Ruby の会

シニアライフ~能楽・ボランティア・旅行・食べ歩き・演劇などを綴っています

観月の集い

2017-10-09 | イベント

 10/4(水)は仲秋の名月。この日は呉羽の「マリーマリー」でYOさんとランチをした日だった。「高志の国文学館」で「月の集い」があると聞いていたが、やはり回れなかった。夜、「あかね」のOさんから「月がきれいですよ」とメールが届き、外へ出てみた。

 テレビのニュースでも何度か美しい映像が映ったが、月を写すのは難しく、私のスマホと腕では月は真っ白にしか写らない。 

   翌日、謡の山崎先生のお宅へ謡と太鼓を合わせるお稽古に伺ったら、前日の「月の集い」の話を伺うことができた。平米公民館で申し合わせをされた時からぜひ行きたいと思っていた行事だ。
 👇は、ポスター。

 プログラムは:
 1.能 富山宝生会
   舞囃子「藤」 序の舞

 2.声楽と朗読 野上聡子(ソプラノ)、中崎圭子(朗読)、奥田知絵(ピアノ)
   枕草子 「春はあけぼの」  (朗読)
       「私の好きな月」  (歌・ピアノ)
       「月のいとあかきに」(朗読)
       「月の夜」     (歌・ピアノ」

 3.弦楽四重奏 桐朋オーケストラ・アカデミー
   朧月夜、荒城の月、モーツァルトの弦楽四重奏曲「狩」より、星に願いを、
   見上げてごらん夜の星     

 👇は、能「藤」の説明プリント:

