鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

二疋獅子図三所物 後藤光侶 Mitsutomo-Goto Mitokoromono

2012-08-01 | 鍔の歴史
二疋獅子図三所物 (鍔の歴史)


二疋獅子図三所物 銘 後藤光侶(花押)

 後藤の伝統を明確に示した作。這龍図を含めたこのような三所物は、江戸時代の中後期を関係なくして求められたようだ。廉乗の時代はまだまだ桃山文化の影響が残されていたものと思われ、この作でも量感のある高彫の描法などに豪壮さが窺える。様々な図が描かれた時代であるが、なぜにこの獅子図が面白いのだろうか。伝統の図とは言え形骸化しているとも言い換えられる。それでも強く張った胴体や四肢、独特の巻き毛、視線を合わせた阿吽の相など、見ていて飽きない。廉乗の活躍したのは寛文から元禄だから安定した時代であり、殊に町人文化の発達は後藤家にも影響を与えたであろう。他の図には同時代観が窺えるも、獅子図にはやはり伝統があり、それを強く意識していると感じられる。