剣客商売
退職して、気晴らしにビデオを観るようになった。
そのうち、そのビデオの安直な作りに腹が立つよう
になった。
それでも、気晴らしに、性懲りもなく、時折、借りて
は観ている。
最近、剣客商売というビデオのタイトルを見かけ、
なんとなく、観てみようかという気になった。
最初、それほど、期待していなかったのだが、観た
後の余韻が、心地よかった。
結局、第1シリーズから観だし、第5シリーズまで、
全巻観てしまった。
その心地よさの、中身は、観た後の「温かさ」である。
結局、それは、原作のよさでもあるだろうと思った。
ウィキペディアによると、
池波 正太郎(いけなみ しょうたろう、1923年(大正12年)
1月25日 - 1990年(平成2年)5月3日)は戦後を代表する
時代小説・歴史小説作家。
となっている。
やはり、元ネタの力だ。
このビデオを観た後の、温かさは、監督が違っても、一環
しており、いい作品にであったと、喜んだ。
このような作品を生み出し得た池波 正太郎、その才能、羨ま
しくてしようがない。
秋山小兵衛の年齢設定が、わたしの年代なので、小兵衛の
心理状態については、よく分かりえて、面白い。
この点は、 歳を食ったのも悪くはないなと思える。
おそらく、若い時に観ていたら、この作品の魅力は、半分
も理解できなかっただろう。
妻を若くして亡くし、結局、父子家庭となり苦労することに
なっている。
秋山小兵衛が料理に詳しいのも、そこら辺の事情があって、
設定できるのかもしれない。
ところで、息子がしっかりと成長し、親父と対等になって
いく様をみると、小説の話しとはいえ、この秋山小兵衛が
羨ましくてしようがない。
石川 遼や斎藤 佑樹がマスコミを賑わした時、その爽やか
さと礼儀正しさに、彼らのような子供が欲しいなんて、
世の大人に言わしめたのだが、わたしは、やはり、秋山
親子に羨ましさが募ってやまない。
昨今の社会は、死んだ親の年金の使いこみ、幼児虐待等
あまりにも哀しい。
現実の社会は、特にわたしたちの子どもの世代あたりから、
契約社員やフリーターで、自立の望めない人生を強いられ
ているのも多いかと思う。
そして、その傾向は強まることはあれ、解消することは
なかろう。
だから、人の親となりて、どんなにかしんどい思いで、
退職生活を過ごしている人もいるかと思われる。
展望の開けぬ子供たちの人生を、目の当たりにして、何を
思っているだろう。
生んだことを悔やんでいるのだろうか。それでも、自分の
子供たちがいることを自分の生きていた証として、喜ん
でいるのだろうか。
いくら振り返ってみても、わたしが、ちゃんとした家庭を築
き得たとは思えない。ましてや、わたしが、秋山小兵衛の
ように、父子家庭で子供を育てるなんて、とても、とても。
もしかして、子供を生んだことが、人生最大の後悔となり
断腸の思いにあったかもしれない。それにしても、秋山親子
は羨ましくてしようがない。
剣客商売、温かみのある作品、いいものに出会った。