お昼休みに本を読んでいたら、Iさんがやってきました。
「あー ふじた先生、また短歌の本読んでいらっしゃるんですね」 と、わざという。
「そうそう、教えてあげようと思ってたんだけど、市バス通勤フリー定期って知ってる?」 私は鞄からきのうもらったばかりのシティリビングを取り出しました。
「それ、どういうのです?」
「ひと月、9240円で市内中心部の市バスが乗り放題やねん」
「へぇ」
そこへ、総務のNさんがフランスパンをかじりながらやってきました。
私 「飲み物なしでフランスパン・・・ おいしいの?」
Nさん 「たまに堅いものが食べたくなるんですよ。 嫁さんはいつもやわらかいものしか買わないんで。 林檎まるかじりとか、フランスパンとか、無性に食べたくなるんです」
私 「へぇ、うさぎみたいね」
Iさん「うさぎって・・・」
私 「ところで、市バス通勤フリー定期って知ってる?」
Nさん「ああ、知ってますよ、僕買ってます」
私 「私も使ってるんだけど、あれって、家族にも貸していいって知ってた?」
Nさん「ええっ そうなんですか?!」
私 「そうなんやって、シティリビングに書いてあってびっくりした。 私、しょっちゅう息子に貸してたんやけど、なんか後ろめたい感じで貸してた」
Iさん「貸してますやん、すでに」
私 「占いのところ、読んであげるわ。 Iさん、牡羊座・・・後半に向けて出会い運アップ やって」
Iさん「そんな、もういいことなんて特になくていいですわ」
私 「なんで?」
Iさん「僕、ずっと悪いことしかなかったんですよ、だからなんにもいいことなくても、ずっと普通やったらそれでいいんです」
私 「だいたい人生はチャラになるっていうから、いままで悪いことばっかりだったらこれからはいいことばっかりなんと違う?」
Iさん「いいこと・・・ それやったら若いころにいいことがあったほうがよかったです」
私 「だけど、もうそれは過ぎたことやからあったほうがよかったって思ってもね・・・」
Nさん「それ、わかりますわ。 いいことは若いときにあったほうがよかったですよねぇ」
そして、Nさんがぽつり。
「だけど、誰だって、そんなにいいことないですよ」
そうだよねぇ。
私 「うお座。アットホームな空間に恋愛のチャンスあり。リラックスして自然体になれそう。やって。 私これ以上リラックスしたらどうなるんやろう。 アットホームな空間ってどこかなぁ」
Iさん「家でしょ」
Nさん「そのままじゃないですか!」
それから、Nさんがきのうふらりと立ち寄った飲み屋さんのお魚の話と、そのあとに立ち寄ったお茶漬けやさんの話をききました。 じゅうぶん楽しそうじゃないの。 Iさんもそういうささやかなことで楽しめたらいいのにな。
家に帰ったら、このあいだとは別のプランターのチューリップが咲きかけていました。 それだけで嬉しい私はやっぱり単純すぎるのかな。