
ひさしぶりの晴れた朝に
せんたく物を干すあなたが好きだ
空に向かって2本の細い腕がのびる
ぴっとひろげられた白いハンカチ
青い空に旗のように並ぶ
あなたの空と僕の空はつながっている
青い空の向こう岸にあなたがいて
こちらの岸に僕がいる
あなたの白い四肢が躍動する
さまざまな色彩と模様が空をうめてゆく
大きなシャツに小さなシャツ
長いくつした短いくつした
どらえもんやキティちゃんやアンパンマン
あなたの家族が勢ぞろいする
みんな両手をいっぱいにひろげて
なんという賑わいだろう
なんという祝祭だろう
空がだんだん小さくなる
空がだんだん小さくなって
もう朝を満たすものはないのか
いつのまにか
あなたはいない
あとに残されたちっぽけな空と
僕はひとり
ひらひらとハンカチがいちまい
青空の外へ飛んでゆく
(2004)