
今年の一時帰国で購入し、船便でドイツの我が家に郵送した本です。
船便ですとパナマ運河経由で2ヵ月かかります。
ですから何を詰めたかすっかり忘れているので小包をあけて「そういえばこういう本も購入したのだっけ」と思い出すことになります。
恩田陸さんの著書では以前「夜のピクニック」を読んだのですが、あまり印象に残っていません。
でも銀座の本屋さんで平積みになっていたこの本の帯に「直木賞と本屋大賞、史上初のダブル受賞」と記されているのを見て即、購入しました。
この小説ではピアノコンクールの話が描かれています。
「浜松国際ピアノコンクール」がモデルだということです。
主人公は以下の4人です。
風間塵(16歳)ー 養蜂家の父とともに各地を転々とし自宅にピアノを持たないがピアノの天才でかつて世界的に有名な演奏家ユウジ・フォン=ホフマンがわざわざ彼の元に通って指導していた。
栄伝亜矢(20歳)- かつて天才少女ピアニストとして国内外で称賛されていたが、13歳のとき母が突然死去したことがきっかけで突然コンサート会場から抜け出しその後演奏活動は一切行っていない。本選ではその時弾けなかったプロコフィエフの「ピアノ協奏曲第二番」を演奏する。
マサル・C・レヴィ・アナトール(19歳)- 名門ジュリアード音楽院に在籍し、完璧な演奏技術と爽やかな容貌でコンクールの第一次予選から優勝候補とされ注目を集める。栄伝亜矢とは幼少時知り合いだったことがわかり「マーくん」「アッちゃん」と呼び合う仲になる。
以上三名が本選まで残り、この3人が第一位から第三位の入賞者になります。
残る一人の主人公は以下の人物です。
高島明石(28歳)ー 音大出身だが楽器店勤務のサラリーマンで妻子もち。コンクール年齢制限ギリギリで参加。
高島は結局、第三次予選で落選してしまい本選にはすすめないのですが、奨励賞と作曲者賞を受賞します。
第二次予選では唯一の新曲で現代曲である「春と修羅」をプログラムに入れなくてはなりません。高島は「春と修羅」の作家宮澤賢治のゆかりの地を訪れたりして十分に準備をします。
作曲者も審査員の一人になっていて、彼が高島の曲の解釈と演奏が一番良かったと評価したのです。
恩田陸さんはインタビューで「苦労したのは演奏者のプログラムを考えだし、その演奏を描写するボキャブラリーをひねり出す」ところだと語っています。
私も第一次と第二次の演奏描写までは結構しっかり(?)読んでいたのですが、第三次あたりになると読み進めるのが大変になってきました。
後半は「一体誰が優勝するのか?」ということばかりが気になり字面だけ追っていました。
やはりコンクールで演奏されるピアノ曲を一度でも聴いていないとこの小説の醍醐味は理解できないような気がします。
(時折、YouTubeで何曲か聴いたりしましたが十分ではありませんでした)
かなり昔、一度だけ「指揮者コンクール」のお手伝いをしたことがあり、あの当時のことを少し思い出したりしました。
芸大のピアノ科出身、ミュンヘンの音大でも勉強し、現在は自宅でピアノを教える傍ら、ホームコンサートを開いたりしている付近に住む友人に明日お会いするので、この本をお貸ししようと思います。