世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

“小沢の選択” 永田町通の情報・消費増税で野田が自民案丸呑みで大連立

2012年04月15日 | 日記
電力と国家 (集英社新書)
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“小沢の選択” 永田町通の情報・消費増税で野田が自民案丸呑みで大連立 


 評論家と云う類に“永田町通”と云うのがいる。それなりに意味のある存在だ。しかし、55年体制が長過ぎた所為か、情報を入手する関係者も減少し、思考経路も旧いままだから、情報に偏りがある上、その情報の解釈に時代性を加味する事が出来なくなる。三宅久之、田原総一朗、田崎史郎、後藤謙治、歳川隆雄等々が、そのような人々である。 *ただこれらの人々のすべてを否定するものでもない。何故なら、時に情報だけは正しいと思われる部分があるからだ。勿論、その情報の解釈は“生活の為”の心理が強く作用するので、多くの場合歪曲な解釈に陥るだけである。多少、政治に関心のある人々は、一般市民では掴みにくい永田町の情報を、彼等から得ることは、それなりに価値がある。そして、永田町の思惑を知ったり、独自の解釈を加えて読むことで、真実に一歩近づくことも可能である。当然、当たり外れはあるわけだが、政治は論理的に進捗するとは限らないので、その解釈の正誤は別問題である。

 以上のような立場で、以下の歳川氏の“野田・谷垣大連立”を読んでみるのも面白い。日経BPでは、歳川同様のネタで田原が“野田内閣に重くのしかかる五つの政治課題”と云うコラムの中で、同じネタ元なのだろうか、野田民主と谷垣自民の連立があるだろうとコラムを書いている。田原の場合、「ON THE WAY JOURNAL」も同様の考えを披露しているが、「小沢一郎が増税法案に造反して離党しても、ついて行くのは20人に過ぎない」と断言していた。(笑)ただ、流石に日経系雑誌の文字に残すことは憚られたようである。つまり、小沢に関しての情報は、誰も彼もが憶測“飛ばし”発言をするものだ、と心得ておく方が良いだろう。先ず、歳川隆雄のコラムを掲載しておく。

