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ヒロイック・エイジ 第25話「最後の契約」・第26話 最終話 「エイジ」 感想

2007-10-10 23:27:36 | ヒロイックエイジ
最終回の放送から大分経ってしまって、細部については多少忘れてしまっているところもあるんですが、それでも何となく、これはどういうことだったのだろう、とか漠然と考えているうちについつい感想を書くのを見送ってしまっていました。

ある程度纏まってきたような、纏まらなかったような、そんな気になってきたので、自分の考えを整理する意味でもこの「ヒロイック・エイジ」を振り返ってみようかなと。

* * *

この「ヒロイック・エイジ」の原案は、僕の大好きな作家さんである冲方丁(うぶかたとう)さんで、このブログのタイトルの一部にもなっている「蒼穹のファフナー」や(映像化は中止になってしまったけど)「マルドゥック・スクランブル」の作者なんですが、今回、脚本を担当された回数が非常に少なかったからなのか、それとも別に意図があったのか、その辺は分かりませんが、冲方さん風というような雰囲気が違っていたので、そこについてどうなんだろう…、なんて考えていました。

冲方さんは結構小説のあとがきとかで、この作品を書き始めたきっかけみたいなのとかを書いてくれてたりするんだけれども、この「ヒロイック・エイジ」ではどうだったのかな?とか、そんなことを考えていたんですよね。

で、それが最終回とその前の回を見たときに明示されたわけなんですが、それを無謀にも自分なりに解釈してみると、あー、何で人って生まれる前から決められた相手(種族)と戦争してるんだろうなぁ、つか、そもそも戦争を続けていく、する意味って何なのさ?そこに何か先があるのかね?とか、そんなところが出発点だったりしないだろうか、なんて考えてしまいました。

本作の結論では黄金の種族の遺志は、この宇宙をスターウェイで満たすこと、つまり、多くの種族が互いを認識しあい、行き交うことで生まれる星の道、ということはそれだけ、そもそも全く理解し合えないと思うほど程遠い存在の種族とも、理解し合える、そういう未来があるんじゃないのか?というところに行き着いたわけですよね。

そのための手段として争うことも理解を早めるため、そして旅立つためには必要である、という、争いはダメなんだ!という通常考えられるモラル的な部分、他の作品でもそこをテーマとして取り上げることも多いこの世の中(もちろんそれは紛争が多いという意味のアンチテーゼとして)、そういう世の中だからこそ、争いの先に何か不毛なもの以外のものがないのだろうか?と絶望の中から切望した希望、みたいな、そんなところにあったんじゃないかなぁ、なんて妄想大爆発させていました。

作中でもクライマックスでディアネイラとプロメ・オーの対談の中でずばり争うことでスターウェイを構築する近道となる、という答えを導いた、自分たちが何故これまで争ってきたのか?という究極の問いに対する究極の答えを見つけるシーン、ということなんですね。

絶望の中から切望した希望(それが宇宙の道=スペースウェー)、というのが、放送から大分たって、僕が漠然と辿りついた感想ですかね。


* * *

もちろんその中には悩み続けることこそ健全な人としての営みだ、的な部分も多くあって、盲目的に従う象徴として描かれたのがこの作品で言う「契約」だったわけです。

この「契約」が最終的に意味するところは非常に面白くて、全ての「契約」を履行していくと、破滅もしくは自分以外は全滅という結末を持ちつつも、全ての種族が持つ「契約」を履行しようとすると矛盾をきたす、という設定があったわけです。

ここがこの作品の大きなポイントの一つで、矛盾すると思われた「契約」そのものが、実は全て成立可能である、という結末を内包していた、というところですね。

細かいテクニックのところは割愛しますが、これは黄金の種族=冲方丁さんのみが知っていた矛盾であり、答えだった、というのが終盤で明らかになるんですよね。


また5人のノドスも、自身がその矛盾を内包する二面性のある「契約」であると同時に、自分達の存在意義自体も二面性を持っていたという点、ここがその「契約」と絡まって最終的に昇華されるという、何かとんでもない構造を持っていたんですよね。
ここは凄いなと正直思いました。

