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大木昌の雑記帳

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目を背けず、現実を見つめよう(2)―円安の奥に何が―

2022-07-04 15:22:43 | 経済
目を背けず、現実を見つめよう(2)―円安の奥に何が―

前回の、“目沿背けず、現実を見つめよう(1)”では、円安の実態をさまざまな角度から検討し、
その原因についても一部、ふれました。

たとえば、“ビッグマック指数”で比較すると、日本はアジア諸国と比べても安い方で、それは働き
手の賃金水準、家賃、その国の生活水準(所得水準)によって決まります。

さらに最近、テレビの情報番組で、さらに驚くべき円安の進行事情のニュースが流れてきました。

一つは、最近日本と韓国との旅行が一部解禁されたことにより、韓国からの訪日希望者が激増し
ているとのことでした。

日本にある韓国の旅行代理店によると、とりわけゴルファーの希望が殺到しているようです。と
いうのも、今、ソウル近郊のゴルフ場でゴルフを楽しむと、1日で4万円近くかかるからです。

ところが、日本では7500円からプレーできるので、交通費や旅費を含めても日本に来てゴル
フをした方がずっと安いのだそうです。

もうひとつは、今年はうなぎの値段が高騰するとのニュースです。中国ではもともとうなぎは高
級食材だったのですが、最近は特に人気が上昇し、国内消費が増加したのです。

農水省によれば、昨年(2021年)のうなぎの国内供給量は、62,926トン。うち輸入42,290ト
ン、国内養殖20,573トン、国内天然63トン(0.1%)です(注1)。

つまり、総供量の3分の2以上が輸入うなぎで、ほとんどが中国と台湾産です。これら両国でも
ウナギの養殖は盛んで、以前は日本向けに輸出していました。

しかし現在は、日本に売るよりも中国や台湾の国内に出荷した方が高値で売れるのだそうです。

このため、日本でのうなぎが品薄になり、国産であれ輸入物であれ、うなぎの価格は高騰してし
まうのです。

これらの事例は、一方で、“円安”の影響を反映していますが、別の面から見て韓国や中国・台湾
からみて日本は“安い国”になっていることがわかります。

かつて、日本人が開発途上国に行くと、全てが安く感じられましたが、それと同じことが、今や
外国化から見て日本の全てが安く感じられるようです。

この背景には、日本人の収入水準がこの30年間、ほとんど増えていないという現実があります。

ちなみに、最近米アップル社が従業員の最低時給を22ドルに引き上げた。1ドル135円換算
で2970円です。ヨーロッパでも、ドイツ政府は最低賃金9.8ユーロを、今年10月から12
ユーロ(約1700円)に引き上げる予定です。

これに比べて日本の動きはいかにも鈍いままです。全国の加重平均最低賃金額は930円。地方
では800円台の県もあります。

今月に公表された政府の「骨太の方針」でも「できる限り早期に1000円を目指す」だけで、具
体的な賃上げ時期は示されませんでした。

日本の最低賃金1000円という“目標値”でさえも、ドル換算で7.5ドルほど。先進国から見たら
かなり低い水準です。

古賀茂明氏は、このような状況になったのは自民党政権は財界の要請で1996年の「労働者派遣法」
の大幅改定によって、非正規雇用をそれまでの13業種から26業種へ拡大し、さらに2004年には
ついに、”聖域“だった製造業にまで拡大したからだ、と指摘しています(注2)。

実際、契約社員や年期付き雇用や臨時雇用、アルバイト契約など、低賃金で解雇し易い非正規雇用
を増やしてきました。

おそらく、自民党のスポンサーである財界の要請を受けて、こうした”労働形態の多様化“という、耳
障りの良い言葉で、実質的な低賃金が固定化されてしまいました。

日本の多くの企業は、一時的には低賃金のメリットで、コストを安く抑えることができて、大いに喜
んだかも知れません。しかし、これは非常に近視眼的な姿勢です。

したがって、回りまわって、国内市場を狭め、日本経済全体の沈滞をもたらしているのです。

つまり長期的には国民の多くの所得が低いままだと、国内の購買力が減少し、消費は伸びません。労
働者の低賃金→低い購買力→製品価格の低迷→企業利益の減少→労働者の低賃金、という「負のスパ
イラル」が完成してしまっています。

下の図(注3)は、OECD加盟35カ国(比較的豊かな国)のうち、日本はどのあたりに位置して
いるかを示したものです。
               
                   
                    



日本のGDPは確かにアメリカ、中国に次いで世界第三位ですが、労働者の平均賃金でみると、OE
CD加盟国35カ国中22番目。これが、偽らざる日本の実像です。

この図が意味するところは、国全体のGDPではなく、個々の日本人の賃金が世界の水準と比べてと
ても低いことです。

同じアジアの韓国には5年前に抜かれてしまっています。実数でいうと、2020年の年収で日本は韓国
より3445ドル少ない。これを2022年7月の1ドル=135円で換算すると、46万5000円も
少ない計算です。

政府による、低賃金政策と法人税の引き下げがあまりにも簡単に実施されてしまったので、企業はそ
れによる利益に甘んじてしまい、もっと本質的な生産性の向上のための技術革新や新規事業の開拓な
どに投資する意欲を失ってしまったかのようです。

その一方で、得た利益はひたすら「社内留保金」として貯め込んでしまい、働く人たちに配分するわ
けでもなく、かといってリスクを負って新たな事業に投資するわけでもありません。

もっとも、これは大手企業の場合であり、雇用全体の6割以上を占める中小企業では社内留保金を貯
め込む余裕などなく、多くの場合、大企業の下請け的立場で、生き残るためにさらなる人件費の削減に
追い込まれ、したがって低賃金が定着するというサイクルに陥っているというのが実情です。

安倍政権の下で、企業に地位上げをを要請しましたが、一向に賃金は上がりませんでした。岸田首相
も労働者の賃金を上げるよう企業に要請していますが、賃金を払うのは企業であり、政府が操作でき
るものではありません。

日本の企業の中でも、一部の輸出企業は円安によって巨額の為替差益が入るので、それに満足し、円
安政策を歓迎しています。

日本の平均賃金が低いのは、政府の政策やリスクを負いたくない企業の体質の他にもいくつかの理由
があります。それについては、次回にもう少し掘り下げて検討します。

(注1)農水省のホームページ https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0106/15.html
(注2)古賀繁明氏のコラム 『週刊プレイボーイ』デジタル版(2022年7月1日)
 https://wpb.shueisha.co.jp/news/politics/2022/07/01/116679/
(注2)DIAMOND ONLINE (2021 年8月2日 5:20)

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目を背けず、現実を見つめよう(1)―円安に見る日本経済の静かな没落―

2022-06-23 10:38:53 | 経済
目を背けず、現実を見つめよう(1)―円安に見る日本経済の静かな没落―

ここ数日、メディアでは円安についてふれない日はありません。現在の円相場は1ドルが135円
前後を上下しています。

この円安相場を、円高のピークだった1995年に79円75銭と比べるとその落差がよく分かります。

円高のピーク時には(1ドル80円として)、100万円の日本車を海外の人が買うのに1万2500
ドル払わなければならなかったのに、円が1ドル135円になると、7400ドルで買えるように
なるからです。

つまり、円高では日本製品を買う国からすると割高になり、日本の輸出企業にとっては輸出しにく
くなり、逆に円安になると日本製品は外貨換算では安くなるので輸出が伸びる、という計算になり
ます。

一見、これはあたかも“公式”のように当然のことのように思えますが、実態はかなり違っています。

もし、上の“公式”が正しければ、円安になれば輸出が伸びて、円換算では日本の貿易収支(輸出と
輸入の差)は大きな黒字になるはずです。

しかし、実際には、円安が続いても貿易収支が大きな黒字にならなくなっているどころか、今年は
ずっと赤字続きです。

反対に、円の価値が最も高かったにもかかわらず、95年当時でも貿易収支は黒字でした。つまり、
日本の製品に国際競争力があれば、輸出は増えて貿易収支は黒字になるのです。

ところが、2013年以降大幅な円安になっても、貿易黒字はさほど増えず、時には赤字になったりも
しています。

そして昨年の8月以来連続10カ月、日本の貿易収支はずっと赤字です。これは、円安がからなら
ずしも輸出の増加につながらないことの、はっきりとした証明となります。

他方、貿易収支と所得収支(海外への投資利益や預金+利子)の合計である対外経常収支の黒字は
依然として大きいのですが、中身は過去における貿易黒字が海外に貯めてあった資産からの所得収
支の黒字が大半になっています。

ただ所得収支で稼いでも、そのお金の相当な部分は日本国内に戻ってきていないと考えられます。

なぜ、海外で稼いだお金が国内に戻ってこないのでしょうか?

理由は簡単で、日本にお金を戻しても国内に有望な投資先がないので、お金は海外で再投資される
だけなので、外貨として海外にとどまったままなのです。

これは実質的に、日本企業による日本からお金が逃げてゆく「お金の逃避」「キャピタルフライト」
と言えるでしょう(注1)。

日本企業が日本から資本を海外に逃がしていることと全く同じ理由で、海外の企業も日本という魅
力のない市場に投資しようとはしません。したがって円を買う動きはなく、むしろ円を売って海外
で投資しようとするので、円安の方向に動きます。

つまり、円安の理由の一部は、日本国内に有望な投資先がないこと、つまり日本にはもはや投資す
るに値する企業や分野はない、ということです。

これに追い打ちをかけるように、日本の自民党政権は、とりわけ安倍政権時代に実施された「アベ
ノミクス」で巨額の赤字国債を発行する金融緩和を積極的に行い、市中に円を溢れさせました。

このため、今や、国の赤字はGDPの倍に相当する1200兆円となってしまいました。これでは
円の信用と価値は下がることはあっても上がることはありません。

アベノミクスでは、「投資を喚起する成長戦略」を遂行するはずでしたが、これには全く手を付け
ず、ただただ借金を増やし、国内に円をあふれさせ、円の価値を下げただけでした。

円安のもう一つの原因として、今年に入ってからの先進諸国が政策金利(中央銀行が一般の銀行に
貸し出す際の金利)を上げているのに、日本だけが低金利のままなのです。

すると、世界のお金は高い金利を求めて金融資産が金利の高いアメリカその他の国に流れてドル買
いが生じ、その陰で日本円が売られているという面もあります。

実は、ここにも、日本の国家財政が抱える巨額の財政赤字が関係しているのです。つまり、政府が
政策金利を上げると、これまでの借金の利子(現実には国債の利子)の支払いにすぐに跳ね返って
くるので、政策金利を上げることができません。

円安という形で自国通貨の価値が下がることは、日本の富が海外に流出することに他なりません。

ところで、海外からの積極的な投資は少なくなってきている反面、円安を利用した日本資産の買い
叩きが起こっています。

たとえば、台湾企業・鴻海(ホンハイ)精密工業による、かつての日本の有数の家電メーカーであ
った「シャープ」を買収劇は多くの日本人にとって衝撃的だった。

こうした世間に知られた大型の「日本買い」とは別に、ひっそりと、しかし着実に日本が買われて
(=売られて)います。

それは土地やマンションなどの不動産で、中国や香港、台湾などからインターネットを通じて次々
と買われています。

日本は外国から見て、安い国であるということは、物価が安いということでもあり、それは一見、
生活しやすいようにも見えます。

物価水準を国際比較する指標の一つに、「ビッグマック指数」というものがあります。これは、世
界各地で同じ材料とレシピで作られるマクドナルドのビッグマックの値段を日本円に換算したもの
です。この価格は、それぞれの国の所得水準と物価生活水準に合わせて決められています。

これによると1位のスイスが804円、2位がノルウェーで737円、3位がアメリカで669円、
4位がスウェーデンで667円、5位がウルグアイで625円、ここらまでがおおよそ600円台
です。

アジアでは、15位がシンガポールで503円、18位がスリランカで478円、25位がタイで
443円、26位が韓国で440円、日本はずっと下がって33位で390円です。

もちろん、ビッグマック指数だけで判断することはできませんが、上記の順位と金額をみても、日
本はアジアアの中でも“安い国”であることは間違いなさそうです。

こうした状況で、日本の大切な資産が売られてゆく現実があります。堤未果氏の『日本が売られる』
(幻冬舎新書、2018)には、売られている物の具体例がいくつも挙げられています。

ここで、それらを紹介する余裕はありませんが、これは新書版で読みやすいので、是非一読するこ
とをお勧めします。

物価が低いことは、日本は生活がし易い国という印象を受けます。もしそうであれば、日本に暮らし
ている限り円安はそれほど悪くはない印象を受けます。

しかし、物価が安いのは賃金が低いからです。いわゆる先進国では物価も上がっていますが、所得
(賃金)も上昇しています。これにたいして日本は過去30年間、実質賃金はほとんど変わってい
ません。

したがって消費も伸びず、企業は販売価格を安くすることに注力するので、利益は少なくなり、こ
れが賃金を押し下げる、という悪循環を生んでいます。薄利多売のビジネスモデルの破綻です。

政府・日銀がずっと円安政策を取り続けてきたために、今、多くの国民はその弊害を直接に受けて
います。

日本はエネルギーの90パーセント以上、食料の60パーセント以上、そして工業製品の原材料や
日用品の大部分を輸入に頼っています。

最近、テレビなどで盛んに報道されているように、円安はこれらの輸入価格を引き上げ、結果とし
て輸入に関連してた生活用品、電気料金、ガソリン代など国内の広い範囲の物価を引き上げます。

これによって、多くの日本人の家計が圧迫されており、現在および将来の生活の安定が奪われてい
ます。

日銀の黒田総裁は、たとえ円安が続こうとも金融緩和を維持する、と断言しています。その根拠は、
円安はやはり日本経済にプラスだから、というものです。

円安効果は今や全くないのに、円安政策を続けるということは、所得は増えず物価があがる、とい
う悪性インフレの典型的な状況です。

大局的に見て、円安をもたらした最も重要な要因は、一言で言えば、日本経済がかつて享受してい
た有利な条件が消えてしまったからです。

かつての日本の輸出が伸びて貿易黒字を溜め込むことができたのは、いわゆる「シロモノ家電」と
言われる、洗濯機、冷蔵庫などに代表される家電製品の国際競争力が強かったからです。

ところが、その有利さに甘んじている間に、多くの途上国でもこれらの製品を、もっと安く作れる
ようになったため、日本製品は一気に、競争力を失い、今では、逆にこれらの輸入国になってしま
っています。

今回は、「円安」という切り口から、現在の日本が抱えている問題を、幾つか取り上げました。そ
れらを総合すると、日本経済は静かに、着実に没落しつつある姿が浮かんできます。

次回以後、ここで取り上げた問題をもう少し深く検討してみたいと思います。

(注1)『毎日新聞』ビジネスプレミア(デジタル版) 2021年11月27日
https://mainichi.jp/premier/business/articles/20211125/biz/00m/020/028000c



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円安政策は日本経済を強くしたか―輸出は伸びず 家計は負担増―

2022-02-04 12:05:56 | 経済
円安政策は日本経済を強くしたか―輸出は伸びず、家計は負担増―

日本経済は、ここ20~30年、「失われた30年」とか「失われた20年」言われるように、
低迷を続けています。

これは、一部の企業を除いて生産性も収益、賃金も上がりません。日本経済は、あたかも不治
の病のような長期のデフレ状態に苛まされています。

安倍政権期に、いわゆる「アベノミクス」を導入し、「異次元の」金融緩和を行ってきました
が、事態は改善されていません。

今年、2022年1月、日銀の黒田東彦総裁は年頭の挨拶で、消費者物価の2パーセント上昇が達
成されるまで、今年も金融緩和を続ける、と明言しました。

ここで、「金融緩和」とは、日銀が行う金融政策のうち、金利の引き下げと、国債の引き受け
による市中へのお金(円)の供給量を増やすことが主な中身です。

金融緩和の目的は、景気刺激です。一つは、金利を下げることによって、企業が借り入れをし
て新たな投資を促進することです。

同時に、市中に大量のお金が供給されることによって、経済に活気が戻り、景気が上昇するこ
とが期待されます。

二つは、輸出の増加を促進することです。景気が上昇中で貨幣が不足している状況にあるなら
話は別ですが、日本経済は低迷し続けています。

こんな状況で国内に貨幣の供給だけが増えれば、日本の「円」がドルなどの海外の貨幣との価
値が相対的に下がること、つまり「円安」になることは必然です。

むしろ、安倍政権以降、政府は積極的に円安を誘導し、輸出促進を図ってきました。

円安になるということは、日本製品を買う側からすれば、安く買うことができることを意味し
ます。

たとえば1台200万円の車が、1ドルが100円の時には2万ドルしたものが、円安で1ド
ル150円になれば、1万3300ドルほどで買えることになります。

日本企業の従来のビジネスモデルは、良いものを安く作り・安く売ることで国際市場での競争
力を付け、業績を伸ばすというものでした。これは、「モノつくりニッポン」の真骨頂でした。

