世界経済を破綻させる23の嘘
ハジュン・チャン[著]
田村源二[訳]
徳間出版
最近、この本を買ったが、やっと読み終えることが
できた。
やっと読み終えるという気持ちになった本は、長い
間記憶にない。
あまりにも中身が濃いのである。
タイトルにつられて、買ったのだが、こんなにもヘビー
な本とは知らずに、読み出して、しばらくして、その
様子の違いにびっくりしてしまった。
最初にびっくりしたのは、文章の美しさである。
文章のリズムが綺麗なのである。
嘘を暴かんとする勇ましさは、猛々しくなく野卑にならず
颯爽として、品がいいのである。
本の出だしなどは、まるで、詩でも読んでいるのではという
錯覚に陥ってしまったほどの文章の流れであった。
実は、わたしは、最初、この本の著者については、注意して
見ていなかった。
漠然とアメリカ国籍の人だろうと、なんの根拠もなく、
決めつけていた。
読んでいるうちに、あまりにも不思議だったので、改めて
本の表紙を確かめてみて、びっくりしてしまった。
なんと著者は、韓国人だったのである。
今まで韓国人が、書いた本なんて読んだことがない。
この方面の文化人がいたなんて、びっくりである。
本の帯びには、こう書いてある。
ケンブリッジ大学の鬼才!
ノーベル賞に最も近い経済学者の渾身作
マネー、自由、貪欲、格差についての常識・通説を
破壊し、新しい世界経済の流れを読み解く!
市場経済では誰もが能力に見合う賃金をもらえる
インターネットは世界を根本的に変えた
インフレを抑えれば経済は安定し、成長する
世界は脱工業化時代に突入した
教育こそ繁栄の鍵だ
今や努力すれば誰でも成功できる
金融市場の効率かこそが国に繁栄をもたらす
良い経済政策の導入には経済に関する深い知識が
必要だ
これらは全部ウソか錯覚である!
と、書かれている。
本の目次に目をむけると、
本書の七つの読みかた
1 資本主義(資本制経済)がどういうものかもよくわから
なければ―
1 2 5 8 13 16 19 20 22 を読む
2 政治は経済には無益と思っているなら―
1 5 7 12 16 18 19 21 23 を読む
3 所得が上がりつづけ、技術が進歩しつづけているのに、
自分の生活が良くなっているという実感を得られないのは
なぜなのか、と思っているのなら-
2 4 6 8 9 10 17 18 22 を読む
4 金持ちになれるのは、他の人々よりも有能で、教育があり、
起業家精神に富んでいるからだ、と思っているのなら-
3 10 13 14 15 16 17 20 21 を読む
5 なぜ貧しい国は貧しいのか? どうすれば富める国になれる
のか? それを知リたければ-
3 6 7 8 9 10 11 12 15 17 23 を読む
6 世界はアンフェアな場所だが、それを正すことなどたいして
できない、と思っているのなら-
1 2 3 4 5 11 13 14 15 20 21 を読む
7 最初から順番にすべてを読む
本論は、以下の項目に沿って、展開されている。
はじめに 経済の「常識」を疑ってみよう
第1の嘘 市場は自由でないといけない
第2の嘘 株主の利益を第一に考えて企業経営をせよ
第3の嘘 市場経済では誰もが能力に見合う賃金を
もらえる
第4の嘘 インターネットは世界を根本的に変えた
第5の嘘 市場がうまく動くのは人間が最悪(利己的)だからだ
第6の嘘 インフレを抑えれば経済は安定し、成長する
第7の嘘 途上国は自由市場・自由貿易によって富み栄える
第8の嘘 資本にはもはや国籍はない
第9の嘘 世界は脱工業化時代に突入した
第10の嘘 アメリカの生活水準は世界一である
第11の嘘 アフリカは発展できない運命にある
第12の嘘 政府が勝だせようとする企業や産業は敗北する
第13の嘘 富者をさらに富ませれば他の者たちも潤う
第14の嘘 経営者への高額報酬は必要であリ正当でもある
第15の嘘 貧しい国が発展できないのは起業家精神の欠如のせいだ
第16の嘘 すべて市場に任せるべきだ
第17の嘘 教育こそ繁栄の鍵だ
第18の嘘 企業に自由にやらせるのが国全体の経済にも良い
第19の嘘 共産主義の崩壊とともに計画経済も消滅した
第20の嘘 今や努力すれば誰でも成功できる
