活だと云うブラフを奏でている。菅官房長官も首相の“村山談話否定発言”を事実上修正した。民放テレビに出演した首相は、「慎重に慎重に、もう少し慎重になれとみんなから言われている。慎重に実績を着実に残していく」と慎重を強調したが、ここで言う首相の「慎重」とは、“正体がばれないように振舞う”と云う意味である。

 筆者は別に右翼民族主義であることが、イケナイと言うつもりはない。その人なりの、政治的思想や信条があるだろう。ただ、安倍晋三と云う個人と内閣総理大臣と云う職責に居る時の安倍晋三は、同一人であるが、同一な振舞いをすべきではないのである。特に、外交防衛に関わる場合は、その使い分けが重要になる。本音を徹底的に抑制する胆力が求められるのが、一国の総理大臣の資質である。勿論、最近の小泉や麻生や鳩山、菅、野田を見ていたら、絵にかいた餅のような話だが、内閣総理大臣は絶対に、自分と首相と云う二つの人間を演じ切る度量が必要だ。

 兎に角、自民党は安倍の憲法改正意欲を封印させようと躍起になるだろう。「生活・景気・経済」で、準国政選挙と位置づける東京都議選(6月14日告示、同23日投開票)を乗り切ろうとしている。しかし、それまで安倍晋三の心情右翼資質が封印されるとは思わないし、野党側から、安倍の心情に挑戦するような発言がぶつけられる度に、苛立ちが募るに相違ない。“機をみて敏”な橋下徹が、早速“改憲で自民党との差別化をはかる”と発言し、自民党憲法改正草案は「危険だ。公権力を強く出し過ぎていて怖い。少なくとも僕ら世代以降は共感を得られないのではないか」と喧嘩上手なところを見せている。

 昨日のコラムで、争点過多が、逆に争点隠しになってしまう心配をしたが、自民党が逃げ腰になっても、追い詰める争点は、主に「憲法論議、改憲の是非」と「TPP参加問題」だろう。特に憲法問題、これが本命となり得る。一番の理由は、「憲法改正」が安倍晋三の心の琴線に触れるからである。幾分卑怯と戦法と云う印象もあるが、敵が正体を隠して、慎重に慎重に、と云うスタンスなら、その正体を炙りだすのが、野党の務めと考える。小沢一郎の選挙戦術が正攻法なのは判っている。しかし、相手側が斜に構えて、落とし穴や、めくらまし戦術に出てきている以上、正攻法だけでは駄目だろう。少なくとも、生活の党は、党の存亡をかけた闘いに挑んでいるのだから。

 現在の民主党に、僅かな希望も抱いてはいけない。あの政党は、もう政党ではなくなっており、残された選択は、参議院選敗北後、内部留保金の争奪合戦と云う醜悪なバトルの末に、分裂(分党)するしかないだろう。そんな政党の行動力を期待する事は愚か過ぎる。来る都議選も不戦敗は拙いよな、と心配していたら、港区で元日本新党都議の菊地正彦氏(60)、板橋区に新人の小幡健太郎氏(35)、西東京市に山口 あずさ氏(51)の3人を擁立した。東京での戦いは厳しそうだが、応援演説と云うチャンスも生かし、「生活の党」の党名浸透の機運にすべきだ。

 また、小沢の憲法論をもう少し広める方法も講じなければならない。近々、筆者もコラムで取り上げよう、とは思っている。どうしても、生活の党は、小沢一郎のカラ―に染まってしまう議員が多いのだろうが、強烈な皮肉交じりであったり、真っ向から攻撃的に否定するなど、キャッチコピーは刺激的である必要を感じる。百術は一誠にしかず、と言われると困るのだが、現代は誠実さだけでは、誠実さが伝わらない時代だと云う、認識も必要な気がする。小沢一郎にとっては、不快な解釈だと思うが・・・。


自衛隊と戦争 ~変わる日本の防衛組織 (宝島社新書)
クリエーター情報なし
宝島社


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


参議院選の争点、まだら模様 バラケタ政治課題、野党分断を強烈にあと押し

2013年05月12日 | 日記
安倍政権と日本政治の新段階 新自由主義・軍事大国化・改憲にどう対抗するか
クリエーター情報なし
旬報社


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング

●参議院選の争点、まだら模様 バラケタ政治課題、野党分断を強烈にあと押し

 今やフェスティバルになってしまった先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議だ。7カ国が、それぞれの国内の状況の範囲で、金融緩和と財政出動を行いたい腹積もりなのだから、牽制球は投げるだろうが、致命的攻撃性を発揮し、自縄自縛に嵌らないよう注意深く望む会議など、もう糞の役にも立ちそうにない。結局、共同声明と云うかたちには至らず、顔見世興行に終始した。日本のように、無謀な財政出動に舵を切る馬鹿も少なく、頼るのは金融緩和策だけなのだから、日本の黒田の異様な金融緩和を口汚く罵れないのが実情だ。

 だからと云って、日本の経済政策が正しいと言われているわけではない。原爆投下ではないが、放射能の影響リサーチのような按配で、欧米諸国が、日本の経済政策の実験結果を、固唾を飲んで見守っていると見るべきだろう。それよりも、世界同時金融緩和が引き金になり、資産バブル現象の再来が懸念されているわけだが、打てる処方箋が金融緩和だけになっている世界経済そのものの問題点をえぐり出し、議論する気力も失っている。つまりは、資本主義の限界と云うか、人類発展の踊り場が訪れている事を告げられている筈なのだが、「経済成長」と云う言葉のトラウマから脱却しようと云う、勇気あるリーダー国家不在の時代が到来したと云うことだろう。

 ところで、国内に目を向けてみよう。昨日のコラムでも言及したように、安倍晋三の、米中韓における評判は、すこぶる悪くなっている。今後、安倍晋三はウルトラ右翼的言動を封印させられ、噴き上がり無教養右翼の応援団が両刃の剣となり、取扱いに苦慮するに違いない。昔であれば、まさに天誅の最良のターゲットにおさまるところだった。オバマや米国議会の空気が漸く理解できた安倍は、改憲が己の政治生命、否、肉体的生命さえ危うくするものだと気づいたようである。改憲に意欲はトーンダウン、参議院選の争点は「生活・景気・経済」だ語り出した。昨年の柳の下でお茶を濁そうというわけだ。

 自民党全体としては、もう都合の悪い「TPP」議論からは遠ざかりたい一心で、「TPPは決着した」と云う線で公約をまとめようとしている。余程、TPPが俎上に乗ることを嫌っているようだ。つまり、不都合な真実を幾つも抱えている証拠である。米軍基地問題や原発再稼働問題や憲法改正も争点にされては堪らない。何としても「生活・景気・経済」に選挙の争点を収斂させようと躍起になっている。民主党の馬鹿どもは、今さら「年金改革」を争点化しよう等とピントはずれな“昔の名前で出ています”みたいなことを言い出している。そりゃたしかに国民にとって重大な問題である。しかし、時節柄(笑)、年金改革云々を叫ばれても、ノリノリな気分に有権者がなるとは思われない。時事は以下のように報じている。

≪ 参院選、年金改革を争点化=民主が全国幹事長会議
 民主党は10日、全国幹事長・選挙責任者会議を党本部で開き、夏の参院選で掲げる公約を中心に協議した。細野豪志幹事長は「年金改革は大変重要だ」と述べ、年金の抜本改革を含む社会保障制度改革を重要争点に据える方針を表明した。  細野氏はこの後、記者団に「民主党は所得の低い人に安定的な年金制度をつくる。政権との考え方の違いをしっかりと国民に示す」と強調。また、「第1次安倍内閣が崩壊したきっかけは『消えた年金問題』だった」として、民主党が年金抜本改革を訴えて大勝した2007年参院選の再現を目指す考えを示した。 
 執行部が提示した公約原案は、憲法と環太平洋連携協定(TPP) について「議論を継続中」と対応を明確にしていないため、出席者から「急いで対立軸を示してほしい」との要望が相次いだ。憲法改正手続きを定めた96条に関し、「先行改正に慎重」とする党見解には異論は出なかった。
 会議には海江田万里代表も出席し、「昨年末の衆院選の反省の要は、分裂は敗北、団結は勝利ということだ。勝利に向けて心を一つにしたい」と結束を呼び掛けた。≫(時事通信)

 民主党は、まさに救いようのない政党になってしまったようだ。TPPも憲法改正も党方針を明確に出せなくなっている。政党の体をなさなくなった、と言って良いだろう。そう言えば、この同じ民主党の菅・枝野・長妻が「公開大反省会」と銘打って、3年3カ月の総括をしたが、もうどうにもならない最悪と醜悪を曝け出した。菅は、自民党や官僚の批判に終始し、トドノツマリには「小沢は酷かった」で総括を締め括っている(笑)。反省どころか、言い訳と責任転嫁と悪口。こんなのが内閣総理大臣だった(笑)。挙句に参加者は30歳以下の若者のみで、尚且つ参加者が直に菅らに質問も出来ず、何のために開いた「公開大反省会」なのか、まったく意味不明にお開きになった。

 この調子では、7月の参議院選は「争点の過多、ゆえの争点なし選挙」に突入する危険が生まれてきた。日本維新やみんなの党から出てくるものも限られ期待薄となると、「生活の党」が率先して、選挙の争点を明示する必要が出てきたようである。小沢の今までの発言を聞く限り、率先する流れではないが、民主党の状態が政党の態をなしていない以上、生活の党とみどりの風が、参議院選の争点を、自民党が嫌がるかたちで、無理やり争点化させる手立てを講じなければならない。

 安倍が最終的に逃げ込んだ「生活・景気・経済」も、切り口によっては「争点化」出来る。自民党憲法改正草案も叩けば埃だらけだ。TPPも決着などしていない。潔くはないが、不安を煽る必要もある。最高に切り口満載になるのが、安倍内閣が打ち出す「成長戦略」の数々だ。国民の家畜化政策だったり、女性に産めよ増やせよ、働けよ政策だったり、国民を奴隷と家畜にしてしまおうと云う試み成長戦略になるのは確実。以上のファクターを結びつけ、ストーリーを作ることだ。そうすることで、自民党と云う政党の姿が浮き彫りになる。難しくなく、誰にでも理解できるストーリーを創作するのだ。

 直近の金融緩和・財政出動に成長戦略。そこにTPPと原発再稼働・輸出を加味し、安倍晋三の右翼的言辞をエッセンスに加え、東アジアの緊張に油を注ぐ右派的傾向。最後の締め括りに基本的人権より国家を大切にしようと云う憲法改正の本意を糾弾、必ず安倍自民党を窮地に追い込む物語が書ける筈だ。バラバラの争点ではなく、「ストーリー型争点」を持たせることだ。そのヒントとして、筆者なら「日本むかしばなし」の構成を参考にする。生活の党に、そう云うスタッフはいないのだろうか。まぁ、そういう準備を怠らず、最後の最期に「マスメディアの選挙の争点は…」と云う争点操作の動きを見て、突っ込みどころを変幻自在な状態にしておく必要がある。先の衆議院選では、脱原発が争点外しに合い、手ごたえのない選挙戦をせざるを得なかった。野党は、選挙争点へのフレキシブルな対応能力を準備しておくべきだ。


知らないと恥をかく世界の大問題4 日本が対峙する大国の思惑 角川SSC新書
クリエーター情報なし
角川マガジンズ


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


“米国の威を借る晋三”虎から三行半を突きつけられ右往左往 どうする自民党

2013年05月11日 | 日記
2030年 世界はこう変わる アメリカ情報機関が分析した「17年後の未来」
クリエーター情報なし
講談社

励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング

●“米国の威を借る晋三”虎から三行半を突きつけられ右往左往 どうする自民党

 おいおい、朝日新聞どうなんてンだ!以下は朝日新聞デジタルの23時半現在のサイトの見出しと記事だ。

3月期決算、営業利益計9%増 円高・株安追い風に  
 【湯地正裕】10日に発表のピークを迎えた上場企業の2013年3月期決算は、円安、株高を追い風に業績回復が鮮明だ。本業のもうけを示す営業利益は前年より1割増のペース。まずは自動車など輸出企業への恩恵が際立っているが、雇用や賃金も含めた経済全体への波及が今後の焦点となる。
 東京証券取引所に上場する370社余りが決算を発表した。 1日あたりでは最多だ。SMBC日興証券の集計では、東証1部上場の606社(9日までの発表分で集計対象の45・ 9%)の営業利益の合計は前年比9・0%増。12月までの9カ月では0・6%減だったが、年明けの3カ月で1年を通じたプラスに転じた。
 安倍政権の経済政策アベノミクスに沿った「黒田緩和」で円安が進み、輸出企業のもうけが増えた。海外での販売や、輸出が多いトヨタ自動車など乗用車8社には計約2500億円の利益上乗せ効果が出た。証券業界は円安がもたらす株高にわき、金利の先高感からマンションや戸建て住宅の販売が活気づいた。
 とはいえ、中国の景気減速のあおりを受けた鉄鋼や繊維などは振るわない。円安は原材料の輸入にマイナスにもなる。好決算が雇用や賃金に及んで暮らしを潤すかどうかはこれからだ。
 SMBC日興の集計では、14年3月期の見通しは売上高9・1%増、営業利益30・4%増と強気だ。1ドル=90~95円で経営計画をたてている企業が多く、伊藤桂一アナリストは「いまの為替水準が続けば業績はさらに上ぶ れするだろう。ただし円安になり過ぎれば、原材料を海外から仕入れる企業へのデメリットが広がる懸念がある」 と話す。≫(朝日新聞デジタル)