ドイツの戦略は日本と全く逆です。たとえば自動者を例にとると、ベンツやアウディなどは国
際競争力に自信があり、多少高くても買ってくれるという自信もあるので決して「安売り」は
しません。

いずれにしても、日本の古いビジネスモデルは、もはや過去のものになりつつあります。むし
ろ、過度の円安政策の弊害が現われてくるようになりました。

というのも、「円安は日本経済にプラス」といわれてきた構図は変わりつつあるからです。

その一つは、円安になると海外からの輸入品が高くなります。たとえば、1ドルが100円
であった場合、1ドルの商品は100円で買えますが、円安で1ドルが115円になると、
同一商品が115円に値上がりする、という具合です。

次に、円安の製造業へのデメリットをみてみましょう。スマートフォンや家電、衣料品など
身の回りの製品は、かつて日本の得意分野であった国産が普通でした。

しかし現在では、これらの製品やその部品などは輸入品の割合が増えています。たとえば、
日本の自動車産業は、東南アジア諸国から部品を調達するようになっています。

ところが、東南アジアにおけるコロナの流行で工場が閉鎖されて部品を調達できず、日本の
製造を中止せざるを得なくなりました。

また、従来は国産で賄っていた製品の輸入依存度が高まり、円安による物価高が家計を圧迫
するようになりました。

最新データの2021年7~9月期は1ドル=105円40銭程度と、4~6月期の101円ちょうど近辺か
ら4円ほど円安になりました。これは、日本は、わずか3か月の間に輸入額が4%ほど高騰
したことになります。

輸出価格と輸入価格を比べて貿易での稼ぎやすさを交易条件と言いますが、21年7~9月の交
易条件の悪化幅は遡れる05年以降で最大でした。つまり輸出採算が悪化したのです。

ほぼすべてを輸入に依存する原油など資源価格の上昇で、21年7~9月の企業間取引の輸入物
価指数は前年比で3割上昇し、同期間の輸出物価指数の上昇率(1割)を大きく上回りました。

つまり、原材料や部品の輸入価格の上昇のほうが、それを基にして製造した輸出品の価格上
昇より大きかったのです。

それでも、貿易で稼いできた日本では、円高は輸出に不利であるという固定観念から脱する
ことができず、円高が敬遠されてきました。

これには、2011年の東日本大震災などで市場が動揺し1ドル=75円台の最高値をつけました。
この時、企業は海外移転を加速すると同時に、政府も日銀に円高対応を求めました。

円高を避けつつ賃金も抑制して輸出産業を維持しようとする日本政府の政策には明らかに限
界もみえてきました。

規制緩和や働き手の技能向上などで付加価値が高い商品やサービスを生み出し、為替変動に
左右されにくい産業を育てなければ、日本の「貧困化」が加速しかねません。

それでは、円安は私たち消費者の家計にとってどんな影響をあたえているのでしょうか。

これまでの説明から明らかなように、今は円安による輸入物価高が家計の重荷となり円安の
デメリットが実感されるようになっています。

例えばデフレの象徴とされた衣料品。近年は実態が異なります。消費者物価指数の「洋服」
は過去10年間で9%上昇した。婦人用は13%で、とくにワンピースは17%値上がりした。

衣料品は輸入割合が98%で円安の影響を受けやすい商品です。輸入比率が6割の「エアコン」
も21%値上がりした。全品目の物価上昇率の4倍近くに上昇しています。

幅広い生活品目で輸入依存が進んでいます。国内消費に占める輸入品の比率をみると、家電
・家具などの耐久消費財は34%となり、10年ほど前の1.7倍に高まり、食品・衣料品などの
消費財も同1.4倍の25%に上昇しています。

国内経済は低成長で賃金が上がりません。その中での身近な品目の上昇は家計の重圧となっ
てきています(図を参照)。

図 輸入依存度とエンゲル係数の変化

(注1)

私は、食糧自給率が40%を切っている日本において、食費の高騰が大きな問題となること
を心配しています。

例えば家計消費に占める食費の割合を示すエンゲル係数をみると、2000~2010年には22%
を下回っていましたが、2021年1~11月は25%超と、1980年代半ば以来の水準に高まってし
まいました。
エンゲル係数は、生活実態を計る数値なので、これが高まることは、人びとの生活がますま
す「食べること」に限定されることを意味し、貧困化の指標ともなります。

2022年春には、食品メーカは、一斉に商品の値上げを発表しています。これは、食糧の輸入
価格が高騰しているからで、家計消費に占める食費の割合は、さらに上昇するでしょう。

筆者は、まず何よりも、日本の食糧は自国で充足すること主要な目標とすべきだと考えてい
ます。少なくとも、“先進国”を自称するなら、外国に食糧を依存している資格はありません。

冒頭でのべたように、日銀の黒田総裁は、円安について「基本的にプラスの効果が大きい」
との立場を崩していません。

しかし、円安が輸出を押し上げる力は失われつつあります。財務省によると過去10年間の輸
出数量指数は円安局面でも伸び悩んでいる。日銀自身も「円安が輸出数量を押し上げる効果
が弱まってきている」との分析を示しています。

結論を言えば、円安政策は輸出を増加させなかったし、家計の負担増をもたらした言えます。

円高を避けつつ賃金も抑制して輸出産業を維持しようとする政策には限界もみえてきた。規
制緩和や働き手の技能向上などで付加価値が高い商品やサービスを生み出し、為替変動に左
右されにくい産業を育てなければ、日本の「貧困化」が加速しかねません。

そして、輸出産業の保護のため、円安政策を続けることは、国民の家計を圧迫するだけでな
く、そのために赤字国債を発行して巨額のお金を市中に流した結果、将来、悪性インフレを
起こす危険性さえはらんでいます。

コロナに気を取られている間に、私たちの生活を圧迫する政策や事態に警戒する必要があり
ます。


(注1)『日経新聞』デジタル(チャートは語る)2022年1月30日 2:00
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2455T0U2A120C2000000/?n_cid=NMAIL007_20220130_A&unlock=1

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日本は「安い国」?(2)―残された選択肢―

2021-07-12 12:45:08 | 経済
日本は「安い国」?(2)―残された選択肢―

前回は、中藤玲著『安いニッポン』を手掛かりに、日本は、諸外国(アジア諸国も含めて)
と比べて物価が安いことを、さまざまな事例を紹介しました。

日本は「失われた20年」と表現されるように、バブルがはじけて以来続いている長期の
デフレ状態にあります。

中藤氏はこれを一言で、『「東京は土地も何も世界一高い」と言われたのも、今や昔』と
表現しています。

給料がそこそこ高くて物価が安いのなら理想的ですが、日本の企業経営者は、少しでも値
段を上げると売れなくなってしまうことを恐れて価格を上げられない、と考えています。

つまり、給料が低いから物価を安くしないと売れない→すると企業の利益は少なくなる→
そのためには人件費(給料)を下げざるを得ない→これが、回り回って物価を安くさせる。
ここで、給料の低さと物価の安さとの負の循環が出来上がってしまいます。

中藤氏によれば、日本人の間には「ずっと日本で生きていくなら、給料が低くても物価が
安ければ暮らしやすい」という意見も少なからずあったという。

このように考える人は、敢えて収入を増やそうとするよりも「我慢して貯める」か「じり
貧で使う」というつましい生活を細々と続けてゆく選択肢することになります。

海外との賃金格差についての記事を書くと「日本は給与よりもやりがいを重要視する文化
だ」という反応が多く寄せられるそうです。

ところが、実際には必ずしも、そのような「文化」で満足しているわけではないようです。

2020年の調査では、日本人は「賃金・給与」への満足はイギリス、フランス、ドイツの4
ヵ国中で最下位でした。

もっと言えば、購買力平価換算(国際比較が可能な調整を行った貨幣の実質的購買力)し
た日本の平均年収は2019年時点で、すでに韓国より低いのです。

それでも「賃金以外の楽しみ」が充足して人びとが幸福であれば問題ありません。

しかし日本人の、「レジャー・余暇」「生活全般」への満足度も最下位でした。つまり、
お金の豊かさもなければ、精神的な豊かさもないのが現実なのです。

リクルートワークス研究所の中村氏は、「自然と四季があるから豊かな国」という価値
観から抜け切れずにいると、このままでは本当に貧しい国になってしまう、と危惧して
います。

一般の日本人は、「安い物価やデフレをどう思うか」というアンケ―トの結果を見ると、
2020年3月、「歓迎すべきだと思う」が25.06%、「良くないと思う」が17.44%、残り
が「どちらとも思わない」となっていました。

2021年1月には、「歓迎すべきだと思う」が27.58、良くないと思う」が14.72%、残り
が「どちらとも思わない」となっていました。

これらの数値をみると、どちらかと言えば、物価の安さを歓迎する人が多いようです。

生産者への還元を思うと適正価格にすべきだが、自分の所得水準を考えると値上げは困
る、といった意見がありましたが、これが多くの人の本音でしょう。

実際問題として、賃金が低いと個人は幸せになれません。豊かさを語るとき、賃金は避
けて通れないのです。

そこで、私たちは現在日本が置かれた状況を冷静に見つめ、そこから、個人として、ま
た社会としてどのような道を歩んでゆくべきかを考える必要があります。

給与の低さと物価の安さの悪循環の根底には何があるのでしょうか?中藤氏はいくつか
の要因を上げていますが、私は、もっとも重要な要因は、日本経済の労働生産性の低さ
であると思います。

労働生産性とは、労働によって成果がどれだけ効率的に生み出されたかを数値化したも
のを、通常は米ドルで示したものを指します。

これでみると、2019年における日本の1時間当たりの労総生産性は47.9ドル(=4866円)、
アメリカ(77ドル=7816円)で、統計がたどれる1970年以降、ずっと、主要七か国
(G7)で最下位が続いています。順位でいえば、先進国(OECD)加盟国37か国中
26位でした。

ちなみにこの年の1位はアイルランド、2位はルクセンブルク、三位アメリカ、四位ノルウ
ェー、5位ベルギー、と続きます。

これにたいして、同年、人口動態や産業構造がよく似ている韓国は、年間の労働生産性が
8万2252ドルで24位、日本は8万1183ドルで日本を1.3%上回っています。

生産性の差は、いろんな場面に現れます。たとえば労働時間です。

OECDによればドイツやフランスの労働時間は年間1300~1500時間、日本は1644時間
で、日本より1~2割短い。それでも、それらの国では人々が長いバカンスを楽しみます。

なぜ、そのようなことが成り立っているのでしょうか? それはひとえに生産性が高いか
らです。時間当たり労働生産性でみると、日本と同様に製造業が盛んなドイツは74.7ドル、
フランスは77,4ドルで、日本の47.9ドルをはるかに上回っています。

これには多くの要因が関係していると思われますが、中藤氏が指摘している事情は示唆に
富んでいます。

つまり、例えば自動車なら、需要が最低の状況を想定して、それでも企業として利益が出
るような生産体制で価格設定をしているからだという。

かつてドイツに滞在したことのある、金融経済研究所の所長は、「ヨーロッパでは5倍の
時間をかけて作った車も10倍の価格で売れば、金額の生産性は2倍になる。それこそが
ドイツの生産性の高さの理由だった」と分析しています。

つまり、ドイツ車のブランド力で、多少高くても、そして品薄になっても消費者は高いお
金を払い、納車も長く待つ、というのです。

こうして、ブランド力、技術力の高さがドイツの製造業に高収益と高賃金を実現させてい
るのです。果たして日本製品は、ここまでのブランド力をもっているだろうか。

これに対して日本のメーカーは、欠品しないように需要変動のピークに合わせて生産能力
を持つため、需要が落ち込むときに値下げをしてしまう。

日本は、本来「物造り日本」を誇りにしていたのに、今ではその技術力の国際的な優位性
が相対的に低下し、日本以外の国でも同様の製品ができるようになってしまいました。

すると、残るのは大量生産による価格の安さで勝負することになってしまいます。

もう一つ、日本全体の給与水準と下げ、したがって物価を下げる圧力が常に働いているのは、
日本の雇用の多くを占めているサービス業の賃金の低さです。

とりわけ、教育、社会福祉分野のサービス業では、日本の1995年から2018年までの労働生
産性上昇率はマイナス0.9%で、G7で最低水準です。

テーマパークなどの娯楽、理容店など対個人のサービス分野でもずっと労働生産性の低下が
続いています。

ダイソーの「100円均一」や廻転寿司の「100円寿司」がずっと続いているように、飲
食業界でも、価格の安さと労働生産性の低さ、企業収益の低さ、そして給与の低さのマイナ
スのサイクルが繰り返されています。

今回はくわしく書けませんが、日本が相対的に後れをとっているのは、これからの経済力を
支えるITの分野です。

たとえば、最近では優秀なIT技術者を世界的な規模で激しい獲得競争が展開されていますが、
日本はこの分野でことごとく負けています。

IT技術者の給与をみると、GAFAでは30才台で1500~2700万円なのに、日本では520~
750万円と大きな差があります。い

NTTの場合、研究開発人材は35才までに3割がGAFAに引き抜かれていくという。さら
に最近では、中国からも現在の給与の2~3倍で引き抜かれた例もあります。

ITだけでなく、たとえば日本の得意分野だったアニメ業界でも、現在では多くの優秀な日本
人アニメーターが日本にある中国企業に高額の給与で雇われて働いています。中国からすると、
日本のアニメーターの方が給与は安くて済むからだいうのです。

日本の企業も、人件費を抑えて安い価格で勝負をするのではなく、優秀な人材を雇い、また教育
・訓練をして労働生産性を上げる努力をすべきです。

また、個人としては、組合により一律の賃上げを要求するのではなく、自分の価値を企業認めさ
せるだけの、知識や技能を身に着ける必要があります。そして、どうしても現状に満足できなけ
れば、転職する勇気を持つことです。

いずれにしても、これからは単なる社員ではなかなか難しい時代になったとこは確かです。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
森にはクチナシの甘い香りが漂います。                                 日本の植物なのか今まで見たこともない不思議な植物です。                                                         
              


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日本は「安い国」?(1)―インバウンドの“真実”が語る衝撃―

2021-07-05 11:29:37 | 経済
日本は「安い国」?(1)―インバウンドの“真実”が語る衝撃―

最近出版された本の中で、中藤玲『安いニッポン「価格」が示す停滞』(日経プレミア
シリーズ、2021年5月)は、かなりショッキングでした。

この本が示す具体的な数字や内容の詳細な説明は別の機会に譲るとして、本書の「はじ
めに」で著者が紹介しているインバウンド(訪日外国人)の現実から私が受けたショッ
クから書いてみます。

それは、かつてインバウンド(訪日外国人)で賑わう家電量販店の幹部が著者につぶや
いた言葉です。

「彼らは日本が素晴らしいから何度も来ているんじゃない。お買い得だからきているん
だ」。

つまり、日本の物価が安いから、それを目当てに日本に何度も訪れているのが実情です。

訪日外国人の数は、2013年には1036万人だったが、2018年にはその3倍の
3119万人と激増しました。まさに日本がインバウンド・バブル沸いていたころです。

もちろん、この訪日外国人がすべて観光客というわけではなく、ビジネスも含めてさま
ざまな目的の人が含まれます。これを考慮したうえで、彼らの出身国・地域を見ると、
以下の通りです。

