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気がつけばふるさと離れて34年

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イザベラ・バード著『日本奥地紀行』

2022-01-13 16:52:00 | 読書
白内障手術後、目の静養のため読書は控え、YouTubeで小説の朗読などを聴きました。
その中にイザベラバードの『日本奥地紀行』がありました。
明治10年頃に本州北部を旅した英国人女性の紀行文です。
興味深い内容だったので独訳本を購入しました。



タイトルを直訳すると「日本における人跡未踏の道」ということになります。
以下が行程です。



あの頃、女性一人で(通訳の日本人男性は同伴していましたが)、本州北部を旅するのは本当に大変だったようです。
全行程中、一番快適な宿泊地は日光の金谷ホテルの前身、金谷邸で、それ以外の宿ではノミや蚊に悩まされたようです。
それでも折りたたみ式の簡易ベッドや椅子、それにゴム製の浴槽まで荷馬で運ばせたそうなので、当時としてはかなり贅沢な旅だと言えるでしょう。

日本人の容貌を「小さくて醜い」と表現する箇所が多くあるのには閉口しますが、
「白人優越」目線だとそう見えるのかも知れません。

日光から会津若松を経て、新潟へ向かう道は多くの峠を超えなくてはならずとても困難だったようです。
ただ水陸の交通要所として盛えた昔の会津藩の津川から阿賀野川を船で新潟まで下る風景はとても素晴らしかったとの描写があり、現在でも川下りができるのならいつか遊覧したいと思いました。

新潟も水路のある清潔な町だそうでスケッチもあります。


ネットで調べた現在の風景です。



江戸末期から明治初期の日本の様子を記述した本としては、
この時期に来日した外国人の記録や著述のほとんどを網羅した渡辺京二の労作
『逝きし世の面影』が一番優れていると思います。









朗読の時間

2021-11-25 18:26:00 | 読書
先日、花水木さんが地区の朗読サークルで向田邦子の『文字のないはがき』を朗読されたことをブログに記されていました。
それで私も早速、斎藤孝さんの『声に出して読みたい日本語』から何篇か朗読しました。



この本には8つのテーマ毎に70篇ほどの文章が引用されています。
中でも私が好きで何度も朗読しているのは初めのテーマ「腹から声を出す」の冒頭に出てくる
『弁天娘女男白浪(白浪五人男)』です。



そうです、「知らざあ言って聞かせやしょう」で始まり
「由縁の弁天小僧菊之助たぁ、おれがことだ」で見得を切るあの名ゼリフです。
昔、歌舞伎座で鑑賞した舞台を思い出しながら声を張り上げています(^○^)。

中原中也の詩『サーカス』もオノマトペの「ゆあーん、ゆおーん、ゆやゆおん」が好きで良く朗読しています。



伊藤比呂美さんの『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』の独訳本にもこのオノマトペが登場する箇所があるのですが、
ドイツ人読者で中原中也の詩を知らない人は奇妙に思うかもしれませんね。












ドイツのベストセラー 『ミス・メルケル』

2021-11-07 14:53:00 | 読書
半年以上ドイツでベストセラーになっている推理小説があります。
タイトルは『Miss Merkel (ミス メルケル)』です。



時は2022年、首相を退陣してから6週間、アンゲラ・メルケルはご主人と飼い犬と共に
ドイツ北東部ポーランドとの国境に位置する鄙びたウッカーマルク郡に引っ越してきます。
そこで起こった殺人事件をアガサクリスティーの推理小説に登場する「ミス マープル」のように
「ミス メルケル」が捜査して事件解決に導くというストーリーです。
飼い犬の名前はプーチンで、マッチョタイプのトランプという人物も登場します。

「シャーロックなんか忘れなさい。ミスメルケルの登場よ」
というキャッチコピーが表紙裏に記されています。



連立政権構成の話し合いがまとまらないのでメルケル首相の退陣はいつになるかわかりません。
そのためメルケル首相はG20の会合でローマに行ったり、気候変動枠組み条約会議でグラスゴーに行ったりと相変わらず忙しい日々を送っています。
この推理小説に目を通す時間などなさそうですが、もしお読みになったら感想を伺いたいものです。




