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2016.11 出雲/稲佐の浜・日御碕→国民宿舎さんべ荘→女三瓶山を歩く

2020年01月24日 | 旅行

2016.11 島根を行く ④稲佐の浜・日御碕 国民宿舎さんべ荘・別館松虫草 女三瓶山を歩く    <日本の旅・島根の旅>

稲佐の浜・日御碕
 神門通り駐車場を出て勢溜交叉点から国道431号線を左に=西に折れ、大きく迂回しながら整備された国道を走り大社湾に向かった。
 勢溜交叉点のすぐ横に細い道が西に通じている。家並みの続くこの道が「神迎の道」で、旧暦10月10日の夜、稲佐の浜で迎えられた八百万の神々が御神火、龍蛇に先導され、およそ3kmの神迎の道を進み、出雲大社に向かうとされる。が、日常は細い生活道路のようで、気づかず国道を走り抜けた。

 整備された国道431号線は、残念ながら神がかった雰囲気は感じられない。神迎の道も夜に行われる神迎神事でなければ神々しさは感じにくいかも知れないと自分を慰めながら、稲佐の浜駐車場に車を止める。
 緩いカーブを描いた稲佐の浜に波が静かに寄せている。浜の途中の岩に神迎神事をイメージさせる鳥居が立っている(写真)。鳥居に気づかないと神迎えの浜がイメージしにくいが、静かに寄せる波を見つめていると、この浜辺なら神迎えにふさわしいと思えてくる。

 ついでながら、神在祭の神事が終わると出雲大社で神々が去る神等去出カラサデ祭が行われ、旧暦10月26日、斐川町の万九千マンクセン神社から神々がそれぞれの神社に帰るそうだ。

 私なりのロマンでは、渡来人が船で稲佐の浜に着き、土着の人々に文明をもたらしてリーダーである大国主命が神格化されて大国主大神となり出雲大社あたりを居とし、一族が全国に散って文明を広めそれぞれの土地で神格化され、毎年11月ごとに各地の一族が大国主大神のもとに集まって懇談した、渡来人一族が土着の人と縁を結び栄えたことから、縁結びの神として崇められた、ということではないだろうか。伝説では、創建時の大社の高さは現在の高さ24mの4倍の96mとされることからも、渡来人の文明力がうかがえる。
 その後、伊弉諾イザナギ+伊弉冉イザナミをリーダーとする渡来人が上陸し一大勢力を構築、対抗した大国主命勢力は敗退、天照大御神をリーダーとして伊弉諾+伊弉冉一族も神格化され、出雲の地を大国主大神に譲り、天照大御神は伊勢を居とし、神話の主神となった、ということであろうか。神話は古代のイメージを膨らませてくれる。

 当日は、前述の旧大社駅の見学時間にあわせていったん戻ったあと、日本海に沈む夕日絶景の地として知られる日御碕に向かった。日御碕灯台を眺めながら岩場に出る。押し寄せる荒波の先は雲だったので、夕日をイメージしながら車に戻った。
 近くに日御碕神社がある。訪ねなかったが、下の宮=日沈ヒシズミ宮は天照大神、上の宮=神の宮は素戔嗚尊を祀っているそうだ。天照大神=天照大御神の弟が素戔嗚尊である。天照大神をリーダーとする勢力が強大だったことをうかがわせる。

国民宿舎さんべ荘・別館松虫草
 今日の宿は三瓶山中腹の国民宿舎さんべ荘である。日御碕から国道431号線、9号線、184号線を抜け、およそ1時間走って、三瓶山高原道路沿いのさんべ荘に着いた(写真)。
 国民宿舎とは、国立公園・国定公園・都道府県立自然公園・国民保養温泉地など、自然環境に優れた休養地に建つ公共の宿で、全国各地に80ヶ所ほどが開業している。
 インターネットが普及していない30~40年前の旅行では目的地の宿情報がほとんどなく、宿探しに苦労した。現地に着いてから観光案内所などで宿を探すことも少なくなかった。国民宿舎は、確か全国の宿を網羅したパンフレットがあったので?宿が探しやすく、公共なので安心感もあり、比較的料金が手ごろだったので何度か利用した。かんぽの宿、勤め先の福利厚生施設や連携している福利厚生施設の宿も同じような理由でよく利用した。
 しかし、インターネットの普及で宿探しのシステムが格段に向上してからは、アクセス、眺望、宿の雰囲気、温泉、食事、料金などを比較することができるし、JやR、Yなどの予約システムごとに特典、ポイントがあるので、インターネットで宿を探すようになった。今回の島根の旅では三瓶山のハイキングと温泉で検索して国民宿舎さんべ荘を見つけ、Jサイトで予約した。

 さんべ荘は本館と別館に分かれていて、本館は昔ながらの国民宿舎の面影があり費用は廉価(前掲写真)、離れになった別館は古民家風のつくりで費用は割高である。国民宿舎としては割高でも観光地の宿に比べれば割安なので、別館の「松虫草」と名付けられた部屋を予約しておいた。

 「松虫草」は庭に面した和室である。浅学で草花には疎い。webによれば、松虫草とは高原、山中の草地に育ち、草丈は50cm~、松虫=草虫が鳴く8~10月ごろに青紫色の花が咲くことから草虫草と名が付いたらしい。すでに11月、松虫は隠居しているから松虫草は見つけられないが、代わって紅葉が見事な色づきを見せていた(写真)。
 松虫草は、隣に茶室も併設された和室で、長押に第63期王将戦の扁額がかけられていた(写真)。渡辺昭王将と羽生善治三冠七番勝負の第6局がこの部屋で対戦されたようで、由緒ある部屋に泊まったことになる。