2018年の実績をみると、訪日外国人の34.2%が中国、13%が韓国、12.9
%が台湾、7.4%が香港、6.4%がアメリカ、残りがその他の国と地域からでした。

つまり、インバウンドの7割弱(67.3%)が近隣の東アジア諸国からの訪日客だっ
たのです。観光客だけをみるとさらにこの比率は8割を優に超すでしょう。

彼らが日本に来て実際に何をしたかは、下のグラフに示されています。上位5項目は、
日本食を食べること、ショッピング、繁華街の街歩き、自然・景勝地観光、日本の酒を
飲むこと、の順になっています。

これらのうち、「日本食を食べること」が断然多く、訪日客のほとんど(96.2%)
が実際に日本食を楽しんだようです。次がショッピングで、84%と高率でした。

しかし、一般に海外旅行の主目的と考えられる「自然・景勝地観光」は4番目、「日本
の歴史・伝統文化体験」は9番目でした。
   
  
 出典 https://www.intage.co.jp/gallery/hounichigaikokujin/ (2019.6.11)

こうしたデータを見ると、日本人は、日本が素晴らしいから訪日外国人が増えている、
と思いたいのですが、実態は東アジアの人たちが、安い買い物のついでに安い日本食
(後述)を食べてお酒を飲むことが来日の主目的のようです。

この傾向はインバウンドの訪日客が実際に使った項目別の金額でさらにはっきりします。
つまり、全支出のうち買物代が全体の35%弱、飲食費が21.7%で、この二つで全
体の半分をはるかに超える56.7%も占めています。

ちなみに、宿泊費が30%弱ですから、泊まって買物と飲食した金額は全体の87%近
くに達します。これがインバウンド・バブルの実態です。

そして、そのショッピングの動機は、ただただ日本の物価が安いからです。冒頭で紹介
した本では、幾つも事例で、日本の物価が諸外国(東アジアも含めて)いかに安いかを
示しています。

たとえば、ダイソーの「100均」を考えてみましょう。ダイソーはインバウンドの人
気スポットでした。

マレーシアから来た女性は、キャラクター型のスポンジや、プラスチックのケースなど
カゴ一杯に詰め込んで、「こんなに安くていいのかしら」といったという。

ダイソーは海外26か国・地域に2248店を出店している。海外では「100円均一」
のような単一価格ではなく、商品によって3段階ほどの価格差があります。

しかし、商品の基本価格(この場合、最も多い商品の価格で、日本でいう税抜100円)
をみると、タイは60バーツ(210円)、フィリピンは88ペソ(190円)、マカオ
は15パタカ(200円)、イスラエルは10シェケル(320円)という具合です。ち
なみにアメリカでは160円、ニュージーランドでは270円です。

海外でダイソーの商品が基本価格100円で売られている場所はありません。ダイソーの
幹部によれば、海外の場合、人件費や賃料などの現地維持費が高いためにこのような価格
になってしまうのだそうです。

それでも、タイでは210円でも安いと、中間層に人気なのです。

日本企業のダイソーは商品も日本産だから、日本は物流費がかからずに一番安いのではない
か、とも思える。

しかし、中国から調達する商品もあるにも関わらず日本は中国(160円)より安いのです。

ダイソーの幹部によれば、海外での価格が日本よりずっと高いのは、
    いま進出している国や地域の全てで人件費、賃料、物価、そして所得が向上してい
    る。20年前ならいくら高品質でも「新興国で200円前後」なんて売れなかった
    が、今は現地の購買力が上がったため成り立っている
ということです。

新興国では人件費(働く側からみて賃金)、賃料(家賃)、物価水準、そして所得も上がっ
ているので、日本の倍以上の値段でも売れるのです。

言い換えると、新興国では日本よりも賃金も不動産価格も高く、一般の物価水準も所得も上
昇傾向にあるということになります。

これは現在の日本経済の停滞を象徴しています。日本では1997年をピークに実質賃金が
長期低落しており、企業は物価を上げられず、したがって利益も確保できなくなるから賃金
はますます低く抑えられ、それがまた物価の上昇を抑える、というデフレの下降循環(デフ
レ・スパイラル)に陥っています。

ダイソーと同様のことは「100円寿司」についてもいえる。くら寿司の「100円すし」
の価格はアメリカ店では270~310円、台湾では140円で、日本より高い。

では、外国企業が提供するサービスに関してはどうでしょうか。これを世界のディズニーラ
ンドの入場価格で比較すると、ここでも日本の安さが際立ちます。

2021年1月の予約価格をみると、日本では8200円、フロリダ州の場合1万4500円、
カリフォルニア州やパリ、上海でも1万円を超えていました。日本より敷地が狭いといわれ
る香港でも約8500円です。しかも、コロナ禍まえの2020年3月までフロリダ州の半額の
7500円だったのです。

日本のディズニーランド入場料は世界で最も安い水準なのです。

日本のダイソーも、くら寿司もディズニーランドも、現行価格を上げるとお客さんが減るこ
とを心配して、低価格を維持しています。そこでは、働く人たちの低賃金という犠牲のうえ
に、この安さが支えられていることを忘れてはなりません。

最後に、テレビでも取り上げられた中国のアニメ制作事情は、日本の賃金水準の低さを考え
ると非常に象徴的でした

最近、中国ではアニメ作品の制作が盛んですが、その制作のため、日本に企業を設立し、腕
の良い日本人アニメーターをさかんに雇っています。

中国のアニメ制作会社の説明では、同じ品質のアニメを作るなら日本人を雇った方が中国人
を雇うより賃金が安くて済むということでした。

そこで働く日本人アニメーターは、正規社員として雇ってくれて、賃金も日本企業で働くよ
り高いので満足している、と語っていました。

今や日本は、中国の下請け的存在になりつつあるのです。ただし、このように日本人の優れ
た技術者がアジア諸国から高級で引き抜かれているのは、アニメ界だけではなく、他の分野
でも、そして韓国でもずいぶん前から進んでいました。

次回は、なぜ、日本は「安い国」になってしまったのかを、もっと広く日本経済の構造的問
題、そして、これからどんな選択肢があるのかを考えたいと思います。



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日本経済の本当の実力(3)―日本はもはや先進国ではない?―

2019-11-27 10:32:26 | 経済
日本経済の本当の実力(3)―日本はもはや先進国ではない?―

日本経済の本当の実力に関して、前回と前々回の記事で、世界で挑戦を続けているソフトバンク社長
の孫正義氏とユニクロ社長の柳井正氏の見解を紹介し、検証しました。

孫氏も柳井氏も共に、日本はもはや「先進国ではない」「中進国」から、本当の先端技術(特に人工
知能や通信)においては途上国に落ちてしまっている、と語っています。

孫氏の発言も柳井氏の発言も、経営者としての「実感」ですが、それでは、一般の日本人はどのよう
に感じているのでしょうか?

もし、日本人100人に、「日本は先進国だと思いますか?」と聞けば、おそらく100人、あるい
はそれに近い人は、「先進国だと思う」、と答えるでしょう。

それでは、「日本はこれからも先進国であり続けると思いますか?」と聞くと、かなりの人は、一瞬、
答えに詰まってしまうのではないでしょうか。

ここで、一般的な意味での「先進国」とは、経済的に発展した国で、高度の工業化を達成し、高い技
術力と生活水準を維持している国、を指します。

さらに、その中でも経済が突出して発展している国としては、いるいわゆる「先進七ヵ国=G7」を
指し、アメリカ、イギリス、フランス、カナダ、イタリア、ドイツ(2000年の東西ドイツの統一後)、
そして日本が含まれます。

注意しなければならないのは、G7と称されるようになったのは1976年のことで、当時日本は経
済成長の真っただ中にあった、ということです。

もっとも、「先進国」であるかどうかは、何をもって判断するかによって異なるでしょう。

国の人口規模などがそれほど大きくなく、経済の規模ではあまり大きくはないが、高度な技術をもち、
豊かな生活水準を維持している、たとえば、オランダ、ベルギーのような国はたくさんあります。

これまで日本が間違いなく「先進国」であることに、多くの日本人は何の疑問を感じませんでしたが、
私の印象では、ここ10年くらいの間に、少しずつ認識が変わってきたように思います。

私は、1991年のバブル崩壊、2008年のリーマンショックという段階を経て、2010年に、
日本がGDP(国民粗総生産)で、世界第二位から、中国に抜かれて第三位に転落したころには、日
本経済の凋落がはっきりしました。いわゆる「失われた20年」です。

ますます勢いに乗る中国に対する脅威と、電気・通信の分野で日本と対抗する実力をつけてきた韓国
への警戒心が、「嫌中・嫌韓」という感情となって密かにまん延し、実際、出版物でもそのような本
がたくさん世の中に登場しました、

その一方、その不安や挫折感や敗北感を振り払おうとするかのように、テレビなどではさかんに「ニ
ッポン すごい!」的な番組が増えています。これら二つの現象は、コインの裏表です。

それでは、実際のところどうなのでしょうか?もう少し客観的な数字や分析から見てみましょう。

経済評論家の加谷珪一氏は「テレビ朝日」の「「羽鳥慎一のモーニングショー」(2019年10月31
日)の中で次のように述べています。
    確かに日本は戦後、非常に頑張って豊かになりかかったんですけれども、すでに他国との比
    較という観点からすると、かなり貧しい国になりつつあるという状況でして、今現在日本が
    世界に冠たる先進国かと言ってしまうと無理があるんじゃないかというのが私の考えです。

その根拠は、いろんな面での数字が先進国ではないという数字に落ち込んでいるからだという。

たとえば、豊かさを表わす重要な指標である労働生産性(労働者一人が生み出す労働の成果)はG7
で最下位。日本は昔から最下位のままで、一度もトップに立ったことはありません。

しかも、G7の中で最下位であるだけでなく、1970年ころからずっとOECD36カ国中20位
くらいだったのです。

ただ、私たちの頭の中には、日本はGDP世界第三位、という考えが定着していますが、これにはち
ょっと注意が必要です。

GDPとは、1年間に生産された財とサービスの付加価値の合計で、国全体の経済規模を表わします
が、これと国民一人当たりが豊かさとは分けて考える必要があります。

国民の豊かさは、一人当たりGDPで、これはOECD加盟国の中で、2000年には2位に上りま
した。しかしこれは為替レートの計算方法によるもので、プラザ合意(1985年)で人為的に3倍
くらいの円高にさせられたため、ドル換算で一気に2位に上がっただけです。

本当の実力は購買力平価という、実質的に所得でどれほどの物やサービスが買えるか、と言う面から
見ると、OECD中18位にとどまっています。

日本は戦後ゼロから始まり、頑張って成長を遂げましたが80年代のバブル期がピークで、それ以後
はずっと落ち込んできているのが実態です。

日本は物作り立国で、製品を輸出して豊かになってきた、という認識がありますが、加谷氏は、これ
もやはり過大評価だという。

現時点で世界全部の輸出に対する日本のシェアは3.8パーセントしかないのです。これにたいして
1位の中国は10%以上、2位アメリカも10%を超え、3位のドイツで8%です。ドイツは日本よ
り人口は少ないのに輸出は2倍以上あります。

また、雇用や貿易などの主要経済指標を基に計算した世界競争力ランキングでみると、「先進国」と
いうからには、一ケタ内に入っていなければならなりません。

日本は1989~92年までは世界第一でしたが、その後下落を続け、今年は調査対象63の国と地
域の中で、昨年の25位から30位と下落してしまっています。

加谷氏は、日本は1980年代に先進国になりかかったのに、成熟した経済に成長できず、現在は昔
(1950~60年ころ)の貧しい国に逆戻りしているというのが正しい認識だ、と言います。

最近の賃金水準をみると、上位35カ国中19位、教育に対す公的支出のGDP比率、これは43カ
国中40位という悲惨な状況にあり、年金の所得代替率(現役時の所得のどれほどが支払われるか)
は50カ国中41です。

加谷氏は、資源のない日本が先進国になるためには、長期的視野に立って、教育に力を入れるしかな
いんじゃないか、と提言しています。

しかし、教育の重要性にもかかわらず、日本は教育への投資があまりにも貧弱な状況にあります。

加谷氏は、人口1人当たりの論文数は、世界で38位(2016年)です。これは、国全体が貧しく
なってきているので、教育投資をケチっているからだ、と言ったうえで、しかし、教育の部分は削っ
てはいけない、最優先課題として教育にお金を投資すべきだと強調します。
います。

日本における教育政策の問題については、同じく「テレビ朝日」の「羽鳥慎一のモーニングショー」
(2019年11月14日)に、ダボス会議、世界経済フォーラム元メンバーでかつて内閣官房参与を務
めた田坂応志氏(現・多摩大学大学院名誉教授)は、教育行政の問題点を3つ挙げています。

第一点は、教育の負担は国家か家庭か、という問題です。

田坂氏は、国は教育にもっと大きな投資をすべき、だと主張します。OECD各国の授業料負担の比
較(2016年)でみると、ノルウェー、スエーデン、フィンランドなど北欧諸国は100%が公費
負担。アイスランド95%、以下順次下がって、日本は31%に留まっています。

すでに引用したように、日本の教育の対する投資(GDP比)は43カ国中40位という、まさに中
進国から途上国並みの低さとなっています。圧倒的に公費負担が少ないのです。

第二点は、競争か自己目標の達成かという問題です。日本は、競争させれば学力は上がる、と考えて
きたが、OECDの長期の調査では、生徒・学生全体の学力は競争によっては上がらない、というこ
とが実証されています。

競争は一部のエリートはいいが、他の人は負け組として意欲をなくす。むしろ、その人の能力や適性
に合わせた自己目標を達成することが、社会全体の水準をあげることになる。

第三点は、若年学習は生涯学習か、という問題。最初のキャリアー(就職)から5年後には陳腐化す
るので、新しい知識と技能が必要。そのためには、適切な時期に、公費で最教育を受ける必要がある。
それが生涯学習で、それを本気でやらないと日本の経済・産業は危ない。

2012年度の、大学入学者の内25才以上の割合(つまり生涯学習者の割合)をみると、アイスラ
ンドが1位で32.4%、ニュージーランド・オーストラリアが25%、アメリカ・オーストリアが
25.4%、OECD加盟国全体は18.1%なのに、日本は何と、1.9%にすぎません。ちなみ
に韓国は18%、日本の約10倍です。

もう、結論ははっきりしています。日本が豊かになり(必ずしも物質的だけではない)、一人ひとり
の国民が充実した生活を営むためには、とりあえず、最低限かつ最優先で以下の2点を改善する必要
があります。

1 資源の乏しい日本が豊かになるには、時間はかかるけれど、国家の教育投資を、せめて中進国並
に増やすこと。一方で、1兆円以上もの戦闘爆撃機と8000億円以上もかかる言われるイージスア
ショアを、アメリカのご機嫌をとるために爆買いすることを止め、教育に振り向けること。文科大臣
が、教育を受ける機会は「身の丈に合った」などと言っているのは論外で、このレベルの人物が文科
大臣を務めることは国民として非常に不幸です。

2 企業の内部留保金は、日本の国家予算(一般会計)の5年分に相当する500兆円を超えていま
す。これは逆に労働者の賃金が低く抑えられていることを意味します。加えて消費税ははじめ国民の
負担は上昇しています。こうして、個人はますますじり貧になり、国内消費は伸びてゆきません。つ
まり企業は自分で自分の首をしめているのです。政府はこのような内部留保を優遇する施策を変え、
労働者への分配率を高めるよう法改正すべきです。国と企業は太り、個人はやせ細っています。

菅原文太さんは「政治の役割は2つ。国民を飢えさせないこと、絶対に戦争をしないこと」という素
晴らしメッセージを残してくれました。政治を預かる人たちの心に深く刻んでほしいと思います。

私はこれに、「政治の役割は国民の生命・財産をまもること」を付け加えたいと思います。

最近の台風や大雨で深刻な被害を受けた地域、たとえば台風19号による堤防の決壊のうち、少なく
とも5県の九河川10カ所は、水害のリスクが高いとして強化対策工事の対象になっていたが、予算
不足で実行されてこなかった事例です。政府は地方への投資を怠ってきたのです。

このため多くの人命、家屋・田畑などが失われています。本当に「国を守る」とは、戦闘機を増やす
ことではなく、何を置いても国民の生命と財産を守ることではないでしょうか。

