大木昌の雑記帳

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本田圭佑の新たな挑戦―ポスト・コロナを展望する新事業の設立―

2020-06-15 21:51:19 | 社会
 本田圭佑の新たな挑戦
―ポスト・コロナを展望する新事業の設立―

私は、以前から本田圭佑にたいして、サッカー選手・アスリートであると同時に一人の人間
として興味をもっていました。

このブログでも、2018年7月1日に掲載した、「人間『本田圭佑』が面白い」というタイト
ルの記事で、彼が現役のサッカー選手でいながらに、次世代のサッカー選手を育てるために
世界中にサッカー・スクールを設立・運営していることを手始めに、さまざまな社会的活動
をしていることを紹介しました。

現在、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロに本拠地を定めていますが、SNSを通じて、新型コ
ロナへの警戒のメッセージを日本へ向けて発信し続けています。

また、今年の5月、最近、例の黒川氏の定年延長に関連して政府が提出しようとした「検察
庁法改正」にたいして、多くの芸能人、ミュージシャン、演劇人、などがツイッターなどを
通じて、この法案に反対の意志を表明しました。

反対の意志を表明した人たちにたいして、「潰す」「干されるぞ」「黙ってれば良いのに」
といった攻撃的投稿が多々寄せられました。

世間の注目を浴びた、きゃりーぱみゅぱみゅさんに対しては、政治評論家の加藤清隆氏から
「歌手やってて、知らないかも知れないけど」と、上から目線で職業差別的発言が飛ばされ
ています。これも十分相手を黙らせる効果があるものです(注1)。

この時、本田圭佑は、26日に更新したツイッターで、有名人に対して政治的発言を呼びか
けていました。そして同日に更新したツイターでは「素人が何で経済や政治について語っち
ゃダメなん?ダメなのは批判とただの誹謗中傷の違いを理解してない人の意見」と政治発言
に対する批判に対して物申していました。

さらに、ツイッターで、「誹謗中傷はやるなって言ってもなくならないし、なのでやっても
いいからちゃんと強い人を狙うこと」とクギを指します。

そして、不満があり誹謗中傷をしたいなら、そのはけ口を自分のツイッターに投稿して、と
も書いています。本田は、アスリートの中では社会的な発言を積極的に行います。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、今回は、本田圭佑の新たな挑戦、それも、ポス
ト・コロナを見据えた事業への挑戦について紹介したいと思います。

日本経済新聞(電子版 2020年6月15日)によれば、プロサッカー選手の本田圭佑、高岡
浩三氏、溝口勇児氏が6月、国内スタートアップに投資するファンド「WEIN挑戦者ファンド」
を立ち上げます。

「スタートアップ」とは、短期間で、イノベーションや新たなビジネスモデルの構築、新たな
市場の開拓を目指す動き、または概念です。ただし、法人(会社)そのものを指すものではな
く、「起業」や「新規事業の立ち上げ」という解釈が一般的です。

スタートアップの目的と条件は、イノベーションと社会貢献が条件で、短期間に結論を出す戦
略を最初からもっていることです。

このファンドは、以下に述べる趣旨に合う企業に資金を提供しますが、ファンド自体も事業を
手がけるということなので、やがて部分的に企業化もしてゆくものと思われます。

「WEIN挑戦者ファンド」の理念・目的は、健康や社会の持続可能性など「ウェルビーイング
(幸福)」を目指す企業を育成すること、としています。

興味深いのは、本田圭佑と組んだ他の二人との組み合わせです。

このファンドの立ち上げに参加した3人のうち高岡氏はネスレ日本前社長で、溝口勇児氏は、
健康管理アプリの「FiNCテクノロジーズ」(東京・千代田)創業者の溝口勇児氏です。

まず3氏を含む個人投資家から20億円を集めます。投資は「孤独や退屈、不安といった21世紀
の課題に挑む技術を持った、国内スタートアップ」を対象とします(溝口氏)。

