雨が降るといつも
あまだれが落ちるのをじっと見ている
私はそんな子どもだった
樋の下でふくらんで
まっすぐ地面に落ちてくる
あまだれ1ぴき死んだ
あまだれ2ひき死んだ
あまだれがいっぱい死んだ
あまだれは落ちる瞬間が美しい
小さくふくらんで息をとめる
言葉にならない挨拶のようだった
おじいさんもさいなら
おばあさんもさいなら
おじいさんは雨あがりのあまだれ
おばあさんはどしゃぶり
たまごやき焼いたよってに
はよ帰っといで
茶がゆに冷やめし
ちりめんじゃこに茄子の古漬け
うすぐらい土間の足ぶみの石うす
あまだれはどこへ帰る
おじさんも死んだ
おばさんも死んだ
みんな簡単な挨拶をして
いつのまにか
あまだれになった
ちいさなあまだれ
輝いたら消える
(2004)