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日本経済の本当の実力(2)―柳井正氏(ユニクロ)の怒り―

2019-11-17 17:25:05 | 経済
日本経済の本当の実力(2)―柳井正氏(ユニクロ)の怒り―

前回の孫正義氏とのインタビューに続き、今回は柳井正ファーストリテイリング会長兼社長との
インタビューを手掛かりに、孫氏と同様、世界で勝負している柳井氏が、現在と将来の日本につ
いてどのように考えているかをみてみましょう(注1)。

柳井氏は、政治的な発言を控える経営者が増える中で、敢えて直言をやめません。それどころか、
怒りともいえる危機感を示し、企業経営から政治まで大改革の必要性を説きます。

開口一番、「最悪ですから、日本は」。

柳井氏によれば、この30年間、世界は急速に成長しているのに、日本は世界の最先端の国から、
もう中位の国に、ひょっとしたら、発展途上国になるんじゃないか、さえ思われるほどだという。
その根拠を、以下の言葉で表現しています。

国民の所得は伸びず、企業もまだ製造業が優先でしょう。IoTとかAI(人工知能)、ロボティクス
が重要だと言っていても、本格的に取り組む企業はほとんどありません。あるとしても、僕らみ
たいな老人が引っ張るような会社ばかりでしょう。僕らはまだ創業者ですけど、サラリーマンが
たらい回しで経営者を務める会社が多い。こんな状況で成長するわけがない
 
柳井氏の目には、この30年間に1つも成長せずに、30年間、負け続けているのに日本の企業はその
ことに気付いていない。

柳井氏はインタビューの冒頭から、怒りをみなぎらせた表情で日本の現状を語ったようです。

怒りの矛先は、日本社会一般にも向けられます。

    民度がすごく劣化した。それにもかかわらず、本屋では「日本が最高だ」という本ばか
    りで、僕はいつも気分が悪くなる。「日本は最高だった」なら分かるけど、どこが今、
    最高なのでしょうか。

ここで「民度」とは国民の知的・文化的レベル、さらには物事を正しく認識する能力というほど
の意味でしょう。そのレベルが「すごく劣化している」という。

柳井氏は、そんな「ゆでガエル」になってしまった日本に「あきれ果てているけれど、絶望はで
きない。この国がつぶれたら、企業も個人も将来はないのですから。だからこそ大改革する以外
に道はない」、と主張します。

その大改革の第一歩は、「まずは国の歳出を半分にして、公務員などの人員数も半分にする。そ
れを2年間で実行するぐらいの荒療治をする」ことです。

そうしないと今の延長線上では、「日本は政治家と生活保護の人だけ」になってしまう。しかし、
滅びると思っている人が、政治家にも国民にもほとんどいないことに柳井氏はこの点に強い危機
感を抱いています。

次に、柳井氏の改革は政治・行政システムに向かいます。たとえば参議院も衆議院も機能してい
ないので、一院制にした方がいい。国会議員もあんなに必要ない。町会議員とか村会議員も同様。
これら全部改革しないと、「とんでもない国」になってしまう、と言う。

その「とんでもない国」になってしまっている一つの要因として柳井氏は、経営者が政治や政権
に厳しい意見を言わなくなっていることを挙げます。

柳井氏は自民党のファンを自称していますが、「今の自民党議員は本当に情けない。誰も安倍晋
三首相に文句を言う人がいませんよね。安倍さんを本当に大総裁にしようと思ったら、文句を言
う人がいないとだめでしょう。みんなが賛成というのはだめな現象ですよ」、と現在の自民党の
体質をも批判します。

柳井氏は安倍政権にも厳しい批判を向けます。

    みんなが安倍政権の経済政策「アベノミクス」は成功したと思っていますが、成功した
    というのは株価だけでしょう。株価というのは、国の金を費やせばどうにでもなるんで
    すよ。それ以外に成功したものがどこにあるんでしょうか。数字が示しているでしょう。
    成長していない。GDP(国内総生産)は増えてないんです。

実際、現在の株価は、政府・日銀による株の購入によって釣り上げられており、必ずしも実態経
済を反映したものではありません。

柳井氏のインタビュー発言で私が驚いたのは、安倍政権の、ある意味でもっとも深刻な問題、日
米地位協定にたいする弱腰の姿勢です。

安倍政権は、憲法改正を政権の重要課題と位置づけ、何としても国会の発議を国民投票に持ち込
もうとしています。これに対して柳井氏は怒っています。

    憲法改正よりも米国の属国にならないことの方が重要ではないかと思います。日米地位
    協定(注2)の改正の方が、将来よほど必要ではないでしょうか。完全に米軍の指揮下
    になっています。
    自立的に考えず、米国の陰で生きているのに、みんな自立的だと思っている。日米は対
    等の同盟国と言いますが対等ではありません。トランプ米大統領が勝手なことを言い、
    それに追従している。こんなのはあり得ません。

つまり、憲法改正よりも、日米地位協定を改正し、アメリカの属国状態から脱して自立(独立)
を達成することの方が先だ、ということです。

現行の日米地位協定では、たとえば、米国軍人がなんらかの犯罪を犯しても、第一の裁判権はア
メリカにあることで、当人が基地から飛行機で飛び立ってしまえば事実上、日本の裁判権が及ば
なくなります。

あるいは、首都圏を含む1都8県の空域が「横田空域」として設定され、その管制権は米軍に与
えられています。そのため、米軍以外の飛行機は羽田や成田の飛行場での発着に非常に不自由な
状態を強いられています。

アメリカに対しては従属的なのに韓国に対しては、「日本人は本来、冷静だったのが全部ヒステ
リー現象に変わっている。これではやっぱり日本人も劣化したと思います」、と最近の風潮を鋭
く批判しています。

ここで「劣化した」とは、先ほど引用した「民度が劣化した」とは少しニュアンスが違って、余
裕を失い、そのため冷静さを失ってヒステリックになっていることを指していると思われます。

柳井会長は日本経済の現状に強い不満をもっています。

柳井氏によれば、日本企業の真のグローバル化には世界の優秀な人材獲得が不可欠なのに、日本
企業には旧態依然とした慣習が残っていることに警鐘を鳴らしています。

柳井氏が例として挙げたのは、人材確保に関連して社員の一斉採用人材獲得です。

    あんなことやっているのは日本だけですよ。やはり世界中から人材を採っていかなけれ
    ばなりません。今は企業が世界中で人材獲得の競争をしている中で、日本だけ遅れてい
    いのでしょうか。もう日本人だけではどうしようもない。
    今の政策では、単純労働の人ばかり採用しようとしていますが、もっと先端技術を持つ
    頭脳労働の人を採らないといけません。
    技術についてはもう完璧に2周遅れ。でも自分たちは先行争いをしていると思っている
    でしょう。世界の現実を知りません。経営者自身が勉強してないことと、海外に行って
    ないからです。

優秀な人材を確保するためには、「人事や報酬の制度を抜本的に変えないといけない。日本企業
の報酬に比べると、中国や欧州の企業はだいたい2~3倍、米国企業だと10倍くらい高い水準です」。

つまり、今の日本企業の報酬レベルでは世界から人材を集めることはできない、少なくて中国や
欧州と同じ、2~3倍に上げる必要がある、ということです。

柳井氏の怒りは、日本政府の対米従属的姿勢、国会の非効率、企業の経営者が年功序列の人事や
報酬体系を維持するなどの旧態依然の体質、冷静さを失った国民に向けられています。

柳井氏は最後に、

    あと世界の人材と一緒に仕事をしようと思ったら、僕は「真善美」と言っていますが、
    人間の基本的価値観みたいなものを持つことです。いい人間のところにはいい人が来る。
    いい会社にはいい人が来るので、その中にやっぱり入っていかないといけないんじゃな
    いかなと思います。今はまだ鎖国みたいな感じなのに、また鎖国だとも思っていません。
と提言しています。

最後の部分はちょっと分かりにくいのですが、柳井氏の言いたいことは、日本は実際には鎖国状
態なのに、今はまで、多くの人が鎖国状態にあることに気が付いていない、というほどの意味だ
と思われます。

政府も企業も口癖のように「国際化」と言いますが、実態としては、日本は鎖国状態にあること
に、柳井氏は危機感を持っているようです。

次回は、日本は、孫氏や柳井氏がいうように、本当に先進国から脱落した、中位国から途上国に
なってしまったのか、という問題を考えてみたいと思います。


(注1)「このままでは日本は滅びる」柳井正
    『日経ビジネス』日経ビジネス (2019年10月9日)
    https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00357/?P=1

(注2)外務省のホームペ―ジによれば「日米地位協定(日本国とアメリカ合衆国との間の相互
協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関す
る協定)は,在日米軍による施設・区域の使用を認めた日米安全保障条約第6条を受けて,施設・
区域の使用の在り方や我が国における米軍の地位について定めた国会承認条約」となっています。


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日本経済の本当の実力(1)―孫 昌義氏(ソフトバンク)の憂い―

2019-11-10 07:10:00 | 経済
日本経済の本当の実力(1)―孫昌義氏(ソフトバンク)の憂い―

現在の日本経済は、本当に盤石なのか、まだまだ上昇期に乗っているのか、それとも、もはやピーク
を過ぎて下降期に入っているのか、私たちには簡単には判断できません。

日本経済は、かつて優位に立っていた産業分野、特に家電や電子機器の製造に代表される「物つくり」
は中国、韓国、東南アジアなどの新興工業国の追い上げを受けて、厳しい競争にさらされているよう
にも見えます。

さらに、少子化や高齢化により労働力不足が深刻化し、国家の財政赤字も1000兆円をはるかに超
えています。個人のレベルでは、実質賃金はここ20年ほど、下がり続けています。

本当のところ、日本経済は現在どのような状況にあり、将来どうなるのか、私には分かりません。

このような状況を、財界はどのように受け止めているのでしょうか?

日本の財界を代表する一人、ソフトバンクグループ会長兼社長の孫 昌義氏(62)は、本年の7月
18~19日に行われた、このグループ最大規模の顧客向けイベント『SoftBank World 2019』での
基調講演で、衝撃的な現状認識を語っています(注1)。
    
    日本はいつの間にかAI後進国になってしまった。ほんのこの何年間かの間で、特に一番大
    切な、今、技術革命が起きているAIの分野で、完璧に後進国になってしまった。 

AIの分野だけとは言え、「後進国」という言葉は衝撃的です。

この孫氏の発言を受けてかどうかは分かりませんが、『日経ビジネス』が、日本再成長のための提言
を50人の著名人にインタビューし、それが同誌の特集「目覚めるニッポン」と題して、2019年10
月7日号に掲載されました。

今回のブログでは、まず孫氏のインタビュー記事を取り上げ、次回はファーストリテイリング(ユニ
クロ)会長兼社長の柳井正氏のインタビュー記事を取り上げます。

この二人は共に、名実ともに世界で戦っている代表的な経済人ですから、彼らの発言は生々しい現実
を反映していると思われます。

孫氏は、日本は「このままでは忘れられた国に」「先進国から中位国・途上国へ」転落してしまう、
との強い危機感をもっています(注2)。

雑誌のインタビュアーから、「孫さんはたくさんの海外の会社を見ています。日本の現状をどう見て
いますか」、と聞かれて、

    非常にまずい。一番の問題は、戦前戦後や幕末に比べて起業家精神が非常に薄れてしまって
    います。「小さくても美しい国であればいい」と言いだしたら、もう事業は終わり。縮小均
    衡というのは、縮小しかありません。日本の中だけで、鎖国された江戸時代のような状況で
    完結できるならまだいいんですけど。

孫氏によれば、世界は急激に動いており、米国は依然として技術革新は進んでおり、中国は巨大化し、
東南アジアも今急拡大してきているのに、日本の若いビジネスマンは国外に打って出るんだという意
識が非常に薄れてしまっています。

日本の若いビジネスマンが世界に打ってでるという意識が減退していることは、「留学生もひところ
に比べて急激に減っていますよね。日本のビジネスマンがもう草食系になってしまった」、という点
にも現れているという。

1980年代、90年代ぐらいまでは、日本は電子立国と言われ技術で世界を引っ張る力があったが、その
勢いは全くなくなってしまった。たとえば、半導体も日本は一時トップでしたが、もう今や完全にそ
のポジションを失ってしまった。

技術的な面で日本が世界のトップを取っている分野は今や、部品や自動車が一部残っているくらいだ
けで、今や、「技術の日本」「物つくり日本」という実態は国際社会では消えてなくなってしまった
と感じています。

このため日本は競争力を失い、特にこの30年間ほぼ成長ゼロで、非常にまずい状況だということにな
ります。

そして、「それでは世界から置いてけぼりになってしまう。いつの間にかもう完全に忘れ去られてし
まう島国になってしまうような気がします」と日本の将来を憂いています。

孫氏は、日本人企業にハングリー精神が失われてしまったことを憂いているのですが、れでは、その
理由を問われて次のように答えています。

    一時日本のビジネスマンは「働き過ぎ」と世界から非難されるくらい頑張っていたが、今は
    働かないことが美徳のような雰囲気になっている。株式市場もバブル崩壊で「借金=悪」、
    「投資=悪」のようなイメージが広がってしまった。半導体は設備投資産業なのに、それが
    ぱたっと止まってしまいまった。つまり競争意欲を持つということ自体に疲れてしまい、こ
    うした精神構造が社会全体を覆っている。

「今は働かないことが美徳なっている」という点について、私は少し意見が違いますが、日本人が働
くことの意味を問い直し始めたことは事実でしょう。

孫氏は、2000年前後のネットバブルでは大儲けした若い経営者の「お金があれば何でも買える」とい
う発言が世間の総バッシングを浴びたため、そのまま進めば成長産業に若者が入りそうだったのに、
みんなが萎縮してしまったことが、成長を止めてしまった要因だという。

つまり、「成長産業に若者がゆかなくなったら、産業構造事態が成長に向かわなくなってしまう」と
いうことです。

これには日本という村社会のやっかみみたいなものが長く続いているという。米国では若い人たちが
成功すると、「アメリカンドリーム」とたたえられますが、日本だと「成り金」と言われ、何かいか
がわしいものを見るような目で見ます。「若くして成功してけしからん」という風潮がある。

孫氏の言葉の中で私が注目したのは、米国や中国の企業の成長は市場規模の大きさを考えれば羨まし
いとは思っても、ある程度納得はできるが、そうではない東南アジアのように自国市場が小さい国か
らも熱く燃えて急成長している会社がたくさん出てきている、という指摘です。

孫氏は、日本は市場規模が小さいから、米国や中国のように世界で通用する企業が成長できない、な
どと言い訳をしている時ではない、と言っているのです。

では、孫氏は最終的にはどこを目指しているのでしょうか。

孫氏は今、自分の事業というより、ビジョン・ファンドを通じて志を共有する起業家たちを集め、
「群戦略」で大きく勢力を伸ばすための、「人工知能(AI)が成長の源泉」とビジョンを絞ってグ
ループを構築しつつあるそうです。

孫氏は、小売とメディアの世界ではインターネットによって産業が置き換わりつつあり、それが、
もっと大きな流れとしてAI(人口知能)が残りの産業全部をひっくり返してゆくという時代がは
じまる、という将来展望をもっています。

情報に関しては紙媒体からインターネットのグーグルやフェイスブックが既存の情報産業を淘汰し
ているし、小売でもアマゾン・ドット・コムが米ウォルマート(世界最大のスーパーマケット・チ
ェーン)の時価総額を抜いていることから、急激な産業構造の変化が生じていることは確かです。

孫氏は、パソコンの時代にトップ走っていた企業が、ネット時代にトップであり続けたわけではな
いし、同様に、ネットで活躍した会社(グーグルやアマゾン)が、AI時代に成功できるとは限ら
ない、と言っていますが、これはとても大切な指摘です。

ただし、孫氏が言う、AIを中心とした情報革命が、他の産業も含めて全部ひっくり返す、という
ことの意味が、実の所、私にはまだしっくりとは理解できません。

孫氏は、肉体労働より頭脳労働、頭脳労働でも単に物知りの人の賃金対価より、知恵を働かせ、人
よりも考えて深く洞察し、新しいものを作り出していく人の方が、単に物知りの人より、はるかに
大きな対価を得ることを語っています。

