うさぎの耳

大学卒業→社会人→看護学校→6年目ナース
読書の記録と日々の出来事。

『晴天の迷いクジラ』窪美澄

2012年11月15日 00時07分08秒 | book
初めての窪作品。
『ふがいない僕は空を見た』発売当初、書店で買おうと最初をパラパラ見てやっぱりやめたことがあります。性描写がムリってなってね。

今日、その『ふがいない僕は空を見た』と『晴天の迷いクジラ』を図書館から借りてきました。刊行順に読みたいタイプなんだけど、今の気分的に絶対『晴天の迷いクジラ』を先に読むべきだと思ったので、読みました。読み出したら止まらなくて、1日かけて読了。



一番に言いたいことは、この作品を読むことによって私自身が救われたってこと。作中の人物たちも救われるというか希望の見える終わり方だったんだけど、私も救われた。

最近というかここ1ヶ月ほどなんとなく心の状態がよろしくなく(具体的な落ち込む原因がある訳ではない)、これではだめだ。なんとか気分転換してこの低空飛行から脱しないとと思ってたので、ほんと救われた。
読書は心のビタミン剤。場合によっては人に話を聞いてもらう以上の効果がある。
今の自分に必要な本って嗅覚が働いて選ぶってことありますよね?そんな巡り合わせの一冊です。



帯に書いてあった「ただ「死ぬなよ」って、それだけ言えばよかったんだ」のシーンでは涙が出ました。私に言ってるんじゃないし、死にたいくらいへこんでる訳じゃないんだけど、とても心に響いて自分の中の心の荷?みたいなものが少しおろせたからだと思います。



主要な登場人物が3人いて、しっかり彼らが出会うまでの生きてきた人生が描かれてて、それぞれに苦しみや悲しみ辛さがある。子どもにだって生きづらさはあるし、田舎だろうが都会に住んでようが悲しいことや苦しいことはある。
年齢も今までの人生で味わった苦しみや悲しみや辛さも違う3人がそれぞれもう死のうって考えてるんだけど、3人が出会って湾に迷いこんでしまったクジラを見に行ってそこで出会う人たちと過ごす中で癒しとは違うかもしれないけど力をもらう。知らない土地で優しくしてもらって現実を忘れてとかいうありがちな感じではなくて、ここを離れなければならないって事も3人は考えてる。


3人それぞれのそれまでの人生がしっかり描いてあったからこそ心に響いたんだと思います。



装丁もとても素敵で読んだ後だと余計にしっくりきます。
帯に「心に刺さりまくる」って書いてあったんだけど、まさにそうでした!手元に置いておきたい一冊になりました。今年もあと少しだけど、良い小説に出会えました。



今月末に出る朝井さんの『何者』が出るまでは、どっぷり窪ワールドに浸りたいです。


他に読みたい本は、山内マリコさんの『ここは退屈迎えにきて』、小説以外だとノマドワーカーの安藤美冬さんの初著書。