A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

TOSHIKOの成功は、仕事より彼女の音楽を選んだよき伴侶に恵まれたから・・・・・

2012-02-28 | MY FAVORITE ALBUM
Insights / Toshiko Akiyoshi - Lew Tabackin Big Band

秋吉敏子のビッグバンドの成功は、彼女のピアノのプレーはもちろんだが、作編曲そして妥協を許さないリーダーシップに因るところが大きい。それが次第にオーケストラ全体の結束を生んでいったように思う。彼女のオーケストラはTOSHIKO-TABACKIN Big Bandといわれるように、夫君であるルータバキンの存在も大きい。豪快なテナー、そして熱っぽいフルートはバンドの看板として不可欠だが、彼女のよき理解者としてのパートナーとしての立ち位置も彼女にとっては大事であったろう。

彼女たちが、長年住み慣れたニューヨークを離れてロスに移り住んだのも、そもそものきっかっけはルー・タバキンの仕事が理由だった。’70年から、ルータバキンは、あのドックセベリンセン率いる”Tonight Show Big Band”のレギュラーメンバーだった。サックスセクションの一員として週5日このビッグバンドが仕事場で、確かに収入は安定していたかもしれない。が、タバキンはそこで一度もソロをとることもなかったという。そのTonight Show自体の放送拠点がニューヨークからロスに移ることになり、オーケストラの面々も西海岸に移っていった。もしかして、彼らが西海岸に移らずにニューヨークに留まったらこのバンドも生まれなかったかもしれない。何がきっかけになるか分からないものだ。
そして’74年、TOSHIKOのオーケストラが立ち上がった時、タバキンはまだその仕事を続けていた。

'76年の新年早々の日本ツアーを成功裡に終えて、帰国の途に着いたTOSHIKOのオーケストラは更なる飛躍をすることになる。2年間で矢継ぎ早にアルバムを出していたが、次なるアルバムを早速録音することになった。それが、このアルバム“Insights”だ。
何といってもB面の“MINAMATA”が大作だ。平和な村が水銀の恐怖で一転水俣病の恐怖に襲われる。今の福島と何か通じるものを感じる。TOSHIKOには広島の作品もある。いずれ福島も作品になるかもしれない。
初アルバム以来、彼女のオリジナルの曲、アレンジの表現の場としてのオーケストラはそのコンセプトを変えずますます進化を続けたが、内外の評判にも支えられより、その時点で確固たるものになったといえよう。

もうひとつ、この年はオーケストラが次なるステップに踏み出したといえる出来事があった。それは、ルータバキンがTonight Showのオーケストラを辞めたことだ。それはTOSHIKOとのオーケストラの活動に軸足を移したということに他ならない。もちろん、単発のスタジオワークは続けたが、安定的な職場を離れるということは、本来の進むべき道に不退転の決意で臨んだということだと思う。普通の会社勤めの世界でも、会社を替わるのはともかく、色々不満はあっても独立して自営で仕事をするという決断はなかなかできないものだ。彼の場合は、お金よりもきっとTOSHIKOと一緒にジャズをもっと極めようということだったに違いない。亭主にそのような決心をさせることができたのも、敏子の音楽が魅力に満ちていた証拠だろう。

そしてこのアルバムを録音してすぐに、ダウンビートの批評家投票で、この年のオーケストラとアレンジャーの新人部門の一位を得る。いよいよ順風満帆での船出になった。


1. Studio J Akiyoshi 6:00
2. Transience Akiyoshi 4:33
3. Sumie Akiyoshi 7:50
4. Minamata: Peaceful Village/Prosperity & Consequence/Epilogue Akiyoshi 21:37

Toshiko Akiyoshi (p)
Lew Tabackin (ts,fl)

Steve Huffsteter (tp)
Bobby Shew (tp)
Richard Cooper (tp)
Jerry Hey (tp)
Mike Price (tp)
Bill Reichenbach (tb)
Britt Woodman (tb)
Jim Sawyers (tb)
Phil Teele (btb)
Tom Peterson (ts)
Gary Foster (as)
Dick Spencer (as)
Bill Perkins (bs)
Don Baldwin (b)
Peter Donald (ds)

Michiru Mariano (Voices)
Tadao Kamei (Ohtsuzumi)
Hayao Uzawa (Kotsuzumi)
Hisao Kanze (Utai)
Hiromitsu Katada (kakko)

Hiroshi Isaka Producer
Joe Lopes Engineer

Recorded on June 22,23 & 24, 1976
at RCA Studio "A" Hollywood,Califprnia

インサイツ
秋吉敏子,ルー・タバキン・ビッグ・バンド
BMG JAPAN
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