 注:11日0:30確認。シラバックレて、訂正してあるぜ!(笑)

 筆者が捏造した見出しではない(笑)。正真正銘、朝日新聞デジタルサイトの見出しである。「円高、株安が追い風に」?「円安、株高」の間違いだと思うが、筆者の頭が変なのだろうか?記事の中身は、あきらかに円安株高を賞賛しているのだが、このコラムを投稿する頃には訂正しているかもしれないが、23時50分現在変わっていない。あっちでもこっちでも、嘘八百や禅問答のようなムニャムニャ発言が横行しているからといって、天下の朝日にはあり得ない、大チョンボなのだろう。安倍晋三の言動が、大チョンボの連続なのは納得だが、この朝日新聞の見出しも、安倍晋三のメチャクチャを真似たのだろうか。時の政府の出鱈目を真似れば、理に適っているが、少々酷過ぎやしないかね。

 そうそう、安倍晋三様のタカ派の“正体見たり枯れ尾花”の話だった。ただ、朝日のあまりの見出しに、のっけから脱線してしまった。以下は、苦渋の説明に終始する、菅と云う官房長官の会見での発言だ。

≪ 村山談話すべて踏襲…菅長官、首相答弁を修正?
 菅官房長官は10日の記者会見で、「過去の植民地支配と侵略」を謝罪した1995年の村山首相談話について、「歴代内閣と同じように全体を引き継ぐと申し上げている」と述べた。 村山談話を巡っては、安倍首相が4月22日の参院予算委員会で「安倍内閣として、そのまま継承しているわけではない」と答弁したことが海外で波紋を呼んでおり、事態沈静化のため、答弁を事実上修正したとみられる。
 これに関連し、自民党の石破幹事長は10日のTBS番組の収録で、「首相自身は、戦前の肯定や美化は夢にも思っていない。実際にそう思われているならば、(誤解を)解く責任は我々にある」と述べ、政府・与党が真意を説明する必要があるとの認識を示した。公明党の山口代表も名古屋市内での講演で、 「村山談話は政府の公式見解で、(首相は)自分もそう思うと国会で言っている。真意はきちんと説明する必要がある」と語った。≫(読売新聞)

 嘘八百も程々にして貰いたいものだ。「首相自身は、戦前の肯定や美化は夢にも思っていない。実際にそう思われているならば、(誤解を)解く責任は我々にある」じゃなくて、安倍は村山談話に関して「安倍内閣として、そのまま継承しているわけではない」と答弁したのは間違いない事実。米国議会の調査局が安倍は国粋主義者で帝国主義日本の侵略やアジアの犠牲を否定する歴史修正主義に傾倒している。安倍首相の歴史認識は米国の国益を害する恐れがある、と指摘した問題で、菅は9日にこの問題について、「誤解に基づくものだろう」「レッテル貼りではないか」と取り繕ったばかりではないか、また修正とは片腹痛い(笑)。

 何という情けなさだ。真正右翼なら、国粋主義者として初心を貫徹したらよかろうものを、もうグタグタで外交上はノックダウンだ。こんなヘタレ、似非右翼に国家の舵取りなどさせておいたら、穴の毛を抜かれても、未だ毛は残っています、と何を差し出すか判ったものではない。本当の話、このような醜態は、あの最悪の菅政権、野田政権でも見なかった、ドタバタである。日本の外交が恥辱に塗れた、と言っても過言ではない。慎太郎の玉砕も似たように米国依存の国粋主義、なんとも奇妙な按配だ。

 昨日も書いたが、≪狂牛病リスク牛も輸入緩和、原発技術は日本が引き受けます、辺野古の海は必ず埋めてみせます、農業を犠牲にしてもTPP受け入れます、集団的自衛権行使喜んで行います。等などと、米つきバッタの隷属態度で恭順の意を示したのだが、オバマは白い歯をむき出しにして、歓ぶ態度は皆無だった。≫安倍にしてみれば、マスメディアの報道のように訪米は大成功に推移した、と何処かで勘違いしたのだろう。官邸に、安倍を陥れる姦計の存在さえ感じるほどだ。実のところ、筆者は、安倍晋三はヘタレでも似非右翼でもなく、只の馬鹿だと思っているのだが、その方が好意的解釈だとさえ思えるのだ。ついには、参議院選の争点は生活と経済だ等と寝言を言いはじめた。

≪ 改憲「最初は慎重に」=参院選争点は生活・経済-安倍首相
 安倍晋三首相は10日夕、フジテレビの番組に出演し、 憲法改正手続きを定めた96条の改正について「3分の2(以上)の賛成の議員を集めても国民投票で過半数を取らないと意味がない。最初の改正は慎重にやっていかなければならない」と述べ、国民の理解を得ながら丁寧に進める考えを強調した。
 公明党が96条の先行改正に慎重なことに関しても「信頼関係を保つためにも丁寧に説明しながら議論したい」として、重ねて配慮を示した。
 首相は夏の参院選の争点について、「生活、景気、経済」を挙げ、 経済再生に重点を置いてきたこれまでの方針を堅持する意向を表明した。 
 一方、ロシアとの平和条約締結交渉に関し、6月の主要国首脳会議(サ ミット)や10月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合などの機会を利用してプーチン大統領と会談し、前進を図りたいとの意向を示した。≫(時事通信)

 多分、これで「96条改憲」の話は消えたようだ。筆者が何度も言っているように、大戦後の戦勝連合国が容認した日本国憲法を改正するには、米国の凋落が確定するまで不可なのである。瑣末な問題で、米国に恭順の意を示したからと言って、「敵国条項」と云う重しは、憲法並に重要なファクターである。威勢の良い事を言った挙句に、尻尾を巻くのなら、初めから口にするものではない。鳩山の場合、方向は逆向きだっが、似たような目に遭っている。アメリカと対峙する問題は、沈思黙考を旨とし、問題の次元を吟味し、何食わぬ顔で実力をジワジワ身につける以外ないのだ。

  まぁこれで改憲論議はご破算になった。おそらく、安倍晋三の命運はほどなく消える予感さえある。ここまで、徹底してこき下ろされた日本の内閣総理大臣は存在しない。裏の暴力装置、司法の暴力装置にやられた首相や政治家はいるが、これ程公式に卑下された内閣総理大臣は憲政史上初である。さぁ、自民党はどのような動きをするのだろう。このまま、安倍晋三をリーダーとして政権を動かすことは、相当の危険と隣り合わせになった。どんなに、安倍や菅が、言辞を弄して取り繕うと、米国からのアンチテーゼを払拭することは不可能になった。自民党の領袖のお手並み拝見と、高みの見物をさせて貰うとしよう(笑)。

 お調子に乗って、ズッコケルとは、まさにこの様な事を指して言う。アメリカなんて怖くはない!と言い張る政治家も悪くはない。しかし、アメリカに愛されると思っていたら、目一杯嫌われてしまったお妾さんの運命は如何なるのだろう。幾ら軌道修正しても、安倍晋三に捺された烙印は、流人の刺青同様に消えることはない。まだ、米国に逆らえないのであれば、すごすごと総辞職するのが身の為である。そういう面では、衆参W選は意味深な言葉である。元気を必死に演出するのも疲れたであろう。ゆっくり静養した方が良い。命あっての物種だよ、安倍晋三様。そうそう、新大久保の“ヘイト・スピーチ”の在特会が姿を消すかどうかも要観察だ。ヤラセの指揮指導の存在の有り無しが判明する。 ウルトラ右翼たちの盛り上がり、噴き上がりを、どのように鎮めることが可能なのか、見ものである。


最後の小沢一郎
クリエーター情報なし
オークラ出版


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


韓国パク大統領に負けた日本の安倍首相 日本の役目は円安株高でタップリ太ること

2013年05月10日 | 日記
憲法の創造力 (NHK出版新書 405)
クリエーター情報なし
NHK出版


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング

●韓国パク大統領に負けた日本の安倍首相 日本の役目は円安株高でタップリ太ること

 昨今の政治的話題は、憲法96条改正の是非とオバマの対日、対韓の温度差に集中しているようだ。今夜は、憲法96条改正と云う、本末転倒の馬鹿話はさておき、週刊誌やテレビワイドショー向きな、パク韓国大統領の厚遇と安倍日本首相の冷遇の話題を取り上げよう。はじめに、ネタをばらしてしまうが、パク大統領は韓国の元首であること。安倍首相は日本の元首でないこと。この二つの事実を認識しておけば、官々諤々議論すること自体ナンセンスなのである。世界各国の外交慣習として、日本の元首は、憲法上象徴だが、日本の天皇だと云う認識が定着している。つまり、扱いの差は、基本的に元首であるかどうか、と云う次元の問題になる。

 単純な日本人から見れば、狂牛病リスク牛も輸入緩和、原発技術は日本が引き受けます、辺野古の海は必ず埋めてみせます、農業を犠牲にしてもTPP受け入れます、集団的自衛権行使喜んで行います。等などと、米つきバッタの隷属態度で恭順の意を示したのだが、オバマは白い歯をむき出しにして、歓ぶ態度は皆無だった。パク大統領は議会で演説させて貰ったが、安倍は戦争屋右翼研究所で演説したに過ぎない。晩さん会も、共同記者会見も無しなのだから、落胆の気持も理解は出来る。

 しかし、確たる裏情報によると、安倍が差し出した多くの貢物の報酬は、尖閣問題で、中国にもひとこと言っておくので、そんなに心配しなくて良いよ、と云う一言だったと云う事だ。つまり、ヘタレなのだ。今の自衛隊なら、中国に勝てる。3年過ぎたら、もう勝てない。そんな認識の右翼首相なのである。在特会と性癖は、殆ど変わらない資質の持ち主なのだが、株高と云う現象一つで、煙幕が張り巡らされている。この煙幕が一陣の風に吹き飛ばされた時、安倍右翼首相の命運は尽きるのだろう。

 GHQに押しつけられた憲法は嫌だ。だから変えるんだ。何処を、どのように変えるかではなく、変えやすくすることが肝心だ。なんと云う短絡な思考経路なのだろう。変えやすくするのも良いだろう。しかし、何を変えるかも議論せずに、ドサクサ紛れに、株価が上がっているだけで、改憲が支持されていると云う勘違いは、拙いだろう。先の衆議院選で憲法改正は争点でもなかった。デフレからの脱却一本槍ではなかったか。現在の衆議院の国会議員は、裁判所の判断では、準国会議員扱いであり、最高裁長官までが、異例の個別訴訟に言及している。最高裁判決も、長引かせることはなく、100日ルールを粛々と実施する。これは、立法への司法からの挑戦状のようなものなのである。

 その意味では、夏の参議院選で自公維新が2/3議席を獲得し、同時に、現在の自公維新で衆議院議員2/3で憲法改正が決議されても、最高裁の判断如何では、昨年末の幾つかの選挙区の衆議院選挙無効判決が出る可能性も否定できない。こんな状況で、憲法96条改正云々など、10年早い論議になってしまう。マスメディアの世論調査の数値が本物であれば、夏に衆参W選をやってでも、憲法96条改正だけで良いから成就したい。そうすれば、歴史に改憲出来た唯一の首相の称号が得られる。麻生とのネチネチ密談も、それが実現出来たら、“アンタが次だ”と執拗に迫った可能性がある。

 ここまでウルトラ右翼を鮮明にした安倍晋三が、“リベラルで金好き”と云うオバマに好かれるとすれば、それは日本が丸々と太ることだろう。それ以外は、出来るだけ何もしない、以前のような自民党総裁であることが望ましい。本日、13時30分現在、円はドルに対して、ついに100円台に下落101円になっている。株価も442円高、14633円に達している。おそらく、この調子だと、円は105円を目指し、株価は15000円を超えることになるだろう。投機市場限定のバブルである。EU中央銀行、FRB、日銀と三者三様の金融緩和競争時代に突入の気配だ。格差は益々鮮明な人種層を作ることになりそうだ。

 こうなると、日米韓は好むと好まざるに関わらず、対中包囲網を当分続けざるを得ないようだ。元高への要請も強まるだろう。米韓FTAとTPPで、米国の富の囲い込みは功を奏しそうだ。最悪、中国が抱える米国債の受け皿が徐々に見えてきた。日本の財政状況がどれほど悪化しても、当面米国は見て見ぬふり。米国債を日本に引き受けさせる下地は整った。しかし、豚を太らせるのは良いとして、本当に豚が太るかどうか、甚だ疑問だ。日本の貿易収支が、この円安株高で改善する確証は一つもない。逆に、国際収支が恒常的に赤字の体質に向かうリスクの方が余程高い。

 この一点豪華主義な金融緩和とデフレ脱却戦術は、好景気を国民に予感させる意味では、効果的だろう。しかし、恒常的な国際収支赤字体質をより鮮明にさせ、のっぴきならない財政悪化を齎すかもしれない。冷静に見てみると、アベノミクスは日本経済を見た目で改善させ、内臓部位の本格治療を放棄したわけだから、最終的には、経済を一層悪化させる政策を打った事になる。その辺は、霞が関官僚達は、幾分気づいている。官邸も気づいている可能性はある。そうなると、安倍晋三に多くの時間は残されていない。前述したように、一内閣一政策を選択するとなれば、憲法を変えさせた内閣総理大臣の冠を取りに行こうとするだろう。


