大木昌の雑記帳

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ジャニーズ事務所の闇(3)―共犯者としてのマスメディアー

2023-09-27 08:39:59 | 社会
ジャニーズ事務所の闇(3)
―共犯者としてのマスメディアー

今日問題となっている“ジャニーズ問題”は少なくとも3つの側面があります。一つは、
ジャニー氏自身による、前代未聞の性犯罪です。二つは、それを隠し続けてきたジャ
ニーズ事務所の隠ぺい構造です。

三つは、当初からジャニー氏の性犯罪を知りながら、意図的に目をつぶってきたマス
メディア(テレビ、新聞、週刊文春を除く雑誌)、そして、ジャニーズ事務所に忖度
して批判者を抑えこもうとする人たち(後に紹介します)です。

上の三つのうち、一つ目のジャニー氏の性犯罪についてはすでの2回にわたって説明
しているので、ここでは二つ目と三つ目について書きます。ただし、二つ目と三つ目
は密接に関連しているので、両者をまとめて検証します。

まずは隠ぺいですが、ジャニー氏自身は、自らの性的虐待については裁判でも否定し
ましたが、判決では性的虐待が認定された)。それでも事務所としては、現在まであ
くまでもジャニー氏の性犯罪については「知らなかった」と否定し続けてきました。
たとえば、前副社長の藤島ジュリー景子氏は、会見でジャニー氏の性犯罪を知ってい
たどうか聞かれて「知らなかったでは済まないかもしれませんが知りませんでした」
と答えています。

これに対してジャニーズ出身の近藤真彦氏は、9月20、21日に大分県日田市で開
催されたカーレースをPRするために県庁を表敬訪問した際、報道陣の取材に応じま
した。

近藤氏は、藤島ジュリー氏が謝罪動画などで性加害については「知らなかった」と説
明したことを受けて、「知ってた、知らないかではなく、知っているでしょ」とし、
「噓はなしに正々堂々と話をしてもらえれば」などと発言したのです(注1)。

近藤氏はジャニーズ事務所の“長男坊”と言われ初期のころから藤島メリー氏に可愛が
られ、藤島ジュリー氏とも近い関係にあったことが知られており、彼の発言はかなり
信ぴょう性があります。

藤島氏は1991年にジャニーズ事務所に就職しており、それ以来今日まで「知らなかっ
た」という言葉を信じる人はメディアを含め、ほとんどいないでしょう。

ところが、藤島氏の「知らなかった」発言に対して、どのマスメディアも疑問を発す
ることすらせず、スルーしています。

それもそのはず、ジャニーズ事務所はジャニー氏の少年に対する性犯罪を、BBCの
放送で暴露されるまで隠ぺいし続けてきたので、いまさら「実は知っていました」と
は言えないでしょう。

この隠ぺいを許してきた責任の一端は(結果的に「守ってきた」)、最も影響力が大
きい東京をキー局とするテレビ局とメジャーな新聞・雑誌(『週刊文春』を除く)な
どのマスメディアが一貫して見て見ぬふりをしてきたことでした。

まず、テレビ界とジャニーズ事務所との関係を見てみましょう。これに関しては、ノ
ンフィクションライターの窪田順生氏が的確に解説しています。少し長文になります
が下に引用します。
    フォーリーブスのメンバーだった故・北公次さんの告発や週刊文春の性加害
    報道があった時(1999年ころ―筆者注)、心あるテレビ局社員が、「未成年
    者への性加害という問題があるのでジャニーズとの付き合いを見直すべきだ」
    なんて騒いだらどうなるか。
    「お前はバカか」とすぐに閑職に飛ばされるだろう。当たり前だ。光GENJI
    や SMAP、KinKi Kidsなどのドル箱スターで番組をつくっている同僚たちの
    仕事を奪うことになるからだ。また、それはこれまでジャニーズ事務所と良
    好な関係を築いて、数々の人気番組を世に送り出してきた先人たちの顔に泥
    を塗ることでもある。しかも、もしそのような批判がジャニーズ事務者側の
    耳に入って機嫌を損ねてしまって、人気アイドルをブッキングしてくれなく
    なったら、局全体にとっても損失だ。

