<千葉を歩く> 2015.2 南房総を走る/ポピーの里 城山公園 鳩山荘松庵 鋸山・日本寺
房総半島は埼玉に比べ暖かく、春が一足早いそうだ。しかし、埼玉から電車で行くとかなり遠回りになる。車も渋滞で時間がかかる。ということでついおっくうになってしまう。
2015年2月半ば、意を決し、館山に宿を取り、マイカーで出かけた。ナビで検索すると、東京湾アクアラインを通るコースがもっとも時間が早いが、その分、料金も一番高い。
次善の策として首都高速~館山自動車道のコースを選んだ。ところが運悪く、7号線の塗装中の火災発生後の通行止めが長引いていて、迂回してきた車の渋滞に巻き込まれてしまった。
たまにしか首都高速を使わないからとっさにどの道を選べばいいか判断ができず、渋滞の流れに乗ったまま、止まってはのろのろになってしまった。なんとか高速湾岸線に入りスムーズになったが、昼近くである。昼を房総半島で食べるつもりがサービスエリアになり、館山に着いたのは3時近い。
まずは房総フラワーラインを走り、ポピーの里を目指した。フラワーラインといっても、まだ2月のせいか花の咲いていないフラワーラインだった。
加えてポピーの里の案内表示が見当たらない。どうやら館山ファミリーパークのなかにあるらしいと分かり、館山ファミリーパークの案内表示を探す。フラワーラインを走り続けているうち看板を発見、ゴルフコースを抜けて、浜沿いを走り、到着、駐車場に車を入れる。
大きな駐車場だが、車はほとんど止まっていない。どうやら時季外れだったようだ。入園するが私たちのほかは数組しかいない。閑散としている。
目指すポピーは確かに見事だった。10万株?が植えられているそうだ(写真)。かなり広いポピー畑をのんびり歩く。惜しいかな、ごく普通の畝になっていて、変化がない。起伏も少しあるが、ポピーは背が低いから、少し高みから見渡せば見終わってしまう。
そのうち冷たい風が吹き始めた。ポピーはもともと香りがないのか?、冷風のせいか、歩いていても香りを感じない。ポピー畑を見ながらおいしいコーヒーを飲もうと思っても、カフェが見当たらない。長居は難しい。車に戻った。
房総フラワーラインを戻り、なぎさラインを走る。館山港の桟橋からの夕日が絶景だそうだ。海浜の駐車場に車を止める。あいにく曇りである・・夕日にはまだ早すぎる・・。せめて海を見ながらおいしいコーヒーと思ったが、おしゃれなカフェが見つからない。
コーヒーをあきらめ、城山公園に向かう。ここには館山城があったそうで、いまは公園に整備されている。駐車場に車を止め、坂道を上る。
城があっただけにけっこうな上り勾配で、息が切れる。公園には梅林があり、桜やツツジ、あじさいなども植えられていて、四季折々の散策によさそうだ。梅林は満開にはまだ早かったが、白梅、紅梅が咲き誇っていて、目を休ませてくれる。茶室もあって、ときおり茶会が開かれるそうだ。
頂上の城跡に、天守閣様式の博物館が建っていた(写真)。
説明を読むと、なんと故藤岡通夫博士の設計であった。城郭建築の第一人者である。博物館だから小ぶりだが、威風堂々の風格がある。
このあたりから相模湾を一望でき、すぐそこに三浦半島が望めた(写真)。やがて雲行きが怪しくなってきた。梅林をもう一度眺めてから、車に戻った。
ちょうど小学校の下校時間だったようで、小学生が三々五々、おしゃべりしながら公園を通り過ぎていく。車を気にせず、四季折々の緑、花を楽しめる通学路はきっと子どもの感性を豊かにするに違いないと思った。
フラワーラインをもう一度走り、宿に向かう。宿は元首相鳩山一郎氏の別邸跡地に建つ和リゾート鳩山荘松庵である。入口の門構えが別邸の名残だろうか?。こぢんまりとした宿で、落ち着いた雰囲気だった。海沿いの立地で、相模湾が目の前に広がっていて、波の音が響く。さっそく、相模湾を眺めながら温泉でゆったりする。夕食は漁師料理、新鮮な海の幸と地酒寿萬亀を楽しんだ。
夜半から雨が降り出し、風が出たらしいがぐっすりと休んだ。朝には雨も上がっていたので、朝食後、別邸跡地の浜辺に出た。庭はよく手入れされていて、別邸として使われていたころの様子をうかがわせる。砂浜はなく岩場になっていたから、鳩山一郎の子ども威一郎や孫の由起夫がここで泳いだとは思えないが、鳩山一郎が房総の海を眺め、遠く異国を思い、日本の未来を構想した可能性は考えられる。もう一度海を眺めて、宿を出る。
内房沿いのフラワーライン~なぎさラインを走り、鋸山を目指す。鋸山は標高およそ330mで、正式には乾坤山であるが、山をなす凝灰岩が横須賀港や横浜港、靖国神社などの石材として切り出され、その結果、鋸の歯のように見えたことから鋸山と呼ばれたそうだ。
かつてこの山に関東最古の勅願所となる日本寺があり、中腹に大仏が安置され、百尺観音が彫られ、千五百羅漢が祀られていて、それらを巡るハイキングコースが整備されている。
天気は良し、絶好のハイキング日和である。麓の駐車場に車を止め、山頂までロープウェーで登った。およそ4分のパノラマもなかなかの見どころ、少し雲が流れていて富士は見逃したが、目の前の相模湾から東京湾まで遠望できる。
山頂の日本寺境内西口から入場した。境内はいくつかのエリアに分かれていてエリアを巡る散策路が整備されている。ロープウェーの反対側の麓まで下りる散策路もあるが大回りになるので、中腹まで下りてから山頂に戻る1時間半コースにし、まず百尺観音像を見に行った(写真)。1966年、戦死病没者・交通犠牲者の供養のために彫られたそうだ。
昨晩の雨で滑りやすいところもあるが、散策路はきちんと整備されていて、歩きやすい。次に山頂展望台を目指す。展望台には凝灰岩を切り出したあとの垂直の崖を利用した「地獄のぞき」が設けられている。のぞき込むと、切り立った崖の下から強い風が吹き上げてきて、吸い込まれそうな気分になる。目を転じると、緑に覆われた房総半島を望むことができる。夏でも風が通り、さわやかそうである。
ここから崖に沿ったかなりきつい階段を下る。崖には江戸時代に彫られた1553体もの羅漢が祀られている。風化して彫りが消えかかった羅漢や頭や手足を失った羅漢もあるが、総じて穏やかな顔だちが多い。長い年月で彫りに丸みが出てきたようだ。人間も年とともに穏やかに生きよと諭しているようでもある。
さらに山あいの階段を中腹まで下ると、大仏前参道のスロープになり、その先に高さおよそ31mの日本一の大仏が鎮座している。
1783年に原形がつくられたが江戸時代末期に倒壊し放置されていたのを、1969年に復元したそうだ。ここまでで1時間を超えたので戻ることにした。
別ルートの急階段をロープウェー乗り場まで登る。予定通りほぼ1時間半、いい汗をかいた。
麓の駐車場の先が東京湾フェリー乗り場なので休み所があるかと寄ったところ、ガラス張りで開放的な雰囲気のザ・フィッシュというレストラン+ショップがあった。ここで休憩をかねて昼食を取り、帰りは首都高速を避け、京葉道路から外環道を経て家に向かった。
ときどきの遠出も気分転換にいいね。 (2015.3)