A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

結成から5年、完成の域に達したサド・メルの一枚は・・・

2007-05-11 | Thad Jones & Mel Lewis & VJO
CONSUMMAITION / THAD JONES & MEL LEWIS

はじめがあれば終わりがある。終わった先にはまた新しい世界が。
輪廻転生の世界ではないが、JAZZの世界はひとつの世界が終わると、また次の世界が現れる。
一人のミュージシャンの経歴を追うと、その生き様と「世界」の変化ががよく分かる。

サド・メルの誕生は、ニューヨークのグリニッジヴィレッジにある名門のJAZZクラブVillage Vanguard

中に入っていくとたいして広くない。こんなところにオーケストラが入るのかと思うようなスペースだ。



70年を超える歴史があり、ここで、BILL EVANSやSONNY ROLLINS など、幾多の歴史的な録音が行われている。
今もまだ健在だ。ドリンク込みで30ドル。料理は出さない。良心的な、JAZZを聴かせるためのクラブだ。まだまだ現役で生き続けている。

1965年に結成されたサドメルのバンドのスタートは、ここに、月曜日の夜にに集まったリハーサルバンドであった。
そのせいかライブのアルバムが多かったし、そのライブの演奏が実に特徴的だった。
メンバーはベテランに混じって若手も登用され、意図的かどうか分からないが白人と黒人のミュージシャンもうまくミックスされたこともあり、レギュラーバンドではない「混成バンド」のイメージがより強かった。
曲やアレンジもサドがベイシー在団時代から暖めていたものが主であったが、メンバーが持ち寄ったものもあり、アレンジもバラエティーーに富み、人も多士済々、内容も多種多様・・・・。
雑種の強みか、個性の組み合わせが斬新なバンドカラーを生み出し、すべての面で先進的であり、意欲的な取り組みをしていた。

結成から5年経った1970年、メンバーは創設当時から大分入れ替わっているが、その特徴あるサウンドはますます磨きがかかり、バンドとして完成の域に達してきていた。
何事もそうだが、日頃の努力の積み重ねである程度の完成度に達すると、次なるステージにステップアップするためにも何か区切りとなるきっかけが必要だ。
前年に久しぶりにスタジオで録音された、「Central Park North」に引き続き、このアルバムもじっくりスタジオ録音された一枚。

アルバムタイトルも「CONSUMMATION」。
そろそろ「結末・極致」に達してきた時期だったのかもしれない。

曲とアレンジはすべてサドジョーンズのオリジナル。
最初アレンジでも活躍していた、Bob Brookmeyerなどの姿はない。
その意味では、サドメルの共同作業の結果というよりは、サド・ジョーンズが目指していたオーケストラのひとつの姿の帰結がこのアルバムなのかもしれない。
その後、サドがバンドを離れ、Melがこのバンドを引き継いだ後は、Melのオーケストラは基本的に8ビートをやらなかった。
サド・メルという双頭バンドではあったが、微妙な意識のズレはこの頃から始まっていたのかもしれない。
もちろん表向きには、お互い何の不協和音を感じさせること無く、このアルバムでも最高の演奏を繰り広げているが。

いつもの編成に加えて、曲によってはギターやフレンチホルンを加えていつもより厚みあるアンサンブルワークを繰り広げている。
バラード、8ビート、ボサノバ、そして5/4拍子の変拍子など、手を変え、品を代え盛りだくさんの曲が並ぶ。
サドの特徴、爽やかなオーケストレーション、シンプルそうで複雑なハーモニーは、どの曲にも共通している。木管とブラスの絡ませ方がなんともいえず、背筋をぞくぞくさせるものがある。
きれいなものはとことん綺麗に。これはサドの基本コンセプトかもしれない。
中でも“Child is born”は、メロディーの素晴らしさも含めて親しみやすい曲。
色々なプレヤーに取り上げられるスタンダード曲になっている。好きな曲だ。
ひとつの区切りをつけたサドメルから、次はどのような「子供」が生まれたのであろうか。

ジャズのイラストを描いていた、Leo Meiersdorffのジャケットも秀逸。
お気に入りのジャケットの一枚。
ジャケ買いしても間違いなし。


Dedicaton 5:11
It Only Happens Every Time 3:05
Tiptoe 6:39
A Child Is Born 4:06
Us 3:34
Ahunk Ahunk 7:55
Fingers 10:36
Consummation 5:08
                                         
Thad Jones (flh)
Snooky Young,Marvin Stamm ,Danny Moore ,Al Porcino(tp)
Eddie Bert,Jimmy Knepper,Bennie Powell,Chiff Heather(tb)
Jerry Dodgion,Jerome Richardson(as))
Billy Harper,Eddie Daniels(ts),Joe Farrelle(ts)(A4,B1,B2)
Pepper Adams(bs),Rich Kamuca(bs)(B3)
Roland Hanna(p)
Richard Davis(b)
David Spinozza(g)
Mel Lewis(ds)

Jimmy Buffington(horn
Earl Chapin(horn
Howard Johnson(tuba)
Dick Berg(horn
Julius Watkins(horn)
except omit horns and tuba:(Tiptoe & It Only Happens Every Time)

Recorded Data 1970.1.20~28/5.25.
Recorded Place A&R Studio NYC
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