これはあくまでも窪田氏が長年の取材を通して知りえた事情を文章にしたもので、事
実そのものではありません。しかし、内容はテレビ界のジャニーズ事務所に対する忖
度、あるいは両者の関係についての一般論としても非常に説得力があります。

窪田氏によれば日本のテレビ制作の現場は個人の能力で勝負する「プロのテレビマン」
より、周囲と仲良くやって定年退職まで平穏無事に過ごしたいテレビ局社員を筆頭に、
「社畜のテレビマン」がはるかに多くいるとのことです。

組織に忠誠を誓う人が多いということは、トラブルや不正を見つけても組織内の立場や、
平和な日常を守るという「保身」から隠ぺい・黙認に流れがちな人も多いということを
意味します(注2)。

他方、ジャニーズ事務所側は影響力を背景にテレビ界に圧力をかけてきました。一つだ
け例を挙げましょう。

「『Mステ』(ミュージック・ステーション 『テレビ朝日』)には多くのジャニーズ
グループが出演する一方、ジャニーズ以外の人気男性アイドルグループはほとんど登場
しません。そんな中、ジャーナリスト・松谷創一郎氏が5月30日に更新した『Yahoo!
ニュース』コラムが話題になりました。

このコラムでは『Mステ』を立ち上げたテレビ朝日プロデューサー・皇達也氏が、過去
に『週刊新潮』のインタビューに答えた記事を引用してジャニーズについて解説してい
ます。

それによると皇プロデューサーは過去、ジャニーズ以外の男性アイドルを番組に出演さ
せたいと、ジャニー氏に直接相談したことがあったそう。しかしジャニー氏は、『出し
たらいいじゃない』と容認するも、『ただ、うちのタレントと被るから、うちは出さな
い方がいいね』と、やんわりと、しかし相手に有無を言わせない圧力にも思える提案を
してきたのだとか。これがジャニーズ流の脅しのやり口です。

松谷氏は、ジャニーズが現在も圧力を加えている可能性は低いとしつつも、JO1、INI、
BE:FIRST、Da-iCEなどの人気男性グループが出演できていない状況のため、テレ朝側
は今でも忖度を続けている可能性があると指摘しています。

ネットでは、ジャニーズ以外の男性グループファンから「実績のある男性グループが出
られないのはおかしい」と「Mステ」への出演を求める声が相次いでいます。今後、ジ
ャニーズの席は減らされていくかもしれません(注3)。

この問題に関して9月7日の会見で記者が、「過去にはジャニーズと競合関係にあった
DA PUMP、w-inds.らが圧力や忖度によって『Mステ』に出演できず、現在もBE:FIRST、
Da-iCE、JO1、INIらが出演できていない」などと指摘し、新社長に就任した東山紀之に
「こうした忖度はまだ続いたほうがいいと考えますか?」と問いかけました。

これに対し、東山新社長は「必要ないと思います。忖度とかそういうのは関係なく、公
平に行くべきだなと思っています」と明言しました。

この記者の質問も少々ピントはずれで、忖度が続いた方がいいと答えるはずもありませ
ん。ただ、『テレビ朝日』で非ジャニーズ・グループの『Mステ』への出場が少しずつ
検討されているようです(注4)。

ジャニーズ事務所への忖度は、関係者による間接的な形でも現れます。たとえば、今年
7月、山下達郎氏が主催する音楽プロダクションのスマイルカンパニーが松尾潔氏との
業務契約を6月30日をもって双方の合意により終了した、と発表しました。スマイル
カンパニーの山下氏はジャニーズ事務所と親密な関係がありました。

