自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

世論を誘導する危険な日本の政治と科学とメディアの動きと「弱い人」に冷たい社会

2016-10-02 18:46:42 | 自然と人為

 防衛省は、大学などに研究を委託し資金を提供する「安全保障技術研究推進制度」を2015年度3億円から導入し、2016年度予算で6億円に倍増しました。その目的は、「防衛省が行う研究開発フェーズで活用することに加え、デュアルユースとして、委託先を通じて民生分野で活用されることを期待」するとしています。
 自民党は自衛隊の「技術的優越なくして 国民の安全 なし」、「技術的優越」が確保されていなけば、勝利を収めることはできないとして、同制度を100億円に拡充することや、「革新的研究開発推進プログラム」(平成25年6月創設を閣議決定、平成25年度補正予算に550億円を計上、「独立行政法人科学技術振興機構法」の一部を改正して5年間の基金を設置)等で、安全保障に資する研究にさらに資金投入することを首相に提言した。「科学技術振興機構」は文科省の管轄ですが、何故、防衛省の研究の為に法律を変えねばならないのでしょう。科学研究の成果が軍備に利用されるとしても、研究の目的はあくまで人類の幸福に資するものでなければならず、文科省の管轄の範囲で実施すべきと考えます。
 防衛省の2017年度概算要求では、今年度の軍事研究助成18倍の110億円となっています。「革新的研究開発推進プログラム」の基金550億円をプラスすれば大幅な軍事技術のための研究となります。今では研究開発費以外にも沖縄基地建設に自衛隊や巨額税金を使用していますが、そーっと研究開発を含む軍事予算増額を始めてアレルギー拒否を防止し、ドンと増加させて世間を馴らせるやり方には危険なたくらみが隠されていて注意に注意をすることが必要です。
 参考: 防衛省が軍事技術研究費のために3億円ばらまき! 2015年9月29日
      大学の軍事研究に反対する


 昨年5月(2016年5月22日)、このブログで「自衛のための軍事研究は否定されない?」と警告を発していましたが、軍事研究に大学等が参加する体制は急速に進行しているようです。
 第2次大戦中に科学者が戦争協力した反省から、学術会議は1950年と67年に戦争目的と軍事目的の研究を否定する声明を決議していますが、東京都内で記者会見した日本学術会議大西隆会長は「声明の見直しも議論の対象」と明言したと報道されている。日本学術会議が責任を持つ科学研究費助成事業(日本学術振興会)は、科学研究がデュアルユースの性格を持つとしても、防衛省ではなく文科省の管轄下で実施され、研究内容の公表が守られることが第一に必要です。また、大西会長は「戦争を目的とした科学研究を行うべきでないとの考え方は堅持すべきだが、自衛のための研究までは否定されないと思う。周辺環境が変わっており、長年議論もないことはおかしい。」とも言うが、周辺環境が変わろうが変わるまいが戦争を放棄することは憲法で決められている。「抑止力」とか「自衛のための戦争」は公に戦争を準備し、戦争ができる道を歩みだす。戦争を放棄して「自衛のための研究」があると言うのは論理的に矛盾があり、科学者の言葉ではない。ましてや科学者を代表した会長の言葉とは信じられない暴言だ。
 参考: 学術会議 軍事研究否定、見直し検討 毎日新聞2016年5月21日 (コピー)
      日本学術会議 軍事研究で検討委設置 毎日新聞2016年5月26日 (コピー)
      論点 問われる「軍民両用」研究 毎日新聞 2016年7月27日 (コピー)


