ほよほよさんぽみちNEW

いつでも君のこと好きだったよ

永田紅第五歌集『いま二センチ』

2023-03-29 23:20:50 | 日記
 このあいだの土曜日、息子が来ていて外食での待ち時間に永田紅さんの第五歌集『いま二センチ』を読んでいて。

 ・タンポポの茎の水車のくるくるを知らぬ人とは話が出来ない 永田紅

 という歌にあって、息子に「これどういうこと?」ってきいたら、「え、話が出来ないなぁ」といいつつ、

 「タンポポの茎の部分をうすく剥がすようにめくっていって、水につけたらくるんってなるねん。それでくるくる回したら水車みたいやねん」
と教えてくれた。へえ、そんなこと誰に習ったんだろう。最近、「小さいころから知っていた」と言われることが多くて、一緒に暮らしていても別の時間が息子には流れていたんだなぁと思う。あたりまえだけれど。

 『いま二センチ』には子供が生まれる直前、妊娠期間、生まれてからの子育てという時間が丁寧に読み込まれている。そこに研究者としての物の見方や専門用語がでてきて歌集全体がゆるくなりすぎないようバランスがとれている。

 ・貝ボタンしずかに反りて生まれくる子どもの二十の爪を思えり
 ・猫よりも軽き体に乳飲ます右吸わるれば左より垂る
 ・掛け布団をぱったんぱったん蹴り上げる足が見たくてまた掛けにけり
 ・給油してふたたび出航するごとく眠りのなかへ戻りゆきたり
 
 ・両の手にもの打ちつけて遊びいるすでにひとりの静けさの裡に
 
 それぞれの歌にはしみじみとした喜びや驚きがあって、二度と来ない時間や感情を書き留めているようだ。5首目の「ひとりの静けさの裡に」から連想するのは、母である河野裕子の歌、

 ・しらかみに大き楕円を描きし子は楕円に入りてひとり遊びす 河野裕子『桜森』

 河野の歌のほうは楕円を描くくらいの幼児なのだけれど、もっと小さい赤ん坊でもひとりの時間を持っていることに気が付いている。

 ・母の歌の前庭にわれら日を浴びてまだ本当のさびしさを知らず
 ・蟬時雨いま母あらば叱られむ私(わたくし)のこの甘やかされぶり
 ・似ていると言われ似ている私が鍋を覗いている夕まぐれ
 ・お母さん生きてればなあという思いそれぞれもちて箒を使う
 ・母あらば胡瓜とワカメの酢の物をガラスの器に作りてくれむ

 母の歌には寂しさがにじんでいるけれど、鍋、箒、ガラスの器などをうまく入れて感情が強くならず冷静に詠んでいる。

 そのほか、いいなぁと思った歌。

 ・網戸にはときおり欅の影ゆれて目詰まりしやすい光があった
 ・水路張り巡らし町を作るごと胸に血管目立ちはじめぬ
 ・菜の花は色か光か、川の辺は風か湿度か ともかくも春
 ・梅の木をくぐってだれか来ないかな二階の窓から眺めていたり
 ・窓、そうか蔦が睫毛のように揺れ伏し目がちなる家だったのだ
 ・干し柿のように灯って待っていて 日々の疲れに色はないから

 とても自在に豊かに短歌の枠をいっぱいに使っていて、歌の隅々にまで光や風や色が行き渡っている。

 短歌の包容力を再認識させてくれるような歌集だと思う。



 

 
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第77回あなたを読む会

2023-03-28 23:54:19 | 日記
 桜で溢れた京都。きょうは第77回あなたを読む会。

 お昼前の電車で塔事務所へ向かう。車窓から線路沿いの桜が流れていく。きれいだなぁ。

 京都駅の成城石井でお弁当を買う。時間があれば御所でお花見してから行こうかなと思っていたけれど、地下鉄は観光客でいっぱいで、丸太町でもたくさん人が降りたので、御所は諦める。

 先週、東福寺からバスで事務所へ向かったら、お花見客で道路が込んでいてなかなか到着しなかったので、きょうは電車にした。

 ひさしぶりに丸太町駅から事務所まで徒歩10程を歩いたのだけど、こどもみらい館の前の公園には子供たちが楽しそうに遊んでいて、見守る大人も満開の桜をカメラに収めたりしていた。なんだかのどか。