具体的には健康や教育、SDGs(持続可能な開発)、地域振興やSNSなどのコミュニティー関
連企業に投資することになっています。

これらの領域の関連企業は世の中にいくらでもありますが、このファンドは、単に儲かりそう
な新たな新規事業に投資するといった発想ではありません。

その根底に、幸福を脅かす「孤独や退屈、不安といった21世紀の課題」を解決するという理
念に基づいている点が一般の投資ファンドとは大きく異なります。

現在、世界は新型コロナウイルスによって、健康とウェルビーイング(幸せ)が根底から脅か
されていることを考えると、このファンドはポスト・コロナを見据えた事業であるといえます。

この挑戦がこれからどのように展開してゆくのかに興味がありますが、それと同時に、どのよ
うにして、これらの異分野の人が結びついていったのかも非常に興味がありあす。

現役選手でありながら米俳優ウィル・スミス氏との投資ファンドを設立するなど活動を広げて
きた本田氏と、3月末に退任するまで巧みなマーケティング戦略でネスレ日本を率いた高岡氏と
いう異色の組み合わせで既成概念にとらわれないファンドを目指しています。

3人が組む触媒となったのは溝口氏です。彼は、12年に創業したFiNCでは、人工知能(AI)を
活用した健康管理アプリを軸に従業員200人規模のヘルスケアスタートアップに成長した勢い
のある企業でした。しかし、彼の事業領域の拡大や積極投資を続ける溝口氏の経営に社内に反
対が多くなり、2019年末、CEOを降りることとなりました。

彼がCEO引退の発表前に友人の本田にそれを報告すると、本田から「次の挑戦は一緒にやろ
う」と声をかけられファンドの構想を練っていったという。

溝口氏と本田が合流し、そこに呼応したのが高岡氏でした。実は溝口氏との付き合いは古く約
7年に及ぶ。知人経営者の紹介で知り合うと、高岡氏が開く起業家との勉強会で人脈作りを支
援してきました。

溝口氏は高田氏のことを「イノベーションとは何かを高岡さんから学んだ。最も尊敬する経営
者」と語っています。その高岡氏は、イノベーションとは「顧客が気づかない問題を解決する」
ことだと説きます。

こうして溝口氏は二人の仲間を得て、「貧しい家庭で育ったのに、仲間に囲まれ素晴らしい環
境にいる。自分にとって挑戦を続けることは義務」、と自身の原点をこう語ります。

19年末、溝口氏がブラジル渡航前の本田圭佑に、起業家をどう見極めるのか聞くと、「重圧を
エネルギーにでき、この人に賭けたいと思わせる人」と返ってきました。

溝口氏も本田も、お互いに“賭けたいと思う人”として認め合っていたことをうかがわせるエピ
ソードです。

こうして、実力のある3人が理想とする事業を一緒に行うために手を組むことになったのです
が、このような展開はめったに起こることではありません。羨ましい限りです。

この記事を書いた日経新聞の企業報道部の山田遼太郎高岡氏は、「3氏の新ファンドは日本発の
イノベーションを生み出せるか。その挑戦は一度、挫折を経験した起業家が日本をやり直しのき
く国かどうか問う物語の始まりでもある」と結んでいます。

私は、このファンドが、どこまで「孤独や退屈、不安といった21世紀の課題に挑む技術を持った、
国内スタートアップ」を育て、社会に幸福をもたらす事業展開をすることができるのか、非常に
期待しています。

なぜなら、これこがポスト・コロナの目指す一つの方向だからです。

次回から、もう少しマクロの視点から、日本と世界におけるポスト・コロナ時代がどんな風景と
なるのかを展望してみたいと思います。


(注1)『論座』(デジタル版)2020年05月18日
https://webronza.asahi.com/culture/articles/2020051600003.html?page=2
(注2)日本経済新聞 電子版 2020/6/15 2:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60262800R10C20A6XY0000/?n_cid=NMAIL007_20200615_A 

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