憲法を生きる
クリエーター情報なし
日本評論社


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


円安・株高を安倍は本気で経済成長と思い込み メディアは意図的な印象操作、裏で笑う

2013年05月09日 | 日記
金融緩和の罠 (集英社新書)
クリエーター情報なし
集英社


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング

●円安・株高を安倍は本気で経済成長と思い込み メディアは意図的な印象操作、裏で笑う

 もう株高が止まらない(笑)。たしかに、予想以上に日経平均が上がっている。筆者などは、4割のキャピタルゲインで大満足、手仕舞ったのだが、幾分唖然ともしている。ただ、冷静に観察すると、どうも株高は世界市場全体の事であり、特別アベノミクスだから、と云うわけではないいようだ。アメリカもドイツもアジアの株も、5割程度上昇している。つまり、世界同時緊急緩和でマネーの行き場が、株式市場に流れ込んだ、と見るのが正解のようだ。最近の相場を見ていると、円高になっても、円安になっても、無関係に株価が推移している。最近、日経やロイター等の記事には、株価上昇の要因等々、幾分過熱感を冷やそうと云うアリバイ的臭いのするものが増えてきた点は、注意を要する。

 世界中のマネーが、株式市場に雪崩を打って押し寄せている、と見るべきだ。アベノミクスで株価が上がったと云うより、世界のマネーが、為替でも、商品相場でもなく、株式市場でバブル経済を謳歌しようと云う流れが出来たのだろう。結局、先進諸国の経済は、グローバル化した結果、一国の経済政策で景気を左右する力を失ったと達観することが肝要なようである。グローバル企業の利益追求も、謂わばモグラ叩き状態であり、利益をどの市場で得ているか程度の問題であり、グローバル企業全体としての利益は、平準化されているのだ。

 そうなると、国家の政策で利益が出せず、グローバル企業のかたちでも利益が出し難い状況が出来あがりつつあるのかもしれない。つまり、まっとうな人間の営みから利益を得られなくなった世界が誕生しているのだ。そうなると、勢い強欲な食欲を満たしたいマネーは、マネーゲームの中に戻らざるを得なくなって行く。リーマンショックの再来が、今、目の前で起きているような感じだ。昨日も話したが、マネタリストの論理も通用しない世界が、既に出来あがっていた、と云うことが出来る。

 日銀を下部組織と見做してまで行った異次元の金融緩和(財政は限りなく悪化)で円安誘導だが、何と云うことはない、どんなことをしても100円/ドルの壁を突き破れない。何度挑戦しても破れない壁は、いずれ既成事実化し、上値を追う気概を失い、円高に振れることになるだろう。つまり、骨折り損というか、兵どもの夢のあととでも言うべきか、日銀のバランスシートだけに傷がつく。この金融緩和で、株高が実現したと、安倍は完璧に勘違いしている。メディアは、判っていながら、そうだ安倍自民の政策が支持された結果だと、オベンチャラを言い、陰で笑っている。

 早晩、何処かで株式バブルも清算が必要なわけで、公的年金基金などが被害を受けなければ良いと念じている。もう、PERなどからは、買えそうもない銘柄続出で、残された買い要因は、期待値と金余り現象でしかない。まぁそれでも、何処かの誰かは儲けるのだから、巡り巡って、虚偽の経済成長は演出できる。しかし、金額は伸びるが、生産数が伸びないので、設備投資意欲はまったく生まれない。生まれたとしても、安価な労働力や未開発の市場規模に合わせた国への投資に回る。つまり、国内の供給過多は一向に改善していないので、国内設備投資は総体的に増えない。当然、雇用も増えない。当然、賃金が増えるメカニズムも機能しない。

 それでも、安倍晋三は、これが経済成長だと胸を張る。どや顔丸出しで、恥じ入る素振りもない。現実の数字と突き合わせが出来ないものを持ち出し、景気回復と云うのは、論理的ではない。この世界的株式バブルと実体経済の乖離の埋め合わせは容易ではない。しかし、必ず訪れる。現実の実体経済を見なければならない日が来る。その日が、参議院選前であれば、少しは日本もラッキーだが、参議院選後であった場合、日本は悲劇の歴史に突入するのだろう。まぁ、個別企業の経営者が、それ程浮かれていない点が救いでもある。

 政治は完全に糞になったが、民間企業は、まだ味噌の方が多いのが救いだ。以下のトヨタ・豊田社長の会見の模様を読む限り、株式等の時価評価が貢献したかどうか触れられていないが、円安の貢献より、企業努力の方が企業にとっては利益に結びつくと云うことなのだろう。トヨタの場合、創業一族が健在と云う、個別の事情が日本グローバル企業の矜持を持ちうるが、サラリーマン社長系の企業では、トヨタのようには行くまい。トヨタ社長は、最後にアベノミクスへのリップサービスも忘れていない辺り、中々強かだ(笑)。

≪トヨタの豊田社長「やっと前を向ける、わくわく感を感じている」
 トヨタ自動車は8日、2014年3月期の連結純利益(米国会計基準)が前期比42%増の1兆3700億円になる見通しと発表した。リーマン・ショック前の最高益(08年3月期の1兆7179億円)の8割の水準まで回復する。円高修正が4000億円の営業増益要因になるほか、1600億円の原価低減努力などが寄与する。想定為替レートは1ドル=90円、1ユーロ=120円。同日午後、都内で会見した豊田章男社長は東日本大震災など多くの困難からの急速な業績回復を受けて「やっと前を向いていけるというわくわく感を感じている」と語った。
主なやりとりは以下の通り。  
 ――前期決算の評価は。
 豊田社長「前期は5年ぶりに単独決算で黒字になれたこと。仕入れ先、販売店、従業員などみんなの努力と執念のたまものだ。ただ本当に持続的成長ができる真の競争力が付いたかというと、スタートラインに立てただけ。やっと前を向いていけるというわくわく感を感じている」
 ――今期の想定為替レートが やや保守的だが、今期の業績見通しに対する考え方は。
 小平信因副社長「前期の営業増益(9652億円)のうち円安による効果は1500億円だけ。増益の多くは全社一丸の営業努力によるものだ。今期の業績見通しは、販売台数の増加、為替(円安)の影響を織り込む一方、市況の動向を踏まえた原材料価格の増加、研究費などの負担増も織り込んでいる。収益改善分については既にメドが付いたものだけを織り込んでいる」
 ――急ピッチで 円安が進んでいるが、国内生産300万台規模という方針はどうするか。
 豊田社長「トヨタは日本で生まれたグローバル企業。トヨタがトヨタであり得るためには、ある程度の国内生産基盤が必要で、それが約300万台と説明してきた。この考え方に一切変化はない。円高や円安など短期的な為替の動向に左右されない体質にしたいという方針にも、変化はない。生産を国内と海外に分ける考えはない。あくまでグローバル・トヨタとして競争力のある国内生産 が必要だということだ」
  ――業績回復で上がる利益をどこに振り向けるのか。
 豊田社長「もっといいクルマ作りに投入する、その一言に尽きる。それを支える人材、会社の仕組みなど色々なものだ。持続的成長ができるところに資金を投入していきたい」  小平副社長「必要な資金は効率的、積極的に使う。ITインフラの改善、整備にもしっかり投資する。技術面でも環境安全分野の技術開発など先行投資も含めて戦略的に投入する」
 ――世界各地の販売状況は。
 小平副社長「国内販売の滑り出しは順調だ。自工会の見通しよりも(トヨタは)もう少し上に行くかなと思っている。景況感が上向いているので受注も非常に堅調だ。米国は雇用が増え住宅需要が増えるなど経済が好調で(車)市場も上向いている。『アバロン』など新型車効果で販売は堅調だ。中国は経済の緩やかな回復が見られ、昨年を上回る水準を見込んでいる」
 ――設備投資額が今期は573億円増える。新工場の設置は抑制する方針ではなかったのか。
 小平副社長「新たな工場建設は既に決定しているものを除いて考えていない。今回の設備投資は円ベースでは増えるが円安になっているのが主な理由。外貨ベースで見ると前期とほぼ変わらない」
 ――前期まで日本の製造業は「6重苦」の状況だった。国内でモノづくりをするリスクを今、どう考えるか。
 豊田社長「6重苦にここ数年、相当苦労してきたのは事実だ。そんななかで石にかじりついてでも日本の雇用を守るため、原価低減、固定費のコントロールを全社一丸でやってきた。そして今、アベノミクスの下でフォローの風が吹きつつある。今後は真の競争力、持続的成長ができる雇用、そして自動車産業の基盤を作り上げていきたい」≫(日経新聞:奥貴史)

マネーの正体
クリエーター情報なし
ビジネス社


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


安倍と麻生が2時間も密談していた 悩みはマスメディアの内閣支持率への疑問だ

2013年05月08日 | 日記
経済学者の栄光と敗北 ケインズからクルーグマンまで14人の物語 (朝日新書)
クリエーター情報なし
朝日新聞出版


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング

●安倍と麻生が2時間も密談していた 悩みはマスメディアの内閣支持率への疑問だ

 昨夜のNEWSウォッチ9は、連休明けの7日東京株式市場の円安基調とアベノミックス幻想の株高を、鬼の首でも取ったように持ち上げる経済特集と見間違うほどの構成で安倍自民プロパガンダ報道に徹していた。腹立たしいので直ぐに消したが(笑)、日経平均が486円上がったのは事実だ。しかし、当然のことだが、国民の実体経済には、何ら影響しない。円安で、物価上昇が先行する筈なのに、現実は一部商品を除くと下がっている。理屈上は、日常的生活物価が先行上昇し、企業収益が上がり、賃金等に波及する筈なのだが、まったくその気配を見せていない。総体的に、物価がデフレからインフレに切り替わる理屈が機能していないようだ。マクロ経済理論の何かが狂いだしているのだろう。

 この調子だと、自由主義資本主義経済の中で、異次元の体験を日本人が味わうことになりかねないようだ。その味わいが、吉なのか凶なのか、それすらも予測できないのである。安倍晋三と麻生太郎が2時間も、ふたりでネチネチと話し込んだようである。NHKなどのTVや新聞を読む限り、安倍自民には、2時間も総理と副総理が話しこむ悩みなどない筈である。世耕広報部長の活躍もあり、一見元気を装う安倍自民なのだが、あきらかに悩みを抱えているのだ。その悩みが何なのか、想像の枠を超えることは出来ないが、かなり深刻な問題のように思える。

 安倍自民の奇妙な現象は幾つかある。マスメディアの報道にもかかわらず、奇妙な現象がある。ひとつは、上述のアベノミクスの効果が、思っていた方向とは異なる方向に動いている珍現象に、二人とも首をかしげているのだろう。安倍が公邸に引っ越さないのも奇妙だ。健康不安説を払拭しようと躍起になっている姿も、妙に白々しい。TPP交渉参加、7月からの会議出席も頓挫しているようだし、米国議会の承認に暗雲がたちこめているのかもしれない(悪い事ではないが)。TPP交渉参加の際にオバマに呑まされた幾つかの不平等条件が、そろそろ公になるのかもしれない。

 19日のさいたま市長選の選挙情勢も捗々しくなく、東京都小平市、兵庫県宝塚市、青森市に続き、市長選の敗北の兆しが届けられたのかもしれない。マスメディアがはじき出す内閣支持率が、妙に高いことに、この二人は、歓ぶどころか不安に苛まれているのかもしれない。本当に70%の支持なんてあるのだろうか?もしかすると作り物ではないのか?珍しく時事の田崎が安倍晋三の慢心に警鐘を鳴らしている。有力情報として、内閣支持率と投票行動が一致しない怪現象が、いま政界で起きている可能性がある。