しかも、人間が普通に知恵をはたらかせるよりも、AIを使って洞察、予測した成果物はより大き
く力を発揮する時代がくる、と考えています。

「そういう時代に日本は、ラストチャンスとして打って出るべきです。これは日本に最後に残され
た一発逆転のチャンスでしょう。問題は、政府や教育者などのリーダーたちが、そのことを十分に
認識していないこと」、を憂いています。

孫氏は、これからの産業の中心は、肉体労働から、人間の知恵ではなくAIの知恵によって新しい
産業が成長する、と考えているようです。

そのためにも孫氏は、「新しい時代には新しい若いヒーローが続々と生まれる。私はそこに賭けた
い、と期待しています」と語っています。

確かに人工知能は、与えられた条件の下で最も合理的な道を見つけるだけでなく、人間が想像しな
かった、全く新しいアイディアを提示してくれるかもしれません。

しかし、AIは導き出した新しいアイディアがその社会にとって望ましいことなのかどうかの価値
判断をするわけでありません。私は、AIに過大な期待をし、依存しすぎることに、一抹の不安を
覚えます。

さらに、AIには、隠れた問題もあります。たとえば、AIを使って集めた膨大なデータを、企業
が収集し、それらを整理集計して個人の趣味、行動パターンや政治心情などのプライバシーを侵害
する危険性があります(注3)。

最近の事例では、就職希望者が内定を断る確率をネット上のアクセス事項などから割り出した情報
を企業が販売する出来事が問題となっています。

最後に、孫氏がなぜ、自らの考えを政府に提言しないのか、という質問に、

    かつて政府の諮問委員などに名を連ねたことがありますが、最終決定する政治家に強い意
    識がないと難しいと思いますね。・・・・・・。
    そうすると僕らは海外の方に出稼ぎに行ってしまう。米国や中国、東南アジア、インドの
    起業家たちと建設的な話をしている方が早く成果が出ます。

この発言は、恐らく現実なのでしょう。しかし、そうであれば、日本経済の空洞化はますます進ん
でしまうのではないか、という不安が私の心をよぎります。



(注1)この時の映像は、9月末まではインターネットで見ることができましたが、現在は見るこ
    とはできません。私は、『テレビ朝日』「羽鳥慎一モーニングショー」(2019年10月31日)
    の番組内で見ました。
(注2)『日経ビジネス』(2019年10月8日 2:00)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50592160U9A001C1000000/?n_cid=NMAIL007
(注3)『朝日新聞』(デジタル版 2019年11月7日 18:00)
 https://www.asahi.com/articles/ASMB035WVMB0UPQJ006.html?ref=weekly_mail&spMailingID=2879615&spUserID=MTAxNDQ2NjE2NTc4S0&spJobID=1120065758&spReportId=MTEyMDA2NTc1OAS2


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日本経済に暗雲(2)―アベノミクスの失敗が鮮明に 2016年―

2016-10-22 09:20:00 | 経済
日本経済に暗雲(2)―アベノミクスの失敗が鮮明に 2016年―


前回、「日本経済に暗雲(1)」に続いて、日本経済に重く垂れこめた暗雲が、今年に入って、どんな展開を示し、それが今後の日本経済に、
どんな意味を持つのかを考えてみたいと思います。

安倍政権の経済政策の中心は、日銀を使っての金融政策でした。要約すると以下の7点となります。

①低金利(さらにはマイナス金利)を導入し、②大量の貨幣を市場に流して企業の投資を促し、③円安を誘導して輸出の伸ばし、④景気を
刺激して個人の収入(賃金)を増やし、⑤株価を上昇させ、⑥個人消費を増やし、⑦物価上昇2%を達成してデフレから脱し、GDPを上昇
させる。

しかし、前回みたように、投資は増えず、賃金も個人消費は増えず、物価上昇2%は達成されず、頼みの株価は、一時日経平均で2万円
に達したものの、2015年末には1万9000円台に下落してしまいました。

GDPは2015年10~12月期には前期比で0.4%減、個人消費は0.8%減、とマイナスに転じてしまいました(『東京新聞』2016年2月19日)

唯一、狙いに近かったのは、株価の上昇でしたが、それも最後は止まってしまいました。そして2016年10月には1万6000~1万7000円の間
を行き来する状態です。

以上のような現実に対して世間には、アベノミクスは失敗したのではないか、との声があがってきました。

日銀は9月21日に、黒田東彦総裁のもとで進めてきた大規模金融緩和策の「総括的な検証」を行い、併せて「新しい枠組み」を発表しました。

アベノミクス第一の矢として注目を集めた「量的・質的金融緩和」が始まり約3年半になりますが、こうした検証や枠組みの変更が必要になっ
たこと自体、行き詰まりを如実に示していると言えます。

『毎日新聞』(2016年9月22日朝刊)はこの発表の翌日、「無謀な実験は失敗に終わったということだ」との記事を掲載しています(注1)。

日銀は記者会見で、政策の限界と失敗が枠組みの変更をもたらしたとの見方を強く否定しました。

それどころか日銀は、「この間に、わが国の経済・物価は大きく好転し、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなった」と自
賛さえしてみせたのです。

肝心の「2年以内に、年2%の物価上昇」目標は達成していないが、日銀の政策に問題があったからではなく、原油価格の大幅下落、消費
税の引き上げ、新興国経済の減速、さらに日本人の物価観の特殊性のせいだと、分析して見せました。

思えば、黒田氏が日銀総裁に就任した2013年4月4日、「2年で2%の物価安定目標を達成するために、現時点で必要な措置は全て決定
した」と総裁は胸を張りました。

しかし、結果はそうなりませんでした。

上記『毎日新聞』は、「日銀は検証の中で、14年の消費税引き上げの影響や海外の景気の鈍化を挙げているが、政策のプロなら、想定外
とは言い訳できないだろう」と手厳しく、日銀を批判しています。

つまり、目標を達成できなかった原因を外部要因のせいである、と責任転嫁しているのです。

新たに導入した枠組みは、異次元緩和を支える、お金の量に主軸を置いた政策から金利重視の政策への大転換です。

しかも、今年2月に導入したばかりのマイナス金利政策も、金融機関の収益を圧迫したり、年金など長期の運用を一段と困難なものにした
り、と弊害が多く指摘されたため、修正を余儀なくされてしまいました。

今回の「新しい枠組み」では、短期金利だけでなく長期金利(10年物国債の利回り)まで日銀が望ましいと思う水準に管理することを強調し
ていますが、はたしてそれは可能か、という疑念は残ります。

さらに、長期金利は本来、市場が決めるものです。例えば無責任な財政支出に対して、市場は警告のシグナルを送ります。そうした市場の
機能を縛る政策は過剰な市場介入です。

日本は、建て前としては「自由主義経済」を原則としていますが、こうなると、政府が経済の重要な部分を操作する、統制経済に近くなって
しまいます。

結局、問われるべきは、「2年を念頭に達成」との約束で始めた実験の失敗の責任、ということになります。

日銀のもとには、将来値下がりの恐れがある国債や投資信託といった資産が450兆円以上も積み上がっています。

これだけの金額のお金が、景気刺激のため日銀によって、新たに市中に供給されたのです。これは、今後も増え続けると考えられるので、
「円」という、日銀が発行している通貨の信用にかかわる問題をはらんでいます。

日銀による大量購入に依存し、ゆがみきった国債市場を、将来どうやって正常化するかという難題も待ち受けています。

もし、日銀が段階的に国債の購入額を減らし、つまり、巨大な買い手が市場から手を引こうとした途端、国債価格は暴落し、長期金利は急
上昇しかねません。

それを回避しようとすれば、国債購入をいつまでも止められず、バブルや景気の過熱を招く恐れがあります。日銀は、極めて難易度の高い
出口戦略を求められます。

『毎日新聞』は、「将来に重大な問題を残した異次元緩和策の責任は、日銀だけにあるのではない。アベノミクスの第一の矢に頼った政府
の責任も問われる」と記事を締めくくっています。

他方、『日経ビジネス』は、今回の「新しい枠組み」について、『日銀の真の狙いは「緩和策の限界」隠し』というタイトルで、二人のエコノミス
トの見解を紹介しています(注2)。

黒田東彦総裁は会見で「従来の金融緩和を強化する」と語ったものの、枠組変更が実体経済に何をもたらすのかについては不明な部分が
残ります。

みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは、次のようにコメントしています。

とにかく分かりにくいという印象です。日銀は、(市中に供給する通貨量)マネタリーベースの増大で物価押し上げを図る量の緩和と決別し、
長短金利を誘導する政策に変えたわけですが、では量の緩和は効果がなかったのかといえば、効果はあったと言い張っています。

唐鎌氏は、効果はあったが、2014年半ばからの原油価格下落や消費税引き上げによる消費停滞など外的要因がそれを消したというような
言い方です。効果があったのならなぜ政策の枠組を変えなければいけないのか、と疑問を呈しています。

日銀は量的緩和から金利操作に枠組みを変えるといいながら、量的緩和の柱である年間80兆円の国債買い入れは持続すると言っている
のも、一貫性を欠いています。

黒田総裁が就任して以来の大胆な金融緩和の狙いには、物価の押し上げだけでなく、円高是正(円安誘導)がありましたが、皮肉なことに、
今年2月頃からは、一転して円高になりました。日銀はマイナス金利を導入して新たな緩和に踏み出したのに、逆の結果となったわけです。

日銀は今回、2%の物価目標が実現し、安定するまでこうした金融緩和政策を続けると明言しました。

黒田日銀総裁は2年以内に2%の物価上昇を実現する、と豪語してきましたが、それは現実には不可能なので、その実現時期にはふれず

「安定するまで」とボカした表現をしました。

これは明らかに、従来の金融緩和政策が成果をもたらすことはなかった、失敗したことを日銀が認めたことになります。

唐鎌氏は、所得を増やす構造改革を行い、その方向からインフレが起きることが理想で、それは政府の役割であり、日銀が単独で物価押し
上げを図ろうとするのはおかしい、と指摘していますが、私も同感です。

BNPパリバ証券経済調査本部長チーフエコノミストの河野龍太郎氏も、今回の日銀の枠組み変更について、明快に「目くらまし」であると断
定しています。

日本銀行は長短期の金利水準を誘導して景気をコントロールすることを目標としました。(国債を年80兆円購入する)量的緩和策が実質的
に限界を迎えつつある中で、「量重視」から「金利重視」へ方針変更するという演出で、政策の限界を意識させないように見せるレトリック
(修辞技法)に徹したと捉えることができます。

平たく言うと河野氏は、「新しい枠組み」への変更に込められた日銀の真の狙いは「緩和策の限界隠し」ではないか、と言っているのです。

河野氏の結論は、少子高齢化が進む日本では、中長期的な高成長が見込みにくい環境です。この状況で、しゃにむにデフレ脱却のために
金融緩和をし、低金利政策を実施しても大きな経済成長にはつながらない事が明らかになってきた、というものです。

これこそが、冷静で客観的な正論です。

事実、日銀が10月3日に発表した9月の企業短観経済観測調査(短観)は、アベノミクスとともに上昇した流れは途切れたこと、多くの指標
が企業業績の停滞と下降を示しています。

これには、円高が大きな障害となっています。大企業が想定してきたドル=円レートは、前回の111円42銭から3円50銭修正して107円92
銭へと修正しましたが、現在は101円~103円と想定を上回ったレートになっており、企業業績をさらに圧迫し悪化させています。

安倍首相は「アベノミクスをさらにふかす」と言っていますが、経済同友会の小林喜光代表幹事は金融緩和に「これ以上深みに入るのだけは
やめてほしい」とくぎを刺しています(『東京新聞』2016年10月3日)。

安倍政権は日銀に見切りをつけ(つまりアベノミクスの限界を認めて)、成長戦略として「働き方改革」を打ち出しました。安倍首相、お得意の、
目くらましのキャッチフレーズです。

日銀の黒田総裁は、安倍政権の選挙宣伝用のキャッチフレーズ、アベノミクスの先兵として華々しく持ち上げられてきました。

そして、今や色あせた「アベノミクス」の金融政策を捨てた安倍政権は、さんざん利用した黒田総裁を「用済み」としてあっさり切り捨て、「働き
方改革」へと方向転換したのです。

それでも、また金融政策の有効性を説く黒田総裁に、まことに失礼ですが、哀れを禁じ得ません。この人には、一体、人間としてのプライドとか
自恃の念はあるのだろうか?

いずれにしても、「アベノミクス」の時代は終わったことだけは確かですが、その先が見て行きません。

安倍政権が新たに掲げた成長戦略の「働き方改革」は、かつての「地方創生」や、「一億総活躍社会」などの空疎なキャッチフレーズが何の成
果ももたらさなかったように、たんなる目先を変える目くらましに終わることは間違いありません。

(注1)デジタル版は、http://mainichi.jp/articles/20160922/ddm/005/070/029000c?fm=mnm
(注2)『日経ビジネス ONLINE』(2016年9月22日)http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/092100202/


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日本経済に暗雲(1)―黒田バズーカとアベノミクスの限界 2015年―

2016-10-16 22:07:57 | 経済
日本経済に暗雲(1)―黒田バズーカとアベノミクスの限界 2015年―

アベノミクスが始まった2012年から4年経った現在、日本経済は決して良くはなっていません。

アベノミクスは、今ではもう色あせて誰も口にしなくなりましたが、「三本の矢」からなり、実行されたのは「異次元の金融緩和」
(実際には日銀による国債の大量引き受けで、お金を市中に供給する)だけでした。

金融緩和により、円安を誘導し、輸出を増やし、物価を2%上昇させてデフレから脱出することが目標とされました。

当初こそ、円安のおかげで輸出企業の業績は改善し、株価も上昇するなど、一定の効果がありました。

しかしその後、2014年の消費税の増税(3%➡5%)をきっかけとして景気は減速に向かい始めました。

そして、2015年の経済について政府や日銀は「穏やかに回復している」「雇用・賃金の改善による好循環が進捗している」と言い
続けていますが、実態は、どうもそのようにはいっていません(注1)。

銀行などがさまざまな評価を行っています。たとえば、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの主任研究員のレポートによると、
2015年の日本経済は「足踏み状態」あるいは「踊り場」にある、というものです。

つまり、成長が止まっている、という評価です。GDPでみても前年比0.7%で政府の目標の1.2%には届きませんでした。

とりわけ、消費の伸びは低く、民間消費がずっとマイナスであったことが響いています(注2)。

まず、円安になった当初でさえも、実は輸出は増えていません。確かに円建ての輸出金額が増加して輸出企業の収益は良くなり
ましたが、輸出数量が増えていないのです。

円安になると、輸出企業は現地の販売価格を下げて輸出を増やそうとする、という目論見は外れてしました。

それでは個人消費はどうでしょうか。物価が上昇するというインフレ期待が広がれば、消費者は買い控えをしなくなるので消費が
増えるはずでしたが、実際には物価上昇による実質所得の減少が消費を減らしています。

さらに、物価が上昇して実質金利が低下すれば設備投資が増えるという期待も、空振りに終わりそうです。投資に見合うリターン
がなければ、実質金利がマイナスでも投資をしないというのが冷静な経営判断です(注3)。

のように見てくると、政府の目論見は、ことごとく外れてしまったといえます。それでは、エコノミストたちは、昨年の経済をどのよう
に見ていたのでしょうか。

昨年の暮れも押し詰まった12月の末、日本の三大シンクタンク(三菱UFJリサーチ&コンサルティング、みずほ総合研究所、野村
総研)の10人のエコノミストが座談会で2015年の日本経済を振り返り、2016年の展望を語っています(注3)。

座談会の内容を手掛かりに2015年の日本経済を振り返ってみよう。

全体としてみると、2015年は金融緩和により、一部の輸出企業の業績が回復し、日経平均株価も一時2万円を回復しました。

しかしその後、中国の景気減速、いわゆる「チャイナショック」や新興国の景気低迷の影響で日本経済も打撃を受け、株市場を直撃
し、株価も急落してしまいました。

日銀は12月18日の金融政策決定会合で金融緩和の「補完策」を導入すると発表しました。

「補完策」として、日銀は「上場投資信託(ETF)を年3000億円購入」という株高を誘いそうな方向を示唆したため、一時、市場参加者
が飛びつきました。(上場投資信託=特定の企業の株を買うのではなく、上場されている投資信託を、証券会社を通じて買うことがで
きる)