例えばカルキノスが宿すレルネーアの持つ存在意義は実は「生命」であり、当初から描かれてきた「腐食」のガスなどからは逆に「死」を連想させるに十分であり、また彼の契約自体も「死」を内包すると言われ続けていたわけじゃないですか。

だから、彼の持つ存在意義が実は「生命」だった、というのはカルキノス自身も気が付いていない、もしかすると当初レルネーア自身も気が付いていなかった点で、感情を持たないレルネーアに対してユティを守るという強い意志を共有したカルキノスがいたからこそ辿りついた答えなわけで、そういう二面性というか、矛盾の逆転みたいな発想が、この作品の謎解き部分として全てに共通していたんですね。

アルテミアの「光」も当初は攻撃に特化して用いられていたのものが、実はその「光」の使い道は万能の守りたる盾であり鏡となって存在し、ユティのケルビウスも全てを飲み込む「虚無」ではなく、新たな次元を開く「扉」だった、という二面性。

争いの中で、悩みながら考え続けて辿りついた結果。

そこに現われるもう一つの答え。

そういう構造がこのヒロイック・エイジの根底にはあったんだな、と今思えます。

一番分かりづらかったのはレクティのエルマントス。
彼女の能力が「過去」に干渉して未来を変える能力だと思われていたところに、あの最後の現象。
正直最初分かりませんでした。

でも、基本的にそれはプロメ・オーが成してきたことであり、レクティ自身も成してきた、数限りない迷い、自問自答。
「契約」に盲従せず、全ての可能性を考える、思い悩む、この姿勢の正しさを証明する行為。
それがベルクロスに道を開かせたシーンへ繋がる、と考えると自分なりには納得がいく感じでした。
数限りない自問自答、まさに「時間」が必要で、「時間」のなせる業なんだな、と。


だから、こうして苦しんで辿りついた先に訪れたのがハッピーエンドで本当に良かったな、と思えます。
ディアネイラの姿、それが今の時代でもやっぱり必要で、常に道を探し続ける、人を理解しようとする、そんな彼女に訪れる幸せが4年後に訪れても不思議じゃないでしょ?

ディアネイラが他人を理解しようとするってのは、実は一番の苦行のはずなんですよ。
彼女の持つ精神感応能力は他人の思考が入ってくると体調に異変をきたすんですから。

そんな彼女が答えを見つけるために、最終的には種族を超えて対話まで辿り付く、というのは淡々と描かれてしまった感はあるんだけれども、実は道を探す、という行為そのものだったんだよな、と思うわけです。

うん、だからハッピーエンド。
納得です。


* * *

とは言え、色々といいたいことも中にはありました。

あまりに淡々と進んでしまったため、どこが静でどこが動なのかわからない、つまりメリハリがなく、その分カタルシスにかける、というエンタメ要素を欠いてしまった感は僕の個人的な感覚としてはありました。

これは非常にもったいないなぁと毎週思っていました。

いっそのこと1クール13話くらいで凝縮してしまった方がドラスティックになってよかったんじゃないか、とか思っちゃうくらい。

見せ方、という点では個人的にはおしかったな、と思っています。

とは言え、冲方丁さんが脚本されている回はさすがに凄かったし、あとファフナーのスタッフが前面に出てるときはやっぱり迫力が違ってました。
#大西さんの脚本も面白かったなぁ。Darker Than Blackでも渋いの書かれていたので今後要チェックな人です。

* * *


ヒロイック・エイジについては、これ以前の感想なんかでも大分書きたいなと思ったことは書いてこれた(週飛ばしになったりしたこともあったけど(笑))と僕は思っていますが、そのうち冲方丁さんのこの作品に関するインタビューとかあったら読んでみたいですね。


