うさぎの耳

大学卒業→社会人→看護学校→6年目ナース
読書の記録と日々の出来事。

『ボトルネック』米澤穂信

2010年03月28日 13時54分22秒 | book
新聞の書評を見て面白そうと思ってその日のうちに購入、2日で読破。



米澤穂信さん、名前は何度か見かけたことあるけど、初めて読みました。




思ったよりヘビーな内容で読後はちょっと心にダメージ受けた。終わりは読者に後のことは想像させるって感じなんだけど、そこが残念というか私には暗い想像しかできなくて読後感は悪かった。




青春ミステリーのような感じで、主人公は高校生。しかもどちらかといえば不幸な境遇で、おまけにあまり魅力的とはいえない男の子。だけど、全体を通してめちゃくちゃ暗いってこともなくて面白い!!




自分が生まれなかったパラレルワールドに行ってしまう主人公。そこでは生まれなかったはずの姉(主人公の世界では流産して、だから主人公が生まれた)が生まれて自分が生まれてない。どちらが生まれていたかという微妙な差が周りにも影響していて、自分ではなく姉が生まれていた場合の世界を否応なく見せつけられる。微妙な差の見せ方がすごく面白いし、主人公の側の世界では生まれなかった姉もナイスキャラで良いです。自分がいない世界を目の当たりにすることで自分という存在について考えなきゃいけない。
自分がいてもいなくても変わらないんじゃないかということを誰でも思ったことがあるはずで、現に私が会社を休んだところで仕事は滞りなく回る。家族の中でも私がいなくても特に不都合はない。そういういてもいなくても変わらないと思ってた世界がほとんど歳の変わらない姉が存在して、自分が存在しない世界では変化している。しかも自分が存在する世界よりも姉が存在する世界の方がいろんな事が良くなっている。両親の仲だったり兄が元気に生きてたり、寝たきりになったはずのおじいさんが元気に働いてたり。




2つの世界の違いが徐々に発見されていく様子も面白いし、自分が存在しない世界というのも興味深かった。自分がいてもいなくても同じだと思ってたのに、自分じゃなくて同じ両親から生まれた歳もそんなに違わない別の人間が存在するだけでいろんな事が良くなっている。それを受けとめなきゃいけないのはかなりキツい。ぐさっときました。




エンターテイメントとして面白い小説でした!少し消化不良というかうまく感想が伝えられてないけど、面白いのは確かです。