しかし、すぐに株安に転じ、結局日経平均は2%も下げてしまいました。

問題は、日銀がなぜ、「補完策」を打ち出したのか、と言う点です。

ある裏方を務める日銀マンは「(一部で指摘されていた)量的金融緩和(日銀が市中に供給する貨幣の量を増やすこと)の限界論を払
拭したかったから」と話していたそうです。

つまり、日銀は「異次元の緊急緩和」の限界を認識している、ということです。

年80兆円のペースで市場から国債を買い入れている現状からみて、今後、追加緩和をするとしても、そう何回もできないことは多くの
エコノミストたちが認めています。

金融緩和とはいっても、実態は、国債を引き受けているわけですから、国の借金がさらに増えることを意味します。

日本はすでに1000兆円を超す財政赤字を抱えており、、いつまでも実効のない金融緩和を続けるわけにはゆきません。

しかも、80兆円という金額は日本経済の現状からみて、途方もない大きさをもっているのです。

例えば、2015年度の一般会計予算は96兆3000億円ほどですから、80兆円と言えば、それに迫る規模であるあることが分かります。
また、日本のGDPが500兆円超ですから、日銀の買い取り額はその16%にも相当します。

これだけの規模の貨幣を市場に供給しても、消費も企業の設備投資も増えないのは、実質賃金が低下の一途をたどっていることを考えれ
ば、消費が伸びないのは当然です。

また、既に述べたように、企業にしてみれば、いかに金利が低いとはいえ、投資をしてもそれに見合う利益が見込めなければ、借金までし
て設備投資をしようとはすしないでしょう。。

「補完策」をアナウンスしたことは、日銀に、金融緩和に手詰まり感があることを、はからずも明らかにしてしまったといえます。

エコノミストたちの共通認識は、「とにかく金融緩和に対する期待感が消失することを日銀は最も恐れている」というものです。日銀の審議
委員を取材していても、出口論(いつ、このまま金融緩和を止めるのか)が話題に上ると「それはダメだ」と話題を変えられてしまそうです。

現在、見かけ上はなんとか足踏み状態で現状維持を保っていますが、エコノミストたちは2016年の日本経済の危険な“爆弾”について語っ
ています。

さて、座談会でエコノミストたちは、日本経済が抱える、もう一つの“爆弾”を指摘しています。

2015年末までは、政府・日銀の目論見どおり、円安が続きましたが、これが2016年には円高に転じるのではないか、という点です。

ある、エコノミストは「現在の円安局面は12年から始まっており、すでに3年が経過した。3年が長いか短いかという議論はあるが、いずれ
にしても循環論的な側面から考えれば、いったん円高トレンドに入ってもおかしくはないよ」と発言しています。

これは、2016年に実現してしまうのですが、それについては次回に考えるとして、最後に、エコノミストたちが危惧する深刻な事態について
触れておきましょう。

それは、こんな言葉で語られました。
    円高に振れると、金融機関にとっては大変なことになる。銀行も生命保険会社も為替変動のヘッジをかけないで外債を大量に保有
    しており、円高が進むと多額の為替差損が発生するリスクも想定される。
    日本の金融機関は、大量の外国債券を保有していますが、その債権は外国通貨建てになっているので、最終的に日本円に戻すと、
    買った時より円高になっていれば受取額はその分、減ってしまいます。つまり、為替差損がでてしまいます。

ちなみに、2015年11月のドル=円為替レートは、122.5円でしたが、今年2016年9月のレートは101円でした。この場合、1ドルにつき21円
強(17.6%)の為替差損が発生します。

たとえば、122.5億円相当で購入した外債は、日本円に戻すとき101億円に目減りしていることになります。

もし、この為替差損のリスクを軽減するための措置をとってあれば(ヘッジをかけておけば)―この方法はいくつかありますがここでは説明し

ません―、この為替差損の損害はそれだけ、少なくなります。

しかし、どうやら、日本の金融機関はヘッジをしてなかったようです。

これは、民間の金融機関に留まらず、年金基金など公的な部門にも大きな影響を与えます。

現在、日本の年金積立金の15%を外債に投資していますので、円高による為替差損は私たちの年金の原資にも大きく関わってきます。(こ
れは2016年に現実となりました)

もちろん、再び円安になる可能性もないわけではありませんが、それは当分の間見込めませんから、その間、日本の金融機関は、金融資産を、
何の利益を生まない方法で“塩漬け”しておくことになります。

(注1)http://www5.cao.go.jp/keizai3/2015/1228nk/pdf/n15_hajime.pdf 
(注2)http://www.murc.jp/thinktank/rc/column/kataoka_column/kataoka160105.pdf
    2016年10月12日閲覧)
(注3)『東洋経済ONLINE』(2015,11.17日)  http://toyokeizai.net/articles/-/92813 (2016年10月12日閲覧))
(注4)この座談会の内容は、『日経デジタル』(2015/12/31 5:30 )  http://www.nikkei.com/markets/features/26.aspx?g=DGXLASFL24HC8_25122015000000 に掲載されています。(2016年10月13日閲覧)


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資本主義の終焉?(2)-超低金利が示唆する日本の将来-

2016-03-12 06:08:12 | 経済
資本主義の終焉?(2)-超低金利が示唆する日本の将来-


前回の記事で、現代社会で、「電子・金融空間」、(コンピュータによる金融取引市場)が肥大化してしまったのは、「地理的・物理的空間」(実物投資空間)、
あるいは実体経済における利潤確保の可能性が消失したことを受け、それでも生き残ろうとする、資本の側による資本主義の「延命処置」であることを説
明しました。

安倍政権が、年金積立金までも株取引というギャンブルに投入しているのも、もはや日本の実体経済が限界に達し、停滞ないしは後退期に入っているこ
とを正直に物語っています。

今回は、世界的な超低金利という現象こそ、資本主義が終焉に向かっている端的な証である、という問題を、特に日本を念頭において考えます。

もし、資本主義経済が正常に機能し、実体経済が順調に循環ないし成長している時には、企業は銀行から資金を借りて新たな投資を行い事業を拡大し
ようとします。

こうして資金需要が高まるので金利は当然、高くなります。

しかし、ヨーロッパ諸国ではすでに超低金利時代に入っており、スイス、スウェーデン、デンマーク、奥州中央銀行(ECB)は昨年よりマイナス金利が導入
されています。

日本でも、安倍政権下は事実上のゼロ金利政策をとっており、2016年2月から日銀は、銀行が預けた当座預金にたいしてマイナス金利を適用しました。

また、国の信用と経済状態を反映する10年国債の年利率は、1974年には11.7%であったのに、現在はマイナス0.096%と、こちらもマイナス金利です。

一般の預金金利も、銀行に100万円を1年間預金しても、手にする利子はわずかに10円という超低金利です。

政府の狙いは、資金を事業への投資に向けさせること、社会の余剰資金を株式投資に振り向けさせることでしたが、両方ともうまくいっていません。

ではなぜ、日本やヨーロッパの先進諸国も含めて超低金利となっているのでしょうか?

理由は簡単です。資金需要がない(借り手がない)からです。

資金需要がないのは、借金をしてまで、機械設備を拡充したり、新たな事業を始めるために投資をしても、それに見合う利益が見込めないからです。

日本の事情をもう少し詳しくみてみると、輸出企業など一部の企業では、円安により大きな為替利益を得ましたが、その利益を内部留保という形で抱え
ており、資金はダブついているのです。

他方、経営難で資金不足にあえいでいる中小企業にたいして銀行はなかなかお金を貸しません。また、住宅については、少子化で新規住宅購入への
需要が減っているうえ、購入希望があっても、長期の実質賃金の低下のため、金利が低くなっても、簡単に借金して家を買うことはできません。

つまり、本当は資金需要があるのに、現実には借金できない企業や低所得者層も増加しています。

いずれにしても、資本主義経済において金利がゼロないしマイナスということは、すでに実体(実物)経済のおいて新たな投資機会が消滅したことを意味します。

こうして、資本は行き場を失い、「電子・金融空間」へなだれ込むことになるのです。

この状況は日本だけではなく、欧米諸国も同様であり、しかも一時的な現象ではなく、長期にわたって続いているのです。

水野氏は、世界の超低金利こそ、資本主義の終焉を端的に示す証拠であると、特に日本について次のように指摘しています。

    私は「日本は新しいシステムを生み出すポテンシャルという点で、世界のなかでもっとも優位にある」と言いました。その理由は、
    長らくゼロ金利が続いている日本は、おそらくもっとも早く資本主義の卒業資格を手にしている、と考えるからです。
    私自身は、デフレも超低金利も経済低迷の元凶だと考えていません。両者のどちらも資本主義が成熟を迎えた証拠ですから、
    「退治」すべきものではなく、新たな経済システムを構築するための与件として考えなければならないものです。
    (水野和夫 『資本主義の終焉と歴の危機』、2014年:130ページ)

水野氏は、利子率の低下とは、資本主義の卒業証書のようなものです、とも述べています(128ページ。以下、ページ数は上記水野氏の著作のもの)。

この観点からすると、日本も欧米の先進資本主義国も、資本主義はすでに成熟期に達し、「卒業資格」を手にしている、というものです。

アベノミクスは、一方で異次元の金融緩和によって円安を誘導してデフレからの脱却をねらい、政府主導の株投資で株式価を上げて見かけの好景気を
演出しようとしています。

他方、安倍政権の売り物であった実体経済の成長戦略については、掛け声だけで一向に具体的は姿が見えてきません。

慣れ親しんだシステムを転換することは大変なことです。したがって、「もうあなたは資本主義を卒業したよ」と言われても、他のシステムなど考えたこと
もない現政権と官僚は、ひたすら、「成長戦略、成長戦略」と夢よもう一度、と虚しく叫んでいるようです。

これを水野氏は、「卒業すべきなのに『卒業したくない』と駄々をこねている状態です」(128-29ページ)と表現しています。

資本主義というシステムは、すでに老朽化し、賞味期限が切れかかっていると言えます。

グローバル化の時代には、地球上の資本が国家を見捨て、高い利潤を求めて「電子・金融空間」を駆け巡ります。

この状況の中で、先進国だけでなく新興国の、グローバル・エリートと称される、ごく一部の特権階級だけが富を独占することになりまず。

数年前、アメリカのウォール街を取り囲んだデモ隊が、「99%」と書いたプラカードを掲げていました。つまり、1%の富裕層が豊かさを享受している一方、
99%の自分たちは貧しいまま、というメッセージです(注1)。

日本においても、年収200万円以下で働く人が、給与所得者の24%弱を占め(2012年)、二人以上の世帯で金融資産非保有者が31%(2013年)にも
達しています(131ページ)。

日本でも、富裕層と非富裕層の格差の拡大と二極化が確実に進んでいることが分かります。

すでに、このブログでも書いたように、一方で、貧困率は16%以上に達し、生活保護受給者と生活保護世帯は、1970年から2015年に倍増しています。(注2)

それでは、今後、日本としてはどのようなシステムを構想し、実現してゆくべきでしょうか?

この点に関して水野氏は、「その明確な解答を私は持ち合わせていません」と述べた後、
ただ、少なくとも新しい制度設計ができ上がるまで、私たちは「破滅」を回避しなければなりません。そのためには、当面、資本主義の「強欲」と「過剰」にブレ
ーキをかけることに専念する必要があります(133ページ)と、方向性を示しています。

一つだけ補足しておくと、「破滅」とはバブル崩壊のような経済的大混乱を指します。

これは一見、現状維持を目指すだけのように見えますが、先進国の状況を考えると、現状維持でさえ至難の業なのです。

もう少し具体的にみてゆくと、現在、国債と地方債とを合わせた「借金」はおよそ1200兆円、国民一人当たり1000万円です。これをどうして返してゆくか(財政
の健全化をどう確立するか)は、大変な問題です。

2016年度の国の予算案をみると、税収は57兆円しかないのに、予算案は96.7兆円となっており、その穴埋めのため34兆円は新規の国債(借金)で賄うことに
なっています。

これは決して、今年度だけの例外ではなく、ずっと続いている「常態」なのです。「現状維持でさえ至難の業」という意味が、これでよくわかります。

最後に、これからの日本の目指す方法について私見を書いておきます。

まず、政府は、あたかも、本当に成長が可能なような幻想を振りまくのではなく、現実を見据えたうえで、何が問題なのかを明らかにする必要があります。

次に、そもそも日本はどんな社会を目指すのかを政府だけでなく国民一人一人が考えるべきだと思います。

私個人としては、「奪い合う社会から 分かち合う社会へ」という方向を考えています。これについては、別の機会に書きたいと思います。

ただ、一つだけ言えることは、資本主義というのは、つまるところ、弱肉強食の原理で、奪い合うシステムですから、少なくとも資本主義、とりわけ「市場原理
主義」や「新自由主義」からの脱却という方向になることは確かです。

もう一つの大問題は、資本主義は経済だけでなく、民主主義などの政治や価値観にかかわるさまざまな西欧の近代主義とセットとなって発生したものです。

したがって、資本主義の次に来るべき社会は、西欧近代主義そのものを見直すことにもなります。

そこには、政治・経済・社会、そして文化や、特に哲学的な問題が含まれます。



(注1)本ブログ、2014年9月21日と26日の記事「21世紀の資本主義」(1)(2)。
(注2)本ブログ、2015年12月17日「日本人の貧困化」、および(注1)の記事。
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学生と共に、葛の蔓を切り、土を起こす春の農作業を開始しました。(3月2日)



サイクリング・ロード沿いの千本桜(河津桜)は満開でした(3月8日)






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資本主義経済の終焉?(1)―実態経済の衰退と金融への依存―

2016-03-05 06:23:19 | 経済
資本主義の終焉?(1)―実態経済の衰退と金融への依存―

最近の世界の動向、とりわけ経済動向をみていると、尋常でない動きがあちこちで起こっています。

たとえば、欧米や日本などの先進国が、競って金融緩和政策として大量の貨幣を市場に供給したり、超低金利(事実上ゼロないしはマイナス金利)しています。

自国通貨を安く誘導するのは、それによって輸出をし易くするためですが、今や、金融緩和と低金利が先進国の基本政策となっています。

これは、国際貿易も国内経済も収縮して、世界的な景気の停滞ないしは後退)を意味します。

安倍政権は、円安と株高を狙って、異次元の金融緩和と日銀の当座預金にマイナス金利を導入しています。

理屈から言えば、異次元の金融緩和は市場に大量のお金が流れるので、貨幣価値が減少し、円安とインフレ傾向(したがってデフレからの脱却)を生みだす
ものと期待されます。

そして低金利は企業の投資と国民の消費(特に住宅の購入)を刺激し、それらが景気の回復に導いてくれるはずでした。

しかし、ある国が金融緩和などの人為的に貨幣価値を下落させると、他の国も同じように自国通貨を安くしようとするので、この競争はあまり意味がなくなっ
てしまいます。

実際、政府と日銀の狙いとは反対に、現実は円高と株安の動きが止まりません。日経平均株価でみると、昨年末には2万円に届きそうなところまで来ました
が、以後、下落を続け、現在は1万6000円と1万7000円の間を低迷しています。

こうした背景には、国際貿易の収縮、特にこれまで世界の消費需要の大きな部分を占めていた中国経済の停滞、石油をはじめ資源や農産物などの一次産
品価格の下落などがあると指摘されてきました。

たとえば現在東南アジア最大のゴム生産国、タイでは、2011年には生産者が受け取るゴム樹液の価格が2011年には1キロ当たり180バーツでしたが、15年
には35バーツと5分の1に下落し、600万の農家は借金を抱えて深刻な状況に追い込まれている(注1)。

また、鉱物資源の価格も全般に下落しています。たとえば、鉄鉱石価格をみると、2011年を境に急落し、同年1月から2016年1月に4分の1以下に下落してい
ます(注2)。

先進国にとっては資源価格の下落は好都合のように見えますが、この状態は、巡り巡って先進国の輸出をも鈍らせています。

たとえば、資源の輸出に依存している開発途上国などの経済を直撃しており、それは次に、これらの国が先進国から工業製品を輸入する購買力を奪っています。

さらに、世界の金融市場に投資しているアラブの産油国などが、収入減のため自国の資金不足が発生し、資本を引上げています。

この悪循環は、どうして生まれたのでしょうか?そして、世界経済はどこに向かっているのでしょうか? そして、一体この動きは何を意味しているのでしょうか?