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6 コメント

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無理言ってごめんなさい。 (パルスン)
2007-10-11 13:56:24
自分にとってこの「ヒロイック・エイジ」はどうしても坦々と過ぎていき、理解もできず解釈もまったく浮かばなかったので、燕。さんの考えを自分の糧にしようと(笑)思い感想を待ってました。
燕。さんの感想を読みこの作品を初めて楽しめたと思います。
自分の駄目な部分としては、いい感想を見るとそれを自分の考えにし、それ以上考えないところなんですが(苦笑)この作品は今の自分ではそうなってしまうくらい難解だと思いました。
まあ、精進ですね(笑)
コメントで感想を急かせてしまっていたらすいませんでしたm(__)m
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むしろ感謝 (燕。(管理人))
2007-10-12 00:31:12
■パルスンさんへ
いえいえ、全然気にしないでくださいませ。
本当はグレンラガンの感想の後に書こうと思っていたんですよ。
それをなかなか書き出せずにいたので、ある意味それが契機となった感じなんでこちらこそ助かりました。
淡々と進みすぎ、というのは僕も同意見で、これってどういうことなの?というのは毎回思ってたりしました。
もともとは「みんな誰かの星になる」というフレーズに呼応するものとして、それだけじゃなく、自分も輝けばそれが星になって、道が出来る、というところがポイントなんじゃないかと思って見て来たんですよ。
でも、プロメとディアネイラの対話から、ああ、それだけじゃない、そもそも争い自体をもその近道とする、新解釈だなこれは、と気付いたときに、僕もようやくヒロイック・エイジでアルゴノートが辿ってきた旅というのがどういうものか、と気が付かされた、そんな感じです。
もっとエンタメ、エンタメして、見せ場とかカタルシスとか、そういう演出してくれた方が色々と分かりやすかったんじゃないかな、と思います。
だから冲方さんのインタビューとかあったらやっぱり読みたいなぁって思っちゃいますね。
だってこの作品、難しかったんだもん(笑)。
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終わってしまいました~ (ローズ☆)
2007-10-12 06:35:35
初めまして!
「ファフナー」の感想の時から、こちらのブログへは日参させて頂いてます☆
何度かコメントを書きかけたことがあったのですが、多分一度も送信してなかったと思うので(^_^;;)、多分初めましてです。

最近は「グレンラガン」を視聴してなかったので、燕。さんのブログ記事でついていけたのは「ヒロイック・エイジ」だけだったのですが、後半はまとめ感想がメインだったので、ちょっと寂しく思ってました☆

でも、確かに「ファフナー」と違って、本当にとても淡々と進んでしまって、「神演出回」と呼ばれた15話がクライマックスだったのでは!?と思う位で、何だかとても残念な感じでした。(v_v;;)

さすがの冲方さん原案で、素材的にはすごく良いものを持ってたと思うんですが、なーんか今ひとつだったのが、本当に寂しかったです。
(ついファフナーと比べるからいけないんでしょうか…)

個人的には、エイジが良く分からないまま終わってしまったので、もうちょっと掘り下げて欲しかったな~と思います。あまりに達観してしまっていて、結局最後まで遠い存在のままでした。主役はほとんどディアネイラでしたね。
(最終回、手伸ばして突っ立ってないで少しは迎えに行ってあげたら~!?と思ってしまったのは、私だけでしょうか。(笑))

「グレンラガン」も機会があったら見てみて、燕。さんの過去記事と照らし合わせてみたいと思ってますが、また「ファフナー」や「エウレカ」並に、燕。さんの熱い感想が見られるアニメがあったらいいなーと思います。

それでは、長々と失礼しました☆
また、次の記事を楽しみにしております♪
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静の傑作 (りょく)
2007-10-12 21:07:00
冲方作品で、今現在シュヴァリエも追っかけ中としては、そんなに冲方さんがタッチしていない作品がどうなるのか注目してましたこんばんわりょくです。

中盤が分かりづらいなあというところと、「15話がクライマックスだろ?」という感想を許してしまう構成といい、ファフナーに比べると…って所ですが、私はこの最終回に向けての4回が凄く好きです。
いや、プロメ・オーとの対話辺りからですね。
あの「宇宙をスターウェイで満たす事」が黄金の種族の目的だった。その為に理解しあう事が難しい銀と鉄の種族の交流には「戦争」も必要であったという件はゾクゾク来ました。
そういえば昔、世界史の歴史の中で教師が言っていたなぁと。
「どこの誰が言ったか忘れたが、『戦争も外交の一つだ』って言葉がある。難しいと思うが、よく覚えておけ」
実際、未だによく分かってはいないのですが、銀と鉄の争いは、まさにこれの事か、と。

