鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

川下り図鐔 Tsuba

2011-08-29 | 鍔の歴史
川下り図鐔 (鐔の歴史)


川下り図鐔

 作者不詳ながら、明らかに金家を意識した鐔。鉄地を鋤き込んで高彫とする手法を採り、夕日の沈み行く様子を遠景に、小舟を操る人物と川辺の様子、要所に金の布目象嵌を施している。江戸時代中期から後期の正阿弥派とみられる。遠い山並みは金家の手とは異なり、険しさを漂わせており、遠見の松樹などは味わい深く、それらを包む夕空の雲を微妙な鋤彫で表わし、地面にも鎚の痕跡を活かして空気感を演出している。決して下手ではない。金家の風趣を手本として成功しており、楽しめる作品である。82.5ミリ。