私的図書館

本好き人の365日

五月の本棚 2

2003-05-09 21:44:00 | 哲学
誰でも一度はぶつかる問題ってあるとは思いませんか?
思い通りにならなくて、悩んで、でも、「人生ってこんなもんさ」と割り切るには抵抗があって、私ってどうしていつもこうなんだろう?
みんなはどうしてわかってくれないんだろう?
いったい、人間ってなんなの!
って。

「人間とは何?」という疑問は、大昔から人類の悩みの種でした。
そんな疑問になんとか答えを見つけようと四苦八苦してきた人々。
そんな人達の歴史を遡って、しかもミステリー風の謎解きを各所にちりばめた物語に仕上げたのが今回ご紹介する本、ヨースタイン・ゴルデルの「ソフィーの世界」です。

ソフィーはごく普通の14才の少女。
ある日、一通の手紙が彼女の元に舞い込みます。その手紙にはたった一行、「あなたは誰?」と書かれているだけ。でも、ソフィーは考えます。改めて考えてみると、当たり前だと思っていたけど「私って誰なんだろう?」と。

私ってどんな人?
まだよくわからない。
自分の顔だって気に入ってないし、第一、人間に生まれて来たのだって自分で選んだんじゃない。
それにいつの日か、私もこの世界から消えてしまう。この間亡くなったおばあちゃんみたいに。命に終わりがあるなんてあんまりだわ。

「・・・人間って、何?」

その日から、ソフィーの周りでは不思議な出来事が次々と起こり始めます。
哲学者から送られてくる手紙。
どうやらソフィー達を監視しているらしい”少佐”の存在。
そして、物語の鍵を握る少佐の娘、ヒルデ。

すべての謎を解くヒントは、ギリシャから始まる哲学者達のとんでもない発想と苦悩の歴史の中にあるらしい。

犬がしゃべりだし、赤ずきんちゃんに不思議の国のアリスが家に訪ねて来る。
ミッキーマウスやマッチ売りの少女が闊歩し、本屋で売られている本の題名は「ソフィーの世界」?

哲学なんて、硬っくるしいものってイメージがあったのに、この本ではわかりやすく、『エッ、こんなものまで哲学なの?』って具合に新しい発見をさせてくれます。

「あらゆるもののおおもとは水である。」と言ったミレトスの哲学者タレス。

「すべては目にみえないほど小さなブロックが組み合わさって出来ている。」と言って、そのブロックを『原子』、アトムと名づけたデモクリトス。

「女性は不完全な男性だ。」と考えていたアリストテレス。

今ではトンチンカンな考えだと思われるようなことでも、当時の人達は、なんとか世界を説明しようと真剣だった。
占星術とか神様を信じていた時代の名残。今も使っている”インフルエンザ”ってもともと、”星の悪い「影響(インフルエンス)」のもとに入っている”という意味なんだって。
彼等は確かなものと、そうでないものを分けようと、それこそ、何千年もかけて、そして今でも議論を続けています。

でも、ソフィーにとっての確かなものって?

そして、私達にとっての確かなものって?

「人間とは何か?」
誰もが一度はぶつかるこの疑問に答えようとしてきた、笑えるような、ますます考えさせられるような、とっても刺激的な人達の物語。

そして、ソフィーが気付くことになる「ソフィーの世界」の真実とは?

このお話しの紹介はもうちょっと続きます。
もし、気に入って頂けましたら、もう少しの間、お付き合い下さいませ。


 三千年を解くすべをもたない者は 闇のなか、未熟なままに その日その日を生きる


             ゲーテ





ヨースタイン・ゴルデル 著
須田 朗  監修
池田 香代子  訳
NHK出版


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