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●安倍政権の無駄吠え “TPP・カジノ・対米中露韓外交・グローバリズム”
何をやっても、国民は無抵抗。野党勢力も諦め気分。メディアは死に体。世論の風向きが変わる雰囲気もない。国民も、身の回りの生活に関する情報には敏感だが、身の回りから、1キロ離れたら、“関係ネ!”状態になると、回りまわって影響があるなど、気づく人は滅多にいない。
我が国は、野田民主党が安倍自民に身売りでもするような狂気の解散を選択、お天道さまが描いたような、見事な保守政治体制を通り越して、歴史修正主義の意図さえ抱えた安定政権が誕生した。安倍自民党政権は、癒着の宗教政党公明党と選挙メカニズムの有効性に若干の陰りが見られるものの、衆参両院の過半数堅持を実現している。この保守的勢力に、政党としての質量ともに、全身に滑りでも塗ったような、目的不明の政党が協力する方向にあり、気がつくと、両院は、改憲政党2/3議席確保状態になっている。
安倍自民政権は、戦前戦後を通じて、最も強力な政権を樹立する幸運に巡りあい、完璧な安倍一強政権を実現した。この事実に、面と向かって、異を唱える者はいないだろう。おそらく、当のご本人、安倍晋三さんも、俺って幸運な男だ。たぶん、いま、世界で一番安定した政治権力者は俺だろうと、自負しているに違いないのだ。自由主義やグローバリズムと云う、“普遍的価値”に遂に追いついた安倍さんにしてみれば、これで、世界の主たるプレイヤーになれると確信しているのだろう。
右巻きな歴史修正主義な国家観を持ちながら、何とか、弱味を持たない西側主権国同等の価値観と同等の立場になり、自他ともに認める主権国家として振る舞うことに邁進した。つまり、憲法も変えて、西側価値観の一致と、行動の一致を実現し、戦後の敗戦国根性の払拭は、安倍さんの祖父さん含めた、トラウマの払拭なのかもしれない。つまり、その目的が強烈であったため、現実の世界で起きている、20世紀的ではない世界のバラバラな、しかし、確実な逆方向のモメンタムに、気づくことはなかった。冷静に見つめたら、安倍さんの国会運営は、直近の世界の趨勢は一過性と悟りきっているようだが、20世紀が葬られようとしていると読み解く方が妥当なのだと思う。
一周遅れで、西側価値観の仲間入りを成し遂げるために、安倍さんは、強権的悪人になることも厭わない決意だったのでしょう。そして、その強健な振舞いは、酷く反知性的であり、且つファシズム的臭いの強いものとなっていた。しかし、有能な取り巻きのお蔭で、安倍さんの権力は、日本国内では盤石なものとなってしまった。テレビ局から、大手全国紙に権力に逆らうことを許さなくしたわけだから、余程のひねくれ者が文句を言うだけで、メジャーな言説は、すべて安倍政権是認の世論を作り上げた。これら一連の安倍官邸の統治メカニズムはナチスの手法をなぞっているようなものだが、21世紀においても4、意外に通用することを、見せつけた。
或る意味、異様な世界を現実化させるほど、安倍自民政権、否、安倍晋三一強政権は、日本国内では成立したのである。このような政治・社会現象が、正常な現象であるかどうか判断は留保するとしても、現実に、逆らうヤツのいない政治的空間を、安倍さんは作り上げたし、日本社会は、そのような社会現象の成立を消極的であったとしても、認めたのである。
日本と云う国が、漸く世界レベルの国になったのだから、これからが、安倍さんの政治的収穫期が到来すると云う図式であった。しかし、日本は変ったのだが、世界は待っていなかった。安倍さんが、あらゆる常識を踏みにじってでも、軍事力の行使も辞さない、自他ともに認める独立国であるための構成要素を整備するために、ありとあらゆる、脱法的、反知性的、恫喝的手段を持って、まさに、今日こんにち、外見上成し遂げたのである。世界が、我が国の都合に合わせてくれていれば、安倍首相は最も優れた内閣総理大臣の名に恥じない功績を上げたことになる。
