鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

達磨図鐔 山城國伏見住金家 Kaneie Tsuba

2011-08-19 | 鍔の歴史
 これまでに何点かの金家鐔を紹介した。金家は鐔の歴史を眺める上で特に重要な存在の工である。時代の上がる他の鐔工と同様に年紀作がないことから活躍した時代の判断ができず、多くの研究家が製作年代を考察している。その時代の特定は、おおまかに言うと室町中期から江戸初期までのおよそ百数十年に及んでおり、断定が容易でないことは明白。作品を眺めた上での時代判断は、甲冑師鐔や刀匠鐔でも言えることだが、判断材料が不明瞭であれば時代を間違えることもあろうかと思う。
 作風から、金家の代別の判断も様々に行われてきた。一人説から数代あるという説まで。初、二、三代というように分けるのではなく、大初代、名人初代などと呼び分けた研究家もあり、判り難い。他の金工や職人と同様に、同時代に複数の金家が存在したなら、即ち金家が工房名であるなら、作風の違いや作位の違いは好意的に理解されよう。
どなたか古文書研究をされている方が、「金家」の確かな記録を見出し、その研究を進めてくれることを願っている。


達磨図鐔 山城國伏見住金家

 鉄地を打返耳に仕立て、地面には鎚の痕跡を残して秋草を毛彫にしている。元来、この秋草部分には金象嵌があったようだ。金がうるさいといわれるかもしれない。確かに金象嵌の少ないほうが金家らしいが、本来の姿も鑑賞したいものだ。80.5ミリ。