これらの疑問に答えるには、少し長期的な社会経済の変化を見る必要があります。

日本大学国際関係学部教授の水野和夫氏は、著書『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書、2014)において、現代世界では、資本主義が終焉に向かって
おり、それは全般的な景気後退、実体(実物)経済の衰退、そして超低金利に現れている、と主張しています。

低金利の問題は次回に考えるとして、今回は彼の議論を参照しつつ、世界的な景気後退と異常なほどの金融依存の問題について考えてみたいと思います。

まず、なぜ世界の景気が収縮しているのか考えてみましょう。

現代世界の経済は、おおむね資本主義経済であると言えます。資本主義経済は、利益の追求を目的とする私企業による生産と販売を中心とした制度です。

ここで重要な点は、資本主義経済において、資本は常に自己増殖を求めます。去年より今年、今年より来年という風に少しでも利潤が増加すること、言い換えると
「拡大再生産」を求めます。

これにたいして、毎年同じ水準を維持すれば「単純再生産」です。中世の農業を中心として経済は、ほぼ単純再生産が基本でした。

もし経済水準が年々縮小に向かえば「縮小再生産」の経済ということになり、それは資本主義経済の「死」を意味します。

農業であっても新しい耕作方法や農機具が発明や開発されると農業生産性は大きく増加し、拡大再生産が起こりますが、農業の場合、自然条件に大きく左右され
るので生産性も限界があります。

これにたいして、産業革命は画期的な機械の発明により、自然の制約を受けない工業生産に従来とは比較にならないほど大きな生産性をもたらしました。

資本主義が開花し、拡大再生産と大量生産の時代が到来したのです。

こうして大量生産された商品が過不足なく売れて、国内で購入され消費された時代、資本と企業は十分な利潤を得ることができました。

しかしその陰で、その繁栄を根底から覆す危険な種が蒔かれていたのです。それは、国内市場が飽和状態になってしまうと、大量生産された商品が売れなくなって
しまうことです。

帝国主義の時代には海外植民地という未開拓の空間(フロンティア)を拡大してきましたが、第二次大戦後はそのようなフロンティアを獲得することはできません。

そこで先進諸国の企業や資本家は、開発途上国という新たな投資空間を開拓し、20世紀後半から末までは、開発途上国を発展の軌道に乗せてNIEs(新興工業国)
を、21世紀にはBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)などの成長が著しい国々を生みだしました。

水野氏はこれを、経済の「中心」である先進資本主義国が、その他「周辺」(私の言葉では「フロンティア」)へ投資することで利潤を得る構造として捉えます。

この過程では、先進資本主義国の資本も実体(実物)経済―実際のモノとサービスの生産と販売―への投資で利潤を確保することができたし、同時に雇用者の報酬
も増えてゆきました。

ただし、BRICsでさえも、必ずしも順調とは行かず、近年では中国でみられるように生産設備の過剰や、資源価格の下落などで経済は縮小傾向にあります。

しかし、先進資本主義国内では、物作りをはじめとする実物経済はやせ細ってしまい、かといって、開発途上国の実物経済への投資も思うような利潤が得られなく
なってしまったのです。

このような状況で、利潤を求める資本は、二つの新たな「空間」を造り出しました。

一つは金融空間です。実体経済におおけるフロンティア、水野氏の言葉を使うと「地理的・物理的空間」(実物投資空間)に見切りをつけた先進国の資本家たちは、
「電子・金融空間」という新たな投資空間を作り出しました。

「電子・金融空間」とは貨幣(為替)、株、債券、種々の金融商品、資源や食料などの売買をインターネット上で行う、一種の仮想市場で、現金や債券、商品が動く
わけではありません。この中心がニューヨークのウォール街でありロンドンのシティです。

この取引は、金融工学という手法で予めコンピュータにプログラム化され、自動的に行われます。しかも、投資家は自ら保有する金額の50倍、60倍という額の取引
ができる仕組みになっています。

しかも、この空間では途方もない巨額の資本が、信用取引という形で、世界のインターネット上で24時間絶え間なく国境を越えて移動します。

こうなると、投資というより「マネー・ゲーム」「ギャンブル」といった方が適切かもしれません。こうした経済を「カジノ経済」と呼ぶことがあります。リーマン・ショックに
みられるように、ギャンブルには大きなリスクがあります。

ところで、いわゆるグローバリゼ―ションとはヒト、モノ、カネが国境を越えて移動するので、それぞれの国では資本家と雇用者とは直接の関係を失ってしまいます。

これによって、一方では金融取引で、実体経済では得られない巨大利益を得る、ごくごく一握りの資本家・投資家が出現しますが、他方で、犠牲になっているのが
雇用者です。

二つは、「周辺」の枠組みを変えることです。各国内部では新たな「周辺」を作ることです。水野氏によれば、それがアメリカで言えばサブプライム層(借金をしても
返済能力のない貧困層)であり、日本で言えば、非正規社員、EUで言えばギリシャ、キプロスです。

こうして考えると、日本の安倍政権がなぜ、一方で、労働の自由化(規制緩和)とうい名目で、低賃金の非正規雇用を促進しているかが良く分かります。

安倍政権が「異次元の金融緩和」を推進しているのは、もはや実体経済では成長を望めないことを告白しているのです。

グローバリゼーションの進行とともに起こっているのは、中間層の没落です。本ブログの2014年9月21日と26日の「21世紀の資本論」の記事でも説明したように、
日本は、労働賃金の長期下落、貧困層の増加傾向がはっきりしています。kろえがさらに、国内消費を減らし、景気の停滞をもたらしています。

世界経済が実態経済からますます離れ、金融に依存せざるを得なくなっている現状は、資本主義経済が機能していないこと、資本主義が終焉に向かっている状況
の中で、それでも生き残るために必死にもがいている一つの延命手段です。これは病の根治ではなく、延命処置にすぎないのでどこかで破綻せざるを得ません。

次回は、資本主義の終焉と、世界的な超低金利とがどのように関係しているのかを考えます。

(注1)http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK18H37_Z10C16A2000000/?n_cid=MELMG001,2
(注2)http://ecodb.net/pcp/imf_usd_piorecr.html





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2016年の課題と選択(2)―経済:安倍政権の目くらまし戦略―

2016-01-15 12:06:00 | 経済
2016年の課題と選択(2)―経済:安倍政権の目くらまし戦略―


2016年には経済の面でも幾つかの重要な課題と選択が待っています。これを考える前に、安倍内閣の戦略について、ジャーナリスト
の鈴木哲夫氏のコメントは参考になります。

鈴木氏によれば、安倍政権の特徴は政策的な上書き。一つの結果を見ないうちに次の政策を打ち出して目先を変える。

たとえば、「旧三本の矢」の検証も総括もしないまま、目先を変えるために「新三本の矢」を発表します。

14年時点では「地方創生号」という船でしたが、積み荷は全く変わっていないのに、今夏の参院選に向けて「1億総活躍社会号」と、船
の名前を変えました。

また、13年は社会保障給付を抑制していく方針でしたが15年に発表した「新三本の矢」では「介護離職ゼロ」を掲げ、介護施設整備を
打ち出したように、政策は矛盾しています(『毎日新聞』2016年1月4日、夕刊)。

あるテレビのコメンテータが述べていたように、安倍首相は、選挙の前には経済を強調し、選挙に勝つと、手のひらを返したように、持論
の政治課題(憲法改正や安保法制など)を強引に推し進めます。

実際、2013年1月「三本の矢」を発表した際にも、少しは生活が楽になるのではないか、という幻想を国民に与え、翌年の衆議院選挙で
圧勝したら、特定秘密保護法を強行し、2015年には集団的自衛権を含む安保法制を強行採決しました。

この時、国民の間に安倍政権に対する批判と危機感が持ち上がり、内閣支持率が下がりました。

すると、「新三本の矢」をぶち上げ、「経済、経済」と叫んでいますが、それは、今年夏の参議院選をにらんでの戦略で、本心は憲法改正
であることは見え透いています。

安倍政権がこうした戦略を採るのも、経済が良くなる印象を与えれば選挙で勝てると踏んでいるからです。

裏を返せば、多くの国民の生活は向上していないばかりか、物価上昇と実質賃金の低下により、むしろ苦しくなっていることを示しています。

以上を念頭に置いたうえで、「新三本の矢」で具体的にどんな選択をしようとしているのか、見てみましょう。

その前に、「旧三本の矢」の成果について見ておきましょう。

「旧三本の矢」は①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略、が三本柱でした。

「旧三本の矢」の結果に関して現在まで、円安と株価の上昇は達成され、輸出企業と大手企業は利益を伸ばしましたが、地方と中小企業
(そこで働く勤労者も)にはその恩恵は届いていません。

ところで、「旧三本の矢」の全体の目標は、物価上昇2パーセントによる「デフレからの脱却」でしたが、現状はマイナスか、若干のプラスで、
当初の目標から程遠い状態にあります。

とりわけ重要なのは、成長戦略ですが、設備投資も増えず、新しい成長分野は見出されていない現実です。

以上が「旧3本の矢」の顛末です。

昨年(2015年)10月、第二ステージの「新三本の矢」を発表しました。

これは、2020年までに名目GDP600兆円、介護離職ゼロ、出生率1.8の3本柱から成っています。これをもって、「1億総活躍社会」を
実現するとしています。

今年はこれらの目標を達成するために、具体的な政策と行動が求められます。


「新三本の矢」については、現段階では「的を置いただけ」で具体的にどのような政策を講ずるのか(矢をつがえるのか)は何も示されて
いません。

ここでは、課題だけを挙げておいて、詳しくは政府の具体案が出た段階で検討することにします。

次に、これから日本の経済に大きな影響を与える、TPPについて考えてみましょう。

安倍政権は昨年、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の合意に向けて積極的に行動し、2015年10月5日、アトランタ会議において
大筋合意というところまでこぎつけました。

現在、日本政府は、この「大筋合意」のごく簡単な「概要」しか発表していませんが、アメリカ、カナダ、ニュージーランドは全文を公表して
います(注2)

現段階では、この合意の完全な内容を知ることはできません。というのも、全ての合意内容が文章に書かれているとは限りません。秘密
条項が公にされていない可能性もあります。

事実、ウィキリークス(Wiki Leaks)の「秘密のTPP文書」は、当初からアメリカは別格で、他の11カ国にアメリカの立場を受け入れるよう強
大な圧力(“great pressure”)をかけていたことを暴露しています(注3)。

つまり、TPP 参加12カ国は対等だったのではなく、アメリカの圧倒的な圧力の下で交渉が行われたことを示唆しています。

この時、甘利氏を団長とする日本の交渉チームが、何を配慮してどのように行動していたかについて、ごく簡単な経緯は公表されていま
すが(注4)

しかし当然のことですが、これらの経緯をみても、アメリカが日本にどんな圧力をかけてきたのか、あるいは逆に、日本の方から進んで
アメリカの意向を忖度して行動していたのか、などは全く分かりません。

政府は2015年12月24日、TPPが発行した場合、日本が受けるであろうマイナスの影響を、平成2013年3月の試算(3兆円)の1割以下
に評価し、逆にそれによって得られるプラス効果(3.2兆円)の4倍以上にのぼると発表しました。

政府が局面や立場でこれほど大きく数字を変えてしまうのは、生産者と国民の不信を招くことになります(『東京新聞』2015年12月25日)。

「大筋合意」といっても、これから参加各国で国会での批准が必要ですし、これが本当に日本にとって利益になるかどうかを国会の場で具
体的に検討してほしいと思います。

この際、国民が選択をするためにも、政府は重要な問題を秘密にせず、公表すべきです。いずれにしても、今回のTPPは「日本の一人負
け」、「アメリカの一人勝ち」という構造は変わらないと思います。

これについては、別の機会に、英文の合意文書とウィキリークスの曝露文書を検討したうで、もう一度検討します。

次に、消費税の動向ですが、今回は景気状況に関係なく2017年の4月から10%に引き上げることが決まっています。

これに対して、公明党は軽減税率の同時適用、今回は、景気動向のいかんにかかわらず、決定することになっています。

ただし、自民党は公明党の希望を汲んで、食料品のうち加工食品までも軽減税率の対象とすることを受け入れました。

しかし、この消費税は大問題を抱えています。まず、消費税は貧しい人も富裕な人にも等しくかかるので、その負担は貧しい人に、より大き
な負担がかかる逆進税である、ということです。

しかも、軽減税率の導入によって、本来入るべき収入の減少分の1兆円の財源が決まっていないことです。

政府は、4000憶円は確保したと言いますが、それは本来、低所得者層の医療費の負担を軽くするために予定していた「総合合算制度」予算
を振り向けることなのです。

公明党は、軽減税率を自民党に呑ませたことを成果としてアピールしていますが、4000憶円は低所得者層向けの医療関連予算のはずです。
公明党はこれに矛盾を感じないのでしょうか?

自民党も、選挙で公明党の票が欲しいので、選挙対策として公明党の要求を呑んだのですが、国政がこのような党利党略で決められていいの
でしょうか?

これらと並んで、今回の軽減税率には、財務省の大きなワナが仕組まれています。

消費税は、食料品などの生活必需品については、イギリスのようにゼロにすることもできるのですが、今回の方針では、軽減税率を適用しても、
8%以下にはしないことを国民に受け入れさせたことです。

私たちは、言葉に惑わされず、あくまでも、本来あるべき政策の選択をするよう、政府を監視してゆく必要があります。



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アジアインフラ投資銀行(3)―イギリスはなぜアメリカの意向を無視したのか―

2015-05-01 04:32:32 | 経済
アジアインフラ投資銀行(3)―イギリスはなぜアメリカの意向を無視したのか―

中国が提案したアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立に参加することを英国が一方的に表明した際に明らかになりました。

この英国の決断に対して米国は、「英国が商業的利益を追い求めるあまり中国にこびへつらっていると」、いつになく厳しい
反応を示した(注1)。

歴史的にもてもイギリスとアメリカは,いわば兄弟国といってもいいほど,盟友中の盟友で,イギリスはこれまであらゆる面
でアメリカに歩調を合わせてきました。

かつて,アフガニスタン攻撃やイラク戦争時にもアメリカの行動に賛同し,当時のイギリスのブレア首相は「ブッシュのプー
ドル」,つまり,”何でもご主人(アメリカ)の言うことを聞くペット”とまで揶揄されました。

そのイギリスに対して,上に引用したような非難は常軌を逸した,失礼な表現です。それだけアメリカはイギリスに裏切られ
たことにショックを受け,周章狼狽していることを物語っています。

イギリスはなぜ,アメリカの意向を無視してAIIBに参加したのでしょうか?この問題を考える前に,今年1月に先進国で
最初に参加を決めて,ニュージーランドの説明を見てみましょう。

グローサー貿易相は17日、毎日新聞のインタビューに応じ、「中国の台頭から目を背けたり、押さえ込んだりしようとする
のは愚かな考えだ」「中国は世界2位の経済大国。良くも悪くも世界の構造は変化する」と語り、第二次世界大戦後の米国主
導の世界経済の枠組みが変更を迫られていることを指摘しました。
 
また、中国は外貨を豊富に保有しているとして「(AIIBへの参加がゼロでも)中国は単独で設立した可能性がある」
と指摘した後,中国を独走させるよりは「民主主義国の関与が望ましく、英国など欧州主要国も加わったことは喜ばしい」と、
世界銀行などとの補完関係を築くためにも設立段階から参加する意義を強調しました。

さらに、米国や日本が参加に慎重な姿勢を示していることについて、「米国に参加する意図がないことは知っている。
我々は独立国家であり、独自に判断した」と、日米などの意向に自国の判断が影響を受けることを否定しました。」