≪ 参議院比例区の候補の嶋大輔?!安倍政権の不安は「慢心」にあり
 首相・安倍晋三のロシア・中東3カ国歴訪は連休中でニュースが少ない時期と重なったこともあって、その成果が大々的に報道された。連休に入る前、安倍が閣僚の靖国神社参拝に中国、韓国が反発したことに対し「どんな脅かしにも屈しない」と発言し、さらなる反発を招いたことは、外遊によって上書きされたかたちだ。
 とはいえ、この発言に潜む危うさは記憶に残るだろう。ほかにも、政権の気が緩んでいると思われることが相次いでおり、気を引き締めなければ順風満帆の政権運営に狂いが生じる可能性もある。
首相の問題発言
 問題発言は4月24日の参院予算委員会で飛び出した。質問者は民主党の徳永エリ。徳永は閣僚の靖国参拝に関連して「拉致被害者の家族の方々は、実 は非常に、まあマスコミベースの話ですから、落胆をしているという声が聞こえてきています」と、拉致被害者と絡めて質問した。
 これに対し、拉致問題担当相の古屋圭司が「いや、それは、それは全く、ちょっと聞き捨てならぬ話ですよ。是非それお名前を言ってください、どなたか」と激高。この後に安倍が答弁した。
 安倍は、閣僚の靖国参拝に中国、韓国は以前はそれほど問題にしていなかったのに近年、抗議するようになったという変化を説明した上で、こう述べた。 「そういうことをしっかりと頭に入れながら対応していく必要があるんだろうと思うし、国のために尊い命を落とした英霊に対し、尊崇の念を表するのは当たり前のことであり、わが閣僚においてはどんな脅かしにも屈しない、その自由は確保していく。これは当然のことだろう、と思う」
 安倍はおそらく、徳永の「拉致家族が落胆している」という言葉に反応したと思われる。しかし、質問は報道されず、答弁のみ、なかでも激しい言葉だけが報道されるのは、首相として覚悟しておかねばならないことである。
 また、歴史認識の問題について、安倍が昨年9月に自民党総裁に選ばれた後、年末に首相に就任する約3カ月の間に、官房長官に就任した菅義偉や外務省などと意見交換を重ね「踏み込まない」ことを確認している。安倍の発言はこの確認を踏み外している。
 発言に対して官邸内からも「徳永さんの挑発に乗ってしまった」「内閣支持率や経済指標が好調なので気の緩みが出たのではないか」と、いぶかる声が上がった。
自民党の気の緩み
 ほかにも「慢心」と受けとめられてもやむを得ないことが起きた。まず、参院選比例代表にタレントの嶋大輔らを擁立する動きだ。この背後に有力議員がいると聞く。だが、政党がタレント候補を立てる意味は、その政党で獲得できない票を集めてくることだ。言い換えるなら、その候補が知名度が高い有名人か、全国的な組織を持っている人物というのが条件になる。嶋はこの条件に合致しているのだろうか?
 また、参院環境委員会が自民党の委員長・川口順子が海外出張から帰国せず、取りやめになったことは与党としてあってはならないことだ。
 自民党は先月28日投票の参院山口補選で公認の江島潔が民主党推薦の平岡秀夫に「圧勝」した。江島が287,604票、平岡が129,784票 だった。その差は2.2倍。しかし、全国有数の自民党地盤が固いところであり、安倍の地元。安倍が選挙戦中、応援に入ったことを考えれば、自民党が内々狙っていたように3倍の開きが出ても不思議ではなかった。
 この原因は無党派層の動向になる。読売新聞の出口調査によると、無党派層は「5割弱が平岡氏支持、江島氏に投票した人は3割強」だった。時事通信の出口調査では、平岡が48.6%で、江島の41.0%を上回った。
 政党支持率や参院比例代表投票先政党率に関する全国世論調査では自民党が民主党を圧倒している。にもかかわらず、出口調査結果を見ると、投票行動となった時、無党派層は民主党支持に回る人の方が多いということだ。無党派層はもともと、反権力指向が強い。
 気の緩みが続くならば、参院選は意外な結果になるかもしれない。(敬称略)≫(現代ビジネス:ニュースの深層・田崎史郎)

 今夏の参議院選の肝は、無党派層が決起するかどうかである。決起と云うのは大袈裟だが、昨年末の野田の自爆テロ解散は瓢箪から駒のような事件だし、金融緩和と円安効果が、ここまで劇的に株高を演出するとは思ってもいなかった。内閣支持率も非常に高い。参議院選で負ける筈がない。しかし、地方選の実績を見る限り、高支持率が幻想に思えてくる。これはどう云うことなのだ?安倍と麻生が悩んでいるのは、その事だ。夏の参議院選では先の衆議院選より、投票率が上がるのは確実だ。5%アップなら大丈夫だろうが、10%近くアップされると、逆転現象、揺り戻しの原理が働く。

 そのリスクは充分にある。昨年、突如の師走選挙は投票率が下がるのは当然で、今夏の参議院選は5%上がるのは、常識だ。後3カ月の間に、安倍内閣には、良い面よりも悪い面が露呈する可能性の方が大きい。そもそも、昨年末の衆議院選挙のような結果を、国民は予期していなかったので、修正しておかないと、と云うバランス感覚が働く。現在、話題にのぼっている“成長戦略”の内容如何では、無党派が一気に動き出すリスクも大きい。

 おそらく、自民党は派手な動きの割には、地味な守りの選挙戦術を取らざるを得なくなっているのかもしれない。巷で語られる「0増5減」で違憲状態脱出“衆参W選狙い”の安倍晋三の思惑が、無理だと麻生が説得しているような気がする。このような状況は、野党も一定の範囲で知っている筈なのだが、どうもまとまる勢いが弱い。それが、自民党の一番の寄り処なのだ。特に、民主党のバラバラ度は見るに堪えず、小沢が公言したように、サッサと分党してしまえば、意外な風が吹きそうな雲行きなのだが、期待出来そうもない、党幹部の顔ぶれだ。


図説 世界が賞賛するニッポンの技術 (別冊宝島 1978 ノンフィクション)
クリエーター情報なし
宝島社


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


異様な読売のつまみ食い “村上春樹”の発言を悪意に引用、導くのは誰?安倍晋三?

2013年05月07日 | 日記
日本の男を喰い尽くすタガメ女の正体 (講談社プラスアルファ新書)
クリエーター情報なし
講談社


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング

●異様な読売のつまみ食い “村上春樹”の発言を悪意に引用、導くのは誰?安倍晋三?

 「大事なことは、導かれること」 “なんだ、この見出しは”というヤツに出遭った。読売新聞の村上春樹の長いインタビューに関する記事のことだ。問題のインタビューの詳細は、最後に日経新聞の労作を掲載させて貰ったので、そちらで確認して貰えば良いが、村上は「大事なことは、導かれること」(読売見出し)なんて言葉も趣旨も語っていない。政治部の記者が文芸部の記者に一服盛ったのだろうか?それとも賄賂でも渡さない限り、こんな見出しになりようがない。「大事なことは、導かれること」、村上春樹まで政治的に利用しているように思える見出しだ。どう考えても、歪曲過ぎる。村上春樹が気づけば、抗議される発言への歪曲だ。

 おそらく、読売新聞の読者の習性から行くと、村上春樹も「導かれることが大事だと言っている」程度の認識に至る可能性がある。筆者のように、必要以上に、この読売の見出しの違和感を吟味する暇人はいないだろう。だからこそ、読売のような、左翼崩れの右翼が経営する新聞社の危険があるわけだ。一昨日の国民栄誉賞セレモニー、ナベツネは「本来、俺が審判なのだが、安倍に譲ることにした」そんな気分だったに違いない。ノーベル文学賞に限りなく近い存在だと云う理由で、畏敬の念を持つ単純読者には、充分なプロパガンダ見出しになる。

 読売が政治的に村上春樹の発言をつまみ食い悪用した部分は、新刊「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」に関してインタビュアーの質問に対し「最初は短い小説にするつもりだった。だが、主人公を導く登場人物に、作者自身も導かれ、書いているうちに登場人物がどういう人だったのかが書きたくなった」と、長編になった理由を語っている。たしかに村上は「僕にとっては導かれるということが大事で、導かれて体験し、より自分が強くなる。自分自身や登場人物が強くなっていくなかで、読者にも伝わればいいと感じています。」と語っているが、読売の見出しのように「大事なことは、導かれること」ではなく、「導かれたことが大切で、作者も登場人物も強くなった」と云う意味で、導いた意味あいは、権力なき、作者であったり、作品内の登場人物の言葉であるのに、何故か導くリーダーでも存在しているような見出しになっている。

≪ 村上春樹さん「大事なことは、導かれること」
作家の村上春樹さんが6日、京都市の京大百周年記念ホールで「公開インタビュー」を行った。  村上さんが国内で聴衆の前に姿を現すのは珍しい。親交の深かった心理学者の河合隼雄さんへの思いや新刊の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」などについて語った。
冒頭の講演で、村上さんは「小説家の役割は、少しでも優れたテキストをパブリックに提供すること。読者はそれぞれを好きなように咀嚼する権利がある」と語った。そのうえで、「僕が深い共感を抱くことができた相手は、河合先生しかいない。僕が物語という言葉を使うとき、イメージすることを丸ごと正確に受け止めてくれたのは河合先生しかいなかった」などと故人をしのんだ。
その後、エッセイストで元編集者の湯川豊さんが聞き手を務めた対談では、ミリオンセラーになった新刊「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」に話が及んだ。「僕にとって大事なことは、導かれることなんです。僕自身も登場人物も導かれることがある。読む人の中でも、そういうものがあればいい なと思います」と述べた。
今回の講演は、河合さんの名を冠した「河合隼雄物語賞・学芸賞」が今年、創設されたのを記念して企画された。≫(読売新聞)

*ちなみに、読売新聞以外の各社の村上春樹インタビューの見出しを羅列しておくと以下の通り。
朝日新聞:「こういう風に人をきちんと書くのは初めて」村上春樹氏
時事通信:「新作は文学的試み」=村上春樹さん、京大で語る
毎日新聞: 村上春樹さん公開インタビュー:新作の背景など語る
産経新聞: 村上春樹さん「僕にとって新しい試み」 新作めぐり異例の公開インタビュー
以上のような感じで、読売のようなニアンスに至る新聞は他にない。しかし、読売の読者は、“導かれること”が村上春樹でも大事で、導かれると云う言葉に精神依存させようと云う感じにも、受け取れる。以下は日経さんのインタビュー詳細。

≪ 村上春樹さんの公開インタビュー

作家の村上春樹さんが6日、京都大学の百周年記念ホールで講演した。つづいて行われた文芸評論家の湯川豊氏による公開インタビューの内容は次の通り。

湯川豊さん 先ほどの河合さんについての話を興味深く聞きました。村上さんは「海辺のカフカ」のときの長いインタビューで「人間は2階建てであり、1階、2階のほかに地下室があってそこに記憶の残骸がある」と おっしゃっていた。その上で「本当の物語はそこにはない。もっと深いところに地下2階があって、そこに本当の人間のドラマやストーリーがある」と。それを聞いて「なるほど」と思いました。河合さんとは「物語」というコンセプトでは共有していたとのことですが。

村上春樹さん 僕は以前から地下1階の下にはわけの分からない空間が広がっていると感じていました。多くの小説や音楽は(作家や音楽家が)記憶や魂の残骸が残っている地下1階を訪れることで書かれているが、それでは人の心をつかまえるものは生まれない。(米国の作家)スコット・フィッツジェラルドは、人と違うことを書きたければ人と違う言葉で書け、と言っていた。また(ジャズピアニストの)セロニアス・モンクは「どうやったらこんな音が出るのか」と尋ねられ、「鍵盤は88本あるだろう。みんなこれで音を作っている」と言っていたが、そのなかで魂に響くピアノを弾いていた。もっとも、(地下1階の)下まで行く通路を見つけた人はそれほど多くない。実際、地下1階を訪れて書いていた方が、ロジカルな批評はしやすい。(作曲家の)モーツァルトとサリエリもそう。生きているうちに評価されたのはサリエリだったかもしれない。でも何かを作りたいと思うならば、地下のもっと奥まで行かなければならない。河合先生も理解されていたと思うが、(それを分かっている人は)文学の世界では少ない。僕は正気を保ちながら地下の奥深くへ下りていきたいと思っています。

湯川さん 村上さんは初期のアフォリズム(警句)とデタッ チメント(孤立)から、(長編第3作の)「羊をめぐる冒険」でストーリーテリング(物語)に入ったと言われます。そのとき、スポンティニアス、つまり自発的なものでないと意味がないとおっしゃっていたと思うが、それを説明していただけますか。

村上さん 「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」という最初の長編2冊と短編集「中国行きのスロウ・ボート」は飲食店をしながら書いていたため、まとまったストーリーを書く時間がなかった。断片をコラー ジュするという書き方しかできませんでした。当初はそれが斬新で評価されたが、それより先に行きたかった。それから村上龍の「コインロッカー・ベイビー ズ」を読み、こういう書き方をしたいと思い、店を辞めました。時間を好きなだけ使って物語を書ける喜びを味わい、途中で結末がどうなるかもわからないまま書き続けました。そのうち自分がこういう風なものに向いていると感じるようになりました。「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」は「世界の終り」だけで発表、100枚ぐらいの小説でした。自分でも面白いとは思ったが、納得はしていませんでした。それだけでは読者を引きずり込む力がないので、いつか書き直そうと思っていたら、あるときに思いついたのが同時進行の物語。「私」と「僕」に人称を分けて自分を分裂させ、最後に再統合しようと。順番に書いていったら何とかなるだろうと思って書いていましたが、(「世界の終り」と「ハードボイルド・ワンダーランド」の部分が)不思議に呼応しているようです。(神がかりな感じがするので)セラピーを受けた方がよいかもしれませんね。

湯川さん 「ねじまき鳥クロニクル」は物語一辺倒で良かったときからの第3ステップとの作品ということですが、詳しく説明していただけますか。

村上さん 「羊をめぐる冒険」や「世界の終りとハードボイ ルド・ワンダーランド」は「次はどうなる?」「次はどうなる?」と僕自身が楽しんで書いていました。「ねじまき鳥」では「世界の終りとハードボイルド・ワ ンダーランド」よりも世界をもっと分散してみよう、分割してみようと考えました。一人称を使っていたので分割はすごく難しいのですが、思い出、記憶、手紙、日記などを組み合わせて重層的な世界を作ろうとしました。その意味では新しい試みです。あの小説には主人公が壁を抜ける「壁抜け」という場面が出てきますが、あれはメタファーではなく、僕の本当の体験。小説はリアリズムと非リアリズムに分けて考えられることが多いですが、自分にとってはいずれもリアリ ズム。(コロンビアの作家)ガルシア=マルケスの作品をみなマジックリアリズムというが、僕には単にリアリズムと感じられる。西洋文学などではリアリズムと非リアリズムをロジックで分けて書こうとしているが、僕はマルケスの方にリアリティーを感じる。