 安倍首相が「自衛隊員らをたたえて拍手をして何が問題なのか」と言うが、この言葉自体が彼本来の2枚舌、デュアルユースの正体を現し、次は自衛隊員を国会で拍手をして戦場に送ることを意味している。
 これまで何度も申し上げてきたが、自衛隊はアメリカの反共の砦である日本を守るために朝鮮戦争の際に設置されたもので、戦争放棄した憲法に違反することは明白だ。「戦争放棄させられた」ことは国民にとって幸福なことだ。良いものは良いとして守ることが、アメリカに比較して力のない日本の知恵であり、自衛権を持つために憲法を変えよと言うことは、戦争の準備をするために憲法を変えろと言うことと同じだ。スッキリするためには、自衛隊を「国際災害救助隊」にするのが1番だと、子供の様だと言われても何度でも言う。科学者はどんな研究であろうと成果を上げるための研究費は喉から手が出るほど欲しいものだし、メディアは情報を得たいために権力を批判しにくい。政治家は道理を通すよりも、現実の利害関係、現実の力関係に囚われてしまう。そのことで政治も科学もメディアも国民よりも政府に従い、さらにアメリカ軍産複合体の横暴を許す結果になっている。今や戦争を知らない世代は自衛のための研究に何の抵抗も感じなくなり、日陰者であった自衛隊が大手を振って軍隊として歩き出す。



臨時国会開催~国民に優しさよりも、世界に強さを求める安倍首相(録画)

 今年秋の臨時国会における安倍首相所信表明をサンデーモーニング(2016年10月2日)のコメンテーターの論議とともに録画して上記に紹介している。他者への配慮ができない超利己主義の安倍首相そのままの演説であり、「赤信号、私が渡れば怖くない」とばかりに、新自由主義で地方と農業を破壊し、格差を拡大させて、大企業の輸出を優先してTPP早期発効さえ目指している。国民にとって利益のないTPPをアメリカ大統領候補は反対したり見直そうとしているのに、日本は強行採決してまで参加しようとしている。TPPはもう一つの戦争-経済戦争だ。日本の政治はアメリカに言われてではなく、自らが国民を見捨ててしまっている。しかも、自衛隊、海上保安庁、警察に国会で拍手をしているが、国の為に働いている人たちは多くいるのに、何故、権力をバックに働く彼らに国会でことさら感謝するのか。安倍首相の目指している強い世界が透けて見えてくる。しかもアベノミクスで税収が増加したことを自慢しているが、金利を低下させて財政の負担を軽減させつつ、そのお金を軍事研究を含む軍事費に注いでいる。さらに、地球温暖化で熱中症が心配な真夏のオリンピックを巨額な経費で準備して大企業を潤わせ、その負担を東京都民に押し付ける一方で、大企業の意向なのか地球温暖化対策のパリ協定が今年の11月には成立することが確実になったのに、核兵器の禁止条約と同様に日本は参加しようとしていない。国民より、日本の大企業に従う危険な姿勢が丸見えだ。それはいつか来た道ではないか。

 ソマリア沖で海賊対策にあたる自衛隊の本格的基地「ジプチ」は、安倍首相も視察しているが、ジプチ視察を理由に全国戦没者追悼式を欠席した稲田防衛相を辻本議員から、あなたは「国のために命をささげた人々に感謝と敬意を表さなければならない」と言っているのに言行不一致だと国会で追及され、「今までの私の発言、読み上げられた通りです。その気持ちは今も変わりません。」と答弁している。
 「国のために命をささげた人々に感謝と敬意を表す」ことは、全国戦没者追悼式に出席することではない。「戦争放棄」をした憲法を守ることではないか。「戦争放棄」についての考え方が、どうして政治家の間で一致しないのであろうか。

 軍隊を持たないことは、他国に脅威を与えないと同時に、国内ではクーデターや内戦を予防できる。コスタリカは平和の国として世界に認識されている。唯一の被爆国であり「戦争放棄」をした日本は、自衛隊を「国際災害救助隊」にして汗を流して実績を積めば、国の命令で殺人や破壊をすることもなく、隊員にとっても、国にとっても、さらに世界にとっても、信頼され尊敬される「未来に挑戦」していけると確信する。


地球温暖化対策のパリ協定に日本は参加せず?(サンデーモーニング録画)