 👇は、当日山崎先生が話された「解説」プリントからの抜粋です。お能が苦手と言う方にもわかりやすい話なので、ぜひ読んでみてください。

 「月の集い」:

 ~~~ こんばんは、富山県宝生会の山崎と申します、私たちはお能を演ずる団体です。
 今夜は仲秋の名月、そして大伴家持生誕1300年と言う事で、万葉集と月にゆかりのお能『藤』を「舞囃子」と言うお能を簡略化した形で見て頂きます。

 お能って言うとよく「ちょっと難しくって」とおっしゃる声を耳にします。そこで今夜は先ず10分間ほど演目についての解説をします。そのあと私たち会員による『舞囃子・藤』を約20分間、併せて30分間のお時間を頂戴いたします。
 大伴家持は越中の国の国守として約5年間高岡市の伏木に赴任していました。伏木と言えば二上山の麓ですね。あの山を越えた裏側に『田子』と言うがあります。そのの一角に小っちゃな小っちゃなお宮さんがあります、今もあります。そのお宮さんがこの物語の舞台です。

 時は平安時代、京の都に住むお坊さんが善光寺へお参りの旅に出ます。昔の旅は全部歩きですね、それは大変だったと想像されますよね。でもこのお坊さん、お金持ちだったので半日は歩いて、あと半日は船旅とちょっと優雅な旅です。石川県の小松あたりで船に乗り能登半島の付け根の高松村という所に着きました、ここからは徒歩の山越えです。山の峠付近に差しかかります。石動山と言ってその当時は高野山にも匹敵すると言う寺院群がありました。今も当時をしのばれる跡を見ることができますので興味のある方は一度訪ねてみてください。そこを通り過ぎて灘浦からまた船に乗り国分の浜、昔は紅葉川と言う川があってそこの港に着きました。「そうだ、万葉集にある藤の綺麗な田子の藤波神社を見学しよう」と、少し戻ることになります。

 このあたり、お能独特の表現の仕方があるので見て頂きます。お能には歌舞伎や演劇と違って舞台装置がありません。物語の進行はみな、見ている人、お客さんの想像力の中で進みます。私は旅の坊さんです、私が先ほどの地名が入ったお謡を謡いながら四歩ほど進み、四歩ほど戻る間に舞台が小松から氷見まで来たんだな、背景が変わったんだと思って舞台を見て頂きます。やってみましょう。
 『雪晴るる~  』(先生の実演) 
 どうでしょうか?あなたの頭の中での舞台背景は変わったでしょうか。これができるとあなたは立派な鼻高さんです。
 さぁ~、氷見に着いたお坊さんは海際に立つ松の枝にまつわる見事な藤を見つけました。そこで一句「常盤なる 松の名立てにあやなくも 掛かれる藤の 咲きて散るやと」(常緑の立派な松の名をさらに高めるように見事に咲いた藤もやがては散って行く悲しい定めです)と歌ったのです。
 すると、松の影より村人と思われる女性が現れてきました。「なんで藤の花は松の名立てなんですか?田子の浦の水面は、藤の花の色を映し、匂いまでも水底に移していますよ、私はこの花を髪飾りにして藤の花を見てない人に見せてあげましょう」とこんな歌を詠みます、「田子の浦 底さへ匂う藤波を かざして行かん 見ぬ人の為に」 そうですね、万葉集の歌です。そんなことで少し問答して女性は「実は私はこの藤の精なのです」と名乗って姿を消します。

 『汀に靡く松のもとに、寄ると見えて失せにけりや~』
 ここでぐるりと一回りする動作を、観客は藤の精が松の木の陰に消え失せてゆくのだと思って見て頂きます。映画やテレビでは簡単にできるシーンですが、お能では皆さんの想像力(感性)の中で見て頂くと言うのがお能の約束事なのです。
 ここでお能の前半が終了します。お坊さんはこれは不思議だ、今の出来事は現実なのだろうか?夢なのだろうか?夢ならばこの続きを見たいものだと今夜はここに野宿することにします。夜になり、おぼろ月の幽かな光の中に先ほどの女性が本当の藤の精の姿となって現れてきました。
 
 このお能を全部演ずると一時間以上かかりますので今日はここから演じます。
 『沖つ風。吹き越す磯の松ヶ枝に』で始まるこの場面に皆さんはどんな背景を想像しますか?藤の精が舞台を一回りする間にその景色を思い浮かべてください。春は花、夏は橘、秋は月、冬は千鳥と謡はその景色を映し出します。
 やがて藤の精は舞台中央に立ち、扇を広げて自分自身藤の精の舞となるのです。謡の声が止まりお囃子だけの舞の部分を『序の舞』と申しております。この曲のクライマックスです。
 『阿尾の浜風 田子の浦波 光影さす旭日山』と土地の地名を織り込んで最後はぐるりと一回りする形にどんな約束事がありましたか?そのへんも思い出しながら鑑賞ください。~~~

 能「藤」は何度か見ており、藤波神社も石動山も何度か訪ねている。特に、最後の部分は、仕舞の地謡で何度か暗記もしたのだが、このような詳しく物語を知らずにボンヤリ見聞きしていた。「序の舞は長いな~」の感想ばかりで今更ながら恥ずかしい。

 この日の出演の皆様です。
 シテ:車伸代 
 大皷:松本一郎  小鼓:上田美雪  太鼓:上田博  笛:瀬賀尚義
 地謡:山崎健、舘聖、大澤永靖、水口純治


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4 コメント

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Unknown (なは)
2017-10-09 17:07:17
清姫様
綺麗な名月の写真ですね!昨夜(8日)の月も澄んで綺麗でした。
私、演劇でやはり疲れたのか、行きたいと思っていたのですが行きませんでした。
でも、貴女のこのブログで山崎先生のお姿やお話しぶり、息遣いまで思い浮かべることができます。
素晴らしい会だったのですね!お能あり、声楽・朗読(枕草子を取り上げられて珍しいことでしたね)あり弦楽四重奏等々いいプログラムでしたね。
おまけに山崎先生の詳しいお能「藤」の解説まであって、今更参加しなかったことを残念に思います。
でも、詳しく載せていただきましてありがとう!
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Unknown (清姫)
2017-10-10 17:48:10
なはさん
昨夜から大騒ぎでしてね。ともかく、「ワンピース」を見られるだけでも良かったですね。昨夜の”Life"での猿之助さんの素顔でのインタビューを見ていて、ホントにお気の毒に思いました。早く回復されるといいですね。
山崎先生の原稿が、あまりにも面白くわかりやすかったので、頑張って全文打ちました。変換ミスをいくつか見つけたので今日訂正しましたよ。
「藤」の万葉集の和歌の部分もわかりやすいですね。昨夜のアクセス数がとても多く、今朝ビックリしました。どの記事へのアクセスが多かったかはわかりませんが、たぶん「観月の集い」ではないかと…。
来年はどんなプログラムになるかはわからない、今年だけかも、と先生は言っておられましたが。
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Unknown ()
2017-10-10 23:55:58
長いあだ休んでいる間に、たくさんの記事を書かれたのですね。
名月、きれいに撮れていますよ。
フェルターがないかぎり、そんなものです。
月は、結構明るいのです。
越の国文学館の話は聞いていたのですが、行く気がありませんでした。
さすが、山崎先生! 分かりやすいですね。
これだけ、写し取るだけでも大変でしたね。
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Unknown (清姫)
2017-10-11 23:10:43
姫ちゃん
ブログ再開、ホントによかったね!
そしていっぺんにたくさんのコメントをありがとう。
お月様はやはり肉眼で見るのが一番なのですね。明るいから写しにくいのですね。
山崎先生の説明文、語りかけそのままでわかりやすいです。頑張って入力しました。
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