北朝鮮の核実験と日本の安全保障-原発は大丈夫?-
2016年9月9日、北朝鮮は初めて核実験に成功した、と発表しました。
北朝鮮は今年の1月に核爆発の実験を行いましたが、この時は失敗に終わっています。
しかも、どうやら核爆弾の小型化にも成功したようです。
ということは、長距離ミサイルに核弾頭を積み込むことが可能となったことを意味します。
これに対して、日米韓、ヨーロッパ諸国および、これまで北朝鮮に比較的寛容な姿勢をとってきた中国やロシアまで、
今回の核実験には、非難を強めています。
とりわけ中国は、北朝鮮に対してはらわたが煮えくり返るほど激怒したと言われています。
これには背景があったからです。
まず、今年の8月24日、北朝鮮はSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の発射実験に成功しました。
これにより、発射の準備段階から監視されてしまう地上基地ではなく、どこから発射されるかわからない常に移動する
潜水艦からどこでも攻撃できることが明らかになりました。
北朝鮮はアメリカの心臓部をいつでも攻撃できることを誇示し、米・北朝鮮会談に持ちこもうとしているのです。
これに対してアメリカは強く反発しました。
それと同時に、このような核実験を繰り返す北朝鮮に対して中国は影響力を行使してやめさせるべきだ、という世界の
期待が裏切られたことになります。
さらに9月4~5日には、中国が議長国となって、杭州市でG20(「金融・世界経済に関する首脳会合」)が開かれ、国際
社会における大国中国のリーダーシップをアピールしていました。
その最中の5日、北朝鮮は、射程1000キロの弾道ミサイルを3発、日本の排他的経済水域ぎりぎり、あるいは若干内
側に発射しました。
軍事専門家は、これによって、北朝鮮のミサイル技術が、着地点を正確に制御できること、我々の予想を超えて進歩して
いる、と指摘しています。
アメリカと中国が、2大大国として世界、とりわけ太平洋地域の秩序を確立しようとしていたのに、北朝鮮さえ抑えきれない
ことがはっきりしてしまったのです。
ここでも中国は見事に威信とメンツをつぶされてしまいました。
さらに、9月7日はラオスでアセアン首脳会議が開催され、この会議でも中国は、南シナ海問題を議論から封じ込むことに
成功し、この東南アジアにおける中国の存在感を十二分に示すことができました。
しかし、9日に北朝鮮による核実験によって、またしても中国の東アジアにおけるリーダーシップに疑問符がついてしまい
ました。
北朝鮮は、今回の核実験に際して、核攻撃によってアメリカの首都ワシントンが炎上する映像をテレビで流すなど、明らか
にアメリカをターゲットとした脅しをかけています。
いずれにしても、北朝鮮のミサイルと核兵器の開発は、人々の想定を超えて急速に進んでいることが明かとなり、世界に
新たな脅威を与えたことは確かです。
国連の安保理は日本時間の10日、北朝鮮に対する制裁強化の話し合いをすることになっていますが、今のところ、それ
で北朝鮮の挑発が止むかどうか保証はありません。
ところで、こうした一連の北朝鮮の行動は、日本の安全にどのような影響と意味をもっているでしょうか?
北朝鮮は以前、日本にあるアメリカの基地をもターゲットにしているようなので、一連の動きは日本の安全保障にも重大な
脅威となり、唯一の被爆国である日本としては絶対に許すことはできません。
今回の核実験に対して日本政府が強い調子で非難の声明を出したのは当然です。
もし、日本に核兵器が使用されるようなことあれば、計り知れない人的・物的被害を与えるでしょう。
軍事専門家によれば、北朝鮮は日本に向けたミサイル(ノドン)を200~300基配備しているとみられ、これらのうち複数の
ミサイルが北朝鮮から同時に発射された場合、それらすべてを迎撃・破壊することは、現在の防衛能力では、現実的には不
可能であるとされています。
この問題が深刻なのは、一発でも着弾したら(例えば首都の東京に)、それだけで日本全体を麻痺させてしまう致命的打撃を
与えることができるからです。
しかも、北朝鮮のミサイルが移動式の地下発射サイロや、漁船や商船に偽装した船、さらに最近明らかになったように潜水艦
から発射されたら、ほとんど防御不可能です。
私が非常に懸念しているのは、アメリカに到達するような長距離弾道ミサイルに搭載された核爆弾だけではありません。
日本と北朝鮮は至近距離にあり、それほど高性能でなくとも日本に到達するくらいのミサイル(テポドンやノドン)は数多く持って
いるでしょう。
現在、北朝鮮が何発くらいの核弾頭を保有しているか分かりませんが、たとえ、核弾頭をもたない通常の爆弾を積んだミサイル
でも、十分すぎるほど日本に致命的な打撃を与えることができます。
なぜなら、日本に50基以上ある原発にミサイルが一発でも着弾したら、原爆のように瞬時に直接に人を殺傷することはないにし
ても、福島の原発事故のような状況が発生し、日本列島が放射能に汚染されてしまうからです。
そうなると、電気の供給が減少するだけでなく、放射能を避けるために膨大な数の人々が避難しなければなりません。これは日本
にとって想像したくないほどの悪夢のようなシナリオです。
つまり、日本は原発という格好のターゲット(アキレス腱)を北朝鮮にさらけだしていしまっているのです。この点からも、日本は原
