大木昌の雑記帳

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パンドラの箱を開けた安倍氏襲撃(2)―「反共」で繋がった旧統一教会と自民党―

2022-08-12 09:41:10 | 政治
パンドラの箱を開けた安倍氏襲撃(2)
―「反共」で繋がった旧統一教会と自民党―


今回の旧統一教会(以下、単に統一教会と表記)と自民党、とりわけ保守色
の強い安倍派(清和会)との関係に関する問題が注目されています。

例えば、今回の事件を契機に問題視された、統一教会と関係をもった国会議
員は、その関係の濃淡に違いがあるものの、直近の調査では131人の国会
議員が関係をもっていること、その大部分が自民党であったことが分かりま
した(TBSのアンケート調査の結果 2022年8月12日)。

それでは、なぜこれほど多くの自民党(一部、他党の議員も)の議員が統一
教会との関係をもつに至ったのでしょうか?

これについては、多くのメディアが伝えている通り、一つは、この団体の会
員が選挙の際には無料で選挙運動を手伝ってくれる、という具体的なメリッ
トです。

議員候補にとって、何よりも大切なことは選挙で当選することで、そのため
には投票だけでなく、ビラ貼りから電話での声掛けなど雑用を引き受けてく
れる教会の信者は、非常に助かります。

とりわけ、選挙区にしっかりした支持母体がない候補者にとっては、願って
もない助っ人です。

しかし、こうして助けてもらった見返りとして、さまざまな要求を統一教会
側がしてくるようです。

例えば、日本臨床衛生検査技師会長の自民の宮島喜文元参議院議員は、統一
教会の全面的な支持を受けて6年前に比例区で約12万票を取り初当選しまし
た。

今回の参議院選の比例においても統一教会の支援対象は自民の宮島喜文元参
院議員になるはずでした。

ところが、宮島氏は今回は党公認を受けながら出馬を辞退したため、統一教
会の票はほかの候補に切り替えられました。

辞退の理由を宮島さんは「高齢(70歳)に加え、本業のPCR検査に専念した
いから」と語っています。

しかし、内情を知る党関係者によると、初回の選挙で旧統一教会の支援を受
けたため、当選後に教会側からさまざまな要求があり、もうこれ以上付き合
えないと判断したのが真相だという(注1)。

これは、1候補者の場合ですが、こうした関係はほかにもたすうあるのでは
ないか、と考えられます。

今回、個別に取り上げられてはいませんが、祝電を送った、イベントに参加
した、統一教会系の雑誌に投稿した、会費を払った、などの関係をもった国
会議員は、おそらく何らかのサポートをしてもらった見返りに、このような
関係を持つに至ったと考えられます。

今回の第二次岸田内閣の閣僚だけでも7人、さらに党の重要ポストの議員を
入れると統一教会との関係を明らかにしています。

このことからも分かるように、この団体との関係を持たない議員だけでは組
閣できないほど、統一教会は政界に食い込んでいます。

そして、怖いのは、最初は無自覚に、ただただ選挙運動の応援をありがたが
って「利用して」いただけの議員も、徐々に深みにはまり、さまざまな要求
を突き付けられ、関係を絶てなくなってしまうことです。

次に、統一教会と政治との関係という意味では、この団体との関係をもつ議
員の内、自民党の安倍派(清和会)が大きな部分を占めているという点が
注目されます。

いうまでもなく、安倍派は自民党の中でもとりわけ保守的政治思想をもった
派閥です。

安倍元首相が統一教会と深い関係は、ビデオメッセージを送ったり、参議院
の比例区で統一教会員の票を差配していることからも分かります。

ここには、安倍一族と統一教会との歴史的な経緯があります。

統一教会が、密接な友好団体を足場に組織と個人に食い込むのは1960年代に
入り日本での普及活動を始めた時からでした。

その“尖兵”が、共産主義に打ち勝つ「勝共」を団体名にした「国際勝共連合」
です。1964年、統一教会が日本で宗教法人として認証され、68年には政治団
体国際勝共連合が創設されました。

「反共」を全面に押し出しているため、右翼界の大物・笹川良一氏が名誉会
長となり、60年安保闘争を通じて左翼から総攻撃を受けた岸信介元首相が支
援しました。

その「反共」の姿勢が、自民党および保守政治家に統一教会を受け入れさせ
るきっかけとなりました。

「反社会的カルト集団」として統一教会が批判されても、自民党や日本維新
の会などの保守派に食い込むことができたのは、「反共」を柱に「憲法改正」
「防衛力強化」「正しい結婚観・家庭観の追求」など、保守派と合致する姿
勢を示すと同時に、政治家をカネと選挙で手厚く支援したからでした(注2)。

