風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

春よ来い、早く来い

2021年02月07日 | 「新エッセイ集2021」

 

花もないベランダがさみしいので、せめて草ばかりでもと、花ニラの鉢で葉ばかりが繁茂するのを放置していた。
そこにいつからか、どこからやってきたのか、1匹のバッタが住みついているのがわかった。
イナゴかキリギリスかトノサマバッタか、昆虫に疎いぼくには判別できないので、とにかくバッタだということになっている。

そんなバッタが、寒い冬まで生き延びるなんて知らなかった。
イソップ寓話のキリギリスだって、
「そしてとうとう、寒い寒い冬がやって来ました。野原の草はすっかり枯れ果て、キリギリスの食べ物はひとつもなくなってしまいました。」
ということで、働き者のアリに食料をねだりに行くが断られ、ついには寒さと飢えで死んでしまうのだ。

さいわい、わが家のベランダは日当たりは良いし、大阪の冬は寒さもそれほど厳しくはないので、バッタ君も花ニラの葉っぱの上で温まったり、草の中に潜って風を避けたりしながら、いまのところなんとか生き延びているようだ。
どのように保護してやれば良いのかわからないし、今の環境にも慣れていくのかもしれないので、バッタ君には頑張って冬を越してくれと、ただ見守るしかない。
春よ来い、早く来いと、寒さで弱っているぼくも、いまは一日も早く冬から脱出したい。

 

 

 

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