第21の嘘 経済を発展させるには小さな政府のほうがよい
第22の嘘 金融市場の効率化こそが国に繁栄をもたらす
第23の嘘 良い経済政策の導入には経済に関する深い知識が必要
むすび 世界経済はどう再建すればよいのか
となっている。
そして、その項目ごとに、彼の見解が述べられている。
その内容が、なんとも驚愕なものとなっている。
第1の嘘 市場は自由でないといけない
だが、真実は、「自由市場なんて存在しない」
第2の嘘 株主の利益を第一に考えて企業経営をせよ
だが、真実は、「株主利益を最優先する企業は
発展しない」
第3の嘘 市場経済では誰もが能力に見合う賃金を
もらえる
だが、真実は、「富裕国の人々の大半は賃金を
もらいすぎている」
第4の嘘 インターネットは世界を根本的に変えた
だが、真実は、「洗濯機はインターネットよりも
世界を変えた」
第5の嘘 市場がうまく動くのは人間が最悪(利己的)だからだ
だが、真実は、「人間を最悪と考えれば最悪の
結果しか得られない
第6の嘘 インフレを抑えれば経済は安定し、成長する
だが、真実は、「マクロ経済が安定しても世界
経済は安定しなかった」
第7の嘘 途上国は自由市場・自由貿易によって富み栄える
だが、真実は、「自由市場政策によって貧しい国が
富むことはめったにない」
第8の嘘 資本にはもはや国籍はない
だが、真実は、「資本にはいまなお国籍がある」
第9の嘘 世界は脱工業化時代に突入した
だが、真実は、「脱工業化時代は神話であり幻想
でしかない」
第10の嘘 アメリカの生活水準は世界一である
だが、真実は、「アメリカよりも生活水準が
高い国はいくつもある」
第11の嘘 アフリカは発展できない運命にある
だが、真実は、「アフリカは政策を変えさえ
すれば発展できる」
第12の嘘 政府が勝だせようとする企業や産業は敗北する
だが、真実は、「政府は企業や産業を勝利へ導ける
第13の嘘 富者をさらに富ませれば他の者たちも潤う
だが、真実は、「富みは貧者までしたたり落ちない」
第14の嘘 経営者への高額報酬は必要であリ正当でもある
だが、真実は、「アメリカの経営者の報酬は
あきれるほど高額すぎる」
第15の嘘 貧しい国が発展できないのは起業家精神の欠如のせいだ
だが、真実は、「貧しい国の人々は富裕国の人々より
も企業家精神に富む」
第16の嘘 すべて市場に任せるべきだ
だが、真実は、「わたしたちは市場任せにできるほど
利口ではない」
第17の嘘 教育こそ繁栄の鍵だ
だが、真実は、「教育の向上そのものが国を富ませる
ことはない」
第18の嘘 企業に自由にやらせるのが国全体の経済にも良い
だが、真実は、「企業の自由を制限するのが経済に
も企業にも良い場合がある」
第19の嘘 共産主義の崩壊とともに計画経済も消滅した
だが、真実は、「わたしたちは今なお計画経済
の世界に生きている」
第20の嘘 今や努力すれば誰でも成功できる
だが、真実は、「機会均等だからフェアとは
かぎらない」
第21の嘘 経済を発展させるには小さな政府のほうがよい
だが、真実は、「大きな政府こそ経済を活性化
できる」
第22の嘘 金融市場の効率化こそが国に繁栄をもたらす
だが、真実は、「金融市場の効率は良くする
のではなく悪くしないといけない」
第23の嘘 良い経済政策の導入には経済に関する深い知識が必要
だが、真実は、「経済を成功させるのに優秀なエコノミ
ストなど必要ない」
むすび 世界経済はどう再建すればよいのか
原則1 資本主義はいろいろ問題があるにせよ、
それにまさる経済システムはない
原則2 人間の合理性には大きな限界があることを
認識して、新しい経済システムを構築すべきだ
原則3 人間の〝最悪〟ではなく〝最良〟を引き出せる
システムをつくるべきだー自分たちは無私無欲の
天使ではないと認識しつつ
原則4 報酬は必ずしもその人の価値によってきまる、
という思い込みを捨てる
原則5 「ものづくり」をもっと重視する必要がある
原則6 金融と実態経済のバランスをもっと良くする
必要がある
原則7 政府は大きく活発になる必要がある
原則8 世界経済システムは発展途上国を不当に
優遇する必要がある
等のように、彼の本は構成されている。