自民党は、一般に保守党と表現されますが、そのかなでもとりわけ「保守の
コア」と言われる「右派勢力」が安倍派なのです。

統一教会の創始者の文鮮明氏が、どのような経緯で反共産主義思想を抱くよ
うになったのかは分かりません。

いずれにしても、文氏は日本に拠点を築くに際して、反共勢力を取り込むこ
とが最も容易だと判断したのでしょう。

日本の右翼勢力は一般に「親米右翼」と「民族派右翼」に分けられます。岸
・安倍ラインは、「親米右翼」でアメリカの庇護と協調関係を日本統治の軸
に置こうとするを勢力です。

これに対して、同じ「反共産主義」でも、日本固有の文化(特に天皇制)や
伝統を核とする社会を作ろうとする勢力は「民族派右翼」と呼ばれます。

その代表的組織の一つが「一水会」で、私は、その木村三浩代表が統一教会
の活動をどのように見ているかに興味がありました。

というのも、文氏は日本および日本人をかなり露骨な言葉で侮蔑しているか
らです。たとえば、文鮮明『お言葉集』(韓国語版)には以下のような言葉
があります。

    私が日本をエバ国家に定めてあげなかったならば 日本はすでにぺ
    しゃんこになっていたのです。
    雑多な神様を信じる民族、いわしの頭も信じる日本ではないですか。
    日本の経済を投入して南北を統一しなければ日本は滅びるのです。
    エバ国家の使命を果たすことができなければ跡形もなく消えるとい
    うのです。(それゆえに(中略)一家を捨ててでも一族が滅びても
    南北統一のために奮発しなければならなりません。

また、1992年に金丸信自民党副総裁(当時)の超法規的措置で日本へ入
国したことについて文氏は信者に対して次のように語ったという。
   金丸さんはメシアの私(文鮮明氏)を受け入れてくれたのだ。本当は
   日本に入れなかったら日本はエバ国をはく奪されるところだったんだ。
   
さらに『お言葉集』(韓国語版)では、
   日本は今 私を入国させないようにしていますね。いいでしょう。
   天皇がやってきて ひざまずいてひれ伏して慟哭するのを見るまでは 
   私は(日本に)行ってなんかあげませんよ(注4)。

これらの「お言葉」に見られるように、文氏の思想の根っこには、「侮日」
とも言えるには反日感情、朝鮮民族主義があります。

これにはさらに、日本による朝鮮の植民地支配に対する怨念があります。文
氏は信者に対して「日本は罪深い国家」と語っていますが、そこにはこうし
た歴史的経験も大きな影響を与えているのかも知れません。(『東京新聞』
2022年)。
8月10日)

統一教会を貫く文氏の反日的、侮蔑的な言動に対して「民族派右翼」の木村
さんは、旧統一教会の教理解説書に目を通したが、「日本はサタン側の国な
どと記されていました。これは民族派として受け入れられるものではなかっ
た」と振り返る。

その頃から、一水会は「勝共連合は民族主義運動の敵だ」などと雑誌などで
批判していくようになり。その後は、統一教会からも勝共連合からも引いて
いったそうです。

現在、統一教会とのつながりを維持している自民党の政治家は、こうした側
面には目をつぶって、「反共」という一点を共有し、さらに選挙に際しては
無償の運動をやってくれるメリットを得ています。

しかし「政治家の側から選挙への協力をお願いするようになってしまったら、
それこそ政治の『堕落』です。岸元首相の代から関係が続いてきて、孫の安
倍氏が関連団体にメッセージを送ってしまうというのが、その最たる例では
ないでしょうか」と、問題点を指摘しています(注5)。これについては、
次回に検討します。


               注
(注1)『毎日新聞』デジタル版 2022/7/27 東京朝刊)
https://mainichi.jp/articles/20220727/ddm/002/070/135000c?cx_fm=mailhiru&cx_ml=article&cx_mdate=20220727
(注2)Yahoo News (2022年8月11日:6:02配信)
https://news.yahoo.co.jp/articles/00a01b98cd8bbc84c19bc9011d880421c9698a79;
『毎日新聞』(2022年8月9日 05:00、最終更新 /905:00);
https://mainichi.jp/articles/20220806/k00/00m/010/163000c;
DIAMOND ONLINE (2022.7.28 4:30)  https://diamond.jp/articles/-/307025
(注3)『毎日新聞』(デジタル版 2022/8/4 05:15、最終更新 8/4 13:16)
https://mainichi.jp/articles/20220803/k00/00m/040/196000c?cx_fm=mailyu&cx_ml=article&cx_mdate=20220804
(注4)BS-TBS『報道1730』(2022年8月11日)より引用。
(注5)『毎日新聞』(電子版 2022/8/4 05:15、最終更新 8/4 13:16)
https://mainichi.jp/articles/20220803/k00/00m/040/196000c?cx_fm=mailyu&cx_ml=article&cx_mdate=20220804

追記 今回の記事とは関係ありませんが、8月5日、日本を代表するファッション・
デザイナー、三宅一生(本名かずなる)さんが亡くなりました。ご冥福を祈ります。
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夏を代表する花のひとつ サルスベリ(百日紅)庭木として人気があります                  まるで紙で作った花のようなフヨウ(芙蓉)
   

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