著者の永井さんとは1980年から1996年までケルンのドイツ海外放送局ドイチェ・ヴェレの日本語課でご一緒に仕事をさせて頂きました。
2000年に永井さんがベルリンにお引越しされた後もお付き合いは続きました。
このエッセー集は1988年から1994年まで未來社のPR誌「未来」に「ドイツ便り」として連載された記事とドイチェ・ヴェレの放送で取り上げたテーマから構成されています。
タイトルの「ドイツとドイツ人」はドイツのノーベル文学賞作家トーマス・マンがナチス・ドイツの無条件降伏直後の1945年5月29日にワシントンで行った講演の演題だということです。
統一前の東西ドイツ事情から、ベルリンの壁崩壊後ドイツ統一を経て1994年までの時事関連の記事が多い中で、
私はやはり永井さんのプライベートなお話の記事が好きです。
ドイチェ・ヴェレのロシア語課の親友ブリギッテ・シュテファン博士と一緒に借りた家庭菜園(シュレーバー・ガルテン)は私自身2度ほど訪ねたこともあるので好きな記事です。
家庭菜園とはいえ300平方メートルもあるかなり広い土地です。
この庭には「パリの伯爵夫人」という名の梨の木があって、晩年バイオリンを始めた永井さんは知り合いのバイオリン製作者に頼んで、この梨の木でバイオリンを作ってもらったという話は『ドイツとドイツ人』の続編『新首都ベルリンから』に掲載されていると思うのですが、その本も贈呈していただいた筈なのに見当たりません。
お世話になっていたのはいつも私の方なのに以下のご署名を頂きました。
3月上旬に入院先のベルリン・シャリテ病院から、翌週には退院して、
自宅で緩和ケアを受ける予定だというメールを受け取ってひと月も経たないのに
先日急逝されたという悲しいお知らせが届きました。
これまで色々お世話になりました。
安らかにおやすみ下さい。