気がつけばふるさと離れて34年

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

ベストセラー『化学の授業』

2023-12-08 17:44:00 | 読書



ドイツ語の本は読むのに時間がかかります。
購入後読了までほぼ3週間かかりました。
ドイツ語のタイトルは“Eine Frage der Chemie“ です。
英語のオリジナルタイトルは”Lessons in Chemistry“です。



世界的大ベストセラーですが邦訳はまだ出版されていないので敢えて邦題をつけるとすれば『化学の授業』になります。

舞台は1950年代のロスアンジェルスです。
当時自然科学の世界は男性中心主義で女性科学者がキャリアを積むには非常に閉鎖的でした。
化学研究所の助手として仕事をしていた主人公の女性化学者は未婚で妊娠したということで研究所を辞めさせられシングルマザーとして財政的に苦労します。
家計補助のためふとしたことからテレビの料理番組を受け持つことになります。
彼女が番組で使う化学用語(「塩」ではなく「塩化ナトリウム」とか、「酢」ではなく「エタン酸」)や、
調理によりどのような化学変化が起こるかという解説が視聴する主婦の間で大変な評判になります。
番組プロデューサーにとっては悪夢のハプニングが続出し頭を抱えることが多くなるのですが、
職員の女性は「難しい化学用語を聞くと少し賢くなったような気がする」と言って、
青ざめる上司に対して「頭痛ですか? アセチルサルチル酸(アスピリンの有効成分)でもお持ちしましょうか?」と言う始末です。

小説自体はフィクションですが、当時の女性科学者を取り巻く環境はまさに小説で描かれているようにとても厳しいものであったようです。
まあこれまでのノーベル賞の女性受賞者はわずか63人ですし、日本人女性はまだいませんから科学は相変わらず男性中心の世界ではありますが。

主人公にとっては苛酷な状況も描かれていますが、思わず笑ってしまうような愉快なセリフも多々あり痛快で爽快な読後感が味わえます。
邦訳が出たらお勧めの本です。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする