友人にお貸ししていた「おもちゃのいいわけ」がかえってきたので再読しました。
舟越桂氏は岩手県盛岡市のお生まれで私より2歳年上です。
お父さまはやはり彫刻家の舟越保武氏です。
桂さんの木彫作品は敬愛する作家、須賀敦子さんの本の表紙に写真が掲載されていたことから興味を抱きました。
須賀さんの「遠い朝の日」の表紙にも以下の作品が掲載されています。
舟越桂さんがお二人のお子さんのために木のおもちゃを作るようになったのは、
木彫をしていて出てきた、捨てるにはもったいない大きさの木っ端を利用したからということを前書きで述べています。
この優しい木のおもちゃは、もらった子供たちも喜んだことでしょうが、まず一番に子供たちの喜ぶ姿を想像しながら作製した
おとうさんにとって嬉しい時間だったような気がします。
この本におさめられているのはほとんどが木製なのですが、唯一布製の作品もあります。
これはおもちゃではなく息子さんに作ってあげたパイロットの帽子です。
型紙をとってボアの帽子の縫い目のところにバイアスをつけたりとなかなか苦労されたようですが、
結局、息子さんは一度もかぶってくれなかったのだそうです。
あまり快適ではなかったのでしょうか?
この間、歌舞伎で初舞台を踏んだ中村屋兄弟の弟さん、哲之君が桃太郎のかつらをかぶるとカユイといって大人を困らせていたのを思い出しました。
それはともかくこの本の表紙を飾っているハンガーも一度も利用されなかったのだそうです。
ハンガーの飾りは息子さんの肖像画になっているのですが、おとうさんの桂さんは「息子は自分のかおがさびしそうに描かれているのが嫌だったのかもしれない」と想像しています。
すべての「おもちゃのいいわけ」にはおとうさんの子供たちへの愛情に満ち溢れています。
私は父からおもちゃを作ってもらったことなどないけれど、今、父のことで懐かしく思うのは背中です。
それほど父の背中におぶさったことはなかったのですが、アメリカに留学していた頃、ホストファミリーのお父さんの背中をみて、しがみつきたくなったことなどを思い出しました。