風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

神は見た、美しかったからである

2016年02月19日 | 「詩集2016」

窓に向かって古い本をひらく
はじめに丘があった
丘はなだらかな放物線をえがき
やわらかくて温かい
ふたつの水をわけて現れた
それは原初のかたち
満々と水をたたえて膨らんでいる
Oh fine!
神は見た、美しかったからである
……と

流れるもの
それは水だろうか
光るもの
それは星だろうか
微塵となって
かたちなく空しいままで
宙をさまようもの

窓の外へ耳をひらく
かすかに聞こえてくる
単調なリズムのくりかえし
夜の底を流れている混沌のひびき
辿ろうとして辿れない
たどたどしい小さな足おと

グミの実のように
丸くて小さい
太陽はまだ果実のままで
燃えることはなかった
甘くはなく酸っぱくもなく
かたちはあるが光はなく
かすかに優しい熱があった
ひとつぶ
ふるえる舌の先で
はじまりの味をさがす

夢のあとに
空へ帰る鳥たちの鼓動が
窓をたたく
すこしずつ彩られてゆく朝の光
Oh fine!
人は見た、美しかったからである
ゲネシス(Genesis)
一つの終わりは一つの始まり
水を分けて
濡れたままで生まれたい
……と





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