発を見直すべきだと思います。これは日本の安全保障にとって深刻な問題です。
現在、国連を通して北朝鮮に対する制裁を強め、核兵器の開発を止めさせようとしています。
しかし、これまでも何回か決議をし、制裁を実行してきたにもかかわらず、核開発を一向に止める気配はなく、ミサイルの長距離化、
核爆弾の小型化、潜水艦からの発射技術の完成、などなど、むしろ加速化しています。
その大きな原因として、経済制裁には中国ルートという穴があって、中国が北朝鮮から石炭やその他のレアメタルを輸入しているか
らではないか、と考えられています。
したがって、中国が強く圧力をかけて北朝鮮に核開発を思い止まらせることができるかどうかが、この問題を解決する、一つのカギ
となります。
従来、中国は表向き北朝鮮を非難してきましたが、その実、裏で実質的に支援してきました。
しかし、今月の北朝鮮によるミサイル発射実験と核実験は、中国のメンツを大きくつぶし、激怒させたので、今回は中国も真剣に北朝
鮮に対する圧力を強化するのではないか、という期待はあります。
北朝鮮が世界の非難を承知で核開発を進めているのは、北朝鮮も核保有国であることを認めてもらいたい、そして、アメリカが二国間
交渉に応じてほしい、その上で、米朝の平和条約を結びたい、との意図があるからです。
北朝鮮の金・正恩氏は、リビアのカダフィ、イラクのフセインようにアメリカによって殺害され、軍事的に制圧され支配されることを恐れて
いるのです。
今のところアメリカは米朝交渉に乗るつもりは全くなさそうです。そうすると、北朝鮮はさらに挑発を強化し、危険な賭けに出る可能性が
あります。
日本は北朝鮮との間で拉致問題を抱え、しかも北朝鮮のミサイルから至近距離に位置しています。
この点、アメリカは拉致問題もなく、なんといっても遠くに離れているので、北朝鮮のミサイルの脅威は日本よりはずっと弱いでしょう。
日本がアメリカと全く歩調を合わせ、追随して北朝鮮への強硬姿勢を取り続けてゆくのがいいのか、あるいは米朝の間に入り、独自外交
によって、何か、緊張緩和の役割を果たすことができるのか、日本外交の能力が試されています。
2016年9月9日、北朝鮮は初めて核実験に成功した、と発表しました。
北朝鮮は今年の1月に核爆発の実験を行いましたが、この時は失敗に終わっています。
しかも、どうやら核爆弾の小型化にも成功したようです。
ということは、長距離ミサイルに核弾頭を積み込むことが可能となったことを意味します。
これに対して、日米韓、ヨーロッパ諸国および、これまで北朝鮮に比較的寛容な姿勢をとってきた中国やロシアまで、
今回の核実験には、非難を強めています。
とりわけ中国は、北朝鮮に対してはらわたが煮えくり返るほど激怒したと言われています。
これには背景があったからです。
まず、今年の8月24日、北朝鮮はSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の発射実験に成功しました。
これにより、発射の準備段階から監視されてしまう地上基地ではなく、どこから発射されるかわからない常に移動する
潜水艦からどこでも攻撃できることが明らかになりました。
北朝鮮はアメリカの心臓部をいつでも攻撃できることを誇示し、米・北朝鮮会談に持ちこもうとしているのです。
これに対してアメリカは強く反発しました。
それと同時に、このような核実験を繰り返す北朝鮮に対して中国は影響力を行使してやめさせるべきだ、という世界の
期待が裏切られたことになります。
さらに9月4~5日には、中国が議長国となって、杭州市でG20(「金融・世界経済に関する首脳会合」)が開かれ、国際
社会における大国中国のリーダーシップをアピールしていました。
その最中の5日、北朝鮮は、射程1000キロの弾道ミサイルを3発、日本の排他的経済水域ぎりぎり、あるいは若干内
側に発射しました。
軍事専門家は、これによって、北朝鮮のミサイル技術が、着地点を正確に制御できること、我々の予想を超えて進歩して
いる、と指摘しています。
アメリカと中国が、2大大国として世界、とりわけ太平洋地域の秩序を確立しようとしていたのに、北朝鮮さえ抑えきれない
ことがはっきりしてしまったのです。
ここでも中国は見事に威信とメンツをつぶされてしまいました。
さらに、9月7日はラオスでアセアン首脳会議が開催され、この会議でも中国は、南シナ海問題を議論から封じ込むことに
成功し、この東南アジアにおける中国の存在感を十二分に示すことができました。
しかし、9日に北朝鮮による核実験によって、またしても中国の東アジアにおけるリーダーシップに疑問符がついてしまい
ました。
北朝鮮は、今回の核実験に際して、核攻撃によってアメリカの首都ワシントンが炎上する映像をテレビで流すなど、明らか
にアメリカをターゲットとした脅しをかけています。
いずれにしても、北朝鮮のミサイルと核兵器の開発は、人々の想定を超えて急速に進んでいることが明かとなり、世界に
新たな脅威を与えたことは確かです。
国連の安保理は日本時間の10日、北朝鮮に対する制裁強化の話し合いをすることになっていますが、今のところ、それ
で北朝鮮の挑発が止むかどうか保証はありません。
ところで、こうした一連の北朝鮮の行動は、日本の安全にどのような影響と意味をもっているでしょうか?