また、弱者が標的に・・・(録画)サンデーモーニング "風をよむ" 2016/10/2

 また、衆議院の解散風が国会周辺では吹き出したと言う。衆議院の解散は首相の専権事項でいつ解散されても仕方がないと政治家もメディアも言うが、解散は内閣不信任案が議決され内閣総辞職をしない場合に、国会ではなく民意を問うために実施する(憲法69条)ものである。そう簡単に国民が選んだ議員を首にすることはできない。国民が選んだ議員を首相の都合で解散し首を切るなど、国民は大いに怒らねばならない。しかし、首相の勝手な解散を首相の専権事項(憲法7条の悪用)にしてしまった。首相の勝手な行動を誰も非難しないようになることが、この国の危うさである。しかも、政治が「貧しい人、弱い人」に冷たい社会を作り出し、国民は政治に反発するより利己的で孤立した人々が増え、「貧しい人、弱い人」を標的にした犯罪が増えている。
 「競争社会」という器で育った利己的な人間は対立するので、「自然と他者を尊重」する利他的な器を言葉で紡ぎ、その器を皆で共有することは出来ないものか。

 政治家も3代続くと「競争社会」ではなく、北朝鮮のように「競争社会に下駄」を履かせた特権社会を形成し、能力よりも血縁やお気に入りが要職に就くようになる。もう日本の政治は知性の限界を超え、耐用年数が過ぎてしまっている。耐用年数を過ぎた政治は建て替えなければ大事故になる予感がする。

 参考: 大きな誘導がされている
      稲田防衛相、夫が株を保有していた三菱重工、川崎重工、IHI
      と安倍政権“武器輸出政策”のただならぬ関係
      TPP強行採決宣言が示す安倍政権の驕りと緩み
      自民「強行採決」宣言。誤訳、SBSなど問題多発も、一強のおごり炸裂か
      安倍晋三首相は「総裁任期延長―長期政権実現」、国民生活は二の次
      【社会保障崩壊】政府の年金制度見直し、支給開始年齢を75歳に引き上げか!?
      正当性のないTPP承認は主権者が断固阻止する
      政治家レイシズムデータベース (by 反レイシズム情報センター(ARIC)


政治のことを考えてみた(2015年10月~2016年5月)
「政権を維持する3種の神器」~我々が知らないオフレコ情報 2015-10-07
戦争放棄の憲法を守ることは、日本と日本人を守ること 2015-11-29
新・映像の世紀~米ソ冷戦時代から日米関係を考える 2016-01-28
競争は差別と支配を生み、共創は非暴力と平和を生む 2016-01-31
差別と支配と暴力のない理想の世界をめざして~我々は何処へ行くのか? 2016-03-04
「地位ある人」に現場と他者を思う心がないと社会悪を生む 2016-03-20
支配者を怒らない曖昧な日本人~精神的自由と経済的自由 2016-03-22
曖昧な日本人よ!政財界による「国民支配のうねり」を許すな 2016-03-29
利己的であるから利他的にもなれる~他者尊重のための訓練 2016-04-07
汚れちまった日本の政府と報道~女性よ太陽になれ!山尾しおり議員! 2016-04-09
ウルグアイ・ムヒカ前大統領来日~その言動と他者への愛 2016-04-12
他者への愛~ホセ・ムヒカ ウルグアイ前大統領
(1) (2) (3)  (4)2016-04-15~2016-04-20
熊本の地震拡大~福山でもスマホが通知 2016-04-20
どうして、日本という国は馬鹿な支配者を生むのだろう? 2016-04-22
一人一人の「自由」と「助け合う社会」に責任を持つ国が必要 2016-04-23
熊本地震と原発、オリンピック、東京の懸念を無視するバカの壁 2016-04-26
憲法と政治を考えよう 2016-05-08
多数決は強者のため? 政治は誰のため? 危ない政治家は? 2016-05-10


初稿 2016.10.2 更新 2016.10.4 修正 2017.6.7

最新の画像もっと見る

コメントを投稿