百菜健美☆こんぶ家族ラボ

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天丼にはなぜ蓋をする?

2020-10-25 | 昆布

ふたをするのは、天丼という料理には欠かせない「調理法」だからです。

天丼は天ぷらをご飯の上に乗せただけの料理ではありません。

天丼は、ご飯と一緒に口に入れる事が多くなります。天ぷら → ご飯ではなく、ご飯 → 天ぷらでもなく、両方同時にです。

この「両方同時に口に入れる」事を念頭に、天丼は様々な工夫がなされてきた料理なのです。

具体的な効果としては

  • 蓋をして軽く「蒸す」ことで、衣の表面を軽くふやけさせ、ご飯との食感を合わせる
  • ご飯の味に合わせた「少し濃い味付けの天つゆ」を、ご飯及び天ぷらに馴染ませる

食べるまでの僅かな短時間でこれだけの効果があるのか?という疑問はもっともですが、不思議と効果が出るものなんです。

以下、僕の妄想が多分に含まれた理由として

  1. 天ぷらはもともと、ご飯と共に食べるものではなかった
  2. 天ぷらは「蒸し料理」であり、独特の食感を楽しむ料理である
  3. 天ぷらの食感は、ご飯の食感と大きく離れている。大きな離れを楽しむのも良いが、合わせてみるのも良いじゃないか
  4. 試行錯誤の結果、蓋をするのが丁度よい

という流れがあったのでは?と考えてます。

【1.天ぷらはもともと、ご飯と共に食べるものではなかった】

天ぷらに欠かせない油の量産が本格的になったのは、江戸時代以降のようです。

日本人と食用油:油料理の歴史

(1)油の歴史に少しふれてみましょう | 株式会社 山中油店

上記のページによれば、長崎経由の中華料理の伝来によって、油を使った食事が広まったことと、菜種油の量産がポイントですね。この2つのポイントが明かり用、料理用として油が広まった理由のようです。

一方、天ぷらと言われて想像する「黄色の薄い衣を纏った揚げ物」は、江戸時代中期に関西で発展した料理です。

  1. もともと魚のすり身をそのまま揚げる料理が、九州や四国地方にはあった(所謂「揚げかまぼこ」を天ぷらと呼ぶ地域があります)
  2. 西洋のフリッターをベースとした「長崎天ぷら」が産まれる
  3. 2.は1.を元にしているらしく、衣に濃い目の味付けをしたもの
  4. それが薄味を好む関西に伝わり、今の天ぷらに近い「うすあげ」になる
  5. 関西から江戸に伝わり、広く庶民に伝わる

そうして描かれたのが、この浮世絵。

鮨にしても天ぷらにしても、江戸の屋台料理はその場で食べる「ファストフード」。なので、当初の天ぷらはご飯と共に食べるものではなかったと考えています。

【2.天ぷらは「蒸し料理」であり、独特の食感を楽しむ料理である】

ご飯(=米)と同時に楽しむ鮨に比べ、天ぷらはそれのみを食すもの。

しかし両者とも魚介類の流通・保存性の悪さをカバーするために、様々な技巧が編み出された料理でもあります。

鮨であれば、酢の使い方、醤油を用いた「ヅケ」、わさびと言ったところです。

一方の天ぷらは、特に江戸では香りの強いごま油を使い、更に高温でカラッと揚げる技法が好まれたようです。

天ぷらにも関東風と関西風があるのが面白いですね。今日現在私達が思い描く天ぷらは、やはり関西風が基のようです。

江戸前天ぷらって何?|[屋形船の達人]

こういった技巧の積み重ねの結果、天ぷらは素材の旨味に加え、歯ごたえを楽しむ料理となりました。その究極の結果がこちらにあります。

天ぷらは揚げ物じゃない、蒸し物です。

衣の食感だけではなく、素材から上手く水分を飛ばすことで、素材そのものの食感も楽しめる。

天ぷらもまた、和食の頂点のひとつだと思います。

【3.天ぷらの食感は、ご飯の食感と大きく離れている。大きな離れを楽しむのも良いが、合わせてみるのも良いじゃないか】

関東風の、本当に昔ながらの江戸前天ぷらも頂いたことがあります。

ごま油の強い香りとクリスピーな食感がとても良くて、だけどエビのプリッとした歯ごたえや、穴子のホロッとした食感、そして素材の香りがちゃんと引き出された素晴らしい出来栄えで、ご飯がとても進んだ覚えがあります。

これはこれで良いものですが「どうせご飯と一緒に食うんだったら、ご飯の食感に合わせた物も作っちまえ」という、いかにも粋な考えが感じられるのが天丼です。

天丼 - Wikipediaの始まりは蕎麦屋の屋台とする説もあります。蕎麦、鮨、天ぷらは江戸前料理の代表格。江戸っ子の粋な所が発揮されてもおかしくはありません。

少なくとも、食に対するこだわりが半端ない日本人が「ご飯のモチっとした食感に合わせた天ぷらの食べ方」に情熱を注ぐのは、想像に難く無いと思います。

こういった部分は、中国・イタリア・フランスの食文化にも引けをとらないと、個人的には考えてます。要はみんな「美味しいものが食べたい!」という情熱が強いということです。

【4.試行錯誤の結果、蓋をするのが丁度よい】

そして実際に試行錯誤を始めるわけですが、ちょっとした「フニャっと」感を出すには、揚げ方や衣の工夫では割と難しい。

じゃあ「ちょっとだけフニャッとさせるんなら、ご飯の湯気を使ってみては?」という仮定のもと、だったら蓋をしてみようという流れなのではないでしょうか?

もちろん4.は僕の勝手な妄想ですが…

しかし、カツ丼にしても、うな丼にしても、そして天丼にしても、蓋を開けた瞬間の「美味しい香りがフワッと届く」あの感じって、幸せを感じませんか?

やっぱり丼ものには蓋が必要なんです。そう強く思ってます!

 

BY  https://jp.quora.com/topic/%E5%AF%BF%E5%8F%B8

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