わたしたちが、通常マスコミで知り得た情報とまったく相反する
ことを彼は主張している。
なんとも、驚愕の話である。
あまりの凄さに、わたしは、「コペルニクス的転回」という
言葉を思い出してしまった。
カントがこの言葉を遣いだしたのだそうだが、個人的には、
あまり好ましくは思ってはいない。
いい表現なだけに残念な気がする。
勝手な感想だが、彼のやった「コペルニクス的転回」は、
コペルニクスがやったこととは、反対のことであって、地動説
を天動説にもう一度ひっくり返したと思っているからである。
それはさておき、わたしにとっての「コペルニクス的転回」は
唯物弁証法の世界を知ったことであった。
20代前後の、あの政治の時代に覚えた言葉である。
「哲学者たちは世界をいろいろに解釈してきたに過ぎない。
たいせつなのはそれを変更することである」
「意識が生活を規定するのではなく、生活が意識を規定する」
「現実の世界の歴史は、支配する階級と支配される階級との
絶えざる闘争の歴史である。」
等のマルクスの思想は、わたしのパラダイムの転換を誘発して
くれた。
そのような時代に、知った言葉が、「コペルニクス的転回」と
いう言葉だったが、
今回、まさに、この「コペルニクス的転回」が再び起こった
ような思いがしてならなかった。
わたしは、読み終えてみて、この本が、いろんな国々の言葉で、
翻訳され、世界中の人々で読まれてほしいものだという感想を
もった。
わたしたちが、信じて疑わないことが、実は、誰かがこさえた
マトリックスの世界に閉じ込めるための、わたしたちを羊の
ようにあしらうための柵であるようだ。
この本を読みながら、大分前に読んだ本のことを思い出した。
それは、広瀬隆氏の「アメリカの経済支配者たち」「資本主義
崩壊の首謀者たち」。そして、堤未果氏の「アメリカから
〈自由〉が消える」、「ルポ貧困大陸アメリカ」、「ルポ
貧困大陸アメリカⅡ」である。
これらの本を一緒に読んだ方が、どちらの本もより分かり
得るような気がしたのだが。
わたしたちが、今、絶望的な世紀末にあって、これを否とする
知性に出逢える幸運に喜んでいる。
わたしたちが、未来に希望を見出すために、わたしちの絶望的な
世紀末を図ることのできる知性の出現である。
彼は、資本主義の「中興の祖」とならんとしているようだ。
このような知性に未来を託すために、世界中の人々に、この本を
読んで貰えたらと、願ってやまないのだが。
ハジュン・チャン[著]
田村源二[訳]
徳間出版
最近、この本を買ったが、やっと読み終えることが
できた。
やっと読み終えるという気持ちになった本は、長い
間記憶にない。
あまりにも中身が濃いのである。
タイトルにつられて、買ったのだが、こんなにもヘビー
な本とは知らずに、読み出して、しばらくして、その
様子の違いにびっくりしてしまった。
最初にびっくりしたのは、文章の美しさである。
文章のリズムが綺麗なのである。
嘘を暴かんとする勇ましさは、猛々しくなく野卑にならず
颯爽として、品がいいのである。
本の出だしなどは、まるで、詩でも読んでいるのではという
錯覚に陥ってしまったほどの文章の流れであった。
実は、わたしは、最初、この本の著者については、注意して
見ていなかった。
漠然とアメリカ国籍の人だろうと、なんの根拠もなく、
決めつけていた。
読んでいるうちに、あまりにも不思議だったので、改めて
本の表紙を確かめてみて、びっくりしてしまった。
なんと著者は、韓国人だったのである。
今まで韓国人が、書いた本なんて読んだことがない。
この方面の文化人がいたなんて、びっくりである。
本の帯びには、こう書いてある。
ケンブリッジ大学の鬼才!
ノーベル賞に最も近い経済学者の渾身作
マネー、自由、貪欲、格差についての常識・通説を
破壊し、新しい世界経済の流れを読み解く!
市場経済では誰もが能力に見合う賃金をもらえる
インターネットは世界を根本的に変えた
インフレを抑えれば経済は安定し、成長する
世界は脱工業化時代に突入した
教育こそ繁栄の鍵だ
今や努力すれば誰でも成功できる
金融市場の効率かこそが国に繁栄をもたらす
良い経済政策の導入には経済に関する深い知識が
必要だ
これらは全部ウソか錯覚である!