≪ 自民党案を丸呑みすれば消費税増税は実現できるという首相の強気を支える「野田・谷垣極秘対談」の仕掛け人は誰だったのか
 消費増税を巡り激しい応酬があった4月11日の党首討論(QT)の前日のことである。「私は谷垣(禎一自民党総裁)さんを敵だとは思っていない。 先輩政治家としてリスペクト(尊敬)の念を持てる方だ」---。野田佳彦首相は内閣記者会のインタビューに応じて、そのように述べた。と同時に、「消費増税関連法案の今国会中の成立を期することが責任を果たす最低の条件だ」と語り、改めて会期延長による継続審議を行わない強気の姿勢を示した。
 党首討論でも谷垣氏が「政治生命を掛けるとおっしゃった。できなければ内閣総辞職か衆院解散の覚悟は?」と水を向けると、野田氏は「政治家として 重い言葉だと強く自覚している。色々なシミュレーションはある」と答えた。
 ここで注目すべきは、野田氏の強気の「根拠」である。仮に民主党内で小沢一郎元代表ら反消費増税派が法案採決時に造反したとしても、消費増税関連法案を修正どころか自民党案を丸呑みすれば、谷垣自民党が賛成に回り可決・成立できると踏んでいるのではないか。 野田・谷垣を結びつけたのは誰か
 だからこそ、改めて2月25日の「野田・谷垣極秘会談」がクローズアップされる。焦点は、「両氏を結び付けたのはいったい誰だったのか」に尽きる。
 両氏の関係は、予想外のことだが、実は古くて長いものである。93年総選挙で日本新党から立候補・初当選を果たした野田氏が政治家になって最初にご馳走してもらった相手こそ谷垣氏であったというのだ。「リスペクト」する理由のひとつは、案外、そういった俗人的な出会いにあったのかもしれない。
 それはともかく、二人を仲介したのは、杉崎重光元国際通貨基金(IMF)副専務理事(現ゴールドマンサックス証券副会長)であるという信頼すべき情報がある。 1964年入省の元大蔵官僚・杉崎氏の義父は故金子一平元蔵相(金子氏の3女が夫人)である。売上税導入を図った大平正芳内閣の蔵相であり、その蔵 相秘書官を杉崎氏が務めた。
 そして自民党にあって池田勇人元首相が立ち上げた宏池会(旧池田派)の同志だったのが、農水官僚出身の谷垣専一元文相である。谷垣総裁の父親である。谷垣氏は現在、金子一平氏の長男・金子一義元国交相ともども野党自民党の宏池会(古賀派)に属している。
 そもそも宏池会は、大蔵省出身の池田勇人が創設、後に同じ大蔵OBの大平正芳が引き継ぎ、さらに時代を経て、これまた元大蔵官僚の宮澤喜一元首相 が踏襲した伝統ある派閥だ。そして、大蔵省(現財務省)に隠然たる影響力を持つ党内主流派の位置を維持し続けた。いってみれば、すべて自民党一党支配の 55年体制時のことだ。
 では、なぜ杉崎氏なのか?  消費増税実現に「政治生命を掛ける」野田首相を全面支援する現在の財務省パワーハウスの中心にいるのが、いまメディアで取り上げられる勝栄二郎事 務次官(75年入省)である。その勝氏が入省して配属されたのが主税局国際租税課。その当時の上司が同課長補佐だった杉崎氏なのだ。
 さらに言えば、谷垣氏が小泉純一郎政権下の財務相時代の大臣秘書官である星野次彦官房審議官(主税局担当・83年)は、杉崎官房審議官(国際金融局担当)当時の国際金融局為替資金課課長補佐であった(因みに、勝氏も同課課長を歴任している)。星野氏は消費増税関連法案を所管する古谷一之主税局長 (78年)の下で、香川俊介官房長(79年)を司令塔とする財務省の対永田町工作チームの主要メンバーである。 長時間の協議をした可能性  絵解きをすると、次のようになる。
 野田政権を支える財務省の勝、星野両氏とは浅からぬ関係がある杉崎氏は、大平政権の金子一平蔵相、その金子氏とは同志である谷垣専一氏、大平元首 相の女婿にして大蔵OBの森田一元運輸相、つまり大平ファミリーに連なるのだ。  従って、谷垣禎一、金子一義氏といった現在の宏池会の面々にも刺さっている。
 次は、肝心の野田首相との関係である。この点については、正直言って、未だ解明できていない。が、杉崎氏の大平人脈を把握する勝事務次官がトップ会談を実現すべくアプローチ、杉崎氏が谷垣氏を説得したのではないか。
 もちろん、別途政治レベルでも野田・谷垣会談の実現で動いた痕跡がある。麻生太郎元首相が盟友の大島理森副総裁にトップ会談を進言、一方で日伯議連の関係で旧知の藤村修官房長官に働きかけたことも、極秘会談実現に寄与したのは紛れもない事実である。 こうして2月25日午後、ホテルニューオータニ内の「千羽鶴」で野田首相と谷垣総裁は長時間話し合ったのである。ホテルオークラ内の「山里」は"目晦まし"として使われたに過ぎない。
 首相動静を報じるべき共同通信、時事通信両社の官邸詰め記者は「山里」まで野田首相を追尾したが、同行のSP(?)から「総理は1時間もすれば公邸に戻るのでそちらで待っていたら」と言われ、持ち場を離れたとされる。
 公邸に戻ったとする官邸発表の「午後0時50分過ぎ」は、実は両通信社記者に現認されていないのだ。なぜならば、野田氏は内閣府側の通用門から公邸に戻ったからである。つまり、野田、谷垣の二人は長時間の協議を行った可能性が高く、そこでは大連立も話題となったはずだ。≫(現代ビジネス:ニュースの深層:歳川隆雄)

 たしかに、党首討論や政党間の野田内閣が出した“消費増税法案”の取り扱いは紛糾し、二進も三進も行かないような趣になっているが、与野党の紛糾など無きが如き経過を踏んで、野田財務政権は“蛙の面に小便”な勢いで“不退転”の姿勢を崩していない。表向きの対立構図から考えれば、政治生命・命を掛けても構わないと云う野田財務政権の法案は、民主党内の反対も含め成立する見通しは皆無だ。にも拘らず、今月末の公式訪米のスケジュールだけは確定的になっている。なんだか、消費増税法案の結論、小沢裁判の結論、TPPの参加表明、原発再稼働が既成の事実のようにさえ見えてくるから不思議だ。