 あとでwebを調べ、第63期王将戦は2013年に開局され、第1局は掛川城二の丸茶室、第2局は大田原市・ホテル花月、第3局は箱根町・ホテル花月園、第4局は弘前市民会館、第5局は秦野市・元湯陣屋、第6局がさんべ荘で、第7局は河津町・今井荘で対局された。さんべ荘松虫草の第6局は渡辺王将が勝ち、第63期は4勝3敗で渡辺王将が防衛している。

 羽生善治といえば、7タイトル時代に竜王、名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖の全タイトルを独占して世間を驚かせたから、将棋に疎くても知っている。その後、永世竜王、十九世名人、永世王位、名誉王座、永世棋王、永世王将、永世棋聖の永世称号を獲得し、将棋界の花形ともいわれる。将棋好きであればさっそく将棋盤を用意し、対局を追体験するであろうが、将棋の腕は芳しくないので温泉を楽しむことにした。

 温泉はなかなか凝っていた。浴室内は室内浴槽にサウナ、水風呂が並び、これは珍しくない。露天は、広めの岩風呂に続き、桧風呂、陶器風呂、酒樽風呂、釜風呂、桧風呂が列をなしている。それぞれつめれば2~3人は入れそうだが、空いていて一人占めできた。同じ湯のはずだが、素材や形が違うと気分がずいぶんと違ってくる。星空を眺めながら身体を伸ばし、心身を癒やす。ややぬるめで、順番に湯を楽しんでものぼせることはなかった・・朝晩で男女が入れ替わる、同じような趣向だが、湯船のつくり、配置、景色を変えてあり、気分が一新される・・。

 温泉を楽しんだあとの夕食は、半個室の食事処で量少なめの小さんべ会席を頂いた。量少なめとはいえ、蟹味噌の小鉢に始まり、帆立雲丹和えなどの前菜、鯛、かんぱち、牡丹海老などの向付、手打ち蕎麦、鯖寿司の凌ぎ、鮎塩焼きの焼物、河豚、芋などの油物、蒸し物、蓋物、和牛しゃぶしゃぶ、鴨のマリネ・・・・と続いた。量多めの大さんべ会席はどれほどだろうか、想像ができない。
 食事処の廊下に銘酒が並んでいる。島根の酒は馴染みがないので、岩見銀山、出雲誉、開春の冷酒セットを味わうことにした。順に、すっきり、まろやか、辛口といった印象だが、酒にうるさいわけではないのでどれも美味しく飲んで、ぐっすり休んだ。

女三瓶山を歩く
 三瓶山は鳥取県の大山(標高1792m)に比べ標高は低いが、ともに中国地方を代表する山として人気がある。トロイデ型火山で、北側の男三瓶山(標高1126m)、東側の女三瓶山(標高957m)、太平山(標高854m)、南側の子三瓶山(標高961m)、孫三瓶山(標高903m)などが環状にそびえている。豊かな自然のなかのハイキング、トレッキング、登山を楽しめ、温泉も出ることから、訪れる人が多いそうだ。
 三瓶山ハイキング・トレッキング・登山は6つのモデルコースが設定されている(図web転載)。午後の予定と体力を勘案し、東の原駐車場→観光リフト→女三瓶山頂の往復2時間ほどを選んだ。雲が少し出ているが明るく、雨の心配はなさそうだ。フロントでも確認し、国民宿舎さんべ荘を9:30ごろ出た。

 10分ほどで東の原駐車場に着いた。折りたたみ傘、ウィンドブレーカー、ペットボトルなどをリュックサックに入れる。三瓶山登山口の標識を直進すると、コース5の登山路になり、太平山(標高854m)を経て女三瓶山(標高957m)、男三瓶山(標高1126m)に登れる。
 標識を右に折れると観光リフト乗り場である。リフトは、登山口あたり標高580mほど、リフト山頂820mほど、標高差240mを10分ほどで登った。シーズンオフなのか、リフトはがらがらで、斜面のススキが大忙しに揺れながら出迎えてくれた(写真)。

 リフト山頂から女三瓶山頂を目指して歩く。標高差は140mほど、なだらかで歩きやすい。女三瓶山頂(標高957m)まで30分弱だった。三瓶山を環状に取り巻く峰々の雄大な眺めを見ながら、一息つく。最高峰の男三瓶山(標高1126m、写真)がすぐそこに見えるが、女三瓶山~男三瓶山は70分ぐらいらしい。
 男三瓶山から北の原登山口に下れるが、元気な人は子三瓶山を目指してから西の原登山口に下ることができる。さらに山好きな人は子三瓶山から孫三瓶山を制覇し、南の原登山口に下るか、孫三瓶山から太平山を経て、東の原登山口に下ることもできる。太平山から女三瓶山まで歩けば、三瓶山完全制覇になる。三瓶山はいろいろなルートを楽しめる山のようだ(写真左が孫三瓶山、中ほどが子三瓶山だと思う)。
 男三瓶山、子三瓶山、孫三瓶山は目だけの登山にし、一息終えてからリフトに戻った。出会う人無し、鳥の声も静か、ススキも音なしでたなびいている。滑車の音だけ響くなか、駐車場に戻る。往復1時間ほどの山歩きだったが、山の風景は気持ちを大きくしてくれた。 続く(2020.1、2020.2加筆)

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