5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

ゆずりあってお掛けください

2007-03-15 21:49:05 | Weblog

「この席は7人掛けです。ゆずりあってお掛けください」、名鉄の車両窓枠にはこうした利用客へのメッセージが掲げられている。



夕方の帰宅電車、窓枠下のベンチシートには5人がゆったり。立っているひとが近くにいるのに、その気配を感じていてもだれも譲りあわせることをしない。隣とは20センチの余裕をもってじっと自分のテリトリーを確保したままだ。帰りの電車がこういう風になったのはいつ頃からのことなのだろう。



近頃は自分のことは棚に上げるのではなく、横に置いて他人とのあいだにバリアを張り巡らすのだ。横に置くのは大きなバッグだ。これは女性に多いが男のビジネスバッグも丈夫なバリアになっている。若いひとに限らず中高年の男も女も他者に譲る、譲り合わせることをしたがらない。わが爺婆世代も然りだ。こうした老人・大人が周囲への気配り、目配りをしなくなった。知らぬ他者との係わりをもちたくない本音が社会的な約束を無視し始めている。



バリアはバッグだけではない、彼らの肉体の一部である携帯電話はバリアーを張るジェスチャーとして非常に有効だし、若者のゲーム器やIポッド、女の子の化粧、オヤジの新聞、あんちゃんの大また開きまで、それぞれに得意な手法で車内を自分のテリトリー化する。これらに比べれば文庫本没入や狸寝入りは可愛いほどである。



立っている者も立ったままで電車に揺られている。彼も立ち位置のバリアを作ってしまっているのだ。20センチの微妙な空間を5人の間につくったままで電車は走る。「貴女と貴方の間のスキマに坐りたい」とはっきり云って初めて、坐っている者がその重い尻を動かすのが順序であって、余計な我慢や遠慮はしないのが現代風なのだ。



日本人の美徳といわれた以心伝心はどうやらなくなって久しいらしい。3300型の新車両のベンチシート8人がけには区分用手すりが付けらている。手すりによる補助バリア造りである。譲り合わすことがないのを前提にしたこうした対応。社会ルールはどんどん幼稚化している。




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