湯川さん 物語には(1)魂の奥底にあるもの(2)人と人をつなぎ合わせるものといえそうですが。

村上さん デタッチメントから始まった僕はコミットメント (関与)へとシフトしてきました。今は魂のネットワークを作りたいという気持ちがあります。人はそれぞれの物語を持っている。子供が童話を読み、剣を持って森の中へ行くのは、自分の中に物語を取り込んだからです。大人になってからもそれぞれを主人公とする複雑な物語を持っています。ただし、魂の中に持っている物語が深みを持っているか、奥行きを持っているかというと難しい。それを本当の物語とするには相対化が必要であり、小説家の仕事はそのモデルを提供することだと思います。読者に共感してもらえるということは感応してもらえることであり、それが広がることでネットワークが生まれる。良い音楽を聴くと心が 震えるが、それは小説も同じ。それが物語の力だと思います。僕の場合も、「どうして私の考えていることが分かるのですか」と読者に言われたりするとうれしい。

湯川さん 19世紀が小説の時代だったのに対して、20世紀は物語が軽視された時代ですが、これはなぜでしょう。

村上さん 僕は10代で19世紀の小説を読みあさりまし た。ドストエフスキー、トルストイ、ディケンズ、バルザック。「戦争と平和」は3回、「カラマーゾフの兄弟」は4回読んでいるので体に染み込んでいる。物語はなくてはならない存在です。20世紀に入って階級闘争とか、フロイトの精神分析のおかげで、心理小説のようなものが出てきた。1980年代になって、(米国の作家)ジョン・アーヴィングが出てきて、「おおこれは」と思った。話がどんどん進んでいくので。

湯川さん 村上さんはアーヴィングと対談をされていますよね。

村上さん 彼はディケンズマニアなんですね。僕はセントラルパークを一緒に走ったことがあります。1983年のことですが、これは良かった。変な人でね。セントラルパークには馬車が走っているので、馬糞が落ちている。それをいちいち指摘してくれるんです。アーヴィングはレスラーですので、体を鍛えるために走っているようでした。

湯川さん 戦前は「私小説」の隆盛で夏目漱石などが軽視されてしました。

村上さん 僕は漱石のファン。文章もうまいし、面白い。僕も最初の頃は批判が多かった。でも読者がちゃんと付いてきてくれた。それが30年続いている。ありがたいことだと思う。

湯川さん 「1Q84」は物語を内にはらんだ大長編です。 現実と非現実、日常と非日常の境目がないようです。一方で最新刊「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は「ノルウェイの森」以来のリアリズム小説のようですが。

村上さん 「ノルウェイの森」は純粋なリアリズム小説を目指した作品。上の段階にいかないといけないだろう、他の作家と同じ土俵に乗らないと次のステージにいけないだろうとしばりをかけ、それなりにうまく書けたと思う。本来のものでないもので売れてしまったので、プレッシャーを感じた。でも、あれがないと「ねじまき鳥」は書けなかったと思っている。「1Q84」 は全部三人称で書くことで世界が広がった。三人称はどこへでもいけるし、誰のことも書ける。ミクロコスモスを並べ、お互いが反応し合うところを作品にできる。ドストエフスキーの「悪霊」が念頭にあって、そういう総合小説を書きたかった。「1Q84」はやりたかったことがフォーマットとしてできたと思う。「多崎つくる」は現実と非現実に分かれているものを全部現実の土俵に乗っけてみたらどうだろうと思って書いた作品。アタマと意識が別々に動いている。羊男やカーネル・サンダースは出てこないが、底の方で横たわっている。「ノルウェイの森」には文学的な後退だという批判もあったが、僕にとっては実験。今回も新しい試みをしている。

湯川さん 「多崎つくる」は議論の多い小説だと感じまし た。トーマス・マンの「魔の山」やドストエフスキーの「悪霊」をほうふつさせます。

村上さん 僕の中では対話小説です。灰田親子の部分はたしかに議論的なところがあるが、彼らは筋に絡んでいない。筋に絡んでいない人たちなので議論になるのだと思います。僕は小説を書く上で会話部分で苦労したことはなく、会話でストーリーを進めていくことが好き。ただし会話を描くときに体温が変化しているようなリズムがないとだめです。

湯川さん 今度の小説は「アフォリズム」が多いように感じましたが。

村上さん 自分ではあまり意識しなかったが、それは読み手の自由ですね。僕はテキストを提供する側ですから。

湯川さん 読み終わった後、つくるが辿った時間はすごく単純、劇的なものが何もない。しかしつくるの内面では非常に激しいドラマがある。時間的な筋と物語とはちがうのか。

村上さん 確かにあれをあらすじにするとおもしろくなくなる。出来事を描写するのではなく、意識の中に出来事を並べている。そこで読者の意識がついていかなければならないので、難しいところでもあります。僕は今回のように人間をきちんと書いたのは初めてだった。最初「多崎つくる」は短い小説にするつもりだった。名古屋の4人も説明しないつもりだったが、書いているうちにどうしても書きたくなった。沙羅がつくるに「行きなさい」「向き合いなさい」と言ったと同時に僕に「書きなさい」と言ってきた。彼女は僕も導いてきたので、たしかにすごい存在です。僕にはこれまでもそういうことはあった。たとえば昔雑誌でフィンランドに行ったことがあって、そのあとにフィンランド の場面を思いついた。フィンランドに行かずに書いたけど、わりとそっくりそのままだった。借りたフォルクスワーゲンも紺色だった。僕にとっては導かれるということが大事で、導かれて体験し、より自分が強くなる。自分自身や登場人物が強くなっていくなかで、読者にも伝わればいいと感じています。

湯川さん 人と人をつなぐのが物語の役割。場面場面に問いかけがあるように思います。

村上さん これまではこっちは書かないと言ったことがあったが、(最近は)人間的興味が出てきた。「アカ」とは、「アオ」とはなどと、勝手に動き出す。人間と人間のつながりに強い関心があります。「1Q84」を書いてそのような力が出てきたのではと思う。

湯川さん 今回の場合は5人というユニットで、とても象徴的。「アオ」のような出世人間を描き、しかもリアリティーを感じるが、どのようなところから着想を得ているのか。

村上さん 僕の小説登場人物にはモデルというのはなく、ほとんど自分で、仕事やしゃべり方を自分で作りました。

湯川さん つくる君はグループから突然切り捨てられ、なぜそうなったかという問いに半年間ぼうぜんとします。

村上さん 僕も近いような経験はあったが、そういうとき、 人はそのような経験を隠そうとするのだと思う。人は傷を受け、時間が経つと上を向いて、という繰り返しではないのか。僕は結局、そういうのを書きたかったかもしれません。

湯川さん フィンランドでの再会の場面はたった2、3回しか「悪霊」という言葉を使ってないが、「シロ」や「クロ」の人生をまざまざと象徴しています。

村上さん 僕はメタファーとしての悪霊ではなく、本当にいるおばけというものを意識して「悪霊」と書いた。そういうのは本当にとりつかれる人がいるし、本当にこわい。メタフォリックに読み取られることはあるだろうけれど、僕の中では、一人の人間を滅ぼすほどの本当のお化けを考えていた。

湯川さん 「エリ(クロ)」がつくるにハグしてくれというとき、「痛みと痛みによってつながっているのだ」との言葉によって、二人が肉体を持つように感じたが。

村上さん 自然とそうなっちゃうのかな。あまり読み返すことはないが、自分の本を読み返したとき、「アンダーグラウンド」でいつも涙が出る。インタビューのときはにニコニコしながら話を聞いていたが、去ってから1時間ぐらい涙が出た。そういう経験が大事だと思う。

湯川さん 19世紀小説が意識のどこかにあったか。

 村上さん 全くなかった。小説を書き始めた頃は、書きたくても書けない、という事が多かったが、少しずつ書けることを増やしていった。なんとか書けるようになったのが2000年ごろ。「海辺のカフカ」から自分の書きたいことがちゃんと書けるようになったと感じている。

湯川さん 「多崎つくる」は執筆にどれくらいかかりましたか。

村上さん 半年で第1稿を書き、半年で第2稿を書いた。朝は小説を書き、昼からは翻訳などしてほかはしない。朝に集中して早く書く。僕は書き直しが好きで、第1稿と第2稿は全く違ったものになる。第1稿はコンピューターに残っているが、早く捨てたい。

湯川さん リスト「ル・マル・デュ・ペイ」のラザール・ベルマン、小説で使おうと思ったのは?

村上さん 僕は朝クラシックを聴く。夜に寝る前にLPに明日の聞くものをセットする。そこでたまたまリストのLPが仕事をしているときにかかって、使おうと思った。説明できないが、CDよりアナログLPのほうが音として仕事がはかどる。僕はいつも音楽に励まされて仕事をしている。これまでずっとジャズを聴いてきて、リズム曲になじんでいるので、文章を書くときにもリズムで書いている。僕は小説は独学だが、リズムに乗って文章を書けばいけると思う。最後に僕の本を読んで「泣きました」という人がいるが、「笑いました」と言われた方がうれしい。泣くという悲しみは個人的な感情に密接に結びついている。笑いはもっと一般的なものだから、読者に笑ってもらえるものを書き たい。ユーモアで笑うと人の心が広がる。悲しみは内向していくので、まず開かないといけない。ユーモアをいろんなところにちりばめて小説を書いていきた い。≫(日経新聞)

2030年 世界はこう変わる アメリカ情報機関が分析した「17年後の未来」
クリエーター情報なし
講談社


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


「世界人権宣言」を破棄する「日本国憲法改正草案」を持て余しはじめた自民党

2013年05月06日 | 日記
世界の99%を貧困にする経済
クリエーター情報なし
徳間書店


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング

●「世界人権宣言」を破棄する「日本国憲法改正草案」を持て余しはじめた自民党 

 筆者は、長谷川幸洋氏が中日・東京新聞の論説員としては、日本維新の会、みんなの党や安倍晋三に随分傾倒した姿勢を見せ始めたものだと思っていた。勘としては、あぁこの人新聞社辞める気だな、と推測していた。少々かたちは異なるが、そのような方向に進んでいるようだ。ご本人のツイッターには、≪ あと変わったことといえば、3月末でめでたく(?)会社を定年になりました。でも、東京新聞論説副主幹という仕事は変わりません。1年契約です。私はかねて「記者は契約制にすべきだ」と唱えてきたので、これは「正しい記者雇用契約のあり方(??)」と思います(笑)。≫と書かれている。その長谷川氏は今日の東京新聞【私説・論説室から】で以下のように書いている。

≪ 憲法改正の前には解散を
この欄は社説ではなく、筆者個人の意見を唱える「私説」とあらためて断ったうえで書く。私は憲法改正に賛成である。ただし、国会の現状を放置したまま、具体的に憲法改正に動きだすことには反対だ。
理由は簡単である。昨年末の総選挙について、全国十四高裁・高裁支部が出した十六件の判決のうち違憲・選挙無効が二件、違憲・有効が十二件、違憲状態が二件だった。ようするに、全部が違憲ないし違憲状態と指摘している。
そんな衆院議員たちが改憲発議を決められるのか。各紙は「衆院の三分の二を上回る勢力が憲法改正に賛成だ」などと盛んに報じているが、それは違憲状態の勢力なのだ。そもそも改憲に動く正統性がない。
したがって、もしも安倍晋三政権が本気で改憲を目指すなら、いずれ一票の格差を是正したうえで解散・総選挙を実施し、だれがみても合憲の状態にしてからでなければならない。
そう思いながら二日付の紙面を開いたら、安倍首相は「いずれかの時点では国民に信を問わなければいけない。適切な時期をとらえ、適切な時に解散したい」と語っていた。同時に「(改憲に)まだ国民的な理解を得られている段階ではない」とも語っている。
これで少し納得した。安倍政権は少なくとも、いまの国会の下で改憲発議に動くことはなさそうだ。いまはしっかり議論を重ねるときだ。≫ (東京新聞:【私説・論説室から】:長谷川幸洋)

 この長谷川氏の私説は理に適っているようで、事実をなぞっているだけだ。おそらく、安倍晋三だけでなく、自民党の多くの議員が、何となく、そのように思っているだろう。ただ、マスメディアに煽られ、改憲論を引っこめ難い状況が出来あがった事に、戸惑いもあるのだろう。このまま参議院選に突入すると、これと云った実体経済への好循環もない経済政策。売国的腰抜け交渉で、米国の言いなりになった印象が根強く残るTPP交渉参加。それに追い打ちをかけるような、サラリーマン地獄時代を彷彿とさせる成長戦略の数々が、世間に晒される。この状況で、誤魔化しのような憲法96条だけの改正みたいな話を選挙の争点にした場合、オセロゲームのようなハプニングが起きる可能性はゼロではないのを、彼ら自身が一番怖れている。

