2020-0416-man3561
万葉短歌3561 かな門田を3306
かな門田を 荒垣間ゆ見 日が照れば
雨を待とのす 君をと待とも ○
3306 万葉短歌3561 ShuG574 2020-0416-man3561
□かなとだを あらがきまゆみ ひがとれば
あめをまとのす きみをとまとも
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3455-3566、112首)の第107首。女。
【訓注】かな門田(かなとだ=可奈刀田)[「道に対して曲がり角をなす戸口」。09-1739金門尓之(かなとにし)、3530兒呂我可奈門欲(ころがかなとよ)]。照れば(とれば=刀礼婆)[「<照(と)れば>」の訛り]。待と(まと=万刀)[「<待つ>の東国形」]。
2020-0415-man3560
万葉短歌3560 ま金吹く3305
ま金吹く 丹生のま朱の 色に出て
言はなくのみぞ 我が恋ふらくは ○
3305 万葉短歌3560 ShuG573 2020-0415-man3560
□まかねふく にふのまそほの いろにでて
いはなくのみぞ あがこふらくは
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3455-3566、112首)の第106首。男?女?
【訓注】ま金吹く(まかねふく=麻可祢布久)[「金〔くがね〕を採集する地」]。丹生のま朱(にふのまそほ=尓布能麻曽保)[「<丹生>は辰砂(しんしゃ)を含む赤土の産地に由来する地名。・・・<ま朱>は赤土(辰砂)」]。我が恋ふ(あがこふ=安我古布)。
2020-0414-man3559
万葉短歌3559 大船を3304
大船を 舳ゆも艫ゆも 堅めてし
許曽の里人 あらはさめかも ○
3304 万葉短歌3559 ShuG568 2020-0414-man3559
□おほぶねを へゆもともゆも かためてし
こそのさとびと あらはさめかも
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3455-3566、112首)の第105首。女。
【訓注】舳(へ=倍)。艫(とも=登母)。許曽(こそ)[「卜占を行なう人びとの住む集落・・・」]。あらはさめかも(阿良波左米可母)[「<あらはす>は暴露する意。・・・<めかも>は反語。中央語の<めやも>・・・」]。
2020-0413-man3558
万葉短歌3558 逢はずして3303
逢はずして 行かば惜しけむ 麻久良我の
許我漕ぐ舟に 君も逢はぬかも ○
3303 万葉短歌3558 ShuG568 2020-0413-man3558
□あはずして ゆかばをしけむ まくらがの
こがこぐふねに きみもあはぬかも
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3455-3566、112首)の第104首。女。
【訓注】麻久良我の許我(まくらがの こが=麻久良我乃 許賀)[3555麻久良我乃 許我(まくらがの こが)]。
2020-0412-man3557
万葉短歌3557 悩ましけ3302
悩ましけ 人妻かもよ 漕ぐ舟の
忘れはせなな いや思ひ増すに ○
3302 万葉短歌3557 ShuG568 2020-0412-man3557
□なやましけ ひとづまかもよ こぐふねの
わすれはせなな いやもひますに
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3455-3566、112首)の第103首。男。
【訓注】悩ましけ(なやましけ=奈夜麻思家)[「<悩ましき>の東国形」]。人妻かもよ(ひとづまかもよ=比登都麻可母与)[3430許求良米可母与(こぐらめかもよ)]。忘れはせなな(わすれはせなな=和須礼波勢奈那)[「3487の<なな>と同じく<なへ>の訛りか。3408・3436の<なな>とは別の語と思われる〔各注参照〕」]。思ひ(もひ=母比)。
2020-0411-man3556
万葉短歌3556 潮舟の3301
潮舟の 置かれば愛し さ寝つれば
人言繁し 汝をどかもしむ ○
3301 万葉短歌3556 ShuG568 2020-0411-man3556
□しほぶねの おかればかなし さねつれば
ひとごとしげし なをどかもしむ
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3455-3566、112首)の第102首。男。
【訓注】潮舟(しほぶね=思保夫祢)[「ここは引き潮で浜辺に置き去りにされた舟」。3450斯抱布祢(しほふね)]。置かれ(おかれ=於可礼)[「<置けれ>の東国形」]。さ寝(さね=左宿)。汝をどかもしむ(なをどかもしむ=那乎杼可母思武)[「<ど>は<あど>(3379)の約。<しむ>は<せむ>の東国形」。3379和我世故乎 安杼可母伊波武(わがせこを あどかもいはむ)]。
2020-0410-man3555
万葉短歌3555 麻久良我の3300
麻久良我の 許我の渡りの 韓楫の
音高しもな 寝なへ子ゆゑに ○
3300 万葉短歌3555 ShuG568 2020-0410-man3555
□まくらがの こがのわたりの からかぢの
おとだかしもな ねなへこゆゑに
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3455-3566、112首)の第101首。男。
【訓注】麻久良我の許我(まくらがのこが=麻久良我乃 許我)[「茨城県古河(こが)市か」]。韓楫(からかぢ=可良加治)[「大陸風の新式な櫓」]。音(おと=於登)[「噂、評判」]。寝なへ(ねなへ=宿莫敝)[3529参照]。
2020-0409-man3554
万葉短歌3554 妹が寝る3299
妹が寝る 床のあたりに 岩ぐくる
水にもがもよ 入りて寝まくも ○
3299 万葉短歌3554 ShuG567 2020-0409-man3554
□いもがぬる とこのあたりに いはぐくる
みづにもがもよ いりてねまくも
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3455-3566、112首)の第100首。男。
【訓注】寝る(ぬる=奴流)。床(とこ=等許)。ぐくる(具久留)[「<くくる>は<くぐる>の古形」。”ぐくる”訓はここだけ]。
