うなぎかば焼、ちりめん山椒(さんしょ)煮、自家製からすみ――。達筆な字でメニューにしたためられた料理はどれも日本酒のよき相棒だ。自慢の品は自家製「昆布漬けからしめんたいこ」。和風だしを利かせたタレが奥まで染み卵の粒一つ一つがふっくらと丸い。塩辛さは控えめで味はまろやか。合わせる酒の風味を目いっぱい引き出すのにこだわる。
食材はその日の朝、市場から仕入れる。鮮度も抜群だ。長崎県・五島でとれたサバの刺し身は豊富にのった脂の甘みが口の中に広がる。新鮮でなければ食べられないという白子と合わせて食べればさらに濃厚。添えられたすだちをかければ、さっぱりとしたかんきつの香りが相まってもう箸は止まらない。
店は福岡市の繁華街、中洲の上川端商店街近く。にぎわいから少し離れひっそりとたたずむ。店内にはカウンター席と掘りごたつの大小個室が3部屋。落ち着いた雰囲気に博多祇園山笠の飾りや地元の有名画家によるイラストがちりばめられ、博多文化への愛着も漂う。
コースなら予約制で6千円から。単品のメニューも季節に合わせて変わる。旬の食材を生かすためだが、店主の稲益誠一さんは「いつも同じだとおもしろくないからね」とにやり。博多で修業を重ねた料理人の自信がにじむ。これからの季節なら見た目にも涼やかなハモ料理がおすすめという。
(柏木凌真)
〈はかたゆうぜん〉福岡市博多区上川端町12の183電話092・271・9271