 出来たら。竹中平蔵らが議論している三本面の矢「成長戦略」も封印したいくらいの気分だろう(笑)。グローバル世界経済の中で、生き抜く手段として、最も、その現象に順応するのが市場原理主義であることは、一定の知識のある者であれば、理解出来ないものではない。しかし、市場原理主義により、社会層への歪みが顕著になって来ている現在の後遺症を確認検証しながら、その後遺症を更に加速すべきだ、と云う論が国民に通用するものか。特に選挙における投票行動に、どのような影響を及ぼすか、自民党自身が判断できないのが現状だ。

 金持ち喧嘩せずの立場である筈の与党自民党が、わざわざ百家争鳴な状況を作るなど、本来あり得ない筈なのだ。冷静に、安倍晋三の言動や、自民党の動きを観察していると、老練な政治家が多いだけに、一見すべてが順調に推移しているが如き面構えだが、現実はアヒルの水かき状態に入っている。改憲論の中身を吟味されればされるほど、自民党の「日本国憲法改正草案」が、1948年国連総会で採択された世界人権宣言(Universal Declaration of Human Rights)までも無視するような、醜悪な暴論である事はバレバレになる。世界人権宣言は、この宣言の後に国際連合で結ばれた人権条約の基礎となっており、世界の人権に関する規律の中でもっとも基本的な意義を有する。つまり、普通の国どころか、北朝鮮やシリアに近づこうと云うのだから、世界の笑い者になるのは確実だ。

 対中、対韓だけが悪印象を持つだけではない。米国自体が、この世界人権宣言(Universal Declaration of Human Rights)の離脱を宣言するような「日本国憲法改正草案」に不快感を持つだろう。経済上の利益の為に、ロシア、サウジアラビア、トルコ、インド、ASEANなどが、ニコニコ外交をしているが、経済協力と日本の国際社会への挑戦のような「日本国憲法改正草案」とは、話は別である。この事を、一番知っているのは、誰あろう自民党自身である。長谷川氏が言うほど、自民党が本気で「日本国憲法改正草案」を実行しようとしているとは、筆者は思っていない。どう読んでも、ファシズム国家になります、と宣言するような憲法になっている。国家主義の思想に貫かれている憲法改正を振りかざすほど、自民党も馬鹿ではないだろう。

 なぜ、安倍が96条先行説を唱えたか?話は、維新やみんなを取り込むためと云う説もあるが、実は「日本国憲法改正草案」の中身が、余りにも醜悪で、世界に通用しそうもない事を百も承知なのである。あの「日本国憲法改正草案」は、昨年春の時点で、間もなく党が溶解する恐怖心にさいなまれた自民党が、民主党の対局度を鮮明にしようと考えた苦肉の策であり、本気で、それを実行する気は、さらさらなかった改正案である。つまり、自民党自身が自ら作った「日本国憲法改正草案」を持て余しているのが現実である。

最後の小沢一郎
クリエーター情報なし
オークラ出版


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


小沢とホリエモン対談 資質の違いが際立ったが、袖触れ合うも多生の縁でもある

2013年05月05日 | 日記
金持ちになる方法はあるけれど、金持ちになって君はどうするの?
クリエーター情報なし
徳間書店


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング

●小沢とホリエモン対談 資質の違いが際立ったが、袖触れ合うも多生の縁でもある

 生活の党の小沢一郎代表と堀江貴文元ライブドア社長の対談がブッツケ本番で行われた。ホリエモンの方向性は規制撤廃、市場原理に傾いており、小泉純一郎や橋下徹にシンパシーを感じているであろうことは、想定内だった。そのホリエモンと小沢が、初対面で話を始めようと云うのだから、面白いように話のキャッチボールがなされる筈もない。危惧していた通りの展開で、手探りの両人は、2時間の制限時間の大半を、空気を読むために費やした。まったく無駄な対談のように思えたのだが、後半の30分過ぎた頃から、ホリエモンにエンジンが掛かり、それに呼応するように小沢にもエンジンが掛かった。

 話の中身なんてのは、初対面なのだから、どうでも良い。ただ、みていて感じたことだが、茂木健一郎氏の共通の友と云うことで、異質の極めて個性的な二人、小沢とホリエモンが苦労しながらも、接点を求めている姿は、微笑ましくもあった。最後の時間を延長した20分くらいは、ちらちらと本音も語られた。袖触れ合うも多生の縁と云うものの中継を見させて貰った感じだ。今後、この二人で対談をする可能性はないだろうが、今後小沢もホリエモンも、少なくとも嫌悪感を持つ関係にはならないだろう。

 ホリエモンが、小沢の正論、建前論では、大きく支持も伸ばせないし、もっとインパクトが欲しい。ネット選挙に合わせ、ネット支部制の導入など、小沢にとっても有意義なアドバイスがホリエモンの口から飛び出している。殆どの人間は“憲法なんて興味がない”と云う現実論を語り、ベンチャー企業のリーダーとしての蘊蓄を語り、小沢は中央集権の問題点を語る等、すれ違いだらけだったが、両者のキャラクターが、そのかみ合わない対談を退屈させずに過ごさせた。

 小沢は対談の中で、次期参議院選は自民党が勝つ可能性が強いが、対自民に対抗し得る勢力の受け皿さえ出来れば、必ず政権は取れる、と強調した。ホリエモンは、それに対して「小沢さんがやったことで一番素晴らしいのは、小選挙区制を根づかせたところだ(風が吹けば、オセロのように逆転できる)」そして「小泉チルドレンや小沢チルドレンとかは、風に流される人たちかも知れないが、この人たちは当選1回でもいいやと割り切って大量に兵隊を集め、政策を変える流れができればいい」「小選挙区制の長所だ」ホリエモンはドラスティックなことが好きなんだな~、とつくづく思った。

 そのホリエモンの考えに呼応するように「「民主党でも改憲論者と、そうでない人がいる。きちっと改憲を大きなテーマにするなら、そっちの方の人はそっちではっきりすればいい。そこが今ウニャウニャ混在しているから、国民が選択できない」と、民主党の分党を促すような発言をしていた。また、ホリエモンは小沢氏や僕の写真は、常に一番悪い表情のものが使われる。茂木が産経の写真が最も悪いようだ。産経さん、宜しく頼みますよ、と会場を見まわしたが、面白い事に、昨夜の産経サイトの一部では小沢の顔は呵呵大笑の表情を捉えている。頼んでみるもんだ(笑)。

 また、旧ソ連崩壊後、ロシアは北方四島を買い取りたいと言ったのは、当時自民党幹事長だった小沢一郎だ、としていたが、小沢の今日の発言では、旧ソ連時代のゴルバチョフ大統領の側近から「『北方領土を返す』という話があった。カネで買うという話だった」と語った。本人が語っているのだから、嘘はないだろうし、当時のソ連の状況から考えてあり得る話である。当時なら、シベリアや北方四島など統治するだけでも厄介だった筈。東ドイツに比べれば、ハードルは低かった。推測だが、ゴルバチョフが躊躇した意味合いには、米国がちょっかいを出した気がする。

 まぁ折に触れ、少々変な組み合わせかなと思っても、マスメディアが鉄のカーテンで政治家小沢一郎とその人格そのもとまでを隠蔽してしまおうと云う意図であるなら、疲れるだろうが、小沢はかみ合わない相手とでも対談する努力を続けるしかない。読売や毎日、日経サイトでは、トピックス扱いしてなかった。筆者の感覚で言えば、社会学者の古市氏とか、政治性の色がついていない若者と話す趣向を凝らしておくべきだろう。そして、小沢一郎自身も、身の丈で生きる若者に、大志を抱け、だけではなく、彼らの心情を読みとる努力もして貰いたい。たしかに、正論過ぎる小沢一郎の姿勢に、ついていけない人々も多い事を自覚しておく必要がある、と感じさせる対談であったと思う。

新版 世界憲法集 (岩波文庫)
クリエーター情報なし
岩波書店


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


憲法改正は中身を吟味して決めよう 政治家を全面的に信ずるほど日本人も馬鹿じゃない

2013年05月04日 | 日記
憲法がしゃべった。~世界一やさしい憲法の授業~
クリエーター情報なし
すばる舎


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング

●憲法改正は中身を吟味して決めよう 政治家を全面的に信ずるほど日本人も馬鹿じゃない

 自民党は安倍総裁のイデオロギー、こう呼ぶほど確固たる信念かどうか疑問だが、憲法改正のハードルを兎に角下げることに必死である。そもそも、自民党は党是として憲法改正を標榜していたのだから、衆議院で2/3の議席数を得た事を考えれば、「日本国憲法改正草案」の実現を目指すのは当然で、特に咎めだてすることではない。ただ、昨日のコラムでも語ったように、先ずは改正の為の敷居を下げようと云う姑息な手段は、まさにポン引きやキャッチセールスの手口に類似している。御厨貴によると、改憲の目的は異なっても、維新やみんなを引き込むことで、道州制、首相公選制などの改憲も楽になるよと誘い込み、極めて戦略的なのだそうだが(笑)、筆者からは、安手のポン引きにしか見えない。

 船に乗る場合、線路や道路があるわけではないのだから、その船の行く先を確かめもせずに乗船したら、船長が悪いと云うより、乗った人間が馬鹿者であった、と云うだけの話である。船の行き先は無限であり、乗ったら最後、滅多な事では下船も儘ならない。道路であれ、線路であれ、そこには目的地が記されているので、間違って乗っても、次のバスストップか駅で降りることが可能だ。しかし、船に乗ってしまえば、好むと好まざるに関わらず、運命共同体に引き摺り込まれるのである。絶対に、憲法改正においては、どのような航路で運航する船なのか、国民には知る権利がある。波止場への入場料を半額にするような話は、戦略でもなんでもない。ただの詐術に過ぎない。

 それでは自民党の「日本国憲法改正草案」とは如何なるものか、その点を簡単に吟味してみよう。ひと言で言うと、「主権は国民ではなく国家だ」と云う精神に貫かれている(勿論、詐術を使って)。現憲法の精神は、強力な物理的権力行使のツール(暴力装置)を持つ国家が、主権者である国民に対して、国家の都合で縛りをかける行為を禁じる法律と考えても良い。つまり、国家権力の限界を示している法律であり、権力を限定化するものである。にも拘らず、自民党の「日本国憲法改正草案」は、現憲法とは相いれない国民を縛る趣旨が随所に埋め込まれ、広野に埋め込まれた時限爆弾が、何時なんどき国民に襲いかかるか判らず、運用次第でファシズム国家にもなり得る精神が見え隠れしている。

 波止場に停泊中の船の行き先をたしかめよう。波止場への入場料を半額にするような議論ではなく、行き先が何処なのかを議論しようではないか。勿論、現憲法成立の経緯には、釈然としない部分も存在するが、現憲法がなぜ、大日本帝国憲法を改正するかたちで、戦後作られたのか、その改正せざるを得なかった状況時の精神に立ちもどるのが、憲法を考え直す上で、一番重要だろう。安倍晋三は、日本の憲法改正に中国や韓国は関係ないと断言していたが、まったくの誤りである。

 歴史と云うものは、残念ながら、それが過去のものであって、現在生きている日本人が直接関わったものでなくとも、その歴史の責任を負うのが、それこそが歴史なのである。日本人と云う民族は、なぜか歴史を学ぶ風土が希薄である。おそらく、国家の歴史を作る作業に、国民全体は殆ど関係していなかった事情によるのだろう。国家の成り立ちが、極めて自然発生的なため、そして国家としての歴史が長いことが、自分達の歴史に責任が持てない風土を作り上げている。しかし、その歴史への責任は、否応なしに我々日本人に問われるのである。敗戦によっても、立憲君主を残した意味を世界に説明する意味合いもあり、憲法9条は作られた歴史的事実を確認しておこう。

 グローバルな世界観で生きることになっている以上、近隣諸国やアジアの人々、そして世界の多くの人々からの批判の目にも晒されるのが、その国家の歴史であり、その国家の憲法である。その意味で、現憲法の基本的人権の尊重、国民主権、恒久平和と云う3原則は、日本国民のみならず、世界に向けて、日本の立ち位置を宣言したのである。そう云う意味で、現憲法は、日本国民に向けた約束であると同時に、世界の人々にも向けられた、日本のこれからの生き方についての、宣言でもある。日本人は歴史を忘れる天才だが、世界の多くの国々の人々は、歴史を忘れない人々が多い事を肝に銘じておくべきだ。

 自民党の「日本国憲法改正草案」を読んでみると、単に実質的軍隊である自衛隊を、「国防軍」にする程度の話が独り歩きしているが、そんな生易しいものではない。特に、「基本的人権の尊重」つまり、個人の尊重における改竄である。「公共の福祉」と云う概念が、個人の権利を強く制限する方向に変更される。公共の福祉と云う概念は、解釈が極めて曖昧なのもだが、悪く言えば「国家の都合」と言い換えても良いだろう。挙句の果ての、自民党案では「公益」の文言までが含まれている。つまり、公益とは国家の利益と言っても過言ではない。つまり、現憲法が国家を縛る法律であるのに、自民党案では「国家が国民を縛る」法律に変えられる。

 自民党のいう「国防軍」は専守防衛に徹することから脱皮し、「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」、巷では、国連軍として国際貢献するのは良いだろうくらいに認識だが、国連が認めない国際平和の為に相違ないと判断出来る場合は、多国籍軍レベルでも、参戦可能としている。つまり、米軍の補完軍隊として動きますと云う、主権を回復した国とは思えない、偏向的憲法精神が埋め込まれている。