 13時30分から会はスタート。5人全員出席。ひとり16首くらいを時間をかけて読み合った。

 テーマでまとめて連作をつくるひと、雑詠的に詠んだものをまとめるひと。それぞれのよさ、今後の課題などを出し合う。

 長いあいだ読み合ってきたメンバーなので、今月は力が抜けていたねとか、ここのメンバーはずっと読んできているから伝わるけれど、ほかに出したときはどうなのとか、誰に向かって歌を詠むのか、など結構深い話もできてよかった。

 あとは最近読んだお勧めの歌集とか、連作のテーマについて話しているうちに介護問題の話になったり。

 価値観はそれぞれだけれど、正直に気持ちを言い合える関係ができていることが嬉しい。

 77回も続いてきたということに感謝したい。 

 「ふじたさんはこういう路線でいくの?」と言われて、え、と思う。 路線とかないんだけどなぁ。

 職場では戦略という言葉はよく使うけれど、短歌において私は戦略とか路線とか考えたことがない。

 そういうところから解き放たれたところに私が短歌を続けている意味があるような気がする。

 挑んだりするものではないと思ってきたけれど、そういう気持ちももったほうがいいのかしらと考えるきっかけもこの会は教えてくれる。

 のびのび自由にやっているから楽しくやれている気もするし。

 短歌が好きということを中心においてやっていきたいということは短歌を始めた二十数年まえから変わらない。

 あなたは短歌が好きですか。 

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山口県雲林寺、萩 1100キロドライブ

2023-03-26 16:21:25 | 日記
 先週、20~21日。私の春休み最終日に車で萩へ。

 夫は定年になって退職したら、車で日本一周したいと前々から言っていたのだけど、定年の年齢がどんどん伸びて、このままいくと免許を返す年齢になってしまう。親を見ていて自分たちが動けなくなる前に行きたいところへ行こう、と、時間ができたら実行している。

 ずっと行きたかった萩。塔の友達のFちゃんが雲林寺にお嫁にいってから会いに行きたいと思っていた。

 電車で行けないこともないけれど、雲林寺に行くなら車のほうがいいなぁ、でも車でって遠いし行けるかなぁと不安だった。でも行ってみると、案外楽で、荷物もいっぱいつめるし、地元の商店街の八百屋さんで格安の「せとか」(柑橘系で私がいちばん好きな蜜柑)15個入りも買えたし、とてもよかった。

 雲林寺は山あいののどかなところに建っていて、「ねこ寺」として有名で、いたるところに猫の像とか絵馬とかがかかっている。石段をのぼったら涼し気な風鈴がいくつもそよいでいていい音が迎えてくれた。20日は平日だったのに、他府県ナンバーの車があったりしてにぎわっていた。しばらくお寺を見学してからFちゃんに「着いたよー」とメッセージを送ったら、お寺の奥から出てきてくれた。

 わーひさしぶり!!! Fちゃんはちっとも変っていなかった。のどかなところで優しそうなご主人と幸せそうに暮らしていて、ほのぼのしていていいなぁと思った。

 FBで見ていた猫ちゃん「アウアウ」にも会えた。私は猫を飼ったことがなくて、距離の取り方がよくわからなくてどう仲良くしていいのか戸惑っていると、ご主人がチュールを手渡してくれて、アウアウはおいしそうに食べてくれた。わーい。かわいいな。

   

 遠かったでしょ。と言われて、まぁ、休憩しながら7時間くらいかなぁ。120キロくらいごとに交替して運転してたらすぐだったよ。といったらふたりとも笑っていた。

 そのあとは萩に宿を取っていたので移動。偶然あいていた宿を予約したのだけど、庭が花で溢れていて、部屋もリニューアルしたてだそうで、気持ちよく過ごすことができた。夕方から散歩にでて、F子ちゃんご夫妻おすすめのうどん屋さんで食事。たまには宿以外で食べるのもいい。

  
  

  
 
 温泉もゆったり入れた。朝はWBCの準決勝を気にしながら朝食を取り、明倫学舎を見学。見学途中に勝利を知って、テンションがあがる。前日に見つけた八百屋さんでせとかを買って帰路につく。

   
  

 帰りもまた550キロの道のり。雨というか山間部では霧がでていて、だんだん暗くなってくるしかなり後半は怖かったけど、なんとか乗り切った。帰宅は21時すぎ。次回はもう1泊くらいしたいなぁ。

 今回の旅で結構運転に自信がついた。まぁ、私が運転したのは高速ばかりだから、そう自慢できるものでもないけど。でも、まだ遠出ができるなとわかっただけでもよかった。

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WBC 侍Japan 優勝!! 

