降りそうで降らない午後、田んぼの中を通る舗道を万歩する。
歩道の両側には秋野草が列を作っている。その中でひときわ目立つ群生は背高泡立草だ。ススキの穂と背の高さを競いながら、その黄色い小花のマッスが遠くからでも目を惹きつける。春に咲く花は黄色が多いと書いたことがあるが、秋の花も同じらしい。虫媒花の泡立草だから、派手な黄色とたくさんの小さな花弁で蜜蜂の注意を引きやすいように適応がすすんだのだろう。キク科に分類されるようだから、やはり秋の草なのだ。
黄落ばかりが秋の景色のように思えるが、野原や家の庭には、春にまけないほど、色とりどりの花や草が咲き誇っている。南天の赤い実のついた並木がつづくと思えば、洋菊やコスモスの花壇が見えたり、フジバカマやエノコログサが生える畦に出会ったりと、ぶらぶら万歩には最適の植物観察の機会である。
背高泡立草は、明治の終わり頃に北アメリカからはいって来たという帰化植物だが、その花言葉のように強い「生命力」を発揮して、特徴ある黄色が目だって多くなったのは戦後になってからのようだ。一時は在来の野草を駆逐するのではと心配もされたが、なかなか巧みな生き残り作戦で在来種とも共生を目指しているようだ。
花弁の様子を眺めようと顔を近づけた途端にくしゃみが一発でたが、この花、秋の花粉症の原因だともいわれているらしいから、アレルギーのある年寄りは気をつけないといけない。
英語のウイキペディアで泡立ち草の項を読んでみると、アメリカではGoldenrodという名前で呼ばれるらしい。目立つ黄色の花弁が「金の棒」を想起させるからだろうか。ケンタッキーとネブラスカの州花に択ばれているくらいだから、極めて一般的な植物なのだろう。
泡立草が自然に含む「ゴム質」に目をつけた発明王・エジソンが、新しい栽培方法でこれを3メーター半になるほど大きく育て上げ、そこから12%のゴムを抽出した。エジソンの友人、フォードはそのT型乗用車のタイヤにこのゴムを活用したのだそうだ。なかなか長持ちをするゴムだったらしいが、エジソンの死後は、工業化するまでには至らなかったようだ。さらに、ウイキぺディアによると、この野草はハーブの薬効もあるようで、その炎症を抑える作用から腎臓結石などにも効くのだという。雑草だからとあなどってはいけないようだ。
泡立草の黄色が終わるところで、こちらの万歩も終了した。
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