Critics' Choice / Pepper Adams
年をとるとがらりと風貌が変ってしまい、若い時の面影が全くなくなってしまう人もいる。人生において何か大きな転換をする時は、このように風貌から別人になってしまった方が変身しやすいかもしれないが。
ペッパーアダムスは写真を見る限りの風貌は若い時も、年をとってからもあまり変っていない。そして、プレー自体も若い頃のバイタリティーが年をとってもまったく変らなかった。
そのペッパーの初録音となると、リーダーアルバムはModeのQuintetだと思う。
新人でありながら、このレーベルに登場する他の中堅プレーヤーに負けないアルバムだと思う。
1930年生まれのペッパーなので27歳の時であるが、もちろんそれまでの間の経験は豊富だ。デトロイト生まれのペッパーはニューヨークで育ったが、17歳の時にはデトロイトへ戻っていた、そこで、サドジョーンズなどの地元もミュージシャンとプレーをしていたが、再びニューヨークに戻ったのが’56年の初め26歳の時だった。
ニューヨークでもすぐに色々なセッションでプレーをしていたが、5月にオスカーペティフォードの勧めで、スタンケントンオーケストラに加わってツアーに出る。各地を周って、11月25日サンフランシスコにいる時に半年プレーを続けたケントンオーケストラを辞めて、ロスアンジェルスに移る。その時一緒に辞めたのが実はドラムのメルルイスであった。
もう一人一緒に辞めたトランペットのリーカッツマンとロスで早速プレーを始めた。同時にロスでは多くのスタジオワークをこなすが、クインシージョーンズのGo west manへの参加もこの時だった。そしてメイナードファーガソンのビッグバンドに加わるなど、いわゆるスタンケントン出身者の多くが辿る道を歩みながらウェストコーストを拠点として仕事を始めた。
そんな中7月12日Modoでの初リーダーアルバムの録音が行われた。順風満帆の門出に相応しいタイミングであった。
それから僅か一ヶ月後の8月22日、このアルバムは生まれた。このセッションには一緒にスタンケントンを卒業してロスで活動ををしていたメルルイスとトランペットのリーカッツマンが加わった。ペッパーのリーダーアルバムだが、3人にとっては3人で作った「ケントン卒業記念アルバム」だったかもしれない。ピアノにはジミーロウルズ、ベースにはダクワトキンスと新進気鋭のメンバーが加わった演奏だ。
演奏する曲には、昔デトロイトで一緒にプレーをしていたトミーフラナガンやサドジョーンズの曲が入っている。ペッパーの曲作りはまだまだ、作曲というよりも自然発生的にプレーしたブルースが2曲収められている。
プレーは、まさにペッパーのあのサウンドである。当時の西海岸の流行はジェリーマリガンのクールなサウンドだったかもしれないが、そんな事はお構いなくペッパーサウンドを全編披露している。ウェストコーストで活動を始めたものの、ペッパーの演奏のオリジンはデトロイトであり、ニューヨークの色が濃い。彼のプレーに引っ張られてか、共演するプレーヤーの演奏も熱っぽく西海岸での録音とは思えない。
そして、その年のダウンビートの新人賞の発表があったのはその一週間後。早くも2枚目のアルバムに箔が付く形になって世に出ていった。アルバムのタイトルも、それを冠したアルバムに仕上がった。
このような経緯を知ると、サドジョーンズが辞める直前まで一番長くサドメルのオーケストラに在籍したペッパーであるが、サド、メルの両リーダーとの出会いは、それぞれペッパーの人生にとっては何にも増して大事だったのかもしれない。
'77年にサドメルのオーケストラを離れ、ソロプレーヤーとしての道を改めて歩み始めるが、その活動の原点はスタンケントントンを離れて一人で活動を始めた丁度このアルバムを録音した頃にあるのではないだろうか。そして20年後もこの時と同じような気持ちで豪快なプレーを続けていたように思う。
1. Minor Mishap Flanagan 6:28
2. Blackout Blues Adams 4:58
3. High Step Harris 8:44
4. Zec Jones 6:35
5. Alone Together Dietz, Schwartz 5:51
6. 50-21 Jones 8:12
7. Four Funky People Adams 4:56
Pepper Adams (bs)
Lee Katzman (tp)
Jimmy Rowles (p)
Doug Watkins (b)
Mel Lewis (ds)
Produced by Richard Bock
Recorded on 13,14 August, 1957 in Los Angels