2023-03-22 23:18:01 | 日記
 WBC、日本は14年ぶりに3回目の優勝を果たした。信じてはいたけれど、現実になると震える。

 きのうは山口県にいて、大事な試合になればなるほど私がかぶりついて応援すると負けるというジンクスがあるので、ときどきスマホで試合経過を確認していると、夫が「はやく閉じろ! 負けるやん」とか言って脅すので閉じて祈っていた。

 ちょうどスマホを開いて確認した瞬間、「試合終了」の文字がでて、やった! サヨナラで勝った! 村上(親しみを込めて呼び捨てにしている)、よかったね!! と、飛び跳ねる。550キロの移動中の車のなかでは妹とラインで喜びを分かち合った。そして、帰宅してがっつりスポーツニュースを見て喜びを嚙みしめた。

 きょうは20日ぶりの出勤日。午前中休んで決勝を見たかったけど、久しぶりの出勤日なのでそういうわけにもいかず、トイレ休憩などにちらちらとスマホで経過を確かめ、をを! アメリカに勝ってる! みんながんばって! 私もがんばる! とやけにエンジンがかかって、たくさん溜まっていたメールやメッセージを読んだり、書類の確認をさくさくやった。「WEB」の文字がすべて「WBC」に見えてしまって、自分でもおかしかった。

 お昼休み。まずスマホをあける。3-2 で試合終了とでて、ええええええ、ほんとに優勝したんだ! と思ってそば屋にいく。天丼を食べながらじわじわ涙が浮かんできて、え、わたし、ほんとうにすごく応援していたんだなと思う。こんなに涙でるほど嬉しいなんて。

 そば屋をでてから職場へ戻る途中の地下道で30代くらいの女性がスキップしながら通り過ぎて行った。

 ああ、あのひとも応援していたんだな、と思う。わたしもスキップして並走したかったけど、変な人と思われるからやめた。

 デスクに戻ってパソコンで試合経過と動画を見る。何度みてもいいなぁ。帰ったらまたスポーツニュースを見ようと思う。

 帰宅したら19時から22時まで3時間に圧縮して再放送をしていたので、見る。結果がわかっているから安心。途中でご飯になるから録画もしておく。

 ああ、なんて嬉しい一日だったんだろう。

 泣くほどの喜びをくれてありがとう。 みなさん、おめでとうございます!
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川上まなみ歌集『日々に木々ときどき風が吹いてきて』トークイベント

2023-03-19 20:29:02 | 日記
 きょうは本日発売の川上まなみ歌集『日々に木々ときどき風が吹いてきて』の出版記念のトークイベントに出掛けた。

 会場は泥書房。(何度行っても一度は通り過ぎる) 川上まなみさんと中津昌子さんのトーク。会場は満席だった。

 レジュメは川上さんの自選10首と中津さんがカテゴリーごとに歌を抜き出したもの。

 ・あなたが走ればあなたの影も走るのを見ていたラグビー場の広さに
 ・私だけがこんなにつらいとたまに思うちがうのに 遠くのジュンク堂
 (以上川上さんの自選より)
 
 ・あなたからいちばんとおい場所にある風をあなたは抱きしめにいく
 ・振り返ってばかりの私を追い越していくのがわたしでありますように
 ・グラウンドに野球部がいなくなってから夕暮れていく六月の空
 ・この町の夏をもっとも明るくして前触れもなく花火が終わる
 ・忘れました忘れましたと言いにくる列の長さに冬が続いて
 ・まだ一度も降りたのを見たことがない踏切のとおくとおくなのはな
 (以上中津さんレジュメより)

 川上さんの歌の遠さについて。私の像もあなたの像も明確にはつかめなくて、それは根本から存在を問い直しているよう。

 川上さんの日常や短歌との関わり方、抒情について、いろんな話が歌に繋がっていって、中津さんが訊いてほしいことを訊いてくれて、話をきくと歌が深いところで光りだすようだった。

 わからないからわかろうとして歌を作っている、という川上さんの言葉が印象的だった。

 ほかに私がいいなと思った歌。

 ・石鹸を撫でて減らしてゆくことを日々にして もうずっと会わない
 ・放課後の板書練習しておれば声にまみれている学校は
 ・もう少しあなたを見せてほしかった 二月はいつも急に終わるね
 ・見たもののすべてをおもいだすあいだ野にひろがってゆく火を見てた
 ・オムライスの丘を崩してすくうときこんなにこぼれやすいきっかけ
 ・ひかり降る窓を遠くに見ていても なにがくるしいのかわからない

 何度も読み返したいと思う。
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