日曜の朝には「熱血・根性・一直線!無理を通して通りを蹴っ飛ばす」グレンラガンが在りましたので、熱さましにはちょうど良い作品でした。
つか、寧ろ最終回のヒロイン補正がグレンラガンには無かったので、ヒロイック・エイジで癒されたのですがねw
(ヨーコとカミナの幸せフラグ叩き折っているから、ニアとシモンはハッピーエンドにさせるだろうと思ったら……通りを蹴っ飛ばしてヒロイン補正しろよって感じで、私はソレまで取っておいたビデオを上書きビデオにして消してしまうほどドウでも良くなりましたがwww所詮ヒロインはヒーローのオマケなのか/泣)

>手を差し出して、ディアネイラが来るのを待つエイジ
銀の種族から力を分けられているディアネイラ様には、一っ飛びでエイジの傍にいけるのですが、しませんよね。
これって、「ディアネイラ自身が他者を求める」ってことを強調したかったんだと思ってますw
自分から好きな人の所へ、自力でたどり着く…GJ!

すみません。感想長くなりました○| ̄|_
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お勧めは色々と (燕。(管理人))
2007-10-18 00:14:12
■ローズ☆さんへ
初めまして&コメントありがとうございます。
ファフナーの時からというのはとても嬉しいですね(思い入れがあるので)。
ヒロイック・エイジについてはまとめ感想になっちゃってごめんなさい。
ヒロイック・エイジは観た後すぐにインスピレーションでがっと書くタイプじゃなくて、観終わってからいつも暫く考えてしまって
いて、これってどういう意味だったんだろう、とか、ここでの訴求ポイントは?とか考えていると、あっという間に1週間過ぎてし
まっていたという(笑)。
#そういう意味でインスピレーションでがっと書けたのはやはり第15話でしたね。
#あれは凄い回でした。さすが冲方さん、と思わずにはいられない。
エイジについては彼自身が「星」であったと思うので、時に賢者のような佇まいになるんですよね。
ゆえに、星を探すもの、としてのディアネイラが本作でのそのままテーマ模索者になっているんですよね。
最終回はやはり一歩を踏み出すことを(これまで色んなことで)躊躇していたディアネイラが、素直になって、肩書きとか責任とかを
取っ払って、自分で踏み出した一歩だったので、あれはそういう意味だったんじゃないかな、と思います。
グレンラガンは超・お勧めなので、今やっている再放送がもし視聴可能であれば是非見て下さいませ。
あとはノエインが個人的にはお勧めですね。
ファフナー、エウレカ、ノエイン、グレンラガンの4つが僕からの超お勧め作品というところでしょうか。

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っぽくて良かったと思います (燕。(管理人))
2007-10-18 00:16:08
■りょくさんへ
僕も終盤の4話は好きでしたねー。
特にプロメとの対話あたりが素晴らしかったと思います。
対話から黄金の種族の目的が導かれていく、という手法は心洗われるような感じがありました。
そもそも、何のための戦いか?戦いの先があるのか?破壊以外の意味は無いのか?というような問いの答えが、理解しあうために必
要なプロセスであった、というかすかな希望となってみえるあたりは、本当に「ああぁ」という感じで観てしまいました。
#でもどうしても僕らはファフナーと比べちゃいますけどね(笑)。
ディアネイラのラストシーンについては僕も同意ですね。
彼女はあのとき、素のディアネイラであって、普通の女の子としてエイジまで辿り着いた、という感じですね。
エイジは達観してる部分があるから、それを尊重したのかも。
その辺の流れはヒロイック・エイジっぽくて良かったですね。
あとグレンラガンのラストですが、あれは今石監督も仰っているようにハッピーエンドですよ。
あの結婚式は最初から決めていたそうです。あれで終らせる、と。
僕も個人的にはあの結末、あの終り方は納得でした。
今ではあれ以外の終わり方が想像できないのが不思議…。
そういう意味ではこれもグレンラガンっぽくて良かったんじゃないかな、と思っています。
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