恩田陸著 『蜜蜂と遠雷』再読

2021-10-28 17:21:00 | 読書



この本を再読しようと思ったのはこの間のショパンコンクールの様子をYouTubeでフォローしたためです。
日本人ピアニストが2位と4位に入賞したこともあり、今回のコンクールは日本ではかなり話題になったようですね。

ピアノコンクールが描かれたこの長編小説のモデルは浜松国際ピアノコンクールで
著者の恩田陸さんは執筆にあたり2006年の第6回大会からほぼ全参加者の演奏を聴き、
執筆終了後の第10回大会も引き続き演奏を聴き続けたそうです。
(以上ウィキペディアからの情報)
今年の11月には第11回大会が開かれる予定だったのですが、コロナ禍のため中止になったということで残念でした。
海外からの参加者が多く、その方たちに入国後2週間(現在は10日間まで短縮されましたが)の自主隔離を要請するのは難しいとの理由からだそうです。
もし開かれていれば、ショパンコンクールのあとだけに注目されたことでしょう。
浜松の第9回大会で優勝したイタリアのアレクサンダー・ガジュヴィは今回のショパンコンクールでは日本の反田恭平さんとともに2位になっています。

前回読んだ時と同じように第1次予選から本選までの主人公4人の演奏に関する詳細な描写に驚きました。
主人公のひとり「ジュリアードの王子様」と呼ばれるマサルの第1次予選の演奏描写はショパンコンクールでの反田さんの演奏で私も同じような感想を持ちました。長いのですが引用します。
「・・・なんて楽そうに弾くんだろう。どこにも余計な力が全く入っていない。鍵盤を撫でているかのようなのに音の粒は明確だし、隅々までピアノが鳴っている」

この本の後は宮下奈都著『羊と鋼の森』も再読したいと思っています。



調律師について描かれたこの本もショパンコンクールに触発され再読したくなりました。
数年前「もうひとつのショパンコンクール〜調律師たちの闘い」というドキュメンタリーを視聴しました。
ショパンコンクールのコンテスタントが選べる4つのピアノメーカーの日本人調律師にスポットが当てられています。
シュタインウェイの調律師は日本人ではなかったので、このメーカー以外のヤマハ、カワイ、ファツィオリの調律師のコンクール中の厳しい仕事ぶりが描かれていました。
このドキュメンタリーで初めてファツィオリというピアノメーカーのことを知りました。
そして今回のピアノコンクールで一位になったピアニストが選択したのがファツィオリでした。
それで入賞者のガラコンサートでも皆さんファツィオリのピアノで演奏しました。

『羊と鋼の森』ではピアノという楽器が奏でる音に真摯に向き合う調律師たちが描かれています。
ファツィオリ社の日本人調律師、越智さんのようです。
この小説では調律師に成り立ての主人公がコンサート用ピアノの調律をするベテランの調律師に
彼が調律で目指す音について尋ねる所があります。
それに対して彼は原民喜の文体に関する言葉で答えています。
これも長くなりますが引用します。
「明るく静かに澄んで懐かしい文体。少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体。
夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」
ここで描写されている文体を音にかえるとどのような音色になるか想像もつきませんが、
とても素敵な音の世界のような気がします。



谷川俊太郎著 『ひとり暮らし』

2021-10-01 14:27:00 | 読書
今日10月1日は国連が1991年に制定した「国際高齢者デー」です。
ドイツには日本の「敬老の日」のような高齢者に注目が集まる日は特にありません。
「国際高齢者デー」にも特に行事はなく、ドイツが高齢化社会に進んでいるというデータが発表される程度です。

今回発表されたデータによると現在ドイツには65歳以上の高齢者は590万人生活していて、
これは全人口の34%になります。
20年前、65歳以上の人は510万人だけでしたから、高齢化が進んでいます。

590万人のうち、4%だけが介護ホームやシニア向けケア付きアパートで暮らし、
それ以外の人はご自宅で生活されているそうです。
ご自宅で暮らされている方の3人にひとりは「ひとり暮らし」です。
ただ日本のように「孤独死」が話題にならないのは「家族に看取られることなく」ひとりで死を迎えることはそれ程悲惨なことではないとの考えがあるからなのかも知れません。

海外で「ひとり暮らし」になることへの不安が全くないと言うと嘘になりますが、
こればかりは自分ではどうすることもできないですからね。

「ひとり暮らし」になったら谷川俊太郎さんみたいに生きたいなと時折エッセーを読み返しています。