と、書かれている。
本の目次に目をむけると、
本書の七つの読みかた
1 資本主義(資本制経済)がどういうものかもよくわから
なければ―
1 2 5 8 13 16 19 20 22 を読む
2 政治は経済には無益と思っているなら―
1 5 7 12 16 18 19 21 23 を読む
3 所得が上がりつづけ、技術が進歩しつづけているのに、
自分の生活が良くなっているという実感を得られないのは
なぜなのか、と思っているのなら-
2 4 6 8 9 10 17 18 22 を読む
4 金持ちになれるのは、他の人々よりも有能で、教育があり、
起業家精神に富んでいるからだ、と思っているのなら-
3 10 13 14 15 16 17 20 21 を読む
5 なぜ貧しい国は貧しいのか? どうすれば富める国になれる
のか? それを知リたければ-
3 6 7 8 9 10 11 12 15 17 23 を読む
6 世界はアンフェアな場所だが、それを正すことなどたいして
できない、と思っているのなら-
1 2 3 4 5 11 13 14 15 20 21 を読む
7 最初から順番にすべてを読む
本論は、以下の項目に沿って、展開されている。
はじめに 経済の「常識」を疑ってみよう
第1の嘘 市場は自由でないといけない
第2の嘘 株主の利益を第一に考えて企業経営をせよ
第3の嘘 市場経済では誰もが能力に見合う賃金を
もらえる
第4の嘘 インターネットは世界を根本的に変えた
第5の嘘 市場がうまく動くのは人間が最悪(利己的)だからだ
第6の嘘 インフレを抑えれば経済は安定し、成長する
第7の嘘 途上国は自由市場・自由貿易によって富み栄える
第8の嘘 資本にはもはや国籍はない
第9の嘘 世界は脱工業化時代に突入した
第10の嘘 アメリカの生活水準は世界一である
第11の嘘 アフリカは発展できない運命にある
第12の嘘 政府が勝だせようとする企業や産業は敗北する
第13の嘘 富者をさらに富ませれば他の者たちも潤う
第14の嘘 経営者への高額報酬は必要であリ正当でもある
第15の嘘 貧しい国が発展できないのは起業家精神の欠如のせいだ
第16の嘘 すべて市場に任せるべきだ
第17の嘘 教育こそ繁栄の鍵だ
第18の嘘 企業に自由にやらせるのが国全体の経済にも良い
第19の嘘 共産主義の崩壊とともに計画経済も消滅した
第20の嘘 今や努力すれば誰でも成功できる
第21の嘘 経済を発展させるには小さな政府のほうがよい
第22の嘘 金融市場の効率化こそが国に繁栄をもたらす
第23の嘘 良い経済政策の導入には経済に関する深い知識が必要
むすび 世界経済はどう再建すればよいのか
となっている。
そして、その項目ごとに、彼の見解が述べられている。
その内容が、なんとも驚愕なものとなっている。
第1の嘘 市場は自由でないといけない
だが、真実は、「自由市場なんて存在しない」
第2の嘘 株主の利益を第一に考えて企業経営をせよ
だが、真実は、「株主利益を最優先する企業は
発展しない」
第3の嘘 市場経済では誰もが能力に見合う賃金を
もらえる
だが、真実は、「富裕国の人々の大半は賃金を
もらいすぎている」
第4の嘘 インターネットは世界を根本的に変えた
だが、真実は、「洗濯機はインターネットよりも
世界を変えた」
第5の嘘 市場がうまく動くのは人間が最悪(利己的)だからだ
だが、真実は、「人間を最悪と考えれば最悪の
結果しか得られない
第6の嘘 インフレを抑えれば経済は安定し、成長する
だが、真実は、「マクロ経済が安定しても世界
経済は安定しなかった」
第7の嘘 途上国は自由市場・自由貿易によって富み栄える
だが、真実は、「自由市場政策によって貧しい国が
富むことはめったにない」
第8の嘘 資本にはもはや国籍はない
だが、真実は、「資本にはいまなお国籍がある」
第9の嘘 世界は脱工業化時代に突入した
だが、真実は、「脱工業化時代は神話であり幻想
でしかない」
第10の嘘 アメリカの生活水準は世界一である
だが、真実は、「アメリカよりも生活水準が
高い国はいくつもある」
第11の嘘 アフリカは発展できない運命にある
だが、真実は、「アフリカは政策を変えさえ
すれば発展できる」
第12の嘘 政府が勝だせようとする企業や産業は敗北する
だが、真実は、「政府は企業や産業を勝利へ導ける
第13の嘘 富者をさらに富ませれば他の者たちも潤う
だが、真実は、「富みは貧者までしたたり落ちない」
第14の嘘 経営者への高額報酬は必要であリ正当でもある