これこそが独立国の姿勢ではないでしょうか。

次にイギリスの立場については,イギリスを代表する経済紙『ファイナンシャルタイムズ』(2015年3月25日)において,
Martin Wolf氏が「アジアインフラ銀行不参加の愚」と題する署名記事で,イギリスがなぜアメリカの意向を無視して
AIIBに参加したのかを,論理的に説明し,アメリカの非難にたいして明快に反論しています。

以下に,その要点を整理して紹介します(注3)(以下の文章のうち“  ”は,新聞記事をほぼ要約したもので,
私自身のコメントや補足は,“  ”がついていない。

“英国は中国版世界銀行の一部になるとも指摘されるAIIBの創設メンバーになることを選び、米国をいら立たせた。
英国が不適切な決断を下したことにはならない,むしろ賢明な決断だ。”

“AIIBは貴重な貸し手になる可能性を秘める。アジアの発展途上国は、このようなインフラ投資を切に必要としている。
リスクがあって期間も長いプロジェクトとなれば、そこに投じられる民間の資金は存在しないか金利が高いかのどちらか
である場合が多い。

世界銀行とアジア開発銀行の資源は、途上国のそうしたニーズに比べればかなり不足している。“中国がどれほど強い発
言力を持つとしても
・・・AIIBはグローバルな運営スタッフを抱えることになり、その結果、中国が資金を全額拠出する場合よりも政治
色の薄い金融機関になるだろう。”

つまり,日米は中国の運営能力に疑問を呈しているが,多数の国が参加しており,中国の独走とはならないと言っている
のです。

さらに,米国も中に入って運営に関わるべきであるし,国内に反対意見があることをもって,「それは、他国の参加を
反対する根拠にはならない」と述べています。

“米国は,欧米諸国は外側にいることでもっと大きな影響力を行使できるというが,外部の資金を必要としない金融機関
に外部の者が影響力を及ぼすことはない。影響力を行使したいなら、内側に入り込むしかない。”

“米国のジャック・ルー財務長官は、AIIBは組織の統治や融資に関する「最も厳しい国際標準」に従わないのでは
ないかという米国の懸念を表明している。”

これは日本政府も全く同じことを言っていますが,ウォルフ氏は以下のように反論しています。

“かつて世界銀行のスタッフだった筆者としては、苦笑せざるを得ない。世銀が関与したぞっとする事例は少なくないが、
例えばザイール(現コンゴ)のモブツ・セセ・セコ(元大統領。30年以上にわたり独裁を維持。「国家の私物化」
により富を蓄えた)への資金提供で世銀がどんな役割を果たしたか、一度調べてみることをルー長官にはお勧めしたい。”

ウォルフ氏は,かつて自ら世界銀行で働き,その間にいかに“汚れた”融資をしてきたかを暴露しているのです。

日米の「もっとも厳しい国際標準」には根拠がないと断言しています。

そして,中国の影響力を懸念するアメリカに対して以下のように反論します。

“米国は、既存の機関との競争が始まることに確かな根拠を掲げて反対することもできない。確かに、貸し付け基準の
切り下げ競争になるリスクはある。しかし、面倒な上に不必要な手続きが一掃される可能性もある。”

“米国の本音は、世界経済に対する米国の影響力を弱める機関を中国が立ち上げるのではないかという懸念だ。

この懸念に4つの答えを提示しよう。”

“第1に、米国、欧州諸国、そして日本は、(世界銀行,IMF,アジア開発銀行など)グローバルな金融機関に対す
る一定の影響力を大事にしているが、これらの国は国際機関の運営において、やるべきことをきちんとやってこなかっ
た。

特に、リーダーを指名する権利にこだわってきたが、そうしたリーダーが常に素晴らしい実績を上げてきたとはとても
いえない。”

“第2に、国際通貨基金(IMF)で一部の国々が過大な影響力を持っている状態を緩和するために出資割り当ての
仕組みを改革することについて、20カ国・地域(G20)が合意してから5年になる。世界はまだ、米連邦議会がこの
改革を批准するのを待っている。これは責任の放棄である。”

第3に、途上国に長期資金が大量に流入すれば、世界経済は恩恵を享受するだろう。また、資本流入の「急停止」に
見舞われた国々にIMFよりも大きな保険を提供する機関ができることも、世界経済の利益になるだろう”。

というのも“世界の外貨準備高は、21世紀に入った時には約2兆ドルだったが、今日では12兆ドル近くに達している。

これに対しIMFが利用できる資源は1兆ドルに満たない。規模が小さすぎることは明らかだ。中国の資金は、
世界を正しい方向に向かわせる可能性を秘めている。実際にそうなれば、これは素晴らしいことだ。”

“最後に(第4に)、米国は台頭する超大国たる中国への「絶え間ない配慮(constant accommodation)」について
英国を批判している。

だが、配慮に代わるものは対立だ。中国の経済発展は有益であり、不可避だ。そのため、必要なのは賢明な配慮だ。”

ここは少し分かりにくい文章ですが,要するにイギリスは,中国の意向に沿って考えすぎる(配慮しすぎる),
とアメリカは批判するが,

“中国が中国自身と世界にとって理にかなうことを提案する場合、はたからケチをつけるよりも関与する方が賢明だ。”

今まさに中国はAIIB設立で,理にかなう提案をしているのだ。

以上を述べた後,米英関係についてはアメリカにたいして次のような辛辣な反論をしています。

“だから、英国と他の欧州同盟国のアプローチは称賛されるべきだ。さらにいえば、AIIBに参加するという英国
の決断は、米国にとって有益なショックになる可能性さえある。

確かに、英国と米国など、似たような利益と価値観を持つ国々が一体となって発言、行動できたら望ましい。

また、確かに、英国は最も重要な国際的パートナーのそれと異なる方針を採用することでリスクを取っている。
だが、支持というものは奴隷的になってはならない。それが誰の利益にもならないことは分かっている。”

“第2次世界大戦後の数年間、ふと冷静さを取り戻したときに、米国は現代世界の制度機構を築いた。だが、
世界は先へ進んだ。”

“世界は新しい機関を必要としている。新たな大国の台頭に適応しなければならない。単に米国がもう関与でき
ないからといって、世界は歩みをとめない。

もし米国がその結果を気に入らないのだとすれば、自身を責めるしかない。”

マーチン ウォルフ (翻訳協力 J.Bpress)
ニュージーランド財務相が,「我々は独立国家であり、独自に判断した。日米などの意向に自国の判断が影響を
受けることを否定しました」という発言と言い,ウォルフ氏が“支持というものは奴隷的になってはならない。

それが誰の利益にもならないことは分かっている。”というとき,ニュージーランドもイギリスも,もうアメ
リカの意向に盲目的に従う,奴隷的になってはいけないし,それは誰の利益にもならないことは明らかだと言っ
ているのです。

さて,日本のアメリカ支持は,“奴隷的”になってはないだろうか?ここはじっくり,“独立国”として独自
としての判断をすべきではないでしょうか。


(注1)『日本経済新聞 電子版』(2015年3月27日)
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO84933770X20C15A3000000/
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO84933770X20C15A3000000/=2
(注2)『毎日新聞』(2015年4月19日)
http://mainichi.jp/select/news/20150419k0000m030042000c.html

(注3)『日本経済新聞 電子版』(2015年3月26日)
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO84833360V20C15A3000000/
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO84833360V20C15A3000000/?df=2
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO84833360V20C15A3000000/?df=3&dg=1

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アジアインフラ投資銀行(2)―検証:日本はなぜ事態を見誤ったのか―

2015-04-25 05:57:55 | 経済
アジアインフラ投資銀行(2)―検証:日本政府はなぜ事態を見誤ったのか

お詫び
これまで,私のパソコンのモニターのサイズに合わせて改行していたのですが,他のノートやラップトップパソコンで見ると,
改行が不自然で,とても見にくかったことに,気が付きました。これからは,そのようなことがないように気を付けます。
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------


前回書いたように,中国はAIIBの創設メンバーになるためには,2015年3月末日までに加盟を正式に申し込むことを
発表していました。

昨年の春,中国は日本に有利な参加条件を打診してきたとき「アジアのインフラ需要に応えたい」と理解を求めました。

日本は「アジア開発銀行とどこが違うのか」と突き放しました。

そして官邸には「『主要7カ国(G7)からの参加は絶対にない』との報告が上がってきた」(政府高官)という。

参加に慎重な米国との関係などを考え「日本が参加しない前提で情報を分析していた」との反省が官邸にはある。

「失敗だった」。

首相周辺がそれに気づいたとき、主導権はすでに中国に移っていたのです(『日本経済新聞』2015年4月15日)。

つまり,日本がAIIB問題で判断を誤り,後手後手に回ることになった,最初の原因は,アメリカが不参加を決めて
いたので,日本も「参加しない前提で情報を分析していた」ことにあったのです。

この前提で情報分析をすると,事態を楽観的,日本に都合がいい方向で分析・解釈してしまうのです。

しかも,昨年10月にインドや東南アジア諸国21か国が設立の覚書に署名した時も,「主要国(G7)は入らない」と高
をくくっていました。

ところが,今年の1月後半,雲行きが少し怪しくなってきました。

G7の事務レべル協議でイギリスの財務省の担当が,AIIBについて「国によってそれぞれの対応があり得る」と発言し,
そして2月後半には「政治的に参加を検討せざるを得ない」と明言しました。

ここまでくると,常識的にはイギリスは加盟に踏み切ると考えるのが普通です。

しかし,日本政府はまだ,楽観論から抜け出せませんでした。というのも,中国の独走を防ぐために,参加国代表による
理事会に大きな発言権々を与えるなどの要求をG7でまとめ,「条件を満たさねば不参加。満たせば後は各国次第」との
妥協案でイギリスを説得してあったからです。

そこで,外務省は,「イギリスの参加する確たる証拠はない」と安倍首相に進言していたのです。

しかし,5月に下院選挙で中国との経済関係強化をアピールしたいキャメロン政権の意向を変えることはできませんでした
(『毎日新聞』2015年4月16日)。

3・12の衝撃
そして,ついに3月12日,政府に激震が走りました。この日,中国財務省が,イギリスの加盟を公式に発表したのです。
日本政府がイギリスから連絡を受けたのはその直前でした。

ある官邸幹部は「えっと思った。あれでG7の共同歩調が乱れた」と,正直に振り返っています。
正午過ぎ,慌ただしく駆けつけた財務,外務省の幹部は,安倍首相に「これはアプローチだけの違いです」と説明しま
した(注1)。

財務,外務両省は間違った情報と先入観から,イギリスの加盟を予想していなかったことが分かります。そこで,官僚
らしく,イギリスが参加したのは,5月の総選挙を控えて経済的メリットを打ち出したいイギリス政府の特殊事情だか
ら,と説明したのです。

日本政府内に「G7の一角が崩れた。追随する国がでる」との懸念が広がりました(『毎日新聞』2015年4月16日)。

外交問題に精通したある与党議員は「日本の財務省は,先進七か国(G7)の参加は絶対ないと言っていた。
一体どうなっているのかと思った」と政府内の誤算をそう振り返っています(『東京新聞』2015年4月4日)。

日本政府は欧州勢が相次いで参加するきっかけとなった3月12日の英国の参加表明を正確につかめていなかったのです。

イギリスの場合は例外とみなすことでショックをいくらか弱めることができたとしても,日本政府は,これによって,
ヨーロッパ諸国が雪崩をうって参加に踏み切るのではないか,との不安はぬぐえませんでした。

その不安はやがて現実のものとなります。

3月9日、来日したドイツ首相のメルケル首相は首脳会談で「参加条件を厳格に設定することが大切」(『毎日新聞』
2015年4月16日),「AIIBは一緒に条件をきちんと見てゆきましょう」。このとき,メルケル首相は参加の意向
は示しませんでした(注2)。

しかし,16日,ドイツから日本の外務省,「参加の方向で議論している」「(英国などとともに)内側から改善を求
める」との連絡が入りました。

そして,翌17日に独財務相のショイブレ氏は突如,参加を表明しました。昨年夏,議長国のドイツを中心に,
「中国の誘いに安易に乗らない」方針で一致していたにも関わらず,である。

一報を聞いた安倍首相は不快感を隠しませんでした。「ちゃんと情報を挙げてくれ」。首相周辺からは財務,
外務両省への不満の声があがりましたが,事実上事後報告で,説得の間もありませんでした。

EUのリーダーであるドイツの参加,「ドイツ・ショック」を機に,ヨーロッパ諸国は雪崩を打って参加に踏み切り
ました。

政府の甘い見通しによる楽観的な想定は、音を立てて崩れていったのです。

こうして,4月15日までに,57か国の加盟が中国当局から発表されました。これにたいして,菅官房長官は記者
会見で「情報収集は全部している。(規模は)想定の範囲だ」と,平静を装いました(『毎日新聞』2015年4月
16日)。

しかし,これまで見たように日本政府の目はアメリカだけに向けられ,世界の動きについて重要な情報を得ることが
できなかったのです。

今回の参加問題でイギリスやドイツが示したように,欧米世界では,自国の利益のためには他を裏切るような行動を
平気で取ることに注意する必要があります。

ところで,日本の政府内部には,二つの大きな不安があります。一つは,今のままの状態が続くと,
日米共に世界の趨勢に遅れ,孤立してしまうのではないか,という不安です。

二つは,政府にとってさらに恐ろしい悪夢で,アメリカが日本を飛び越して突然,独自に突然,
投資銀行に加盟してしまうのではないかという疑心暗鬼です。

1972年,当時のアメリカ大統領が,日本との事前の協議なしに電撃的に中国を訪問した,
いわゆる「ニクソンショック」という苦い過去が甦ります。

今回も,民間シンクタンク「新外交イニシアティブ」事務局長の猿田佐世弁護士は,
  米国は日本と違って,自国の利益を合理的に考える国。決断も速い。
  AIIBの参加をめぐっても,米国は経済的にも軍事的にも中国とは共存すべきだと考えている。
  日本に断りもなくAIIBに参加する可能性もないとはいえない。
  第一,米国内では今回の不参加を外交上の失敗と見る向きが多い。
と述べています(『毎日新聞』2015年4月1日)。

猿田氏が指摘するように,アメリカは自国にとって有利であると判断すれば,日本に義理立てすることなく,
投資銀行に加盟するでしょう。

実際,マスメディアではあまり注目していませんが,3月30日にルー米財務長官は中国を訪れ,
李克強首相,楼継偉財政相と北京の人民大会堂で会談しています。

その席上,ルー財務長官は,「AIIBとの協力に期待し、中国がアジア地域のインフラ建設の分野で,
さらに役割を発揮することを歓迎する」と述べると同時に,「AIIBが高い水準のガバナンスを持つよう希望し
ている」と透明性の高い意思決定など運用面での注文をつけました。

ここで,AIIBのあり方について「意見交換していきたい」とも伝えました。

「意見交換」といい,「注文を付けたこと」といい,これらはアメリカに加盟への意志があることを示唆しています。

北京の米国大使館によると、ルー氏は「グローバルな経済秩序の中で、中国が果たす役割は重要になってきている」
と指摘し,中国がアジア開発銀行(ADB)など既存の国際機関と連携し、経済大国としての責任を負うよう提言
しました(『日本経済新聞』2015年3月31日)

この時期に,米財務長官がわざわざ中国を訪問して関係者と会談した事実をみても,アメリカが日本に断りもなく,
電撃的に投資銀行に加盟する可能性は十分考えられます。

安倍首相は参加することになった場合を想定して,検討を指示しています。その場合は,日本もあわてて,
加盟に踏み切るでしょう。

その時「融資や審査の透明性が確保されていない」という理由を唱えてきた日本は,どんな理屈で加盟することに
なるのでしょうか。

手のひらを返したように,突然“透明性が確保されたから”とでもいうのでしょうか? あるいはもっとストレー
トに,“アメリカのお許しが出たから”,とでもいうのでしょうか?

アメリカとは異なり,日本はアジアの一員です。したがってAIIBの問題は,日本の将来にとって,
経済的にも政治的にも非常に大きな意味をもっています。

日本はアジアにおいても世界においても孤立を避けるよう努力すべきです。

(注1)『朝日新聞 デジタル版』(2015年4月12日)    http://digital.asahi.com/articles/DA3S11700645.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11700645
(注2)『朝日新聞 デジタル版』(2015年4月12日)
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11700740.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11700740



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