 運用次第で、猛烈に危険なのが、内閣総理大臣に与えられた「緊急事態宣言条項」だ。現状の国民が目にしている、自然災害や原発事故を想定すれば、ついつい納得してしまいかねない部分だが、「我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律に定める緊急事態」と云う文章は、内閣総理大臣が緊急だと思えば、何でもかんでも緊急になり得る包括的な言い回しになっている。戦争も含まれるし、私有財産の強制収用もヘイッチャラになる。どう考えても、戦争を想定した条文の追加である。

 なんとこの条文によると、自民党案でも残した9条の精神を反故にする、地雷を仕掛けたと言っていいだろう。戦争が出来る国を目指しているのは明らか。 この緊急事態が内閣により宣言されたら、もう基本的人権も、国民主権も、恒久平和の憲法3原則も、跡形もなく木っ端微塵になる条項を加筆しようとしている。殆ど、悪魔です。この条項が宣言された瞬間に、国民はすべての権利を喪失し、公の機関の如何なる命令にも従え、と言っている。戦時中の国家総動員体制が、内閣の一言で可能になるよ、と言っている。

 政治とは、生き物であり、常に時代に揉みくちゃにされる運命にある。つまり、世界情勢や、時・ところ・人によって、常に流動的なものだ。つまりポピュリズムに陥り易い性質を持っている。この、時代の即応する範囲で、一般の法律は作られ、廃止される。しかし、憲法とは「法の中の法」であり、いちいち時代の流れに合わせて変貌して良いものではない。少々頑固一徹が望まれる性格が期待されている。このようなテクニカルを弄して、国民に詐欺的同意を求めるような改憲論を、識者は、極めて戦略的だなどと評するが、トンデモナイ!単なる詐欺師のペテンだ。安倍晋三も右翼と自称するなら、堂々真正面から、日本の防衛はどうするべきが、得々と国民に問いかけなければならない。

 どれほど政治家が立派であろうと、政治はポピュリズムに陥るものであり、それで良いのだ。しかし、国会の勢力図が流動的で、自民党の政権が安定的になったと言える段階ではまったくない。おそらく、数年のうちに、経済政策が破綻し、政権の座を追われるかもしれないと云うのに、現在の支持率が7割を超えているから、良いだろうと云う思考経路は、余りにも馬鹿すぎる。政治家に、それ程の信託を国民が与えていると思っているのなら、驚くべき思い上がりである。筆者自身、多少は憲法を改正しても良いと思うが、その議論は、あくまで2/3の縛りの中で決する問題と心得ている。


憲法の創造力 (NHK出版新書 405)
クリエーター情報なし
NHK出版


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


改憲世論調査が花盛り そもそも96条改正と云う姑息な手段が武士の魂を歪めている

2013年05月03日 | 日記
変貌する民主主義 (ちくま新書)
クリエーター情報なし
筑摩書房


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング

●改憲世論調査が花盛り そもそも96条改正と云う姑息な手段が武士の魂を歪めている

 朝日、読売、日経、NHKと矢つぎ早に(或る側面連動して)改憲に関する世論調査を、それぞれ切る口を変えて、さも分業体制に則ったような世論調査を行っている。当面のとば口が憲法96条の改正により、硬性憲法から軟性憲法への改変である。つまり、憲法も他の法律同様に、過半数ですべてを決するようにしようと云う事だ。筆者の場合、もうこの正々堂々とした態度の微塵も感じない、テクニカルに走る政治家の姑息さを感じてしまう。“我こそは安倍晋三なり!主権は国民にあるが、その主権は国家の主権に勝ることはない”安倍が言いたいのは、そう云う事だ。朝日は、以下のように高揚感を隠しきれない安倍晋三の会見の模様を報じている。正直、ナショナリストであるなら、威風堂々と改正手続きの話ではなく、どこに向かう船なのか明確にすべきである。途中で下船しようにも、太平洋のど真ん中では、海の藻屑となってしまう。

≪「憲法96条改正、参院選公約に」 安倍首相が表明
 【ジッダ=鈴木拓也】安倍晋三首相は1日、「憲法改正は自民党立党以来の課題で、昨年の衆院選でも公約としてまずは96条と掲げていた。当然、今度の参院選においても変わりはない」と述べ、7月の参院選で憲法96条の改正を公約に据える考えを表明した。訪問先のサウ ジアラビアのジッダで記者団に語った。
 96条は改憲発議には衆参で3分の2以上の賛成が必要だと定めているが、改正して過半数に緩めることを目指す。首相は「国民投票法の宿題をやる」とし、18歳以上が投票できる国民投票と民法や公職選挙法との整合性をつける作業などを先行させる必要性を指摘した。
 そのうえで「3分の2の勢力を衆参でそれぞれ形成していく努力をしていく」と述べ、参院選後に日本維新の会などと連携することに意欲を表明。一方で「96条改正は国民的な理解を得られている段階ではない。公明党の立場もよく理解している。誠意を持って議論を進めていきたい」と、慎重論にも耳を傾ける姿勢を強調した。中国、韓国など周辺諸国との関係については「我が国の憲法なので、いちいち説明していく課題ではない」と述べた。
 基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字比率を2015年度までに半減する財政再建目標の国際公約をめぐり、菅義偉官房長官は見直しを示唆したが、首相は「目標は変わりない」と明言。7月の参院選にあわせて衆院を解散する可能性については「適切な時期をとらえて解散したい」と述べるにとどめた。≫ (朝日新聞)

 各社の世論調査の数値を取り沙汰する気はないが、これらの世論調査に応じた人々は、自民党が昨年4月に作り上げた「日本国憲法改正草案」を読んだことがあるのだろうか。九分九厘読んでもいないし、解説すら聞いていないだろう。NHKの憲法改正の是非を問う設問には「時代が変わって対応できない問題が出てきたから」と云う報道自体の擦り込みが効力を発揮している。「国際社会での役割を果たすために必要だから」も誘導的質問に過ぎない。9条の改正に関しては、ほぼ同率だったが、賛成と答えた人々の多くが「自衛力を持てることを憲法にはっきりと書くべきだから」の玉虫色選択肢を選んでいる。二番目の理由も「国連を中心とする軍事活動にも参加できるようにすべきだから」となっている。しかし、自民党の改正の目的は米軍と運命共同体の集団的自衛権を行使するよ、と云うことであり、国連中心の軍事活動などと云うのは方便にすぎない事実をまったく理解していない。硬性憲法と軟性憲法の区別すら定かでない人々が大多数なのである。

 この調査の実態からも判る事だが、憲法改正の意味合いも、どこに向かう船なのかも国民は殆ど知らずに、“時代の流れで、多少は変えた方が良いのかな?”くらいの情緒的認識を持っている事が判ったくらいの話である。また、“GHQ統治下(米国主体)において定められた憲法だから、独自憲法を作りたい”と云う、これも情緒に負うところが多い考えである。日本の平和憲法は、大戦後世界に平和が訪れるであろうことを念頭に置いた、理想的民主主義国家とは、このような国家だと云うマッカーサーらの、試みの案であった可能性はある。だから悪いと云うより、理想的民主主義憲法なのだから、守れるなら守った方が良いのだ。70年は、曲がりなりにも守れたのだ、今後守れなくなるとしても、正々堂々と何処に向かう船か、明確に語るべきで、まぁ安くしとくから、先ずは乗ってみなさいよ!では、歌舞伎町のポン引きと変わらない。

 しかし、ルーズベルトの急死により、急遽大統領に就任したトルーマンが、異様に連合国であるにも関わらず、ソ連をヘイトしていた。その前に、このトルーマンが日本に原爆を落とした大統領である事も周知の事実である。この偏狭な人物は、深くは判らないが、戦中戦後を通じて「ソ連包囲」にいたくご執心だった。その結果、東西冷戦構造が顕著な姿を現したわけだが、トルーマンによって、マッカーサーらが理想的民主主義憲法のテストケースとして考えた、日本国憲法の精神は時代と共に歪められて行ったと言えるのだ。この大統領の意志が、CIAを通じて、今の自民党の原型を作り上げたのである。憲法は改正する前に、憲法を起草した精神(理想的民主主義憲法)に戻るところから、議論は始めるべきである。少々、大雑多だが(笑)。

 それにしても、日本の国民は、自分の身の回りの生活以外、殆ど関心を持たない性癖を持っている。“お上は100点の仕事はしないが、65点くらいの仕事はしてくれる”このような考えは、或る意味では、日本人の美徳でもある。特に、鎖国的国家体制においては、そのくらいの認識が平和共存に深く貢献していた。そして、お上の目の届かぬシチュエーションで、生活をエンジョイ出来れば、それで良かった。しかし、覇権国家アメリカの衰退は、パートナーの財布に手を突っ込まずにはいられない状況になり、TPPと云う正体不明の「ロシア・中国包囲網、そして同盟国収奪機能」に突き進む情勢になっている。

 こうなると、自国のお上が、よしなに計らうに違いないと云う、日本人の性癖は、完全に仇になる。あまりにも、自分の身の回り以外に興味を示さない国民は、生活と云う次元の思考経路だけが発達し、政治、国家経済、社会問題に関しての思考経路は、後進国レベルになってしまう。日本リサーチセンターの調査によると、我が国の「マスコミ鵜呑み度」は70%に達し、“インド60%、ナイジェリア63%、中国64%、フィリピン70%”等と肩を並べる。ちなみに先進国と思われる各国の「マスコミ鵜呑み度」は英国14%、米国26%、ロシア29%、イタリア34%、ドイツ36%と云う結果が出ている。このこの調査は2000年に公表されているので、上記後進国の数値は、FBやツイッターの発達で、現在はもっと%が下がっているに違いない。そして、日本だけが「マスコミ鵜呑み度」70%を堅持しているような気がする。

 このような傾向が強い国民が、垂れ流されるテレビ・新聞の報道や政府統計を、其のまま鵜呑みにするのだから、国民の意識を操作するなど“朝飯前の仕事”なのだろう。しかし、グローバル経済と対中、対露冷戦構造の再構築、TPPによる国家体質の改変など、身の回りに衝撃的事件を誘発するリスクが高まっている時代である事に気づかなければならない。実際問題、今の日本は自らの意志で、あらゆる問題を解決し得る能力を失いかけているのだ。そして、その機能不全は一層深まる事実を認識すべきだ。


ユーラシア胎動――ロシア・中国・中央アジア (岩波新書)
クリエーター情報なし
岩波書店


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


幕引きされた猪瀬発言 これで良いの?他国を侮辱した知事、リコールに匹敵

2013年05月02日 | 日記
これから50年、世界はトルコを中心に回る ― トルコ大躍進7つの理由
クリエーター情報なし
プレジデント社


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング

●幕引きされた猪瀬発言 これで良いの?他国を侮辱した知事、リコールに匹敵

 早々と、猪瀬東京都知事の問題発言が幕引きの方向に向かっている。昨日のコラムでは、猪瀬辞任か、オリンピック招致辞退で収束のような話かと思っていたのだが、さにあらずだった。IOCの広報部長は「招致活動の規則を再認識するよう通達した」という形で、再確認作業をしただけで、「これ以上、動きはない。この問題は終わった」で一見落着させた。侮蔑的発言の相手国であるトルコのクルチ青年スポーツ相はNYTの報道を知った後、「発言は公正でなく悲しいことだ。オリンピックの精神に反している」と非難していたのだが、猪瀬知事の謝罪を受け入れたそうである。いかにも何もなかったような潮のひき方である。

 「アスリートにとってベストな場所は、パリやロンドン、東京のように社会インフラが整備された国」、「イスラム諸国はアラーの教義を絶対とする階級社会で、戦いに明け暮れている」、「長生きしたければ日本のように文化を創造する必要がある。若者がたくさんいたって、早死にするなら意味がない」等々と、ほぼ喧嘩を売っているようなモノ言いなのだが、不問になるような按配になってきた。

 IOCの思惑は、今さら有力候補地の東京が消えることは、残るの2都市が、共に不安材料のある、スペインとトルコが残される事となり、色々と不都合が生じる事情があったのだろう。スペイン・マドリードには経済不安があり、トルコ・イスタンブールはEU諸国が難色を示す可能性もある。無難なのが、日本・東京と云う噂もあった。筆者からみると、放射能汚染を怖れる国もあるだろうから、東京が無難と云う噂が本当かどうか判らない。どの国にも瑕疵があるように思える。まぁ3都市が候補である前提で動いていただろうから、三つ巴の構図が壊れるのも拙いし、利権構造からも、三つ巴は都合が良いのだろう。

 トルコの場合、日本からの経済協力は極めて魅力的であり、一都市の知事の発言程度で、日本とトルコの信頼が揺らぐものではない、と云うポーズを取らざるを得なかった、と考えるのが妥当だ。決して、猪瀬の発言が肯定されたわけではない。日経は以下のように報じている。2兆円規模のプロジェクトなのだから、裏に表に莫大な金が動いているのだろう。日本のこの事業に対する政府開発援助ODAの額が示されていないが、サウジに2千億出すくらいだから、7千億くらいODA扱いなのかもしれない。

