私的図書館

本好き人の365日

「ほとんど無害」芥川・直木賞贈呈式

2012-02-18 22:35:33 | 本と日常

先日、第146回芥川賞、直木賞の贈呈式が行われた、というニュース記事を読みました。

東京都知事に対する発言で注目をあびた芥川賞受賞者、田中慎弥さんは、今回は一言だけで挨拶を終えてしまい、会場をどよめかせていたみたいです(苦笑)

その前に挨拶された同じく芥川賞を受賞された円城塔さん。

自身の作品を評して「ほとんど無害」と発言されていたみたいですが、著作権の問題か、文芸担当の記者がSFを読まないのか、私が探した限りでは、どこの社も触れていなかったので解説すると、この「ほとんど無害」という言葉はイギリスの有名なコメディSF『銀河ヒッチハイクガイド』に出て来る言葉です。

銀河のありとあらゆることに言及しているこの銀河ヒッチハイクガイドには、もちろん「地球」のことも書いてあるのですが、銀河の辺境にある地球の説明はたった一言。
「ほとんど無害」

いやぁ、SFファンとしては放っておけなくて(苦笑)

円城さん、ちゃんと伝わってるよ!

田中慎弥さんも自分ばかりが注目されてしまって「他のお二人に悪い」と恐縮されているとか。
マスコミなんて一時的に持ち上げておいて、飽きればポイですからね。もう少しのガマンかな。
女子ソフトボールのニュースなんて最近めっきり聞かなくなりましたから。

今日は天気は良かったものの、けっこう冷え込んだので、自転車で近くの喫茶店へ。
ホットコーヒーを頼んで1時間くらい、本を読んでいました。

三崎亜記 著
 『鼓笛隊の襲来』 (集英社文庫)

元市役所職員の三崎亜記さんは、私たちの世界とそっくりなのに、少しだけズレた日常を描くのが得意な作家さん。
この本は短編集なんですが、台風ではなく鼓笛隊が災害のようにやってくる表題作「鼓笛隊の襲来」や、覆面をかぶることが労働者の権利として法律で認められている「覆面社員」など、ちょっとだけズレた世界が、かえって我々が「当たり前」と受け止めている「この世界」の常識をゆさぶります。

それを不気味と取るか、優しさと取るか、それは読者しだい。

私は体にボタン(押すほう)のある女性(たち)を描いた、「突起型選択装置(ボタン)」が面白かった♪

今日は一日腹の立つこともなかったし、本も読めたし、洗濯もしたし、いい土曜日の午後を過ごせました☆


円城塔『これはペンです』

2012-02-18 01:01:43 | 本と日常

確定申告に必要な書類が見つからない…

いつも追い詰められてから動き出すので、今年もアタフタしています。
ま、私の場合は自営業の方と違って、株式関係のわずかばかりの収支を申告するだけなので、たいしたことないといえばたいしたことないんですけどね。

おかしい、書類があと2枚あるはずなのになぁ…

この間ようやく円城塔さんの小説、

『これはペンです』(新潮社)

を読みました。

『道化師の蝶』で146回芥川賞を受賞。この作品も145回芥川賞候補になっています。

いやぁ、わけわからん(苦笑)
100ページほどの中編なんですが、文章を自動的に書くことのできる機械を発明した叔父と、その姪の物語…なのかな?

ロジック小説とでも呼ぶのか、様々な情報媒体から語句を選び出し、”それらしい”文章を機械が作り出すかと思えば、その文章をさらに分析して、機械が書いた物か人間が書いた物か識別する機械まで作ってしまいます。だから、叔父さんらしい文章で送られてくる姪に宛てた手紙も、機械が自動的に書いているってことだって…

ニワトリが先かタマゴが先か。
繰り返される因果律。
メタ言語?

読んでいるうちに、これは小説でも何でもなくて、理屈を並べてそれらしく書かれているだけの、読者をからかった円城さんの悪ふざけでは?
なんて思ってしまいました。
自分がダマシ絵の世界に迷いこんでしまった感じ。

アハハハ…わけわからん!

ところどころに差し込まれたSFの小ネタは面白かったです?

「銀河帝国の興亡」や「銀河ヒッチハイクガイド」などを読んでいるとけっこう楽しめます♪

これが芥川賞候補って、日本の文壇は大丈夫かな?(苦笑)

その他に読んだのは、最近奈良に引っ込んで、さっぱりブログの更新がない作家、森見登美彦さんが自身の作品でよく取り上げる京都を写真付きで紹介しているガイドブック。

『森見登美彦の京都ぐるぐる案内』(新潮社)

小説家も売れてくると妙な仕事もしなくちゃいけなくて大変ですね。
文学賞候補を辞退した伊坂幸太郎さんや、今回本屋大賞候補を辞退した有川浩さんの方が潔いのかも。

アメリカでもっとも愛された挿絵画家、ジェシー・ウィルコックス・スミスのイラスト本も読みました。

『ジェシー・W・スミスの世界』(新人物往来社)

「ハイジ」や「水辺の子どもたち」といった児童書の挿絵、絵本、雑誌、広告などのイラストで、今から100年くらい前に活躍した作家さんです。

絵本も一冊。
十二単を着た女の子がなぜか小学校に転校してくるという、ユーモアあふれる本。
清水真裕 著、青山友美 絵。

『たかこ』(童心社)

平安言葉でしゃべる「たかこ」を、とまどいながらも受け入れていく子供たちが可笑しい☆
自分と違う価値観、見た目の違い、変わった格好、そうしたものを「差別」するのではなく、「個性」としてお互いちょっとガマンして受け入れていくというメッセージがいい♪
そんなことを考えなくても、とにかく絵が楽しいので見ているだけで笑顔になれる絵本です。

さあ、ちょっと部屋をひっくり返して、書類を探そうかな…

やれやれ、本だけ読んで生きていきたいよ。

…来週には確定申告できるかな?