 この不思議だと云う疑問に答える為に、掲載した歳川のようなコラムも生まれるし、日経BPの田原のようなコラムも生まれる。つまり、絶対不可能なものが可能になると云う近い将来への野田の“確信的行動”に裏があると考えざるを得ない政治状況になっている、と云うのが現在の状況なのだ。正直、現時点では、両名のコラムが考えるような事実がなければ、野田佳彦は只の思い込み勘違いの馬鹿と云う事になるが、取り敢えず馬鹿では前提で考える必要もあるのだろう。野田の確信的行動の原動力が自民党との密約の事実にあるのか、それとも“財務省官僚の読み”に頼った願望的博打政局なのか、答えはいずれ出ると云う事になる。

 幾つもの想定が考えられるが、小沢を基本的に支持する筆者にしてみれば、最終的に小沢の政治理念が生きる政治を実現したいわけだから、小沢同様、最善、次善、三善…時には最悪な場合も考えるべきだと思考する。願望を排除し、最悪の事態を想定するシナリオを想起しておく必要はあるのだと思う。小沢信者の人々の中には「縁起でもない事は、口に出すのも不快だ!」と云う風潮もあるが、現実はそうも行かない。既存の権力に、デモや集会等々、あらゆる圧力を掛けることも是認するが、筆者はあくまでつたない思考の範囲で支持して行こうと考える。現実に行動しないのは生ぬるいと云う意見も多数貰うが、これは個人の生き方の問題なので、与するつもりは毛頭ない。

 政党と云うもの、本来であれば一本の骨太の理念に従って存在するものだ。そうでなければ、民主主義において、主権者である筈の国民の選択(選挙)が不毛なものになってしまう。所謂、国民の選択が形骸化するわけで、最終的には憲法で保障されている“主権在民”を根底から覆す政治制度になってしまう。選挙はセレモニーに過ぎず、その後政党を構成する政治家や、それを取巻く霞が関官僚や政治プレッシャーグループの工作により、如何様にも変貌を遂げるのであれば、それはもう民主主義国家とは言えないのである。現在の民主党政権が、それを如実に表して体現させている。国民新党も同様だし、自民党も野党なので目立たないが、同様の体質を有しており、いつでも公約を裏切るリスクを抱えている。

 このような状況下で、小沢一郎と云う政治家の存在は救いだが、最悪のシナリオ一つに依っては、その救いさえなくなる可能性がある。これも日本と云う国の運命と云う達観した心境になるのはた易いが、一定の抵抗は示しておかなければならないと思考する次第だ。

 さて、日本の政治にとって最悪のシナリオはどのようなものだろう?先ずは、小沢一郎の裁判の判決が“有罪”と出る場合だろう。常識を逸脱した判決が容易に出る法治国家なので、有罪無罪、どちらの可能性がどうのこうのと論じても詮方なし。こう云う場合は、悪い結論に立って物事を考えておく方が妥当だ。悪い方向の予見をしておくことで、次善、三善の策も有効になると云うものだ。小沢有罪判決の場合、法的には、小沢側は自動的に控訴手続きと云う事だが、政治的にはどうなるのだろう。

 民主党内での一定の範囲で発言力に減少は見られるだろう。“新政研”から離脱する政治家も出てくるだろう。党内の反小沢勢力は、党として更なる処分と云う声も出てくるかもしれない。党員資格停止の次は、多分除名と云う事になるのだろう。有罪の場合、9月の代表選で小沢が出ることもなくなる。このような事態が訪れた場合だからこそ、本当に小沢についてゆく政治家が絞れるわけで、それなりの効用もある。ただ、2割くらい支持議員が減ることは覚悟すべきだろう。120人レベルから95人前後に落ち込むかもしれない。それでも民主、自民に次ぐ第三勢力を維持するところがポンイントだ。

 小沢ネガキャンがマスメディアで幾分下火になっているが、おそらく再燃するだろう。民主党の小沢支持議員の腹が試される重要な包囲網が形成される。しかし、そのような事態は、小沢グループが磨かれるチャンスであり、尖鋭化が期待出来る。尖鋭化する度に落ちこぼれも出てくるだろう。玉を磨いている間に、回りが擦り減り60人前後になるやもしれない。しかし、それでも60人なら、第三政党の勢力図にある。此処が肝だ。荒唐無稽の石原新党とは、此処が決定的に異なる部分だ。夢想ではなく、リアリティがあるのだ。

 民主党内で確定判決ならいざ知らず、一審判決で除名は拙速だと云う小沢支持議員以外からも異論は出るだろう。ただ、次なる最悪の想定、「民主と自民の連立密談が成立している」とした場合と密接に関係する。石原伸晃幹事長の「小沢を切れ」の意味が現実化する。それはそれで良い事だろう。民主党に見切りをつける“大義”を必要とせずに「小沢新党」を立ち上げざるを得なくなる。マスメディアは“小沢一郎、追い込まれて新党結成”などと書くだろうが、そんなのはどうでも良い。そのような事態においては民自連立、もしかすると公明党も加われば、「民自公」と云う大連立が実現するが、今度は最大野党が小沢新党になりうる。