今までの、我が国の首相としては、善きにつけ悪しきにつけ、熱意を持って、自己の職責と思い込み実現の為に、恥も外聞も恐れず行動した首相はいないだろう。おそらく、首相が、信頼に値する人々を中心に、物事を考え、どのような方向で政治的決着をつけているか、目標の立てかたも、他の政権に比べて、具体的だったものと思われる。曖昧さを排除したため、過去の官邸に比べて、強権、恫喝等々リベラルな味つけなどは一切不要政権運営がなされ、単なるデモクラシー信奉者に寒気を与え、世界も、安倍官邸と同調的動きを見せるとなれば、相当に悲劇的「日本の姿」が見えてくるところであった。
しかし、日本人にとって幸運であり、安倍一強政権にとって不運な世界の動きが、ありとあらゆる分野において、時代の潮流と呼んでも構わない水準で、世界各地で、勃発的であるのに、俯瞰的に眺めると連鎖的に、「反グローバリズム」の流れは確実化している。エスタブリッシュメント層に陣取っているグローバリズム勢力の逆襲が明確に起きるのなら、既に、その兆候は見られるはずだが、自由主義、グローバリズム陣営の動きは極めて鈍い。世界のエスタブリッシュメントであり、グローバリズム勢力は、概ね重なるわけだが、この1%から10%のエスタブリッシュメントな人々が、99%から90%の一般国民から、民主主義のツール(選挙)を通じて、正面から異を唱えられ、選挙結果から、エスタブリッシュメントな人々の退場と云う、具体的政治傾向が、具体的に世界各地で起きている。
それら、反グローバリズムな政治勢力は世界の大きなうねりとなっているが、そのウネリが今後どのようなものになって行くのか、明確にはなっていない。ただ、それらの動きは、グローバリズムに対して、親和的な歩調を示す可能性は低いものと思われる。安倍一強政権は、より一層のグローバリズム(特に経済活動)を強く指向していたわけだが、この思惑は、完全に外れることになりそうだ。一過性のトランプノミクスで一時的な円安株高が示されているが、世界経済の実情との乖離はあきらか。一過性の問題に過ぎない。世界の自由貿易の流れが、停滞することはほぼ明白であり、興味は、その停滞度に移っている。
トランプ米国の外交方針が正体を現している状況ではないが、CIAを中心とする、インテリジェンス外交から、目に見える腕力勝負になる可能性は多い。ただ、迂遠な戦いは少なくなるので、軍事的世界の問題は、犠牲が出ることはあるとしても、短期間で決着と云う、乱暴な国務国防な選択が多くなると解釈した方が良い。安倍さんの安保法制実施のいい機会ではないかと云う説もあるが、実際は、法整備したが「使わない法」であることを望んでいる安倍政権にとっては、諸刃の剣になりかねない具体的事象が起きるかもしれない。自衛隊員の戦闘による死傷事故である。
グローバリズム経済の追求が、アベノミクスの原点なわけだから、欠点だらけでも、世界の潮流がグローバルである限り、言い訳の材料に事欠かない。しかし、あれ程、日本経済の成長の原動力となる「TPP」と云う協定は、トランプ大統領の出現で、グローバルな自由貿易とは逆さまな内向きで、自己利益中心主義な動きを、少なくとも当面は、看板を下ろすことは期待できない。つまり、米国は、対米貿易黒字国に対して、厳しい要求を突きつけてくるのは、決定的だ。
GDP経済成長主導型グローバル経済の終焉は、5年ほど前から、明確に指摘はされていたが、エスタブリッシュメント層は、それを無視する態度に終始した。しかし、ぶくぶくに太った金融エスタブリッシュメント層にも、グローバル経済のフロンティア不足は、伸びるべき市場の不足、謂わば、マネーが餌を失う現象を見せるに至っている(マイナス金利政策)。
グローバル経済政策のハズレだけなら、安倍政権は持つかもしれないが、世界的なグローバリズム否定の流れは、当然のことだが、外交安全保障の面で、劇的な変化を見せるであろうことは、当然である。安倍官邸が、描いていた「普遍的価値外交」の、普遍的が、あっさりと変えられたのだから、忌々しき事態になるのは確実だ。これ以上を、具体的に書く必要はないだろう。対米、対中、対ロ、対韓……。すべて、根本的に見直すことになる。山口でのプーチン会談での、思わぬ成果なし外交が、安倍晋三のケチのつき始めとならないことを祈りたいものである(笑)。