風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

しおざい

2010年05月05日 | 詩集「風のそとへ」
Shiosai_2


魚を丸ごと
皮も内臓もぜんぶ食べた
それは
ゆうべのことだ


目覚めると
私の骨が泳いでいる


なんたるこった
私を食べてしまったのは私だろうか


どこをどうやって
いままで
生き延びてきたんだろう


外では騒がしい音がしている
もう誰かが
朝をかき集めている


(2008)


電車

2010年05月05日 | 詩集「風のそとへ」
Usagi


電車の好きな少年だった


窓のそとを
いつも景色が走っていた
乗客はいなかった


やがて彼は
景色のなかを走った
走りつづけた


いくつかの景色をつなぐと
電車になった
立ち止まるとそこが
駅になった


(2008)