私的図書館

本好き人の365日

『心が喜ぶ働き方を見つけよう』

2012-05-15 21:36:40 | 本と日常

わたしなんてどうせ役に立たない。

迷惑をかけて邪魔になるだけ。

何もできないなら、何もしないほうがマシ。

 

マイナス思考でグルグル考えて、結局「何もしないこと」の言い訳を探している自分がいます。

グルグル考えることにも疲れてしまい、それだけでもう十分悩んだ気になってしまう。

わたしもこんなに悩んだんだから、きっと許してもらえるよね…

その言い訳の裏に隠れているのは、不安や恐れ。他人に迷惑をかけることじゃなくて、他人を失望させることで自分が傷つことを恐れている。

役に立たない=自分はホメてもらえない、楽しめない。

迷惑をかける=自分が嫌な思いをするかも。恥ずかしい思いはしたくない。

何もできない=自分が傷つくくらいなら何もしないほうがマシ。

自分、自分、自分。

自分を言い訳で納得させても、傍から見たら指一本動かしていない自分。

 

本当は、「そこにいるだけ」でいいって場合もあるのに…

 

立花貴さんという人が書かれた本を読みました。

現在40代の彼は、東日本大震災で被災した母と妹の安否を確かめるため仙台へ。その後、宮城県を中心に支援活動に取り組み、今は地元の漁師の方々と会社を興し、事業家兼見習い漁師として、被災地から新しい町づくり、働き方を発信し続けている人です。

 

大和書房
発売日:2012-04-17

 

 

 

 

 

 

「グッとくる仕事をする」

もともと仙台出身の彼。有名商社に就職し、5年で会社を辞めると宣言し、その言葉通り退社して自分の会社を興しますが、取締会議でまさかの社長解任。しかしそれでくさることなく、人脈を生かして町づくりに関わりだした頃、東日本大震災に見舞われます。

「企業とはその業績によって社会を向上させることが役割である」という松下幸之助の言葉を挙げ、企業=社会貢献、地域に根ざし、生産者と消費者が共に利益を享受できるビジネスモデルを提唱しています。

利益を追求するのが第一の目的ではなく、仕事を通じて人の心を動かす「グッとくる」仕事をする。

仙台の自宅を開放し、被災地に物資と人を運び続け、炊き出しをし、人の輪を広げて支援組織を作り上げていく。

被災地で会った多くの人たち。支援に協力してくれた数々の団体、個人、事業経営者。

確かに彼の行動力、その人脈に頼るところも多いのでしょうが、まずはやってみること!

一歩を踏み出す。その大切さを教えてもらったような気がします。

 

まずは多くの人にこの現状を、被災地を見てもらいたい。

 

そのために、地球3周分も仙台と東京を行き来したという著者。

自分に何ができるかを考えて何もしないより、何もできないかも知れないけれどとりあえず飛び込んでみる。

その一歩が、大きな力になることだってある。

それは仕事や普段の生活にもいえることで、失うことばかり考えて何もしないより、心の喜ぶ働き方を実践してみる。

どんな学者や評論家が物知り顔で不安をあおりたてても、結局未来のことなんて誰にもわからないし、保障や保険なんて無いんですからね。

 

この本、実は近所の本屋さんになくて、ちょっと大型の本屋さんで探してもらったのですが、労働法規とか、ビジネス書でもかなり堅苦しい分類の棚に隠れるように並んでいました。

そこじゃないんだよなぁ~

いやそこにも一冊くらいあってもいいけれど、ビジネス書とか自己啓発本じゃなくて、やっぱり震災関係の本として並べて欲しかった。

被災地にケーキを届けた時のこと。

お店と同じようなケーキを見て喜ぶ人の中に「この娘パティシエになるのが夢なんです」という母娘がいて、「こんな美味しいケーキを作ってね」と声をかけると、その女の子はニッコリ笑顔を返してくれたんだとか。

被災地にケーキなんて、と思われる方がいるかも知れませんが、非常時にはおにぎりだってケーキだって、とりあえず食べるものが必要。常識にとらわれて二の足を踏んでしまうのは常識人の悪いクセ。

それに、女の子の笑顔という、オマケまでついてくるんですからいうことなし!

学ぶことの多い本でした。