2020-0408-man3553
万葉短歌3553 安治可麻の3298
安治可麻の 可家の港に 入る潮の
こてたずくもか 入りて寝まくも ○
3298 万葉短歌3553 ShuG562 2020-0408-man3553
□あぢかまの かけのみなとに いるしほの
こてたずくもか いりてねまくも
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3455-3566、112首)の第99首。男。
【訓注】安治可麻の可家の港(あぢかまの かけのみなと=安治可麻能 可家能水奈刀)[地名、3551参照]。こてたずくもか(許弖多受久毛可)[下記注]。
【依拠本注-こてたずくもか】「こて」は「言(こと)」の東国語、「たずく」は緩い意の形容詞「たずし」の連用形、「もか」は仮想的願望を表わす助詞「もが」か。
2020-0407-man3552
万葉短歌3552 麻都が浦に3297
麻都が浦に さわゑうら立ち ま人言
思ほすなもろ 我が思ほのすも ○
3297 万葉短歌3552 ShuG562 2020-0407-man3552
□まつがうらに さわゑうらだち まひとどと
おもほすなもろ わがもほのすも
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3455-3566、112首)の第98首。女。
【訓注】麻都が浦(まつがうら=麻都我宇良)[地名]。さわゑうら立ち(さわゑうらだち=佐和恵宇良太知)[「<さわゑ>はざわめき。・・・<うら>は<群(むれ)>の東国語か」]。思ほすなもろ(おもほすなもろ=於毛抱須奈母呂)[<思ほすらむよ>の意。<なも>は<らむ>の東国形。<ろ>は詠嘆・・・]。我が思ほのすも(わがもほのすも=和賀母抱乃須毛)[「<思ほ>は<思ふ>の東国形。<のす>は<なす>の訛り。」]。
2020-0406-man3551
万葉短歌3551 安遅可麻の3296
安遅可麻の 潟にさく波 平せにも
紐解くものか 愛しけを置きて ○
3296 万葉短歌3551 ShuG562 2020-0406-man3551
□あぢかまの かたのさくなみ ひらせにも
ひもとくものか かなしけをおきて
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3455-3566、112首)の第97首。男。
【訓注】安遅可麻(あぢかま)[地名]。さく(左久)[「白く立つ波頭を波が咲くと見たもの」]。平せに(ひらせに=比良湍尓)[「安易に、のべつまくなしに」]。愛しけ(かなしけ=加奈思家)[「<愛しき>の東国形」。07-1259哀我 手鴛取而者(かなしきが てをとりてば)、ほか]。
2020-0405-man3550
万葉短歌3550 おしていなと3295
おしていなと 稲は搗かねど 波の穂の
いたぶらしもよ 昨夜ひとり寝て ○
3295 万葉短歌3550 ShuG562 2020-0405-man3550
□おしていなと いねはつかねど なみのほの
いたぶらしもよ きそひとりねて
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3455-3566、112首)の第96首。女。
【訓注】おしていな(於志弖伊奈)[「<おして>は意志や感情に反して、の意。強引に、無理矢理に。・・・<いな>は<否>で、<稲>を懸ける」]。いたぶらし(伊多夫良思)[「ひどく揺れる意の<甚振(いたぶ)る>・・・。気持がひどく揺れていらいらするさま」]。
2020-0404-man3549
万葉短歌3549 多由比潟3294
多由比潟 潮満ちわたる いづゆかも
愛しき背ろが 我がり通はむ ○
3294 万葉短歌3549 ShuG561 2020-0404-man3549
□たゆひがた しほみちわたる いづゆかも
かなしきせろが わがりかよはむ
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3455-3566、112首)の第95首。女。
【訓注】多由比潟(たゆひがた=多由比我多)[「03-0366 に越前の地名として出る。ここは東国」。03-0366(長歌)手結我浦尓(たゆひがうらに)]。いづ(伊豆)[「<いづく>の意。東国語か」]。我がり(わがり=和賀利)[「私の所へ」。3536和我理許武等伊布(わがりこむといふ)]。
2020-0403-man3548
万葉短歌3548 鳴る瀬ろに3293
鳴る瀬ろに こつの寄すなす いとのきて
愛しけ背ろに 人さへ寄すも ○
3293 万葉短歌3548 ShuG560 2020-0403-man3548
□なるせろに こつのよすなす いとのきて
かなしけせろに ひとさへよすも
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3455-3566、112首)の第94首。女。
【訓注】こつ(木都)[「水辺に寄せられた木屑」。07-1137木積不来友(こつみ〔=こつ〕こずとも)、11-2724木積成(こつみなす)、など]。いとのきて(伊等能伎提)[「とくに程度の極まっているさま」。05-0892〔貧窮問答歌〕伊等乃伎提、05-0897伊等能伎提、など]。
2020-0402-man3547
万葉短歌3547 あぢの棲む3292
あぢの棲む 須沙の入江の 隠り沼の
あな息づかし 見ず久にして ○
3292 万葉短歌3547 ShuG556 2020-0402-man3547
□あぢのすむ すさのいりえの こもりぬの
あないきづかし みずひさにして
〇=出典未詳。
【編者注】相聞(3455-3566、112首)の第93首。女。
【訓注】あぢ(阿遅)[「味鴨、巴鴨とするのが通説。ただし、〔川口爽郎・・・は〕コアジサシと見るのが正しいという」]。須沙(すさ)[「地名。・・・<渚沙>(尾張の国知多の須佐湾・・・か]。あな息づかし(あないきづかし=安奈伊伎豆加思)[下記注]。
【依拠本注-息づかし】「息づく」(3388)を形容詞化した語が「息づかし」で、これは 3539 の「息に我がする」の「息にする」を情意化したものといえる。苦しくて息が詰まりそうなさまをいうが、現代語に移すと味がなくなる。