≪ トルコ首相、日本勢に原発発注表明 次の計画も歓迎
 【ア ンカラ=花房良祐】トルコのエルドアン首相は4月30日、首都アンカラで日本経済新聞の取材に応じ、黒海沿岸シノプの原子力発電所の計画について「日本勢が建設する」と正式に表明した。トルコを訪問する安倍晋三首相と5月3日に会い、原発建設に関する政府間合意と原子力協定を締結する。三菱重工業―仏アレバ連合の原発の耐震性や技術力などを評価。別の場所で計画する原発についても「日本を歓迎する」と今後の交渉に期待を示した。
 エルドアン首相は日本の原発技術について「日本は地震に対処する経験とノウハウがある」と指摘。福島第1原発事故についても「日本は教訓を学んだ。旧ソ連でも原発事故はあった」と話した。日本は環境対策が進んでいるとも指摘。三菱重工業とともに計画に参加する仏アレバについても原発技術を評価した。
 トルコは3カ所で原発の建設計画があり、地中海側アックユではロシア、シノプでは日本勢が受注した。3カ所目は「建設予定地はまだ選定中だ。日本とするのは歓迎だ」と言及。2023年までになるべく多くの原発が稼働するよう建設を加速し、30年には発電量の少なくとも15%を原子力にする方針を示した。
 トルコでは三菱重工業―仏アレバ連合が原子炉を売り込んでいた。事業費は2兆円規模で、出力は4基で450万キロワット程度となる見通し。 23年まで第1号機の稼働を目指す。≫(日経新聞)

 トルコのエルドアン首相の日本の原発技術への評価は、穴があったら入りたいほど“こそばゆい”ものだ。まぁ世界の外交と云うものは、こう云う事もあるのだろう。しかし、猪瀬の発言は、イスラム全体に対する侮辱であり、IOCとトルコが鉾をおさめたからといって、それで一見落着とは言えないだろう。様々な事情で、猪瀬知事の資質を露呈したような発言を引きずってオリンピック開催が東京に決まったら、まともに日の丸を振るのが辛くなる。やはり、そう云う意味でも、猪瀬は、何らかの行動を起こすべきだと考える。

 このような資質の男が、首都東京の知事である事は、日本の恥である。これこそ、右翼の標的になるべきである。しかし、今日現在、そのような動きは見られない。まぁ、中国・韓国をあれ程までに悪しざまに罵るくらいなのだから、イスラム国トルコにも、似たような事を言っても構わない、と云う考えなのだろうか。戦争中に日本軍が、中国・韓国でどのような行為を行ったのか、特別な興味は持っていないが、何となく、この猪瀬のような体質を見ると、日本人の弱きを挫く性癖を見てしまうと、推して知るべしな部分が存在するようだ。日本人と云う共通のDNAを持っていること自体が恥ずかしくなるような出来事は、程々にして貰いたいものである。このまま、あと3か所のプレゼンを猪瀬が行うのであれば、まさに彼は厚顔無恥である。たしか知事のリコールは有権者の1/3の署名で成立する。考えてみるのも悪くない。


オリンピックと商業主義 (集英社新書)
クリエーター情報なし
集英社


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


あり得ないが安倍の高等戦略外交 仮にあるとした場合、日本の立ち位置はどうなるか

2013年05月01日 | 日記
アメリカVSロシア―冷戦時代とその遺産
クリエーター情報なし
芦書房


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング

●あり得ないが安倍の高等戦略外交 仮にあるとした場合、日本の立ち位置はどうなるか

 まず初めに瑣末なバカバカしい笑い話に言及しておこう。例の猪瀬という人を小馬鹿にしたような態度のチビ男の話である。猪瀬は完璧なまでの差別主義者、物理的に低い目線から世間を眺めて生きてきた所為か、思考は上から目線一筋の男である。「アスリートにとってベストな場所は、パリやロンドン、東京のように社会インフラが整備された国」、「イスラム諸国はアラーの教義を絶対とする階級社会で、戦いに明け暮れている」、「長生きしたければ日本のように文化を創造する必要がある。若者がたくさんいたって、早死にするなら意味がない」等々。馬鹿としか言いようのない差別発言の連鎖だ。

 この男をシャッポに、今後東京は、オリンピック招致活動を行わざるをえなくなる。最も猪瀬に似合わないニューヨークなどに行って、へらへらした挙句が、これである。まだ、ロシア、スイス、アルゼンチンでのプレゼンが待っている。猪瀬のお陰で、国内でオリンピックを見にゆくチャンスは消えただろう。まさか猪瀬が潔く辞任するとも思えないが、自らの不遜な発言に鑑み、招致辞退表明が妥当な線。

 ところで、昨日の安倍プーチン会談に関する連作コラムになるが、もう少々書いておきたい事がある。安倍自民の経済政策は、一点豪華主義で速攻性を狙っているのだが、6月の三本目の矢、成長戦略をみるまでもなく、戦略などありはしない事は、既にわかり切った事である。円安誘導金融緩和策も、一見成功主義の戦術に過ぎず、マネーじゃぶじゃぶだと云うのに、金利が上がるという怪現象さえ生んでいる。黒田は強がりでニヤニヤしているが、内心は“どうなっているのだ!”と疑心暗鬼に陥っているだろう。この円安政策を苦々しく思うオバマ政権だが、日本経済が立ち直り、豚が太るぶんには隠忍自重、預金が増えたと思えば良いわけで、腹は立つが、強引に潰しにかかる問題でもない、と判断したのだろう。

 しかし、円安の効果が生まれて、日本の景気が上向く兆候は、報道機関の根拠なきプロパガンダ報道に関わらず、必ずしも経済の好循環に寄与しているとは思えない。幾ら、最終的にはTPPで日本の富を、根こそぎ収奪出来るとしても、経過的には、オバマのミスリードを咎められる可能性も出てきた。もしかして、安倍晋三のTPP交渉参加表明が、日本の独立に必要な地ならしの為の時間稼ぎであったなら、と云う不安も抱かないわけではないだろう。ロシアにおける安倍プーチン会談が、一足飛びに日露平和条約に結びつくことはないとしても、米国依存度から、5%程度は後退したシグナルを送っている。

 今回安倍の、ロシア訪問と中東訪問は、経済優先外交を標榜しているが、プーチンは明らかに、北方領土を餌に、日本の経済協力を引き出そうと企んでいる。安倍自身も、領土交渉再開だけでも、得点であるし、瓢箪から駒が出てくるのなら、それはそれで三回目の幸運という僥倖に出遭うとでも思っているようだ。日露の接近は、中国への牽制にもなるし、米国への牽制にもなる。時を同じくして、小野寺防衛大臣がヘーゲル国防長官と会談した。「断固として領土、領海、領空を守り抜く覚悟だ」と表明した小野寺に対し、ヘーゲル長官は「現状変更を試みるいかなる力による一方的な行為にも反対する」と語った。このヘーゲルの発言は、解釈一つでどうにでもなる外交用語発言であり、日中どちらかに寄った発言とは言い難い。日本は、米国が尖閣の主権を認めたような都合の好い解釈に終始しているが、ヘーゲルは、そんなことは言っていない。むしろ、棚上げ状態が本来のおさまり処と思っている節さえある。

 自衛隊の防衛力に絶対の自信があるなら、今さら、尖閣が日米安保の適用内であることを、わざわざ確認しに行く必要などないというものだ。そんなくだらぬ訪米などするものだから、オスプレイ12機の追加配備を呑まされ、御用聞きに行ったようなものである。まぁ現況の日米の外交的力関係から、致し方ない部分もあるが、憲法を改正し、戦える独立国家を目指す以上、独自のオペレーションが行える軍隊の保持が絶対条件だから、最終的には米軍との協力は、あくまで限定的なものに収斂せざるを得なくなる。仮に、単独軍事オペレーションが不可能な軍隊であるなら、憲法を改正してまで、国防軍を創設する意味はなくなる。全然独立していないのだから(笑)。

 仮に、安倍晋三が“憲法を改正し、戦える独立国家を目指すのであれば、単独でオペレーションが行える軍隊の保持が絶対条件”であり、米軍の関与も排除可能な外交的環境整備が必要になる。勿論、そこまでの決意が安倍晋三にあるとすると、これは筆者自身の安倍評価を、根底から訂正しなければならない。まぁ万に一つもあり得ない話だが、万が一のシミュレーションは実行しておきたい。中国は安倍プーチン会談を受け、“核心的利益”の表現を和らげたと云う報道もあるが、“核心的利益”を早々に引っこめるわけはないだろう。ただ、安倍プーチン会談に対し不機嫌になっているのは事実だろう。読売は以下のように報じている。

≪ 露大統領が安倍首相に冷や水…中国メディア酷評
  【北京=牧野田亨】4月29日の日露首脳会談について、30日付の中国主要紙は具体的な成果がなかったとして、「プーチン大統領が安倍首相に冷や水を浴びせた」などと酷評する新華社電を掲載した。  習近平国家主席が3月末、主席就任後初の外遊で訪露した後とあって、対抗心をあらわにした形だ。
 記事は、日露首脳が北方領土問題を巡る交渉の加速化で合意したことは伝えたが、欧米メディアの論評を引用する形で、「安倍氏が言う『大きな成果』は具体性がなく、共同声明は問題解決に向けた政治的意欲と外交姿勢を示しただけだ」と指摘。プーチン氏が共同記者会見で、領土問題について「明日にでも解決するという意味ではない」と述べ、慎重姿勢を崩さなかったことを強調した。≫(読売新聞)

 現実は、相当に中国は苛立っているだろう。搦め手の対中外交としては、安倍君のワンポイントゲットである(笑)。その証明ではないが、中国は“核心的利益”を和らげるどころか、「沖縄に日本の主権は及ばない」と云う論文を、中国外務省傘下の外交専門誌「世界知識」に掲載している。「琉球国に対する併合は日本のアジア侵略の始まりだ」とのたまっている。歴史上の一部分である事実関係は否定できないだけに、相当過激な反撃である(笑)。流石に、故に中国のものだ、とまでは主張してない。しかし、この琉球王国の存在を国際的に中国の主張は、本土と沖縄と云う歪んだ関係において、日本政府や米軍にとってボディーブロにはなる。

 しかし、中国共産党が、そのような主張を公式に表現することはあり得ない。自国の自治区に対する併合など、叩けば埃だらけになるだけで、天に唾するような話になってしまうからだ。ただ、このような論文の情報が、世界に流布するようだと、沖縄への日米の取り扱い態度に対し、かなりの影響を及ぼすだろう。オスプレイを追加配備、沖縄をオスプレイだらけにするとか、辺野古埋め立てを強行するとか、「琉球独立運動」に油を注ぐ事態にもなりかねない。このような事態は、日米安保自体の存続の危機に近い問題で、日米政府を悩ますことになるだろう。

 安倍プーチン会談で、係争領土の解決として、ロシアは過去に、面積等分方式で、中国やノルウェーとの係争を解決した、と例示的に示したらしいが、その方式で解決しようと言ってはいない。安倍の興味を引きつけるリップサービスだ。菅官房長官は面積折半方式について「4島が日本に帰属するという前提に立って返還を進めていくのが基本方針だ」と建前論に終始した。面積等分方式は国際的な紛争解決としては妥当な線で、永遠の係争地にしておくよりも有益だろう。今さらイデオロギー論争を引っ張り出す必要など皆無だ。しかし、そのためには、日本のボランティア的経済協力が求められることになるだろう。

 このような中国、ロシアにまつわる外交安保上の問題では、今までは、米国が深くコミットしてくるので、今後の推移は注目に値する。安倍は、自らの意志に基づかない、中国や米国を牽制する外交が行われている事実を知らないのではないのだろうか(笑)。本来は、己の政権の命運を掛けるような意義深い訪露を、かなり軽いものとして感じているような節がある。歴史と云うものは、常に、その時の権力者のイニシアチブで実行されると云うよりも、歴史の必然の潮流に巻き込まれて起きる場合もある。仮に、この流れが加速した場合、日露平和条約が成立する事態も起きるだろう。

 こうなると、日本は米露と云う二大軍事大国を用心棒に雇うことになるのだが、みかじめ料も相当なものになる。中国の舌鋒に翳りが出ることもあるだろう。かといって、日本が核保有国になることは、米中露が認めるとも思えないので、核以外の防衛力の強化で戦の出来る独立国を目指すことになる。その防衛力強化の中には、外交力を余程強化する必要が出てくるわけだが、そんなことは可能なのだろうか。都合良く事が推移すれば、米中露トライアングル地帯に生きる中立国が誕生するが、米中露トライアングルの国から、同時に見放される事も考えておかなければならない。

 自力で生きる国家と云うもの、単に独自軍隊を持ち、戦える国家を作ると云う発想よりも、他国からの輸入がないと生きていけない国からの脱却の方が、どれ程賢いか、判りそうな気もするが、そういう国家哲学に至る気配すら見えない日本で、これを語っても、馬の耳に念仏だ。いま言えることは、米中露トライアングルと云うポジションが必要なのか、対米依存が有効なのか、実はそう云う問題が存在し、それを国民が意識下に置くことが可能かどうか、これからの日本には必要な課題なのだろう。


プーチン 最後の聖戦 ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?
北野 幸伯
集英社インターナショナル


 励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


よろしくお願い

https://blogimg.goo.ne.jp/img/static/admin/top/bnr_blogmura_w108.gif