だが、真実は、「アメリカの経営者の報酬は
あきれるほど高額すぎる」
第15の嘘 貧しい国が発展できないのは起業家精神の欠如のせいだ
だが、真実は、「貧しい国の人々は富裕国の人々より
も企業家精神に富む」
第16の嘘 すべて市場に任せるべきだ
だが、真実は、「わたしたちは市場任せにできるほど
利口ではない」
第17の嘘 教育こそ繁栄の鍵だ
だが、真実は、「教育の向上そのものが国を富ませる
ことはない」
第18の嘘 企業に自由にやらせるのが国全体の経済にも良い
だが、真実は、「企業の自由を制限するのが経済に
も企業にも良い場合がある」
第19の嘘 共産主義の崩壊とともに計画経済も消滅した
だが、真実は、「わたしたちは今なお計画経済
の世界に生きている」
第20の嘘 今や努力すれば誰でも成功できる
だが、真実は、「機会均等だからフェアとは
かぎらない」
第21の嘘 経済を発展させるには小さな政府のほうがよい
だが、真実は、「大きな政府こそ経済を活性化
できる」
第22の嘘 金融市場の効率化こそが国に繁栄をもたらす
だが、真実は、「金融市場の効率は良くする
のではなく悪くしないといけない」
第23の嘘 良い経済政策の導入には経済に関する深い知識が必要
だが、真実は、「経済を成功させるのに優秀なエコノミ
ストなど必要ない」
むすび 世界経済はどう再建すればよいのか
原則1 資本主義はいろいろ問題があるにせよ、
それにまさる経済システムはない
原則2 人間の合理性には大きな限界があることを
認識して、新しい経済システムを構築すべきだ
原則3 人間の〝最悪〟ではなく〝最良〟を引き出せる
システムをつくるべきだー自分たちは無私無欲の
天使ではないと認識しつつ
原則4 報酬は必ずしもその人の価値によってきまる、
という思い込みを捨てる
原則5 「ものづくり」をもっと重視する必要がある
原則6 金融と実態経済のバランスをもっと良くする
必要がある
原則7 政府は大きく活発になる必要がある
原則8 世界経済システムは発展途上国を不当に
優遇する必要がある
等のように、彼の本は構成されている。
わたしたちが、通常マスコミで知り得た情報とまったく相反する
ことを彼は主張している。
なんとも、驚愕の話である。
あまりの凄さに、わたしは、「コペルニクス的転回」という
言葉を思い出してしまった。
カントがこの言葉を遣いだしたのだそうだが、個人的には、
あまり好ましくは思ってはいない。
いい表現なだけに残念な気がする。
勝手な感想だが、彼のやった「コペルニクス的転回」は、
コペルニクスがやったこととは、反対のことであって、地動説
を天動説にもう一度ひっくり返したと思っているからである。
それはさておき、わたしにとっての「コペルニクス的転回」は
唯物弁証法の世界を知ったことであった。
20代前後の、あの政治の時代に覚えた言葉である。
「哲学者たちは世界をいろいろに解釈してきたに過ぎない。
たいせつなのはそれを変更することである」
「意識が生活を規定するのではなく、生活が意識を規定する」
「現実の世界の歴史は、支配する階級と支配される階級との
絶えざる闘争の歴史である。」
等のマルクスの思想は、わたしのパラダイムの転換を誘発して
くれた。
そのような時代に、知った言葉が、「コペルニクス的転回」と
いう言葉だったが、
今回、まさに、この「コペルニクス的転回」が再び起こった
ような思いがしてならなかった。
わたしは、読み終えてみて、この本が、いろんな国々の言葉で、
翻訳され、世界中の人々で読まれてほしいものだという感想を
もった。
わたしたちが、信じて疑わないことが、実は、誰かがこさえた
マトリックスの世界に閉じ込めるための、わたしたちを羊の
ようにあしらうための柵であるようだ。
この本を読みながら、大分前に読んだ本のことを思い出した。
それは、広瀬隆氏の「アメリカの経済支配者たち」「資本主義
崩壊の首謀者たち」。そして、堤未果氏の「アメリカから
〈自由〉が消える」、「ルポ貧困大陸アメリカ」、「ルポ
貧困大陸アメリカⅡ」である。
これらの本を一緒に読んだ方が、どちらの本もより分かり
得るような気がしたのだが。
わたしたちが、今、絶望的な世紀末にあって、これを否とする
知性に出逢える幸運に喜んでいる。
わたしたちが、未来に希望を見出すために、わたしちの絶望的な
世紀末を図ることのできる知性の出現である。
彼は、資本主義の「中興の祖」とならんとしているようだ。
このような知性に未来を託すために、世界中の人々に、この本を
読んで貰えたらと、願ってやまないのだが。