風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

クモの糸

2018年06月01日 | 「新エッセイ集2018」

 

ネット上では、言葉(文字)なしでは何も始まらない。
ブログに文章を書き、投稿サイトに短文を発表したりしているぼくの生活は、かなりの部分をネット上の言葉(フォント)に依存していることになる。
そこでは、こちらの意向はもちろん言葉で伝えるわけだが、相手や、その他不特定の人たちの思考や気持(最近では写真でも)も、言葉だけで推量しなければならない。相手の言葉の過剰だと思われる部分はすこし引いてみたり、解かりにくい部分は自分なりに解釈しながら、できるだけ真実と思われる部分を受取るようにしている。

それがメールの交換であっても、サイト上のコメントのやりとりであっても、いくどか言葉を交流するうちに、たとえ言葉だけであっても、相手の心の核心に触れたとおもえる瞬間はあるもので、そのようなことを繰り返すうちに、相手との繋がりも深くなっていくように感じる。
それは友だちのような、あるいは友だちに近い快い接触であり、そのような状態は、あるていど信頼関係が保たれているということではないだろうか。

会ったことがなくても、声を聞いたことがなくても、送られてくる言葉(文字)だけでも、人と人は十分に心の交流は可能だと思われる。
と同時に、言霊ともいわれる言葉には、魂が宿ったり宿らなかったりもするから、自分では気付かずに相手を傷つけていたり、また相手のそっけない言葉に気持が沈んでしまうこともある。ときには炎上などということもあるのは、言葉だけの交流の難しさだろうか。
でも、こういったことは電波上だけのことではなく、家庭や職場での日常生活でもしばしば起こることではある。

ところで、ネットというのは網のことだが、World Wide WebのWebは蜘蛛の巣のことらしい。いまやケータイやパソコンを使うことが日常化しているわれわれの生活は、世界中に張り巡らされた巨大な蜘蛛の巣の中を、右往左往しているようなものかもしれない。
ネット上では、地球の裏側の知らない人とも、この蜘蛛の糸で繋がっている。モニター相手でバーチャルの海を泳いでいるような心細さも、世界のどこかに繋がっている糸があると思うだけで心強くなれたりもして、ある種の連帯感を味わうことができる。

いわゆるSNSといわれるものでは、友だちの輪のようなものがいくつもできていて、さらに輪と輪が繋がったりもして、今までなかったような、ネット上の親密な交流が活発に行われているという。
各自が自分の日記や身辺雑記、写真などを公開し、お互いに頻繁にコメントし合って、励ましたり慰めたりしながら親密度を深めていく。日常生活のプライベートな部分で触れ合っていくわけだから、お互いに許し合った濃密な関係が生まれてくるものなのかもしれない。

網の目のように様々な言葉が行き交って、温かい言葉などにも浸れれば、サンルームのように居心地がいい場所にもなるだろう。なかには、一日中入りびたりというネット人もいるらしいから、SNSというものには、それだけ人を魅了するものがあるのだろう。
細くて切れやすい蜘蛛の糸だが、一方では太くて丈夫な糸にもなり、ときには血の通った糸にもなるようだ。
電波で張り巡らされた蜘蛛の糸を手繰りながら、ぼくは拙いブログでちまちまと発信を続けているが、ぼくの糸は、まだまだ細くて切れやすい蜘蛛の糸である。

 


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4 コメント

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いつも、ありがとう! (yo-yo)
2018-06-01 18:12:29
熊子の百葉箱さん
いつもコメント、ありがとうございます。

熊子さんの、記憶に残る糸が切れないよう、
これからも頑張ります。
いつも励まされています。
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心地よい居場所を (yo-yo)
2018-06-01 18:11:12
lilyさん
コメントありがとうございます。
いつも読んでいただいてるとのこと、嬉しいです。

居場所がいくつもあるなんて、楽しい発想ですね。
無数にあるネットの糸を辿っていくと、
さまざまなブログがあり、いろいろな発想があって
とても刺激を受けますね。
受け取るばかりで、なかなかコメントもできませんが、
面白く読んでいただけるよう発信を続けますので、
これからもよろしくお願いいたします。
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Unknown (熊子の百葉箱)
2018-06-01 09:48:20
yo-yoさんの言葉は鮮明に光景や
自分なりに解釈したものが描け、
記憶に残る糸が切れにくいものかと
思うのです。
返信する
Unknown (lily)
2018-06-01 09:25:12
おはようございます。
初めてコメントさせていただきます。
いつも楽しみに読ませていただいています。
ありがとうございます。

いくつも居場所があるのは生きやすい・・・
ってなぜか思っているところがあり
ブログもそんな居場所の一つです。
でも時々、書き過ぎかなとか
あるいは当たり障りなさ過ぎて
これは面白くないだろう~とか揺れ動きながら
続けています。
誰かの語る言葉を聴くのが好きなことなので
ブログを読むのは面白いと思えることの一つです。

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