山形弦楽四重奏団 ブログ

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山形Q練習48-vol.9(中島記)

2013-06-19 08:19:17 | 練習日誌
 山響のスクールコンサートの後、田畑に囲まれたひとけのない、夕暮れ時(最近は日が長いのでまだまだ明るいが)のコミュニティーセンターに集まった四人が奏でるのは・・・「大フーガ」。ちょっとシュールですね。


 ところで、初めてこの「大フーガ」をきちんと聴いたのは、ビデオでアルバン・ベルク四重奏団のライヴ映像を見た時です。・・・驚きました。

 「フーガ」といえばやはり思い浮かべるのはバッハです。荘重で整然とした感じ。粛々と進んでいく、ゆるぎない流れ・・・。

 それに比べてこの「大フーガ」は、怖れずに印象をそのまま言えば・・・めちゃくちゃ。これ本当に合ってるの?弾いている彼らも「やけくそ」にさえ見える。「役者たち、ここで突然、本気の殴り合いをはじめる」という台本を演じているような、見ていて不安になる曲、というかパフォーマンスに感じました。・・・誰かこの人たちを止めてあげて下さい。

 たぶん、この曲が書かれて、それを「現代曲」として聴いた当時の人もこんなふうに感じたのではないでしょうか。だから「終楽章でこれはちょっと・・・」ということになって差し替えられたのだと思います。


 そして・・・恥ずかしながら、山形Qが以前の定期で取り上げた時も、まったく消化しきれなかった。各自がお互いの音を一生懸命「聞かないようにして」、自分の楽譜だけに集中することでしか、演奏を維持できなかったような記憶があります。


 今回はいったいどうなることやら・・・と思っていましたが、やはり「経験」というものは大きな財産です。曲の表面を覆っている強いエネルギーに飲み込まれないようにしつつ、あらためて冷静に他のパートを聞きながら丁寧に弾いてみると、実に精巧にできたフーガだということがわかります。エネルギーも決して暴力的なものではなく、生き生きと喜びにあふれたものです。

 ・・・もちろん難しいことに変わりはありませんが、こうして再演できる幸せを感じられる名曲です。また、この曲をブラームス「クラ五」の前に弾くというのには、いろんな意味で高いハードルを感じますが、「楽しみだ」と思えるぐらいの予感はありました。

 さらに鍛錬を重ねることにします。
コメント
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