一方松尾氏は、著名な音楽プロデューサーで作曲家でもあり、ジャニーズへ多くの楽曲
を提供しています。

松尾氏はSNSで
    15年間在籍したスマイルカンパニーとのマネージメント契約が中途で終了にな
    りました。私がメディアでジャニーズ事務所と藤島ジュリー景子社長に言及し
    たのが理由です。私をスマイルに誘ってくださった山下達郎さんも会社方針に
    賛成とのこと、残念です。今までのサポートに感謝します。バイバイ!」
と、シンガー・ソングライター山下達郎の名を挙げて投稿していました(注5)。

これは、山下氏がジャニーズ事務所への忖度から松尾氏との長年の契約を突然解除した
例です。私は山下さんのファンでもあるので、この経緯にはがっかりしました。

ジャニーズ事務所は多くの芸能プロダクションやマスメディアと関係をもっていますが、
松尾氏の例にみられるように、それらもジャニーズを批判する者を排除するという間接
的な方法でジャニーズ擁護に働いています。みんな自分の利益のために動くのです。

今回の問題は、週刊誌などの雑誌が大々的に取り上げる問題ですが、ここでもジャニー
ズ事務所の圧力が、ほとんどの雑誌を黙らせてしまいました。

ジャーナリストの元木 昌彦氏が『週刊現代』時代にジャニー喜多川氏の性癖について初
めて取り上げた「『たのきんトリオ』で大当たり 喜多川姉弟の異能」という記事(19
81年4月30日号)に対して、ジャニーズ事務所から「講談社の雑誌にはうちのタレント
を出さない」と通告され、会社側は事務所側に屈服して、私は『婦人倶楽部』編集部に
突然異動させられてしまいました」(注6)。

ところで、在京テレビキー局は、広告などを除いて、ドラマそのたの出演に関して、“タ
レントには罪はないから”との理由で、これかもどんどん使ってゆくと言っています。こ
の問題については、稿を改めて検討したいと思います。

ジャニーズ問題は、ジャニーズによる芸能界への影響力行使、問題の隠ぺい、マスメデ
ィアへの圧力や脅しに対して、テレビ・新聞・雑誌の側による忖度と無視、脅しへの屈服
という、実になさけない状態にあります。これこそがジャニーズ事務所の「闇」なのです。

そして芸能関係の会社や個人も、結局は自分たちの利益のためにジャニーズ事務所への忖
度を強め、それが前代未聞の少年に対する性犯罪を生んできた要因の一つなのです。

そこには、ジャニー氏の性犯罪が人権侵害である、という意識が決定的に欠けており、そ
れが日本の芸能界とマスメディアの質の低さを表しています。


(注1)『ZAKZAK by 夕刊フジ』(デジタル 2023.5/27 10:00 https://www.zakzak.co.jp/article/20230527-THIABTRQR5OFNLZ5WBMXS6WRFE/
(注2)DIAMOND Online(2023.9.14 5:30)
    https://diamond.jp/articles/-/329119?utm_source=daily_dol&utm_medium=email&utm_campaign=20230914
(注3)GREE (no date) https://jp.news.gree.net/news/entry/4704332
(注4)『日刊サイゾー』(電子版(2023/09/11 20:00)
    https://www.cyzo.com/2023/09/post_355768_entry.html
(注5) 『スポニチ』(電子版 2023年9月8日 10:33)
  https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2023/09/08/kiji/20230908s00041000240000c.html
(注6)PRESIDENT Online  2023/03/17 20:00
    https://president.jp/articles/-/67557?page=1
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夏が終わりお彼岸が近づくころ、早朝んの雲もだいぶ高くなり、日の出直前の雲は一瞬の光芒を放つ。     田んぼの土手にはヒガンバナが植えられていた。田んぼの土手にネズミが巣穴を掘らないように、   
                                                   根、茎、花に毒があるヒガンバナを植える慣習があった。千葉県佐倉にて筆者撮影。
    

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