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本好き人の365日

この国のかたち『子どもにつたえる日本国憲法』

2014-02-12 23:19:09 | 哲学

これも最近読んだ本です。

いわさきちひろさんの描く子どもたちに引かれて手にとったのですが、内容もすごく良かった。

 

井上ひさしの

『子どもにつたえる日本国憲法』(講談社)

 

著者 : 井上ひさし
講談社
発売日 : 2006-07-21

 

 

意見が違うことを極端に恐れる日本人社会では、よく「政治と宗教とスポーツの話題は避ける」なんてことがまことしやかにささやかれますが(笑)、互いの意見を交わす「議論」は別に悪いことじゃないし、お互いを知らないと尊重することもできません。議論することによって新しい考え方が生まれることだってあります。

考え方が違うのは当たり前なんですけどね。

たまに日本人の代表みたいな顔をして「もめごとを起こすな。日本人は和が大切なんだぞ」と暗に「黙って言うことを聞け」と圧力をかけてくる人もいますが(私の元上司がそうでした(笑))、日本人お得意の「和」という考え方も、こんな使い方をされたんじゃたまったもんじゃありません。

「和を以って貴しとなす」で有名な「十七条の憲法」には、他に「私利私欲を捨てよ」とか、「真心をもって行え」とか、いろいろ書いてあるのですが、最後の第十七条には、「大切な事は独断で決めずに多くの人と話し合って決めなさい。小さなことならともかく、大事なことを決める時は間違いがあってはならないから、よく相談するように(意訳)」と書かれています。

 

さて、本の内容ですが、現在(出版は2006年です)の日本国憲法が作られた時代背景を少し説明したのち(戦争中の平均寿命って、女性でも30歳後半くらいだったんですね!)、日本国憲法の前文と、第九条の内容が子どもにもわかりやすい文章で紹介されています。

 

二度と戦争はしない。武力でもって解決しない。我々は戦力を放棄する。

 

武器も持たず、相手の前に立つことは、銃を持って突撃するよりも勇気のいることです・・・

度胸もいるし、知恵もいるし、とても難しい生き方です。

ですが、私達はその難しい生き方に挑戦するのです。

それが、人類の未来にとって理想だと信じるから。

 

とても薄い本なんですが、その中に大きくページを使って、いわさきちひろさんの描く子どもたちがのせられています。

これがまた胸に響くんですよね。

 

少し前の本になりますが、いま読むといろいろと考えさせられます。

現在の日本の総理大臣である安倍晋三氏は、憲法を改正するために必要な前段階の発議条件である国会議員の三分の二の賛成がハードルが高いとして、これを二分の一にしたらどうかと頑張っていますが(そもそも二分の一じゃ多数決になってない気もしますが)、東京都の都知事選挙でも自民党推薦の方が当選しましたし、いよいよ第九条の改正が現実味をおびてきましたからね。

本屋さんに行くと、戦争(太平洋戦争)を取り扱った書籍があふれていてびっくりします。

3年後、この国のかたちはどうなっていることでしょう・・・

 

「大切な事は独断で決めずに多くの人と話し合って決めなさい。小さなことならともかく、大事なことを決める時は間違いがあってはならないから、よく相談するように」

 

我々が歴史として学んできた物は、のちの研究と新しい発見によって変わってくることがあります。
この十七条の憲法を定めたとされる聖徳太子も、現在では実在しなかったかも知れないといわれているそうです。

教科書を墨で黒く塗らなくっちゃ!(笑)

まぁ、誰が決めたかなんて案外どうでもいいのかも知れませんね。

 

この世の中はいろんなものがつながっていて、一つを変えたことですべてが狂ってしまうこともありますし、少しの変化で全体にいい影響が出ることもあります。

人間万事塞翁が馬。

 ただいえることは、間違いをおかすことが愚かなのではなく、同じ間違いを繰り返すことが愚かなんだと思います。

 

まぁ、人間なんていなくなったって、季節はめぐるし、地球は回り続けますけどね(笑)

 

 

 

 

 

 私達は皆、他人の不幸ではなく、お互いの幸福と寄り添って生きたいのだ。私達は憎しみあったり、見下しあったりしたくないのだ。この世界には、全人類が暮らせるだけの場所があり、大地は豊かで皆に恵みを与えてくれる。
 人生は自由で美しい。

 私の声が聞こえる人たちにいう、「絶望してはいけない」

 愛されない者だけが憎むのだ。愛されず、自然に反する者だけが。

 独裁者たちは自分たちを自由にし、人々を奴隷にする。
 今こそ、約束を実現させるために闘おう。世界を自由にするために、国境のバリアを失くすために、憎しみと耐え切れない苦しみと一緒に、貪欲を失くすために闘おう。

      ―チャップリン「独裁者」(1940)ラストシーンのスピーチより一部抜粋― 

 



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