 無罪の判決が出ても、今度は「政治と金」だとか「政治家としての説明責任」だとか、執拗に小沢ネガキャンは続くだろう。小沢支持者は怒ったり、苛立ったりせず、そのような構造的に報道を曲げないと生きて行けない憐れなマスメディアの運命を冷徹に眺めていれば良いだろう。“話し合い解散談合”が成立して、即刻解散総選挙に走るか?或いは任期一杯連立の枠を堅持、暫しの与党気分を味わうか、この辺は微妙な按配だと思う。ただ、いずれにしても、この大連立政権の運命は、1年数カ月で御破算にせざるを得ないわけである。

 問題は結局、小沢が有罪でも無罪でも、民自の大連立は一時の権力掌握に過ぎず、国民から手荒な洗礼を浴びるだろう。橋下の政治的体質や資質にはまだまだ未成熟な謎も多い。ただし、一定の人気は継続する程度のブレーン陣は擁立している。石原新党とは自ずと構築度が異なっている。ただ、単純な括りの地域政党と云う枠組みにも無理があり、やはり核は橋下にならざるを得ない。この維新の会だが、隷米的だと云う批判が渦巻いているが、反官僚で隷米と云うのは無理がある。隷米で脱原発と云う理屈も頭を捻る。

 反原発では、橋下が最も先鋭化している。小沢は一定程度の原発再稼働も致し方なしと云う姿勢と思われる。消費増税に対する反対姿勢は同じだ。大胆な行政改革(霞が関改革)なくして、増税もヘッタくれもないも一致している。ただ、その後の消費税の処遇方針は異なるだろう。微妙に一致していたり、方向性に違いがないわけでもない。市場原理主義の所謂リフレ派がブレーンに多いのだが、橋下が自由競争と弱者救済をどのレベルまで昇華しているかは未知数だ。

 ただ、民主自民の大連立には猛反発するだろう。
≪維新、衆院選で民主と「全面対決に」…松井知事
  地域政党・大阪維新の会(代表・橋下徹大阪市長)は14日の幹部会議で、次期衆院選では民主党と連携しない方針を決めた。
 国政進出を目指す維新の会と、野田政権との対立は決定的となった。
 幹部会は、政府が大飯原子力発電所3、4号機(福井県おおい町)の再稼働要請を決めたことに対し、橋下氏が「次の総選挙で(政権を)代わってもらう」と発言したことを受けて開かれた。橋下氏は出席しなかったが、橋下氏の民主党との対決方針について、出席者から異論は出なかった。
 維新幹事長の松井一郎大阪府知事は会議後、「原発再稼働については、民主党と我々の考えは全く正反対だ。今のままでは(次期衆院選で)全面対決になる」と述べた。≫(読売新聞)

 この民主党と連立を組む自民党が出現すれば、当然連立政権自体が敵と云う事になる。是々非々で対決などと云う半端な政党では、現在のような閉塞的国民の人気を引きつることが出来ないことは十二分に知っている。水を求めている砂漠で、果物と水を差し出した場合、渇望者がどちらを選ぶか自明だ。連立が、霞が関態勢温存で55年体制の回帰は間違いないわけだから、橋下らが民主・自民と組む方向性は自殺行為。だからと云って、みんなの党と合わせても、241議席を一気に奪取する事も不可能。公明党だけでも足りない。やはり、最後は小沢一郎の力を借りることになる。

 次の政権選択は小沢一郎が望まないだろうが、政権政党なきカオスの政治状況が出現する可能性は高い。民主が100人以下の政党になるのは自明。多分自民も100人以下になるだろう。維新塾政党も100人以下、小沢新党も100人以下。それに小党を含めた混沌そのものになる。三竦みどころか、権力四竦みと云う容易ならざる自体になり、日本の政治はまた更に一歩後退を余儀なくされる。これが嫌なら、“民自党”対“小沢橋下党”の方が2大政党的方向の明確化は可能だ。果たしてどのようになるか?ただ、言えることは、小沢の判決がどちらに出ようとも、結果は大きく変わらないと云う点が、今夜のコラムで言いたいところだ。

社会的共通資本 (岩波新書)
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