北朝鮮は以前、日本にあるアメリカの基地をもターゲットにしているようなので、一連の動きは日本の安全保障にも重大な
脅威となり、唯一の被爆国である日本としては絶対に許すことはできません。
今回の核実験に対して日本政府が強い調子で非難の声明を出したのは当然です。
もし、日本に核兵器が使用されるようなことあれば、計り知れない人的・物的被害を与えるでしょう。
軍事専門家によれば、北朝鮮は日本に向けたミサイル(ノドン)を200~300基配備しているとみられ、これらのうち複数の
ミサイルが北朝鮮から同時に発射された場合、それらすべてを迎撃・破壊することは、現在の防衛能力では、現実的には不
可能であるとされています。
この問題が深刻なのは、一発でも着弾したら(例えば首都の東京に)、それだけで日本全体を麻痺させてしまう致命的打撃を
与えることができるからです。
しかも、北朝鮮のミサイルが移動式の地下発射サイロや、漁船や商船に偽装した船、さらに最近明らかになったように潜水艦
から発射されたら、ほとんど防御不可能です。
私が非常に懸念しているのは、アメリカに到達するような長距離弾道ミサイルに搭載された核爆弾だけではありません。
日本と北朝鮮は至近距離にあり、それほど高性能でなくとも日本に到達するくらいのミサイル(テポドンやノドン)は数多く持って
いるでしょう。
現在、北朝鮮が何発くらいの核弾頭を保有しているか分かりませんが、たとえ、核弾頭をもたない通常の爆弾を積んだミサイル
でも、十分すぎるほど日本に致命的な打撃を与えることができます。
なぜなら、日本に50基以上ある原発にミサイルが一発でも着弾したら、原爆のように瞬時に直接に人を殺傷することはないにし
ても、福島の原発事故のような状況が発生し、日本列島が放射能に汚染されてしまうからです。
そうなると、電気の供給が減少するだけでなく、放射能を避けるために膨大な数の人々が避難しなければなりません。これは日本
にとって想像したくないほどの悪夢のようなシナリオです。
つまり、日本は原発という格好のターゲット(アキレス腱)を北朝鮮にさらけだしていしまっているのです。この点からも、日本は原
発を見直すべきだと思います。これは日本の安全保障にとって深刻な問題です。
現在、国連を通して北朝鮮に対する制裁を強め、核兵器の開発を止めさせようとしています。
しかし、これまでも何回か決議をし、制裁を実行してきたにもかかわらず、核開発を一向に止める気配はなく、ミサイルの長距離化、
核爆弾の小型化、潜水艦からの発射技術の完成、などなど、むしろ加速化しています。
その大きな原因として、経済制裁には中国ルートという穴があって、中国が北朝鮮から石炭やその他のレアメタルを輸入しているか
らではないか、と考えられています。
したがって、中国が強く圧力をかけて北朝鮮に核開発を思い止まらせることができるかどうかが、この問題を解決する、一つのカギ
となります。
従来、中国は表向き北朝鮮を非難してきましたが、その実、裏で実質的に支援してきました。
しかし、今月の北朝鮮によるミサイル発射実験と核実験は、中国のメンツを大きくつぶし、激怒させたので、今回は中国も真剣に北朝
鮮に対する圧力を強化するのではないか、という期待はあります。
北朝鮮が世界の非難を承知で核開発を進めているのは、北朝鮮も核保有国であることを認めてもらいたい、そして、アメリカが二国間
交渉に応じてほしい、その上で、米朝の平和条約を結びたい、との意図があるからです。
北朝鮮の金・正恩氏は、リビアのカダフィ、イラクのフセインようにアメリカによって殺害され、軍事的に制圧され支配されることを恐れて
いるのです。
今のところアメリカは米朝交渉に乗るつもりは全くなさそうです。そうすると、北朝鮮はさらに挑発を強化し、危険な賭けに出る可能性が
あります。
日本は北朝鮮との間で拉致問題を抱え、しかも北朝鮮のミサイルから至近距離に位置しています。
この点、アメリカは拉致問題もなく、なんといっても遠くに離れているので、北朝鮮のミサイルの脅威は日本よりはずっと弱いでしょう。
日本がアメリカと全く歩調を合わせ、追随して北朝鮮への強硬姿勢を取り続けてゆくのがいいのか、あるいは米朝の間に入り、独自外交
によって、何か、緊張緩和の役割を果たすことができるのか、日本外交の能力が試されています。