年をとるとがらりと風貌が変ってしまい、若い時の面影が全くなくなってしまう人もいる。人生において何か大きな転換をする時は、このように風貌から別人になってしまった方が変身しやすいかもしれないが。
ペッパーアダムスは写真を見る限りの風貌は若い時も、年をとってからもあまり変っていない。そして、プレー自体も若い頃のバイタリティーが年をとってもまったく変らなかった。
そのペッパーの初録音となると、リーダーアルバムはModeのQuintetだと思う。
新人でありながら、このレーベルに登場する他の中堅プレーヤーに負けないアルバムだと思う。
1930年生まれのペッパーなので27歳の時であるが、もちろんそれまでの間の経験は豊富だ。デトロイト生まれのペッパーはニューヨークで育ったが、17歳の時にはデトロイトへ戻っていた、そこで、サドジョーンズなどの地元もミュージシャンとプレーをしていたが、再びニューヨークに戻ったのが’56年の初め26歳の時だった。
ニューヨークでもすぐに色々なセッションでプレーをしていたが、5月にオスカーペティフォードの勧めで、スタンケントンオーケストラに加わってツアーに出る。各地を周って、11月25日サンフランシスコにいる時に半年プレーを続けたケントンオーケストラを辞めて、ロスアンジェルスに移る。その時一緒に辞めたのが実はドラムのメルルイスであった。
もう一人一緒に辞めたトランペットのリーカッツマンとロスで早速プレーを始めた。同時にロスでは多くのスタジオワークをこなすが、クインシージョーンズのGo west manへの参加もこの時だった。そしてメイナードファーガソンのビッグバンドに加わるなど、いわゆるスタンケントン出身者の多くが辿る道を歩みながらウェストコーストを拠点として仕事を始めた。
そんな中7月12日Modoでの初リーダーアルバムの録音が行われた。順風満帆の門出に相応しいタイミングであった。
それから僅か一ヶ月後の8月22日、このアルバムは生まれた。このセッションには一緒にスタンケントンを卒業してロスで活動ををしていたメルルイスとトランペットのリーカッツマンが加わった。ペッパーのリーダーアルバムだが、3人にとっては3人で作った「ケントン卒業記念アルバム」だったかもしれない。ピアノにはジミーロウルズ、ベースにはダクワトキンスと新進気鋭のメンバーが加わった演奏だ。
演奏する曲には、昔デトロイトで一緒にプレーをしていたトミーフラナガンやサドジョーンズの曲が入っている。ペッパーの曲作りはまだまだ、作曲というよりも自然発生的にプレーしたブルースが2曲収められている。
プレーは、まさにペッパーのあのサウンドである。当時の西海岸の流行はジェリーマリガンのクールなサウンドだったかもしれないが、そんな事はお構いなくペッパーサウンドを全編披露している。ウェストコーストで活動を始めたものの、ペッパーの演奏のオリジンはデトロイトであり、ニューヨークの色が濃い。彼のプレーに引っ張られてか、共演するプレーヤーの演奏も熱っぽく西海岸での録音とは思えない。
そして、その年のダウンビートの新人賞の発表があったのはその一週間後。早くも2枚目のアルバムに箔が付く形になって世に出ていった。アルバムのタイトルも、それを冠したアルバムに仕上がった。
このような経緯を知ると、サドジョーンズが辞める直前まで一番長くサドメルのオーケストラに在籍したペッパーであるが、サド、メルの両リーダーとの出会いは、それぞれペッパーの人生にとっては何にも増して大事だったのかもしれない。
'77年にサドメルのオーケストラを離れ、ソロプレーヤーとしての道を改めて歩み始めるが、その活動の原点はスタンケントントンを離れて一人で活動を始めた丁度このアルバムを録音した頃にあるのではないだろうか。そして20年後もこの時と同じような気持ちで豪快なプレーを続けていたように思う。
1. Minor Mishap Flanagan 6:28
2. Blackout Blues Adams 4:58
3. High Step Harris 8:44
4. Zec Jones 6:35
5. Alone Together Dietz, Schwartz 5:51
6. 50-21 Jones 8:12
7. Four Funky People Adams 4:56
Pepper Adams (bs)
Lee Katzman (tp)
Jimmy Rowles (p)
Doug Watkins (b)
Mel Lewis (ds)
Produced by Richard Bock
Recorded on 13,14 August, 1957 in Los Angels
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